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19.残暑と性少年
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夏は開放的になりがちなのだとか。
利央は眠そうな目でぼんやりと頬杖をついていた。
新学期が始まり、今日も相変わらず朝に二人分の弁当を作っていた利央はあくびした。
「眠そうだな黒宮。夏休みボケか」
クラスメイトが笑いながら言ってくる。
「夏休みボケ……あー……いや、違う、別に俺はボケてない」
「素で返すなよ」
「ん?」
利央が何だという風に相手を見ると「もう寝てろよ」と笑われながら頭を押された。確かに眠いし、少しくらいなら寝てもいいかもしれない。
利央はそのまま素直に机に突っ伏した。離れたところで女子が「黒宮くんが寝てるー」などと言っていたが、利央の耳にはもう入ってこなかった。
今年の夏は残暑が厳しいのか、ここ数日は特に暑かった。そのせいでだるいのもあるが、色々とよくわからない上に落ち着かないのが多分だるい理由なのだろし眠くなるのだろうなと、利央は眠りに陥りながらも考える。
今朝も朝起きて一階へ降りて行くと、気持ちタオルケットを腹辺りにひっかけるようにして薄着で眠っている律がいた。利央が「またいる……」と思っていると律が寝返りを打つ。
眠っている相手は利央が生まれた時からずっと一緒だった兄であり、そして当然男である。だというのに何故、律が薄着でその上シャツがめくれあがっている様子を見てドキドキしているのか。
数日おきにこうしてここで眠っている姿を見かけると、毎日ではないだけに余計驚くからドキドキしているのだと思ったりしてみたが、その無理のある発想には自分で考えつつも納得いかない。
利央はそのまま近付いた。そして起こそうとしてふと手が止まる。
つ、と汗でうっすらと濡れた律の額や首筋に指を這わせたくなった。少しだけ開いている唇に触れたくなった。
そんな自分に唖然としていると、律がゆっくりと目を開けてくる。
「あれ、おはよう、りお。起こそうとしてくれてたの?」
「……っ」
利央は今度こそ本当に驚いてドキドキしたまま無言で後退った。
「……? りお?」
「ああいや。うん、起こそうと思って……」
「暑いよね。俺また汗かいちゃったよ。シャワーざっと浴びるかな」
「ん。ていうか何でこう、ちょくちょくこんなとこで眠ってんだよ。びっくりするだろ」
利央は何でもないような様子で律を見た。
「あー。だって暑いから。絶対二階よりここのがまだ涼しいよ。それにここだとエアコンあるから部屋ちょっと冷やしてから寝られるし」
「ったく。兄貴働いてんだし暑さでやられんのよくねえし、やっぱこないだ言ってたようにエアコン買おう。もう九月だけど」
二階の部屋は元々親の寝室だったらしい利央の部屋にしかエアコンはついていなかった。そのエアコンも随分前のだから消費電力もあまりよくない気がして利央は滅多に使わない。ただ、律の部屋にはエアコン自体がなく、いつも扇風機だけで過ごしているようだった。元々暑さには強いらしいが、今年は本当に残暑が厳しく、律も我慢できずふらふらと一階まで降りてきてしまうらしい。
「えーもう秋になるし」
「現になってないだろ!」
「んー」
律は乗り気じゃない様子のまま洗面所まで歩いていった。そして浴室へ入っていく音が聞こえる。
「ったく」
利央はため息つきながら、朝ごはんと弁当の準備をする。変に時間とってしまったので弁当は冷蔵庫にあるタッパに詰めた残り物を主に入れ、朝食はただのトーストだ。
最近の自分はやはりどこか変だと作りながら思う。違和感なんてものじゃない。いくら兄が大事で好きだとは言え、普通先ほどみたいなこと、思うだろうか。それとも昔から好きな気持ちは変わっていないものの、自分が性的に欲求不満だからなのだろうか。性的に欲求不満だから、先ほどみたいなこと思ってしまったりたまに眠れなくなったりするのだろうか。
とはいえ気になる人はいないし誰かと付き合いたいとこれっぽっちも思っていない。利央はため息ついた。
眠い。
「眠れないの、りおは俺が好きだからだね」
……え?
急に律がニッコリしながら傍で囁く。シャワーを浴びていたし多分裸じゃないかと思うのだけれども、何故かよく見えない。
そりゃ兄貴は好きだ。当然、大好きだし大切だし何よりも大事。だって兄貴だから……。
「何? その理由」
律はおかしそうにますます顔を近づけてきた。あまり近付かないで欲しいと思う。そして服を着て欲しい。どうしても見えないのだが、裸だということだけは何故かわかる。
その状態はいたずらに利央の想像をかきたててくた。
だから近付かないで。
「何故?」
何故? だってそれ以上近付いたら……俺は……。
ガタンと体が揺れた。
「黒宮、よく寝てたな。珍しい。顔でも洗ってくるか?」
「え?」
利央はポカンと頭を上げた。周りでは笑い声が聞こえてくる。そして前では呆れたような先生の顔が見えた。
……あのまま寝てたのか。
利央はようやく現状を把握した。
授業が始まったなら誰か起こしてくれてもいいのに、ていうか先生こそ起こして。
何となく頭も重いし、本当に顔を洗わせてもらおうかと立ち上がりかけた利央は一瞬真顔になってから深く座りなおした。
「い、いえ。すみませんでした。授業、続けてください」
「そうか?」
先生はニヤリと頷くと話の続きをし出した。利央は顔が熱くなるのがわかる。
俺……今絶対に席、立てない。
口を少しひきつらせる。夢はどこからが夢なのかすら定かではないが、最後辺りを何となく覚えている。そしてあの状況のどこに、今利央が立ち上がれない理由となるものがあったのかと自分に呆れる。そもそも相手は兄だというのに。
あれだろうか。寝ていたし、意味のない朝勃ちみたいなものなのだろうか。もしくは本当に欲求不満なのかもしれない。情けなく思った。
とりあえず授業に集中し、何とか授業が終える頃には完全に熱も治まっていた。
最近は暑さもあってそんな気になれなかったしなと思いながらも、今日あたりちょっと抜いておくかと利央はため息つく。
「黒宮くんが何か考えごとしてため息ついてる。超カッコいい」
女子が離れたところでそんな風に言っているのには全く気付かないまま、利央はだるいなとばかりにもう一度大きくあくびしてからまた、ため息ついていた。
利央は眠そうな目でぼんやりと頬杖をついていた。
新学期が始まり、今日も相変わらず朝に二人分の弁当を作っていた利央はあくびした。
「眠そうだな黒宮。夏休みボケか」
クラスメイトが笑いながら言ってくる。
「夏休みボケ……あー……いや、違う、別に俺はボケてない」
「素で返すなよ」
「ん?」
利央が何だという風に相手を見ると「もう寝てろよ」と笑われながら頭を押された。確かに眠いし、少しくらいなら寝てもいいかもしれない。
利央はそのまま素直に机に突っ伏した。離れたところで女子が「黒宮くんが寝てるー」などと言っていたが、利央の耳にはもう入ってこなかった。
今年の夏は残暑が厳しいのか、ここ数日は特に暑かった。そのせいでだるいのもあるが、色々とよくわからない上に落ち着かないのが多分だるい理由なのだろし眠くなるのだろうなと、利央は眠りに陥りながらも考える。
今朝も朝起きて一階へ降りて行くと、気持ちタオルケットを腹辺りにひっかけるようにして薄着で眠っている律がいた。利央が「またいる……」と思っていると律が寝返りを打つ。
眠っている相手は利央が生まれた時からずっと一緒だった兄であり、そして当然男である。だというのに何故、律が薄着でその上シャツがめくれあがっている様子を見てドキドキしているのか。
数日おきにこうしてここで眠っている姿を見かけると、毎日ではないだけに余計驚くからドキドキしているのだと思ったりしてみたが、その無理のある発想には自分で考えつつも納得いかない。
利央はそのまま近付いた。そして起こそうとしてふと手が止まる。
つ、と汗でうっすらと濡れた律の額や首筋に指を這わせたくなった。少しだけ開いている唇に触れたくなった。
そんな自分に唖然としていると、律がゆっくりと目を開けてくる。
「あれ、おはよう、りお。起こそうとしてくれてたの?」
「……っ」
利央は今度こそ本当に驚いてドキドキしたまま無言で後退った。
「……? りお?」
「ああいや。うん、起こそうと思って……」
「暑いよね。俺また汗かいちゃったよ。シャワーざっと浴びるかな」
「ん。ていうか何でこう、ちょくちょくこんなとこで眠ってんだよ。びっくりするだろ」
利央は何でもないような様子で律を見た。
「あー。だって暑いから。絶対二階よりここのがまだ涼しいよ。それにここだとエアコンあるから部屋ちょっと冷やしてから寝られるし」
「ったく。兄貴働いてんだし暑さでやられんのよくねえし、やっぱこないだ言ってたようにエアコン買おう。もう九月だけど」
二階の部屋は元々親の寝室だったらしい利央の部屋にしかエアコンはついていなかった。そのエアコンも随分前のだから消費電力もあまりよくない気がして利央は滅多に使わない。ただ、律の部屋にはエアコン自体がなく、いつも扇風機だけで過ごしているようだった。元々暑さには強いらしいが、今年は本当に残暑が厳しく、律も我慢できずふらふらと一階まで降りてきてしまうらしい。
「えーもう秋になるし」
「現になってないだろ!」
「んー」
律は乗り気じゃない様子のまま洗面所まで歩いていった。そして浴室へ入っていく音が聞こえる。
「ったく」
利央はため息つきながら、朝ごはんと弁当の準備をする。変に時間とってしまったので弁当は冷蔵庫にあるタッパに詰めた残り物を主に入れ、朝食はただのトーストだ。
最近の自分はやはりどこか変だと作りながら思う。違和感なんてものじゃない。いくら兄が大事で好きだとは言え、普通先ほどみたいなこと、思うだろうか。それとも昔から好きな気持ちは変わっていないものの、自分が性的に欲求不満だからなのだろうか。性的に欲求不満だから、先ほどみたいなこと思ってしまったりたまに眠れなくなったりするのだろうか。
とはいえ気になる人はいないし誰かと付き合いたいとこれっぽっちも思っていない。利央はため息ついた。
眠い。
「眠れないの、りおは俺が好きだからだね」
……え?
急に律がニッコリしながら傍で囁く。シャワーを浴びていたし多分裸じゃないかと思うのだけれども、何故かよく見えない。
そりゃ兄貴は好きだ。当然、大好きだし大切だし何よりも大事。だって兄貴だから……。
「何? その理由」
律はおかしそうにますます顔を近づけてきた。あまり近付かないで欲しいと思う。そして服を着て欲しい。どうしても見えないのだが、裸だということだけは何故かわかる。
その状態はいたずらに利央の想像をかきたててくた。
だから近付かないで。
「何故?」
何故? だってそれ以上近付いたら……俺は……。
ガタンと体が揺れた。
「黒宮、よく寝てたな。珍しい。顔でも洗ってくるか?」
「え?」
利央はポカンと頭を上げた。周りでは笑い声が聞こえてくる。そして前では呆れたような先生の顔が見えた。
……あのまま寝てたのか。
利央はようやく現状を把握した。
授業が始まったなら誰か起こしてくれてもいいのに、ていうか先生こそ起こして。
何となく頭も重いし、本当に顔を洗わせてもらおうかと立ち上がりかけた利央は一瞬真顔になってから深く座りなおした。
「い、いえ。すみませんでした。授業、続けてください」
「そうか?」
先生はニヤリと頷くと話の続きをし出した。利央は顔が熱くなるのがわかる。
俺……今絶対に席、立てない。
口を少しひきつらせる。夢はどこからが夢なのかすら定かではないが、最後辺りを何となく覚えている。そしてあの状況のどこに、今利央が立ち上がれない理由となるものがあったのかと自分に呆れる。そもそも相手は兄だというのに。
あれだろうか。寝ていたし、意味のない朝勃ちみたいなものなのだろうか。もしくは本当に欲求不満なのかもしれない。情けなく思った。
とりあえず授業に集中し、何とか授業が終える頃には完全に熱も治まっていた。
最近は暑さもあってそんな気になれなかったしなと思いながらも、今日あたりちょっと抜いておくかと利央はため息つく。
「黒宮くんが何か考えごとしてため息ついてる。超カッコいい」
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