双神の輪~紡がれる絆の物語~

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3章 騎士編 光の救世主

108話

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 琉生の辺りが騒がしい。だが流輝の目と耳にはぼやけた音と映像がスロー再生されているかのようだった。その中で琉生だけが明確に見える。ピクリとも動かない蒼白な琉生だけが。
 状況は察したというのに思考が追いつかなかった。体が動かない。
 そんな流輝の脳裏にずいぶん昔のことが浮かんだ。異世界へ飛ばされた時のことだ。
 コンビニエンスストアへ入ったところで後ろから強引に入ってきた男が流輝にぶつかって来た。その衝撃で肩に下げていた鞄が落ち、ムッとしながら流輝は男を睨もうとした。だが目の端に入ってきたのはその落ちた鞄を拾おうとしてくれていた琉生、ではなく、実際は男に刺されて前のめりに倒れ込む寸前の琉生だった。

 そう、だ……あの時のこと、何で曖昧なままで記憶から消えていたんだろう。

 あの時、琉生は鞄を拾おうとしていたのではなく、その男に刺された。倒れた琉生は血まみれだった。きっと深く刺された後刃物を抜かれたのだろう。

「あ……あ……」

 その後気づけば異空間のようなところにいて、血まみれだったはずの琉生は「お腹と背中が焼けるみたいに痛い」と流輝に手を伸ばそうとしていた。すでに琉生が刺されたことが記憶からほぼ抜け落ちていた流輝も必死になって琉生に手を伸ばそうとして、そして男とも女とも、人間ともわからない誰かが琉生のそばにいたことに気づいたのだった。結局その記憶すら、今の今まで記憶から抜け落ちていた。
 すぐに離れて一瞬で消えたその存在は刺されて瀕死だった琉生を助けてくれていたのだとそして今さら気づく。

 あれは……あれはアリータ神だ……。

 この世界の神のことなどほぼ知らないはずだった。何度か教会へ出向くことがあったり話を聞かされたりしても頭に入ってこなくてほぼ知らないアリータ神のことを、流輝は何故か今明確にわかっていた。

 ああ……また失ってしまう。また……また……! そんなことはもう耐えられない。

 少々記憶が混乱しそうになっていた流輝はだがすぐに目の前で蘇生措置を施されている琉生に目がいく。

 駄目だ。
 駄目だ……ルイが……ルイが……、ルイを失ってしまう……!

 こちらへ来てから自分の無知のせいで魔力が枯渇し、死にかけた琉生がよぎる。

 アリータ神……! 今もいるのならお願いだ、ルイを助けて……! お願いだ、どうか、どうか……!

 声にならない声で流輝は叫んだ。
 すると神殿から光が大きく太い柱のように、高く上がった。そしてその光が流輝と琉生めがけて伸びてきたかと思うと二人の体を包み込み、二人の体内へと入っていく。
 得も言われぬ温かい何かに満たされるかのようだった。琉生を思い、凍えそうな気持ちだった流輝もその温かさに包まれる。そして頭の中に男とも女ともつかない声が聞こえてきた。

『神殿で待っています』

 アリー……タ、じゃない……?

「……アス……」

 ……アスルガル……タ……?

 その後、流輝も糸が切れたように倒れた。起きてから聞いた話では、とりあえず琉生も瀕死という状態ではなくなったものの目を覚まさず、流輝と琉生は意識のないまま転移魔法でニューラウラ王国まで運ばれたようだ。
 また、琉生の光魔法により周辺に魔族や魔獣がいなくなったものの警戒は怠らないため一部の兵などは残し、他の軍も一旦帰還することとなった。
 双子の目が覚めないままだったが、とりあえずモールザ王国の問題だけでもどうにかしようと会議は開かれた。流輝たちが神殿へ出向いている間にもセオが代理としてモールザ王国のことは対応していたようだが、その軍議ではモールザ王ローガンの罪状を改めて明確にし処罰を決めることになった。本来ならば自国だけで行うことかもしれないが、今回は別だった。
 また、モールザ王国に残っている魔族たちだが、神殿周辺で消滅したリーダーらしき強い魔族や他の強い魔族がいなくなった分、力がかなり落ちていたようだ。その後の制圧は思っていた以上にスムーズだったらしい。
 また、ローガン王や一部の貴族たちの道楽や国民を顧みない言動に疑念を抱いていた者は一般国民にも多く、民による反乱も起きていたせいもある。国民たちは今回光の神殿へ軍を進めたことや、何の咎もないはずの王子を牢へ追いやったらしいと知り、今までじわじわと溜まっていた不満が爆発したのだろう。
 悪意ある貴族たちもすぐに拘束されていた。
 ずっと昔から「お飾り王子」と小ばかにされようが実際に国民のために動いてくれていたセオのことも、そしてセオとともにどうにかしようと動いてくれたロニーのことも、国民たちはちゃんとずっと見てきていた。皆、王子たちの味方だった。
 まだモールザ王国が落ち着くにはしばらく時間がかかるだろうが、セオたちが戻り国を立て直すのは遠い未来ではなさそうだ。
 軍議ではローガンを除いたセオやロニーたち王族に対して「処罰を科さない」と正式に宣言された。

「しかし我々は……」
「セオ王子。私たちは節穴じゃない。ひいきのつもりで言ってなどいない。すべて自分たちの目で再確認し納得した上での判決です。覆したいのならばそれ相応の悪事をあなた方が行ったことを示していただかねば」

 数日後、あらかたモールザ王国での軍議が終わりそうだという時にようやく流輝たちは目を覚ました。
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