43 / 44
44 ※
しおりを挟む
気持ちを認めても、というか認めたからこそなおさら苦しいといった様子の克海は、智空に打ち明けることでおそらくずいぶん気持ちは軽くなったのではと陸史は思っていた。
だからといって「じゃあつき合おう」とニコニコ言ってくれるはずもなく、我ながら改めてどうしようもなくクソ真面目な男前を好きになってしまったなと苦笑する。
また酒でも飲ませて、などと邪なことも考えたが、実行する前に克海から「お前と二人で酒は飲まないからな」と釘を刺されてしまった。
「ええー。じゃあハロウィンの時も?」
「その時は別に二人きりじゃないだろ。智空だけじゃなくて夜は父さん、母さんもいるし。あと鈴原が兄さんのパンプキンパイがどうしても食べたいんだってさ。だから家に来るし」
馬鹿め、飲んだら終わりだよ克海。その夜更けにめちゃくちゃ楽しいことしてやる。
そう小狡いことを考えた後でハッとなった。
「って、愉快な仲間、来んの? えぇー……」
「何だよ。兄さんも友だち呼べばいいだろ。何人もいるじゃないか」
「やだよ。第一そんな何人も入んないって。どんだけ家、豪邸なんだよ。庶民の家だろ」
「じゃあ木下さんだけでもさ」
「何で木下名指しなの? まさか好きなの? 許さないけど?」
「はぁっ? そんなわけないだろ……何で名前出しただけでそーなんの。第一木下さん男」
「俺も男ですけど」
陸史がそう言い返すと、怪訝な顔した後で克海が顔を赤らめ逸らしてきた。自分が陸史のことを好きだとはっきり口にしたことを思い出したのだろう。
「かわいい」
「はぁ……お前ほんとやだ」
「俺は好きだよ、克海」
「煩い」
「克海も俺が好きでしょ。もう聞いたし」
「なら兄弟でってのが許されないし、ずっと後ろめたく思うって俺が言ったことも聞いたよな」
「聞いたよ」
「じゃあわかるだろ。そういうことだ」
「……そうとは聞いたけど、だからつき合わない、とは聞いてないしね」
「何か言った?」
ぼそりと言い返した言葉が聞こえなかったようで、克海が聞き返してくる。陸史はニッコリ笑った。
「別に?」
クソ真面目で男前は面倒だと思う。だが逆手に取れば、これほど扱いやすい相手もないとも思う。
キスした時も我に返ると殴ってきた克海だが、だからといってそれが原因で嫌いになるとかはなかった。ファーストキスはすでに陸史が前に頂いているものの、意識のある克海にとっては三度目とは思わずとも、二度目のキスだ。しかも一度目の本人がすでに酔っていたキスとは違い、素面だ。ちなみに酔っていた時も翌朝殴ってきただけで終わった。とてつもなく落ち込むということもない。気持ち悪がるといったこともない。
だったら既成事実だよね。
陸史は改めてニッコリ一人微笑んだ。
克海が全く陸史を受け入れることもできず、兄弟という関係以外を完全に拒否してくるのなら、陸史もひょっとしたらただの兄でいようと思った。かもしれない。だがほんの少しでも隙があるのなら逃さないし、こうして克海も陸史のことをそういう意味で好きになってくれた。自ら口にして認めてきた。なら今度は完全に受け入れてもらうまでだ。それには今までと違い、様子を見るだのゆっくり諭していくだのするより実力行使だ。克海なら折れないできっと受け入れてくれる、というかこうなったら受け入れるしかない、と思い込んでくれるだろう。
……俺、もしかしたら事後、また入院する羽目になるかもだけど。
そんなこと思いつつ後日、陸史は克海をカラオケへ誘った。
「カラオケだけじゃなくてな、人工だけど温泉もついてんだよ」
「そんなのあんの?」
「うん。ホテルなんだけど最近だとよく女子会にも使われるとこでさ。同性同士でもオッケーなとこだから、割と俺の友だちも終電逃した時とか友だち同士で泊まってるらしい。綺麗だし部屋についてる温泉広いしカラオケし放題なのに安いから便利なんだよ」
「へえ」
あまりに使いふるされたベタな誘い方だし、同性同士でも問題ないという説明で違和感を覚えるかとも思ったが、克海は気にも留めなかったようだ。もしかして陸史に対して、二人きりの酒に気をつければいいくらいしか考えてないのか。
俺の育て方の賜物だけど、もうちょっと危機感持ってね克海。
陸史は笑いそうになりながらも改めて今後も牽制のため、大いにブラコン兄として学校でも幅を利かせようと心に誓った。
「おま……っ、騙したのかっ?」
「騙してないよ。カラオケしたし、実際広い温泉、部屋についてたのも入ったでしょ」
「じゃあそれで終われよ……!」
「無理でしょそんなの」
いざベッドへ押し倒すとかなり抵抗してきた克海だが、途中からは受け入れたというより諦めたのか抵抗しなくなった。
「受け入れてくれんの?」
「馬鹿野郎……! お前がまたヤバイ怪我したらって思ったら変に動けないんだよ! ああもう……後で覚えてろよ。絶対キスの時の五倍は殴るからな」
「じゃあ俺はキスの時の百倍、お前気持ちよくしてあげる」
「クソ馬鹿陸史」
とりあえず先にイかせた。その間ずっと涙目で怒っている克海が堪らなくかわいかった。
泊まるつもりで予約はしていたので、これでもかというほど時間はあった。その後「もう勘弁してくれ……」と克海に力なく言われるくらい、後ろを解した。
「こんなに柔らかくなるんだね。あとローションのせいですごく濡れてるのエロいな、克海」
「お前ほんっともう……最悪。馬鹿。ろくでなし。クソ兄キ。最低」
「ぼろくそだなあ。でも好きなんだろ、俺のこと」
「煩い」
「嫌いになんかなれないでしょ? 俺、知ってるもんね」
「だからってほんっと最悪だな! も、これ以上後ろ広げてくんな馬鹿」
「何で。痛いより気持ちいいほうがいいだろ? ここら辺触ったら、お前ビクビクしてくる」
それに一度達したはずのペニスも硬く反ったまま、先がとろとろ濡れている。陸史は後ろから優しく克海にキスをした。
「っ、ぁ、も……。っ無理! いい! もういい! いいから入れたらいいだろ! これ以上無理。お前な! これどんだけ恥ずかしいと思ってんだよ!」
「馬鹿だな、克海」
ほんとかわいい。
陸史はニッコリ微笑みながら、正直怒張し過ぎて痛くて堪らない自分のものを出し、コンドームをつけた。
「指で恥ずかしいって。じゃあ今からきっともっと恥ずかしいよ」
「え……、ぁ、あ、あっ」
克海の中はとても温かく、ギュッと陸史を締めつけてきた。最高に気持ちよく、だけれども極力克海に痛みを与えないよう、ゆっくりゆっくり動いた。
「好きだよ克海。愛してる。これからもずっと」
「……馬鹿、やろ……」
ずっと枕に顔を埋めていた克海の籠った声は聞き取りづらかったが、馬鹿と言った後に小さく「俺もだ」と聞こえた気がしたのは陸史の妄想だろうか。
行為の後、殴る余裕がないようで克海は「足と尻が死んだ……」などと呟いたあと「明日……明日、覚えとけよ」と陸史を睨みつけてきた。そして気を失うように眠ってしまった。それすらも愛しくて堪らなかった。
だからといって「じゃあつき合おう」とニコニコ言ってくれるはずもなく、我ながら改めてどうしようもなくクソ真面目な男前を好きになってしまったなと苦笑する。
また酒でも飲ませて、などと邪なことも考えたが、実行する前に克海から「お前と二人で酒は飲まないからな」と釘を刺されてしまった。
「ええー。じゃあハロウィンの時も?」
「その時は別に二人きりじゃないだろ。智空だけじゃなくて夜は父さん、母さんもいるし。あと鈴原が兄さんのパンプキンパイがどうしても食べたいんだってさ。だから家に来るし」
馬鹿め、飲んだら終わりだよ克海。その夜更けにめちゃくちゃ楽しいことしてやる。
そう小狡いことを考えた後でハッとなった。
「って、愉快な仲間、来んの? えぇー……」
「何だよ。兄さんも友だち呼べばいいだろ。何人もいるじゃないか」
「やだよ。第一そんな何人も入んないって。どんだけ家、豪邸なんだよ。庶民の家だろ」
「じゃあ木下さんだけでもさ」
「何で木下名指しなの? まさか好きなの? 許さないけど?」
「はぁっ? そんなわけないだろ……何で名前出しただけでそーなんの。第一木下さん男」
「俺も男ですけど」
陸史がそう言い返すと、怪訝な顔した後で克海が顔を赤らめ逸らしてきた。自分が陸史のことを好きだとはっきり口にしたことを思い出したのだろう。
「かわいい」
「はぁ……お前ほんとやだ」
「俺は好きだよ、克海」
「煩い」
「克海も俺が好きでしょ。もう聞いたし」
「なら兄弟でってのが許されないし、ずっと後ろめたく思うって俺が言ったことも聞いたよな」
「聞いたよ」
「じゃあわかるだろ。そういうことだ」
「……そうとは聞いたけど、だからつき合わない、とは聞いてないしね」
「何か言った?」
ぼそりと言い返した言葉が聞こえなかったようで、克海が聞き返してくる。陸史はニッコリ笑った。
「別に?」
クソ真面目で男前は面倒だと思う。だが逆手に取れば、これほど扱いやすい相手もないとも思う。
キスした時も我に返ると殴ってきた克海だが、だからといってそれが原因で嫌いになるとかはなかった。ファーストキスはすでに陸史が前に頂いているものの、意識のある克海にとっては三度目とは思わずとも、二度目のキスだ。しかも一度目の本人がすでに酔っていたキスとは違い、素面だ。ちなみに酔っていた時も翌朝殴ってきただけで終わった。とてつもなく落ち込むということもない。気持ち悪がるといったこともない。
だったら既成事実だよね。
陸史は改めてニッコリ一人微笑んだ。
克海が全く陸史を受け入れることもできず、兄弟という関係以外を完全に拒否してくるのなら、陸史もひょっとしたらただの兄でいようと思った。かもしれない。だがほんの少しでも隙があるのなら逃さないし、こうして克海も陸史のことをそういう意味で好きになってくれた。自ら口にして認めてきた。なら今度は完全に受け入れてもらうまでだ。それには今までと違い、様子を見るだのゆっくり諭していくだのするより実力行使だ。克海なら折れないできっと受け入れてくれる、というかこうなったら受け入れるしかない、と思い込んでくれるだろう。
……俺、もしかしたら事後、また入院する羽目になるかもだけど。
そんなこと思いつつ後日、陸史は克海をカラオケへ誘った。
「カラオケだけじゃなくてな、人工だけど温泉もついてんだよ」
「そんなのあんの?」
「うん。ホテルなんだけど最近だとよく女子会にも使われるとこでさ。同性同士でもオッケーなとこだから、割と俺の友だちも終電逃した時とか友だち同士で泊まってるらしい。綺麗だし部屋についてる温泉広いしカラオケし放題なのに安いから便利なんだよ」
「へえ」
あまりに使いふるされたベタな誘い方だし、同性同士でも問題ないという説明で違和感を覚えるかとも思ったが、克海は気にも留めなかったようだ。もしかして陸史に対して、二人きりの酒に気をつければいいくらいしか考えてないのか。
俺の育て方の賜物だけど、もうちょっと危機感持ってね克海。
陸史は笑いそうになりながらも改めて今後も牽制のため、大いにブラコン兄として学校でも幅を利かせようと心に誓った。
「おま……っ、騙したのかっ?」
「騙してないよ。カラオケしたし、実際広い温泉、部屋についてたのも入ったでしょ」
「じゃあそれで終われよ……!」
「無理でしょそんなの」
いざベッドへ押し倒すとかなり抵抗してきた克海だが、途中からは受け入れたというより諦めたのか抵抗しなくなった。
「受け入れてくれんの?」
「馬鹿野郎……! お前がまたヤバイ怪我したらって思ったら変に動けないんだよ! ああもう……後で覚えてろよ。絶対キスの時の五倍は殴るからな」
「じゃあ俺はキスの時の百倍、お前気持ちよくしてあげる」
「クソ馬鹿陸史」
とりあえず先にイかせた。その間ずっと涙目で怒っている克海が堪らなくかわいかった。
泊まるつもりで予約はしていたので、これでもかというほど時間はあった。その後「もう勘弁してくれ……」と克海に力なく言われるくらい、後ろを解した。
「こんなに柔らかくなるんだね。あとローションのせいですごく濡れてるのエロいな、克海」
「お前ほんっともう……最悪。馬鹿。ろくでなし。クソ兄キ。最低」
「ぼろくそだなあ。でも好きなんだろ、俺のこと」
「煩い」
「嫌いになんかなれないでしょ? 俺、知ってるもんね」
「だからってほんっと最悪だな! も、これ以上後ろ広げてくんな馬鹿」
「何で。痛いより気持ちいいほうがいいだろ? ここら辺触ったら、お前ビクビクしてくる」
それに一度達したはずのペニスも硬く反ったまま、先がとろとろ濡れている。陸史は後ろから優しく克海にキスをした。
「っ、ぁ、も……。っ無理! いい! もういい! いいから入れたらいいだろ! これ以上無理。お前な! これどんだけ恥ずかしいと思ってんだよ!」
「馬鹿だな、克海」
ほんとかわいい。
陸史はニッコリ微笑みながら、正直怒張し過ぎて痛くて堪らない自分のものを出し、コンドームをつけた。
「指で恥ずかしいって。じゃあ今からきっともっと恥ずかしいよ」
「え……、ぁ、あ、あっ」
克海の中はとても温かく、ギュッと陸史を締めつけてきた。最高に気持ちよく、だけれども極力克海に痛みを与えないよう、ゆっくりゆっくり動いた。
「好きだよ克海。愛してる。これからもずっと」
「……馬鹿、やろ……」
ずっと枕に顔を埋めていた克海の籠った声は聞き取りづらかったが、馬鹿と言った後に小さく「俺もだ」と聞こえた気がしたのは陸史の妄想だろうか。
行為の後、殴る余裕がないようで克海は「足と尻が死んだ……」などと呟いたあと「明日……明日、覚えとけよ」と陸史を睨みつけてきた。そして気を失うように眠ってしまった。それすらも愛しくて堪らなかった。
10
あなたにおすすめの小説
完結|好きから一番遠いはずだった
七角@書籍化進行中!
BL
大学生の石田陽は、石ころみたいな自分に自信がない。酒の力を借りて恋愛のきっかけをつかもうと意気込む。
しかしサークル歴代最高イケメン・星川叶斗が邪魔してくる。恋愛なんて簡単そうなこの後輩、ずるいし、好きじゃない。
なのにあれこれ世話を焼かれる。いや利用されてるだけだ。恋愛相手として最も遠い後輩に、勘違いしない。
…はずだった。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる