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8話

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「瀬名、おい! せーなー!」

 放課後、やたら煩く、だがこっそり雄大に呼ばれた真尋は、気づけば空き教室に引っ張り込まれていた。

「なに? 俺、帰りたいんだけど」

 少し首を傾げながら言うと雄大が片手で拝むように手刀を切りながら気軽な様子で謝ってきた。

「ごめんごめん。ちょっと付き合えよ」
「なに?」
「あの話さ、俺ずっと考えてたんだよ。俺、女の子好きだからさ、理解できなくて」
「? なんの話?」
「でもお前らは大事な友だちだからさ」

 勝手にペラペラと喋り出す雄大に対して真尋は首を傾げる。不審そうな顔をしていたとは思うが、表情に気づいたというよりは首を傾げている様子に雄大は気づいたようだった。

「どうかした?」
「なんの話?」

 沸点は本当に高い為、真尋は基本的にイライラすることがない。なので聞かれたら別に何度でも同じ言葉を繰り返す。

「は? あれだよ、お前ら、付き合ってんだろ?」

 怪訝な顔で雄大も首を傾げてきた。だが真尋もさらに意味がわからなくなる。

「誰と誰?」
「え? 瀬名と月島」
「付き合ってない」

 即答した真尋に対し、雄大がポカンとしてきた。

「は?」
「……?」
「いや、だって屋上でのお前の発言……! だいたい前のピアス買った時といい、普段のお前ら思い返しても妙に納得したんだけど! え、付き合ってねーのっ?」
「うん」

 雄大が妙に驚いているが、真尋としては何故そんなに驚くのかもわからない。男女が仲いいとそう思ってしまいがちなのはまだしも、自分と佐紅は男同士だ。それとも男同士でも仲がいいと付き合っていると思われるような風潮なのだろうかとまた首を傾げる。

「でもお前らって、その……アレ……してんだろ?」
「アレ? ああ――」
「だから声に出すなっつーの。いやここは俺とお前しかいねーけど、俺がキツい! 詳しく聞きたくはねぇ!」

 言いかけたところで遮られたので、真尋はコクリと頷いた。

「ふー。……あーじゃあセフレってやつ?」
「違う」

 真尋がまた即答すると雄大は「えー……」と複雑そうな顔をしている。自分と佐紅はそんなに複雑な風に見えるのだろうかと思う。どうにも先ほどから真尋にとってよくわからないことだらけだ。

「あのさ、もしかして……あ、つかもしかしなくてもお前らゲイなの? いやでも月島は違うか。彼女、普通にいたし」
「さくは違う」

 その通りだと真尋が頷くと雄大が目を見開いてきた。

「えっ? じゃあお前がゲイなの?」
「違う」
「ええー?」
「俺はさくがいいだけで男に興味ない」

 真尋の言葉に雄大がまたポカンとしてきた。だがすぐに納得したように頷いてきた。

「お前、瀬名が好きなんだ?」
「?」
「っおま、もしかして無自覚かよっ?」

 怪訝そうに首を傾げると、雄大が驚いたような微妙そうな、なんともいえない顔をしてきた。

「無自覚?」
「だって所々、告白めいたことばっか言ってんだろ。月島と同じ赤だから好きとか、今だって男には興味ないけど月島はいいとか」
「告白……」
「ああ。それって告白以外にないだろ?」

 雄大が呆れたように真尋を見てきた。真尋が黙っているとだが少し慌てたように付け加えてくる。

「あ、俺はそういうの偏見とか別にねーよ? ビックリはしたけどな。あと俺自体は無理だけどな」

 真尋はひたすらポカンとして雄大の言葉を聞いていた。

 好き。
 告白。

 その二つの言葉で、さすがに色々ピンとこない真尋でも意味はわかる。

 ……俺がさくを好き?

 恋というものは今までしたことがない。恋愛というものがどういったことかわからない。それだけに理解ができなかった。
 確かに佐紅のことをずっと小さな頃から好きは好きだ。それは間違いない。ずっと一緒にいてくれた。いつもそばにいた。とても大事な幼馴染だ。佐紅がいればそれだけでいいとも思っていた。
 それは小さな頃からずっと思っていたことだ。恋愛がどうのこうのと関係ないような小さな頃からだ。だから今の今までその好きが恋愛の好きだなどと考えたこともなかった。

 俺が……さくを、好き……?

「大事な友だちだしな、お前ら。偏見ねーしお前らに対して無理とはだから思わ――」

 雄大がまだなにか喋っている。だが真尋は既に耳に入っていなかった。

 俺がさくを、好き?
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