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28.キス
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「兄貴とは違う意味で」
利央が言った言葉が律は引っかかっている。
違う意味? て、何。
律は利央が大好きだ。
かわいくて堪らない俺の大事な弟。それと違う意味で「好き」? って、何。
最近の利央が少し変なのもそれに関係しているのだろうかと律は首を傾げた。ただ気にかかりながらも性格だろうか、考えていても夜布団に入ると気づけば朝になっている。目は覚めやすいのだが、最近急に寒くなってきたせいで中々布団から出られない。
数日前まではさほど寒くもなかったのに。
律はため息ついた。寒いのが苦手だ。
この中ぬくいもんなー出たくないなー。だって布団から出てる顔が「冷たいよ」て教えてくれてるもんなー出たくないなー……。
だらだらと考えつつ、顔まで布団の中に潜り丸まった。仕事が休みだったらこのまま潜ってもうひと眠りするか、もしくは何だったら抜いてもいいなあとまたまどろみながら適当なことを考えていると「兄貴」と声が聞こえた。
「何布団に包まって……」
物凄く呆れたような声が頭上でする。弟に呆れられている……そう思い「今起きようと」と言いかけると布団の上に重みを感じた。潜っているから見えていないが、感じからして明らかに利央が布団を通して自分を背後から抱きしめているのがわかる。律は自分の顔が熱くなるのもわかった。
……俺、子ども扱いされてる、とか? それと、も……?
「おはよう、兄貴」
低いがとても静かで柔らかい声が聞こえ、ゆっくりと布団をずらして律の頭を外へ出してきた。そして律の髪を優しく手で梳いてくる。
最近利央はこうして律の頭を撫でるというより髪を梳いてくるのだが、少し違和感を覚えつつも髪を弄られるのが気持ちよく、ついそのまま好きなだけ弄られている気がする。
「寒いのわかるけど、起きなきゃ遅刻するぞ」
少し髪を弄ってきた後に優しく言われてから、後頭部に利央の顔が近づいたのがわかった。
……あれ? 今俺の頭にキスしてきた?
その時感じた感触に律は怪訝な顔になる。
……いやでも、まさか。
そっと微妙な笑みを浮かべていると、布団の上の重みがなくなった。
「もうすぐ飯、できるから。ほら、兄貴、早く」
「ああ、うん」
部屋を出て行った利央の後をぼんやりと見ながら、律はようやく布団から出た。
やっぱり少し変な気がする。しかし利央が小さな頃も中々布団から出てこなかった律を、布団の上に乗って起こしてくれていたっけ、と首を傾げる。
じゃあ、同じ?
だが利央は小さな利央ではない。高校生で大人っぽく、たまに自分よりも利央の方が兄みたいじゃないかと思うくらいしっかりしている。そんな利央が小さな子どもみたいにはしゃいで甘えてくれるものだろうか。
でも中学の時はそっけなかった利央は高校に入って随分柔らかくなったような気がしていたし、また昔のように甘えてくれるようになったのかもしれない。
「兄貴とは違う意味で」
そしてこの言葉がまた浮かぶ。
利央は小さく微笑んでいた。数日前に言った言葉が律は引っかかっているようだとわかった上で、改めて自分のやり方で行こうと思っているからだ。別に楽しいわけではない。
律が少しでも利央を弟以上に意識してくれていたなら「違う意味で」好きだと言えばすぐに何を言っているかわかるだろう。いくらぽやぽやしているからと言って、元々は頭のいいしっかりした人だ。わからないのは利央を、当然と言えば当然だが、弟としてしか見ていないからだ。楽しいはずがない。
だが引っかかってくれているだけでも、今の利央にとってはまだ多少は嬉しいとも思える。
今朝も多分寒いからだろうが、中々起きてこない律をあえて起こしに行った。案の定律は布団の中で丸くなっているようだった。かわいくて吹き出しそうになったので「何布団に包まって……」と呟いて誤魔化した。
だがやはりかわいいと思うし抱きしめたいと思い、布団の上から抱きしめた。布団があるおかげで律の感触がソフトに伝わってくる。
布団なかったらちょっと辛かったかも。
とはいえやはり直に律に触れたくて「おはよう、兄貴」と囁きながら律の頭を布団から出した。フワリと律の香りがする。同じシャンプーや石鹸を使っているのに、それでも律の香りは律の香りだった。フワリとしている利央の髪質と違い、サラサラした律の髪のひと房を手にとり、そして手櫛で律の髪を梳いていく。
律はどう思っているのかわからないが、少なくとも嫌がる様子はないため、最近利央はよく律の髪に触れている。ずっとこうしていたいと思いつつ、お互い学校と仕事があるのでそうもいかない。
起きなきゃ遅刻するぞと言いながらもだが名残惜しくもあり、そっと律の後頭部に唇を寄せた。律の香りがますます鼻を擽ってくる。
このままもっと抱きしめたい、思いきり抱きしめてそしてもっとキスしたいという思いが利央の中から溢れそうになる。
別にいいんじゃないのか? 兄貴なら笑って受け止めてくれるんじゃないのか?
思わずそんな風に考えてしまいそうになるが、そんなわけないだろうと思える程度には理性は残っているようだ。
好きだという気持ちをわかってもらいたい。だが傷つけたいわけではない。
利央はそっとため息つきそうになるのも堪えてから渋々律を離した。起き上がり、律にも「早く」と促してから部屋を出た。
あんな状態でキスしようものなら理性が飛んでしまいかねない。律を守りたいがために大人になりたいと日々願ってはいるが、自分が色々と至らないだろうくらい利央はわかっている。
海なら布団に包まっている好きな相手にキスしようが理性を飛ばしてしまうことなどないのだろうか。そんな考えがふと過り、自分の考えに利央はムッとした。
関係ない。何であの人が出てくるんだ。
自分に呆れる。こんなところで対抗意識燃やしてどうするのか。
俺は俺のやり方で兄貴に気持ちを伝えてわかってもらい、そしてできたら答えてもらいたい。
そう思い、小さく微笑んだ。
食事中、一応律はいつもとあまり変わらないようだったが、たまにチラリと利央を怪訝な顔で見てきた。
かわいい兄貴。沢山、意識してそしてそれがいい意味で染み込めばいい。
朝は最近いつもしているようにただ律の頭をそっと撫でるだけにした。それに対してはもう慣れてしまっているのか、結局いつものようにニッコリ「行ってくるよ」と律は出かけて行った。
そして夜。夕飯の準備をしていたら律がいつものように帰ってきた。
「ただいま」
「おかえり」
利央はニッコリ笑いかけると律の唇にまた軽くキスした。
「え?」
同じくニッコリしていた律が固まっているのが分かり、噴き出しそうになるのを堪えつつ、そんな律を放置して利央は台所へ戻っていった。
利央が言った言葉が律は引っかかっている。
違う意味? て、何。
律は利央が大好きだ。
かわいくて堪らない俺の大事な弟。それと違う意味で「好き」? って、何。
最近の利央が少し変なのもそれに関係しているのだろうかと律は首を傾げた。ただ気にかかりながらも性格だろうか、考えていても夜布団に入ると気づけば朝になっている。目は覚めやすいのだが、最近急に寒くなってきたせいで中々布団から出られない。
数日前まではさほど寒くもなかったのに。
律はため息ついた。寒いのが苦手だ。
この中ぬくいもんなー出たくないなー。だって布団から出てる顔が「冷たいよ」て教えてくれてるもんなー出たくないなー……。
だらだらと考えつつ、顔まで布団の中に潜り丸まった。仕事が休みだったらこのまま潜ってもうひと眠りするか、もしくは何だったら抜いてもいいなあとまたまどろみながら適当なことを考えていると「兄貴」と声が聞こえた。
「何布団に包まって……」
物凄く呆れたような声が頭上でする。弟に呆れられている……そう思い「今起きようと」と言いかけると布団の上に重みを感じた。潜っているから見えていないが、感じからして明らかに利央が布団を通して自分を背後から抱きしめているのがわかる。律は自分の顔が熱くなるのもわかった。
……俺、子ども扱いされてる、とか? それと、も……?
「おはよう、兄貴」
低いがとても静かで柔らかい声が聞こえ、ゆっくりと布団をずらして律の頭を外へ出してきた。そして律の髪を優しく手で梳いてくる。
最近利央はこうして律の頭を撫でるというより髪を梳いてくるのだが、少し違和感を覚えつつも髪を弄られるのが気持ちよく、ついそのまま好きなだけ弄られている気がする。
「寒いのわかるけど、起きなきゃ遅刻するぞ」
少し髪を弄ってきた後に優しく言われてから、後頭部に利央の顔が近づいたのがわかった。
……あれ? 今俺の頭にキスしてきた?
その時感じた感触に律は怪訝な顔になる。
……いやでも、まさか。
そっと微妙な笑みを浮かべていると、布団の上の重みがなくなった。
「もうすぐ飯、できるから。ほら、兄貴、早く」
「ああ、うん」
部屋を出て行った利央の後をぼんやりと見ながら、律はようやく布団から出た。
やっぱり少し変な気がする。しかし利央が小さな頃も中々布団から出てこなかった律を、布団の上に乗って起こしてくれていたっけ、と首を傾げる。
じゃあ、同じ?
だが利央は小さな利央ではない。高校生で大人っぽく、たまに自分よりも利央の方が兄みたいじゃないかと思うくらいしっかりしている。そんな利央が小さな子どもみたいにはしゃいで甘えてくれるものだろうか。
でも中学の時はそっけなかった利央は高校に入って随分柔らかくなったような気がしていたし、また昔のように甘えてくれるようになったのかもしれない。
「兄貴とは違う意味で」
そしてこの言葉がまた浮かぶ。
利央は小さく微笑んでいた。数日前に言った言葉が律は引っかかっているようだとわかった上で、改めて自分のやり方で行こうと思っているからだ。別に楽しいわけではない。
律が少しでも利央を弟以上に意識してくれていたなら「違う意味で」好きだと言えばすぐに何を言っているかわかるだろう。いくらぽやぽやしているからと言って、元々は頭のいいしっかりした人だ。わからないのは利央を、当然と言えば当然だが、弟としてしか見ていないからだ。楽しいはずがない。
だが引っかかってくれているだけでも、今の利央にとってはまだ多少は嬉しいとも思える。
今朝も多分寒いからだろうが、中々起きてこない律をあえて起こしに行った。案の定律は布団の中で丸くなっているようだった。かわいくて吹き出しそうになったので「何布団に包まって……」と呟いて誤魔化した。
だがやはりかわいいと思うし抱きしめたいと思い、布団の上から抱きしめた。布団があるおかげで律の感触がソフトに伝わってくる。
布団なかったらちょっと辛かったかも。
とはいえやはり直に律に触れたくて「おはよう、兄貴」と囁きながら律の頭を布団から出した。フワリと律の香りがする。同じシャンプーや石鹸を使っているのに、それでも律の香りは律の香りだった。フワリとしている利央の髪質と違い、サラサラした律の髪のひと房を手にとり、そして手櫛で律の髪を梳いていく。
律はどう思っているのかわからないが、少なくとも嫌がる様子はないため、最近利央はよく律の髪に触れている。ずっとこうしていたいと思いつつ、お互い学校と仕事があるのでそうもいかない。
起きなきゃ遅刻するぞと言いながらもだが名残惜しくもあり、そっと律の後頭部に唇を寄せた。律の香りがますます鼻を擽ってくる。
このままもっと抱きしめたい、思いきり抱きしめてそしてもっとキスしたいという思いが利央の中から溢れそうになる。
別にいいんじゃないのか? 兄貴なら笑って受け止めてくれるんじゃないのか?
思わずそんな風に考えてしまいそうになるが、そんなわけないだろうと思える程度には理性は残っているようだ。
好きだという気持ちをわかってもらいたい。だが傷つけたいわけではない。
利央はそっとため息つきそうになるのも堪えてから渋々律を離した。起き上がり、律にも「早く」と促してから部屋を出た。
あんな状態でキスしようものなら理性が飛んでしまいかねない。律を守りたいがために大人になりたいと日々願ってはいるが、自分が色々と至らないだろうくらい利央はわかっている。
海なら布団に包まっている好きな相手にキスしようが理性を飛ばしてしまうことなどないのだろうか。そんな考えがふと過り、自分の考えに利央はムッとした。
関係ない。何であの人が出てくるんだ。
自分に呆れる。こんなところで対抗意識燃やしてどうするのか。
俺は俺のやり方で兄貴に気持ちを伝えてわかってもらい、そしてできたら答えてもらいたい。
そう思い、小さく微笑んだ。
食事中、一応律はいつもとあまり変わらないようだったが、たまにチラリと利央を怪訝な顔で見てきた。
かわいい兄貴。沢山、意識してそしてそれがいい意味で染み込めばいい。
朝は最近いつもしているようにただ律の頭をそっと撫でるだけにした。それに対してはもう慣れてしまっているのか、結局いつものようにニッコリ「行ってくるよ」と律は出かけて行った。
そして夜。夕飯の準備をしていたら律がいつものように帰ってきた。
「ただいま」
「おかえり」
利央はニッコリ笑いかけると律の唇にまた軽くキスした。
「え?」
同じくニッコリしていた律が固まっているのが分かり、噴き出しそうになるのを堪えつつ、そんな律を放置して利央は台所へ戻っていった。
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