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207話
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ファインが好きだと、打ち明けられた。
アルスは肩の荷が下りたかのようにホッとした。ボルフォルドに会う前からひたすら悶々と考えていただけに、気持ちを口にして照れたり緊張したりするより使命を果たしたかのような、脱力にも近い安堵感がまず押し寄せてきた。
多分、もうずっと前から自分もファインのことが好きだったのだろうと、気づいた後でアルスも思った。とはいえ、気づけたのは情けないことに自分の力ではない。あの時、リブス病かもしれないとファインが連れて来てくれたカースがきっかけだろう。
「やあ、リブス病かもしれないアルスくん」
「……何で呼び捨てじゃないの? あと、もし本当にリブス病の可能性あるなら……」
深刻な表情どころか、ニヤニヤおかしそうな顔しながら、いつもと同じように無表情なフォルアと一緒に部屋へ入ってきたカースを、アルスは困惑しながら見た。ファインに言われた通りベッドで横になってはいたが、とりあえず体を起こす。
「ははは。からかってるの気づいてくれないと意味ないんだよなあ」
「え?」
「まあ、いいよ。とにかくさあ、そんなわけないってアルスもわかってるでしょ?」
「え? あー……うん、さすがにリブス病はないかなって思った、けど……でも俺、ほんとに具合悪いのかもだし、でも俺は苦手な雷属性関連以外であまり体の調子悪くなることないから、何とも……。あとファインが言うならもしかしたら可能性、ゼロってこともないのかなって」
「ファインに絶対的な信頼置いてるよねえ、アルス」
ニコニコしながら、カースはベッドの縁へ腰かけてきた。フォルアはベッドへ構わず入ってきて横たわる。アルスは慌ててフォルアを見た。
「フォルア、まだ俺の状態わからないし、あまりくっつかないほうが……」
「大丈夫だよ、アルス。そもそも君が言う通り、体の具合悪くなることなんて本当になさそうだし君は。でもまあ、一応絶対違うよって言い切れるよう、診ておくね」
カースはアルスに手をかざしてきた。ほんのり温かい気が、カースの手からアルスの体へ伝わってくる。アルスは目を閉じた。
「何でそういう話になったのかはファインから聞いたけど……」
かざしたまま、カースが話しかけてくる。目を閉じたまま、アルスは「うん?」と頷いた。
「本当に落ち着かない理由とか鼓動早くなる理由とか、わからない?」
「……あー。落ち着かないのは、多分ファインに抱きしめられてて鼓動、早くなっちゃうからかなって思ったけど」
「でも鼓動早くなる理由がわからないってわけか」
「うん」
「本当に?」
カースがかざしたままなおかげか、今や手の指先まで温まった気がする。カルフォン王国周辺の土地は風属性のため元々体調もいいほうだったが、今はなおさらエネルギーに満ちたように感じられた。要はアルスにも、具合など到底悪いとは思えないということだ。
「……具合、悪いとは思えないかなってのは今ものすごく実感してるけど……」
ということは、改めて本当になぜ、落ち着かないと思ったのだろうと怪訝に思う。ファインにも言われたが、昔から抱きしめたり抱きしめられたりなど珍しいことでもなかった。今さら一体どうしたというのか。
「今回、急にかな?」
「そうだ、……よ、って思ってたけど、ああ、どうだろう。たまに何だかいつもの自分じゃないようなってそわそわ思ったこと、あった、か、も?」
「だろうね」
ようやくかざしていた手を下ろしながらわけ知り顔で頷くカースに、目を開けたアルスはかぶりつきそうな勢いで詰め寄った。
「え? 何か知ってるのか? 俺、やっぱり何か悪いとこある、とか? 原因、わかるの?」
「はは。落ち着いて、アルス。いくら普段体動かすこと以外にあまり頭使わなくても、君ならちゃんと考えられるはずだよ」
「今さりげにけなされたのはわかるよ」
「愛情表現だよ」
「……。……カースはわかる、こと、なんだよな?」
「フォルアもわかってるよ」
「え?」
アルスはまだ自分に少々くっつくようにして横たわっているフォルアをちらりと見た。本人は名前が出たにも関わらず、心地よさそうに目を閉じている。
「……見ていて気づくってこと、だよなあ。……うーん。……あ、もしかして俺、ファインが絡むことに関してもやもやしたり落ち着かなくなってる、と、か?」
正直今まで特に意識していなかった。とりあえずカースとフォルアは気づいていて、いつもなら気づきのいいファインは気づいていない上で、アルスもわかっていないとなると、具合悪いから以外ではこじつけかもしれないが、そんな風に思えてくる。
そういえば、ファインとカースがやたら仲いいなって思った時ももやもやしたっけ。俺のほうが昔からかけがえない家族のような存在だから仲いいのにって、性格悪い風に思ったせいだとその時は考えたけど……。
「よくできました」
ますますニコニコするカースに、アルスは首を傾げた。
「でも、そうなると辻褄合わないんだよ」
「どういう風に?」
「だって……その、ファインとカースがやたら仲いいなって思ったことあって……」
「気まずそうにしなくていいよ。それで?」
「うん、ありがとう。で、俺のほうが昔から家族みたいに仲いいのにな、ってもやもやしたんだ。でも今回はさ、その家族みたいに仲いいファインに抱きしめられて落ち着かなかった。おかしくないか? むしろホッと落ち着くとこだろ、それなら」
また首傾げながら言えば、カースが呆れたように見てきた。
「何、その顔」
「アルスに考えてもらって答えまで導こうという俺の考えは珍しく間違ってたかなあってね」
「あれ? また馬鹿にしてる?」
「まあ、してるね」
「……正直だね」
「はは。ちょっと他人に置き換えて考えてみよう」
他人?
ふと気づけば具合悪いという話からどんどん離れているような気がして、アルスはますます首を傾げた。
アルスは肩の荷が下りたかのようにホッとした。ボルフォルドに会う前からひたすら悶々と考えていただけに、気持ちを口にして照れたり緊張したりするより使命を果たしたかのような、脱力にも近い安堵感がまず押し寄せてきた。
多分、もうずっと前から自分もファインのことが好きだったのだろうと、気づいた後でアルスも思った。とはいえ、気づけたのは情けないことに自分の力ではない。あの時、リブス病かもしれないとファインが連れて来てくれたカースがきっかけだろう。
「やあ、リブス病かもしれないアルスくん」
「……何で呼び捨てじゃないの? あと、もし本当にリブス病の可能性あるなら……」
深刻な表情どころか、ニヤニヤおかしそうな顔しながら、いつもと同じように無表情なフォルアと一緒に部屋へ入ってきたカースを、アルスは困惑しながら見た。ファインに言われた通りベッドで横になってはいたが、とりあえず体を起こす。
「ははは。からかってるの気づいてくれないと意味ないんだよなあ」
「え?」
「まあ、いいよ。とにかくさあ、そんなわけないってアルスもわかってるでしょ?」
「え? あー……うん、さすがにリブス病はないかなって思った、けど……でも俺、ほんとに具合悪いのかもだし、でも俺は苦手な雷属性関連以外であまり体の調子悪くなることないから、何とも……。あとファインが言うならもしかしたら可能性、ゼロってこともないのかなって」
「ファインに絶対的な信頼置いてるよねえ、アルス」
ニコニコしながら、カースはベッドの縁へ腰かけてきた。フォルアはベッドへ構わず入ってきて横たわる。アルスは慌ててフォルアを見た。
「フォルア、まだ俺の状態わからないし、あまりくっつかないほうが……」
「大丈夫だよ、アルス。そもそも君が言う通り、体の具合悪くなることなんて本当になさそうだし君は。でもまあ、一応絶対違うよって言い切れるよう、診ておくね」
カースはアルスに手をかざしてきた。ほんのり温かい気が、カースの手からアルスの体へ伝わってくる。アルスは目を閉じた。
「何でそういう話になったのかはファインから聞いたけど……」
かざしたまま、カースが話しかけてくる。目を閉じたまま、アルスは「うん?」と頷いた。
「本当に落ち着かない理由とか鼓動早くなる理由とか、わからない?」
「……あー。落ち着かないのは、多分ファインに抱きしめられてて鼓動、早くなっちゃうからかなって思ったけど」
「でも鼓動早くなる理由がわからないってわけか」
「うん」
「本当に?」
カースがかざしたままなおかげか、今や手の指先まで温まった気がする。カルフォン王国周辺の土地は風属性のため元々体調もいいほうだったが、今はなおさらエネルギーに満ちたように感じられた。要はアルスにも、具合など到底悪いとは思えないということだ。
「……具合、悪いとは思えないかなってのは今ものすごく実感してるけど……」
ということは、改めて本当になぜ、落ち着かないと思ったのだろうと怪訝に思う。ファインにも言われたが、昔から抱きしめたり抱きしめられたりなど珍しいことでもなかった。今さら一体どうしたというのか。
「今回、急にかな?」
「そうだ、……よ、って思ってたけど、ああ、どうだろう。たまに何だかいつもの自分じゃないようなってそわそわ思ったこと、あった、か、も?」
「だろうね」
ようやくかざしていた手を下ろしながらわけ知り顔で頷くカースに、目を開けたアルスはかぶりつきそうな勢いで詰め寄った。
「え? 何か知ってるのか? 俺、やっぱり何か悪いとこある、とか? 原因、わかるの?」
「はは。落ち着いて、アルス。いくら普段体動かすこと以外にあまり頭使わなくても、君ならちゃんと考えられるはずだよ」
「今さりげにけなされたのはわかるよ」
「愛情表現だよ」
「……。……カースはわかる、こと、なんだよな?」
「フォルアもわかってるよ」
「え?」
アルスはまだ自分に少々くっつくようにして横たわっているフォルアをちらりと見た。本人は名前が出たにも関わらず、心地よさそうに目を閉じている。
「……見ていて気づくってこと、だよなあ。……うーん。……あ、もしかして俺、ファインが絡むことに関してもやもやしたり落ち着かなくなってる、と、か?」
正直今まで特に意識していなかった。とりあえずカースとフォルアは気づいていて、いつもなら気づきのいいファインは気づいていない上で、アルスもわかっていないとなると、具合悪いから以外ではこじつけかもしれないが、そんな風に思えてくる。
そういえば、ファインとカースがやたら仲いいなって思った時ももやもやしたっけ。俺のほうが昔からかけがえない家族のような存在だから仲いいのにって、性格悪い風に思ったせいだとその時は考えたけど……。
「よくできました」
ますますニコニコするカースに、アルスは首を傾げた。
「でも、そうなると辻褄合わないんだよ」
「どういう風に?」
「だって……その、ファインとカースがやたら仲いいなって思ったことあって……」
「気まずそうにしなくていいよ。それで?」
「うん、ありがとう。で、俺のほうが昔から家族みたいに仲いいのにな、ってもやもやしたんだ。でも今回はさ、その家族みたいに仲いいファインに抱きしめられて落ち着かなかった。おかしくないか? むしろホッと落ち着くとこだろ、それなら」
また首傾げながら言えば、カースが呆れたように見てきた。
「何、その顔」
「アルスに考えてもらって答えまで導こうという俺の考えは珍しく間違ってたかなあってね」
「あれ? また馬鹿にしてる?」
「まあ、してるね」
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