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3章 騎士編 光の救世主
87話
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「お前さーほんと困るから……」
誰もいなくなった広場でようやくローザリアが離れてくれ、流輝は片手で片目を覆うようにしながらため息をついた。
「だって帰ってくる予定過ぎても誰も全然帰ってこないから……」
「あ? ああ、うん。それはまあうん、心配かけてごめん。ちょっと思ってたより魔獣が多くて対応に手こずったっぽい」
心配は嬉しいというか困らないが、今の自分の状態で抱き着かれたのは本当に困る。動揺して困ったのもあるが、どう考えても今の流輝は清潔から程遠い。汚くて臭いはずだ。
「そうじゃなくて、綺麗な格好してんのにほら、見てみろ。ドレス汚れてんだろが。俺、マジでかなり風呂入ってないんだぞ。魔獣倒したり雨に濡れたりしてんのに洗濯だってできてねーし」
「そんなの気にする余裕なんてなかったよ」
「いや、気にして? ほんと。お前お姫様なんだぞ。ったく。はぁ。びっくりしたのもあるけどさ。まあでも心配してくれてありがとうな。あとごめんな、ドレス汚しちゃって。悪いけど着替えてこい。それと今ももうちょっと離れて」
「何故?」
「いや、だから俺臭いから」
「……リキの匂いだから大丈夫だよ」
「何言ってんの? 大丈夫なわけねーだろ。自分でも臭いのわかるわ……。とりあえず俺も風呂、入りてーし後でまた会おう。ここには偶然通りかかったのか?」
「うん。ちょっとお父さ……陛下に報告があったの。その帰り。リキとルイにも伝えたいから後でね。ごめんなさい、疲れてるだろうに。お風呂、入ってきて」
「おお」
「……リキもルイも……無事でほんとよかった」
「……うん、ありがとう、ローザリア」
自分たちの屋敷に戻る途中、無事でよかったとベイリーフ色をした瞳を潤ませながら微笑むローザリアが流輝の頭の中をぐるぐると繰り返し浮かんできていた。
いやいや、何でぐるぐるしてんだよ。つか、陛下に報告って何なんだろな。
ぶんぶんと首を振り、今さら気になってきたことを考えてみたが特に何も浮かばない。
普通の令嬢ならば政治に絡む仕事など何もしないが、第一王女であるローザリアが外交的な仕事を担っていることは知っている。あの学園で学んだことも生かし、中々に仕事ができるという噂も耳にしている。ついでに「生まれがよくない上に政治にまでしゃしゃり出てきて、あれじゃあいつまで経ってもいい相手が見つからないのでは」などと差別的な上に閉鎖的なことを言う者がいれば、とりあえず流輝は無言のまま魔法で軽く攻撃しておいた。そういった輩に口で何を言おうが無駄だということはさすがに学習したし、攻撃といっても何もないところで転ぶとかその程度だ。本当ならば燃やすか溺れさせるか切り裂いておきたいところだがむしろローザリアに迷惑がかかるだろうとグッと堪えている。
とにかく主に外交的な仕事を担っているということは、報告も他国に絡むことではないかとは思う。しかし流輝と琉生にも伝えたいということは救世主に関することである気もする。
うーん……やっぱわかんねえな。まあ後でわかるし、いいか。
風呂に入る前に、琉生と同じく先に戻って風呂にも入り終えていたらしいキャスから「抱きしめ返してキスくらいしましたか」などと言われ、何も飲んでいないのにむせそうになった。
「何言ってんの? いやほんと何言ってんの?」
「その様子だとされてませんよね。我が主ながらこればかりは不甲斐ない……普段は俺が惚れるくらい素晴らしいというのに」
「惚れてもらわなくて結構だしほんと何言ってんの……」
「せめて抱きしめ返すくらいはしないと」
「何でだよ。……まあ家族でもするか、確かに。でも俺汚いし臭いからどのみち無理」
「ああ、まあそうですけど……。あ、でも主はそんなに臭くないですよ」
「そういうのいいから」
「いや、ほんとに。リキ様もルイ様も何でしょうね、救世主様だからつくりがもう違うのかな。俺らより断然臭わないと思いますよ」
わけのわからないことを、と言いかけてふと「そういや俺らって日本人だからかな」と何となく思った。
実際この世界の人間とは違うところはある。髪や目の色、肌の色もそうだが、身長や肉の付き方も違う気がする。元の世界でも子どもだったため詳しくはわからないが、外国人は大きくてごついイメージはあった。
そういう絡みであんま臭くなりにくいとかあるならありがたいけど、でも俺的にはどうせなら背がもっと伸びたり筋肉ついたりするほうがいいぞ。
微妙な顔になりつつ、風呂で湯に浸かりながら流輝は自分の腕を上げて眺める。子どもの頃に比べたらずいぶん逞しくはなったと思いたいが、魔術師だからというのもあるのだろうか、あまりがっつりと筋肉はついていない。ただ、身長は流輝も琉生も同じだが、琉生の体は一見服を着ていると流輝と変わらないように見えて、その実結構筋肉がついている。
「……今ちょっと騎士が羨ましくなったな」
以前は特にそこまで気にならなかったが、最近妙に背や筋肉などが気になる。
「ローザリアだってほんとはあるほうがいいんじゃないの」
初恋の相手であるライアンは背が高いし体もしっかりしている。それに比べて、と自分の腕をまたじっと見た後で「いやいや、ローザリアは関係ねーだろ」と自分に突っ込んだ。
誰もいなくなった広場でようやくローザリアが離れてくれ、流輝は片手で片目を覆うようにしながらため息をついた。
「だって帰ってくる予定過ぎても誰も全然帰ってこないから……」
「あ? ああ、うん。それはまあうん、心配かけてごめん。ちょっと思ってたより魔獣が多くて対応に手こずったっぽい」
心配は嬉しいというか困らないが、今の自分の状態で抱き着かれたのは本当に困る。動揺して困ったのもあるが、どう考えても今の流輝は清潔から程遠い。汚くて臭いはずだ。
「そうじゃなくて、綺麗な格好してんのにほら、見てみろ。ドレス汚れてんだろが。俺、マジでかなり風呂入ってないんだぞ。魔獣倒したり雨に濡れたりしてんのに洗濯だってできてねーし」
「そんなの気にする余裕なんてなかったよ」
「いや、気にして? ほんと。お前お姫様なんだぞ。ったく。はぁ。びっくりしたのもあるけどさ。まあでも心配してくれてありがとうな。あとごめんな、ドレス汚しちゃって。悪いけど着替えてこい。それと今ももうちょっと離れて」
「何故?」
「いや、だから俺臭いから」
「……リキの匂いだから大丈夫だよ」
「何言ってんの? 大丈夫なわけねーだろ。自分でも臭いのわかるわ……。とりあえず俺も風呂、入りてーし後でまた会おう。ここには偶然通りかかったのか?」
「うん。ちょっとお父さ……陛下に報告があったの。その帰り。リキとルイにも伝えたいから後でね。ごめんなさい、疲れてるだろうに。お風呂、入ってきて」
「おお」
「……リキもルイも……無事でほんとよかった」
「……うん、ありがとう、ローザリア」
自分たちの屋敷に戻る途中、無事でよかったとベイリーフ色をした瞳を潤ませながら微笑むローザリアが流輝の頭の中をぐるぐると繰り返し浮かんできていた。
いやいや、何でぐるぐるしてんだよ。つか、陛下に報告って何なんだろな。
ぶんぶんと首を振り、今さら気になってきたことを考えてみたが特に何も浮かばない。
普通の令嬢ならば政治に絡む仕事など何もしないが、第一王女であるローザリアが外交的な仕事を担っていることは知っている。あの学園で学んだことも生かし、中々に仕事ができるという噂も耳にしている。ついでに「生まれがよくない上に政治にまでしゃしゃり出てきて、あれじゃあいつまで経ってもいい相手が見つからないのでは」などと差別的な上に閉鎖的なことを言う者がいれば、とりあえず流輝は無言のまま魔法で軽く攻撃しておいた。そういった輩に口で何を言おうが無駄だということはさすがに学習したし、攻撃といっても何もないところで転ぶとかその程度だ。本当ならば燃やすか溺れさせるか切り裂いておきたいところだがむしろローザリアに迷惑がかかるだろうとグッと堪えている。
とにかく主に外交的な仕事を担っているということは、報告も他国に絡むことではないかとは思う。しかし流輝と琉生にも伝えたいということは救世主に関することである気もする。
うーん……やっぱわかんねえな。まあ後でわかるし、いいか。
風呂に入る前に、琉生と同じく先に戻って風呂にも入り終えていたらしいキャスから「抱きしめ返してキスくらいしましたか」などと言われ、何も飲んでいないのにむせそうになった。
「何言ってんの? いやほんと何言ってんの?」
「その様子だとされてませんよね。我が主ながらこればかりは不甲斐ない……普段は俺が惚れるくらい素晴らしいというのに」
「惚れてもらわなくて結構だしほんと何言ってんの……」
「せめて抱きしめ返すくらいはしないと」
「何でだよ。……まあ家族でもするか、確かに。でも俺汚いし臭いからどのみち無理」
「ああ、まあそうですけど……。あ、でも主はそんなに臭くないですよ」
「そういうのいいから」
「いや、ほんとに。リキ様もルイ様も何でしょうね、救世主様だからつくりがもう違うのかな。俺らより断然臭わないと思いますよ」
わけのわからないことを、と言いかけてふと「そういや俺らって日本人だからかな」と何となく思った。
実際この世界の人間とは違うところはある。髪や目の色、肌の色もそうだが、身長や肉の付き方も違う気がする。元の世界でも子どもだったため詳しくはわからないが、外国人は大きくてごついイメージはあった。
そういう絡みであんま臭くなりにくいとかあるならありがたいけど、でも俺的にはどうせなら背がもっと伸びたり筋肉ついたりするほうがいいぞ。
微妙な顔になりつつ、風呂で湯に浸かりながら流輝は自分の腕を上げて眺める。子どもの頃に比べたらずいぶん逞しくはなったと思いたいが、魔術師だからというのもあるのだろうか、あまりがっつりと筋肉はついていない。ただ、身長は流輝も琉生も同じだが、琉生の体は一見服を着ていると流輝と変わらないように見えて、その実結構筋肉がついている。
「……今ちょっと騎士が羨ましくなったな」
以前は特にそこまで気にならなかったが、最近妙に背や筋肉などが気になる。
「ローザリアだってほんとはあるほうがいいんじゃないの」
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