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6話
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佐紅の機嫌がここ数日、悪い。首を少し傾けながら、真尋は思った。もしかしたら、ピアスを開けたことを怒っているのだろうか。
消毒してくれたし、差し出したピアスを、耳の穴を開けてはくれなかったが貰ってくれた。だから気にしていなかったのだが、考えられる原因としてはピアスくらいしか思い浮かばない。
真尋はいつも通りベランダから佐紅の部屋へ入った。佐紅はベッドの上で本を読んでいた。
「さく、怒ってる? 俺がピアス開けたから」
おずおずと話しかけると、真尋に気づいた佐紅はため息を吐きながら横たえていた体を起こそうとしてきた。
「もう怒ってねぇよ」
「嘘だ」
そんな佐紅を留めるかのように近づき、さらに佐紅の顔をじっと見た。佐紅は見つめ返してくる。
「まひろ、わかったから顔を近づけんな。だいたい俺がお前に嘘吐いたことあるか? ……ピアスはいい」
またため息を吐き、佐紅は真尋の左耳にそっと触れてきた。
「ただ、まひろが自分の体を勝手に傷つけたのに腹が立っただけだ」
「……わかった。もうしない」
静かに答えながらも、真尋は気持ちが向上するのが分かった。何故だろうか、まるで「まひろは俺のもの」だと言われたような気がして心臓が高鳴る。
目の前にある佐紅の顔をじっと見た。もの凄くキスがしたいと思った。恐る恐るではあるが、顔を更に近づけると、自分の唇を佐紅の唇に触れさせる。
思ったからするというのは止めろと度々佐紅に言われていたような気がするが、どうしてもしたいと思った時にはもうしてしまう。真尋にとって初めてのキスだった。柔らかい、当たり前だが自分のものではない唇の感触がとても気持ちがいいと思った。
佐紅はそんな真尋を戸惑うように見つめ返してきた。嫌悪する訳でもなく、かといって歓迎する訳でもない。反応がよくわからない。もう一度キスをしようとしたら、だが避けられた。少し残念に思いつつも真尋は代わりにぎゅっと佐紅を抱きしめた。今度は避けられなかった。
翌日の昼休み、弁当を佐紅と一緒に屋上で食べようと真尋が立ち上がったところで雄大が「たまには一緒に食おうぜ」と声をかけてきた。別に断る理由はない為三人で屋上へ向かう。だが途中、佐紅はすれ違った担任の先生に用事を頼まれた。
「すぐ済むし、お前ら先に行ってろ」
真尋が佐紅について行こうとしたら首を振られた。少ししゅんとしたが雄大に「じゃあ行こーぜ」と腕を取られる。そのまま屋上まで向かうと結局二人で弁当を広げた。
「そいやさあ、瀬名。お前って好きなヤツとかいねぇの?」
食べている途中でふと雄大が聞いてきた。
「興味ない」
「マジで? それは健全な男子高生として問題あるだろ!」
「……健全?」
「ほら、アレとかさぁ」
「アレ?」
先ほどから雄大がなにを言っているのかわからない。佐紅相手ならなにも声に出さなくても表情で汲み取ってくれるが、雄大に対しては無理だとわかっているので真尋なりに頑張って疑問を声にした。
そもそも佐紅なら真尋のわからないことは基本言ってこない。ちゃんとわかるように言ってくれる。すると雄大が苦笑してきた。
「……悪い。お前にこういう話すんの間違いだったな」
こういう話。
健全。アレ。こういう話。
はて、とばかりに首を傾げつつも、ふと真尋はいつも佐紅としている行為を思い出した。ああいったことだろうかと雄大を見る。
「ああ、自慰とか性こ――」
「ハッキリ言うなって!」
すると今度は赤い顔をして雄大が口を塞いできた。なにか駄目だったのだろうかと怪訝に思っていると雄大がようやく口を塞いできた手を離す。
「あのな、ここには数少ないとはいえ女子もちらっと居るんだからな」
屋上を使う者があまりいる訳ではないが、真尋たちだけという訳でもない。真尋はコクリと頷いた。
「わかった」
「……つかさ、もしかして、お前もう経験済みとか?」
雄大の言葉に真尋が首を傾げて見ると雄大もジッと見てくる。
「だってなんか余裕さを感じたぞ」
「……余裕?」
なにになにが余裕なのかよくわからなかったので繰り返すと「知ってそうっつーの?」と雄大が言い直してくる。
知ってそう。
少し考え、真尋は先ほどから雄大が言っているのであろう、自慰や性交のことだろうかと思い当たる。
さすがに性交に関しては人によるだろうけど、自慰くらい皆してるものじゃないのか?
「相良は一人でしないのか……」
「へ? ああ、んな訳ねーわ! さすがにするわ! しねーと無理だっつーの。つかなんだよまじその余裕っぷり。やっぱお前もう経験済み?」
羨ましそうに言われ、真尋は少々混乱する。だが少し考えて、二回も言われた「経験済み」というのは性交のことだろうかとようやく気付く。
「経験は無いけど、似たようなことはさくとしてるからいらない」
「あ、そうか。月島とな。…………え? えええっ?」
なるほどなとニコニコ頷いていた雄大が途中ポカンとしたかと思うと目を向きながら盛大に驚いてきた。
消毒してくれたし、差し出したピアスを、耳の穴を開けてはくれなかったが貰ってくれた。だから気にしていなかったのだが、考えられる原因としてはピアスくらいしか思い浮かばない。
真尋はいつも通りベランダから佐紅の部屋へ入った。佐紅はベッドの上で本を読んでいた。
「さく、怒ってる? 俺がピアス開けたから」
おずおずと話しかけると、真尋に気づいた佐紅はため息を吐きながら横たえていた体を起こそうとしてきた。
「もう怒ってねぇよ」
「嘘だ」
そんな佐紅を留めるかのように近づき、さらに佐紅の顔をじっと見た。佐紅は見つめ返してくる。
「まひろ、わかったから顔を近づけんな。だいたい俺がお前に嘘吐いたことあるか? ……ピアスはいい」
またため息を吐き、佐紅は真尋の左耳にそっと触れてきた。
「ただ、まひろが自分の体を勝手に傷つけたのに腹が立っただけだ」
「……わかった。もうしない」
静かに答えながらも、真尋は気持ちが向上するのが分かった。何故だろうか、まるで「まひろは俺のもの」だと言われたような気がして心臓が高鳴る。
目の前にある佐紅の顔をじっと見た。もの凄くキスがしたいと思った。恐る恐るではあるが、顔を更に近づけると、自分の唇を佐紅の唇に触れさせる。
思ったからするというのは止めろと度々佐紅に言われていたような気がするが、どうしてもしたいと思った時にはもうしてしまう。真尋にとって初めてのキスだった。柔らかい、当たり前だが自分のものではない唇の感触がとても気持ちがいいと思った。
佐紅はそんな真尋を戸惑うように見つめ返してきた。嫌悪する訳でもなく、かといって歓迎する訳でもない。反応がよくわからない。もう一度キスをしようとしたら、だが避けられた。少し残念に思いつつも真尋は代わりにぎゅっと佐紅を抱きしめた。今度は避けられなかった。
翌日の昼休み、弁当を佐紅と一緒に屋上で食べようと真尋が立ち上がったところで雄大が「たまには一緒に食おうぜ」と声をかけてきた。別に断る理由はない為三人で屋上へ向かう。だが途中、佐紅はすれ違った担任の先生に用事を頼まれた。
「すぐ済むし、お前ら先に行ってろ」
真尋が佐紅について行こうとしたら首を振られた。少ししゅんとしたが雄大に「じゃあ行こーぜ」と腕を取られる。そのまま屋上まで向かうと結局二人で弁当を広げた。
「そいやさあ、瀬名。お前って好きなヤツとかいねぇの?」
食べている途中でふと雄大が聞いてきた。
「興味ない」
「マジで? それは健全な男子高生として問題あるだろ!」
「……健全?」
「ほら、アレとかさぁ」
「アレ?」
先ほどから雄大がなにを言っているのかわからない。佐紅相手ならなにも声に出さなくても表情で汲み取ってくれるが、雄大に対しては無理だとわかっているので真尋なりに頑張って疑問を声にした。
そもそも佐紅なら真尋のわからないことは基本言ってこない。ちゃんとわかるように言ってくれる。すると雄大が苦笑してきた。
「……悪い。お前にこういう話すんの間違いだったな」
こういう話。
健全。アレ。こういう話。
はて、とばかりに首を傾げつつも、ふと真尋はいつも佐紅としている行為を思い出した。ああいったことだろうかと雄大を見る。
「ああ、自慰とか性こ――」
「ハッキリ言うなって!」
すると今度は赤い顔をして雄大が口を塞いできた。なにか駄目だったのだろうかと怪訝に思っていると雄大がようやく口を塞いできた手を離す。
「あのな、ここには数少ないとはいえ女子もちらっと居るんだからな」
屋上を使う者があまりいる訳ではないが、真尋たちだけという訳でもない。真尋はコクリと頷いた。
「わかった」
「……つかさ、もしかして、お前もう経験済みとか?」
雄大の言葉に真尋が首を傾げて見ると雄大もジッと見てくる。
「だってなんか余裕さを感じたぞ」
「……余裕?」
なにになにが余裕なのかよくわからなかったので繰り返すと「知ってそうっつーの?」と雄大が言い直してくる。
知ってそう。
少し考え、真尋は先ほどから雄大が言っているのであろう、自慰や性交のことだろうかと思い当たる。
さすがに性交に関しては人によるだろうけど、自慰くらい皆してるものじゃないのか?
「相良は一人でしないのか……」
「へ? ああ、んな訳ねーわ! さすがにするわ! しねーと無理だっつーの。つかなんだよまじその余裕っぷり。やっぱお前もう経験済み?」
羨ましそうに言われ、真尋は少々混乱する。だが少し考えて、二回も言われた「経験済み」というのは性交のことだろうかとようやく気付く。
「経験は無いけど、似たようなことはさくとしてるからいらない」
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