ポゼッション

Guidepost

文字の大きさ
17 / 20

17話

しおりを挟む
 人を好きなるのはもっとふわふわとして楽しくて幸せな気分になるものだと思っていた。
 佐紅は真尋を見上げながら思った。真尋を好きだと自覚してからずっと、どこか後ろめたくて申し訳なくて、そして辛かった。

「だからどういう問題? さくはじゃあなんで俺が好きなの? 男同士が駄目ならなんで俺を好きになったの?」

 あまりに率直な真尋の質問に、佐紅は苦しさが込み上げてくる。本当に何故自分は真尋を好きになったのだろうと思う。だがわかっている。
 もちろん、これだという瞬間があったわけではない。真尋を小さな頃からずっとそばで見てきていて培っていった感情は何人にも侵すことのできない大切でかけがえのないもので、気づけば好きになるしかなかったんだと思う。真尋が男だからとか云々はもちろん関係のない、ただひたすら素直な気持ちだ。佐紅の中の本能ではもうずっと昔から真尋を求めている。
 その気持ちのままに行動できればどんなにいいか。理性がしかしそれをよしとしない。どう考えても男同士でこんな気持ちを抱えていいわけがないと理性が言う。
 誰にも言えないような恋を抱えてどうするんだ、と。
 大切な相手だと思っているなら、その相手の将来すら駄目にするかもしれないくらいわかるだろう、と。
 理性が言うことはいちいちもっともで、本能はいつだって隅で「ごめんなさい」と小さくなっている。

「さく」

 なのに真尋はひたすら真っ直ぐに佐紅を見てきて、小さくなっている本能に呼びかけてくる。

「さく」

 佐紅は息をするのも苦しくなってきた。

「俺も、嫌だ。さく、俺もさくが他の誰かと付き合ったら嫌だ。さくは俺だけのさくがいい。それだけで十分じゃないのか」
「ぁ……」

 苦しい。どうしたらいいのかわからない。だってどう考えても間違っている。なのに何故真尋はそんなに真っ直ぐに向かってこられるのか。

 ――受け入れたらいい――

 ふと、自分の中でそんな声がした。いつもひたすら駄目だ、無理だとしか言い聞かせてこなかった佐紅の中で、ぽつりと響いたその声が波紋のように広がっていく。

 受け入れたらどうなる?

 いつもならすぐにでもそういった否定的な考えが押し寄せてきた筈だというのに、今はただひたすら受け入れてみろという声が広がるだけだった。
 佐紅は抵抗を止め、恐る恐る目を閉じた。それを同意と受け取ったのか、真尋が佐紅の体を弄りながらキスをしてくる。初めて真尋からされて以来、ずっと避けるかされてもひたすら逃れようとしていた。そのせいか、今されるがままのキスは、まるで初めてしているような気、さえした。

「さく……」

 キスの合間に自分の名前を囁く真尋の声だけで佐紅は熱くなる。恐る恐るといった感じで絡めてきた真尋の舌を、佐紅も恐る恐る受け入れた。そのまま絡ませ合っていると息が上がってくる。時折変な鼻息や吐息が漏れるのも次第に気にならなくなっていく。夢中になってキスを交わしていたら真尋に上着をめくりあげられた。

「……っん、な、にすんだよ」
「触る」
「まんまだな……! 俺男なんだから胸ないぞ」
「……さくは男だの女だの煩い」

 恥かしさもあったが微妙な顔で佐紅が言うと、真尋が無表情のままそんなことを言い返してきた。

「まひろのくせに煩いとか」

 照れ隠しもありムッとして言うと、今度は無視をしてきた。そのまま少しだけ離れていた真尋の唇はもう一度佐紅の唇を塞いでから今度は耳元へ移動した。耳朶は一度舐められたことがあったが、今度は口に含まれた後噛みつかれた。

「っいた! お前」
「……さく……俺の……」

 だがそんなことを耳元で呟かれ、佐紅は思いがけず顔が熱くなる。耳朶を今度は吸われてピクリと体が反応する。

「……触っていい?」
「駄目だっていってもお前、聞かないだろ……いつもはそんなじゃないくせに」
「うん、聞かない」

 耳にキスを続けながら、真尋の手が佐紅の完全にはめくれていない服の中を弄ってくる。素肌に直に触れられたことは今までもあったはずなのに、それとなんだか全然違う。またもや時折変な息が漏れた。先ほどまでは夢中になってお互い味わいながら息を感じていたからもあって気にならなくなったが、今は自分一人だけが情けない声を上げている気がして羞恥を覚える。丁度持て余していた自分の手を、佐紅は口を塞ぐことに使った。

「ん、ん……っ、まひろ、そ、んなとこ触っても、俺、男だって、ば……っ」

 口を塞いだ途端、真尋に乳首を弄られ結局喋る羽目になる。しかし真尋は構わず続けてきた。
 めくりあげられた上着のせいで真尋がしていることがよく見えない。しかし余計にその分、真尋の指を感じた。
 胸で感じる筈はないと佐紅は思う。それだというのに乳首から伝わる切なささえ覚える表現しがたい刺激に、結局また口を塞いで頭を逸らすしかできない。すると耳にキスをしていた真尋が今度は口を覆っている手にキスをしてきた。なんだと思っていると片方の手で無理やり手をつかまれ退けられた。

「なにすんだよ」
「塞がないで」

 真尋は一言呟くと、つかんだ手を舐めてきた。

「ん、ぁ」

 手の平すらもぞわりとした刺激が走る。おまけに指を咥えられたりしながらも相変わらず体も弄られ、佐紅の下肢が痛いほどに疼いてきた。それを察したのか、真尋が今度は躊躇いもなく一旦佐紅から少し離れてズボンを脱がし始めた。
 確かに下はお互い抜き合っていて慣れているかもしれない。だがこの流れのせいだろうか、佐紅はとてつもなく躊躇し戸惑う。

「な、なぁ。お前、なにする気だ……? いつものように抜き合う、だけ、だよ、な……?」

 恐る恐る聞いてみる。すると真尋がたまにお互い手っ取り早く抜くためたまに使っているローションを手にし、佐紅の昂ったそれに垂らしながらサラリと言った。

「入れたい」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とある冒険者達の話

灯倉日鈴(合歓鈴)
BL
平凡な魔法使いのハーシュと、美形天才剣士のサンフォードは幼馴染。 ある日、ハーシュは冒険者パーティから追放されることになって……。 ほのぼの執着な短いお話です。

シスルの花束を

碧月 晶
BL
年下俺様モデル×年上訳あり青年 ~人物紹介~ ○氷室 三門(ひむろ みかど) ・攻め(主人公) ・23歳、身長178cm ・モデル ・俺様な性格、短気 ・訳あって、雨月の所に転がり込んだ ○寒河江 雨月(さがえ うげつ) ・受け ・26歳、身長170cm ・常に無表情で、人形のように顔が整っている ・童顔 ※作中に英会話が出てきますが、翻訳アプリで訳したため正しいとは限りません。 ※濡れ場があるシーンはタイトルに*マークが付きます。 ※基本、三門視点で進みます。 ※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

暑がりになったのはお前のせいかっ

わさび
BL
ただのβである僕は最近身体の調子が悪い なんでだろう? そんな僕の隣には今日も光り輝くαの幼馴染、空がいた

双葉の恋 -crossroads of fate-

真田晃
BL
バイト先である、小さな喫茶店。 いつもの席でいつもの珈琲を注文する営業マンの彼に、僕は淡い想いを寄せていた。 しかし、恋人に酷い捨てられ方をされた過去があり、その傷が未だ癒えずにいる。 営業マンの彼、誠のと距離が縮まる中、僕を捨てた元彼、悠と突然の再会。 僕を捨てた筈なのに。変わらぬ態度と初めて見る殆さに、無下に突き放す事が出来ずにいた。 誠との関係が進展していく中、悠と過ごす内に次第に明らかになっていくあの日の『真実』。 それは余りに残酷な運命で、僕の想像を遥かに越えるものだった── ※これは、フィクションです。 想像で描かれたものであり、現実とは異なります。 ** 旧概要 バイト先の喫茶店にいつも来る スーツ姿の気になる彼。 僕をこの道に引き込んでおきながら 結婚してしまった元彼。 その間で悪戯に揺れ動く、僕の運命のお話。 僕たちの行く末は、なんと、お題次第!? (お題次第で話が進みますので、詳細に書けなかったり、飛んだり、やきもきする所があるかと思います…ご了承を) *ブログにて、キャライメージ画を載せております。(メーカーで作成) もしご興味がありましたら、見てやって下さい。 あるアプリでお題小説チャレンジをしています 毎日チームリーダーが3つのお題を出し、それを全て使ってSSを作ります その中で生まれたお話 何だか勿体ないので上げる事にしました 見切り発車で始まった為、どうなるか作者もわかりません… 毎日更新出来るように頑張ります! 注:タイトルにあるのがお題です

俺の好きな男は、幸せを運ぶ天使でした

たっこ
BL
【加筆修正済】  7話完結の短編です。  中学からの親友で、半年だけ恋人だった琢磨。  二度と合わないつもりで別れたのに、突然六年ぶりに会いに来た。 「優、迎えに来たぞ」  でも俺は、お前の手を取ることは出来ないんだ。絶対に。  

だって、君は210日のポラリス

大庭和香
BL
モテ属性過多男 × モブ要素しかない俺 モテ属性過多の理央は、地味で凡庸な俺を平然と「恋人」と呼ぶ。大学の履修登録も丸かぶりで、いつも一緒。 一方、平凡な小市民の俺は、旅行先で両親が事故死したという連絡を受け、 突然人生の岐路に立たされた。 ――立春から210日、夏休みの終わる頃。 それでも理央は、変わらず俺のそばにいてくれて―― 📌別サイトで読み切りの形で投稿した作品を、連載形式に切り替えて投稿しています。  エピローグまで公開いたしました。14,000字程度になりました。読み切りの形のときより短くなりました……1000文字ぐらい書き足したのになぁ。

もしも願いが叶うなら、あの頃にかえりたい

マカリ
BL
幼馴染だった親友が、突然『サヨナラ』も言わずに、引っ越してしまった高校三年の夏。 しばらく、落ち込んでいたが、大学受験の忙しさが気を紛らわせ、いつの間にか『過去』の事になっていた。 社会人になり、そんなことがあったのも忘れていた、ある日の事。 新しい取引先の担当者が、偶然にもその幼馴染で…… あの夏の日々が蘇る。

処理中です...