4 / 45
4話
しおりを挟む
フィンリーは今現実の年齢上、そろそろ体力的に限界を感じ始めていた。要は眠い。五歳児にとってすでに深く眠っているはずの時間だ。
だがとりあえずリースについて書き留めてからでないと眠れない気がした。いや、眠いのだがきっと深い眠りにつけないというのだろうか。他にもいる攻略キャラに関してはまた後回しにするとしても今日出会ってしまったリースくらいまでは書いておきたい。
リース・フラートンは現実でもゲームの中でもフラートン家の三男だ。フィンリーにとってもそうだが、ゲームのヒロインにとっても幼馴染で兄のような存在の従兄である。ただゲームではヒロインの婚約者でありシューリス家の次期当主となる予定だった。婿養子という、家同士の政略婚である。皇帝派であるシューリス家に対し貴族派であるフラートン家の結びつきは、お互いかなり有力な貴族であったため、両派の派閥を緩和させいい流れになるというのが両家の目論見でもあった。とはいえ他キャラを攻略するルートではリースは妹のようにヒロインを大事に思ってくれており、親の説得に協力してくれたりと束縛系とは思えない行動を取ってくれる。ただ分岐前はやはり所々束縛してくるらしい。ヤンデレよりは怖くないかもしれないが、普通がなによりだと思う弘斗にとっては束縛系も十分怖いと思っていた。
リースとジェイクどちらかを選ぶ分岐でリースを選ぶと、今度はリースがメアリとジェイクからヒロインが受けている嫌がらせなどについて話を聞くこととなる。リースが直接ヒロインの継母や妹と話をしようとするが無駄だった。そんな中、リースに慰められている内に二人はお互い本気で好意を持つようになる。ヒロインと結婚すれば継母や妹とも義理の家族となる訳だが、束縛が強いだけあってヒロインが他の者から不幸にされることだけは許せず、結局自分のルートでもリースはヒロインの父親に手紙を送る。その後はジェイクルートと似ている。継母と妹は家を出て、二人は晴れて結婚し結ばれる。ヤンデレだったはずのジェイクからはヒロインが幸せならと、報復されることはない。都合のよいハッピーエンド第二弾だ。婚約者だったことを思えばジェイクルートよりは正規なのだろうか。
ここまでをメモしてようやくフィンリーは安心し、灯りを消してベッドへ入った。だがまだどこかスッキリしない。何か肝心なことを忘れている気がする。だが幼児として起きていられない眠気に勝つことができず結局そのまま眠ってしまったが、朝目が覚めた途端「ヒロイン俺じゃねぇか……!」と叫んでいた。
「フィンリー様? どうかされましたか?」
朝の支度はさすがにまだジェイクの仕事ではないため他の使用人がついているのだが、ベッドまでやってきたその人が驚いている。
「な、なんでもないよ。ちょっとへんなゆめみちゃった」
あはは、と誤魔化しつつ、フィンリーの脳内ではひたすら「いやいやいやいやいや待って待って待って」と騒がしい。
ゲームのヒロインの名前はフィンリー・シューリスだった。自分の名前と一語一句変わらない。そういえば顔はさておき髪や目の色も同じだ。どう考えてもヒロイン枠だ。
ただ、今のところ出会っている他のキャラとの関りが所々微妙な違いがある中でひと際大きな重要な違いがある。性別だ。「俺」ことフィンリー・シューリスは到底ヒロインにはなり得ない。乙女ゲームであり攻略キャラたちが皆男である上で、自分もまごうことなき男だからだ。
だよ、な? 俺はヒロイン枠だけどヒロインにはならねえよな?
脳内で言い切った後に少し気弱になりながら自分に言い聞かせた。きっとあれだ。ヒロインと攻略キャラとの恋愛ではなく、主人公と登場人物たちとの友情を育むあれだ。絶対そうに違いない。だいたい妹の桃がプレイしていたゲームは間違いなく乙女ゲームだった。BLも軽く嗜む妹ではあったが、少なくとも決してBLゲームではなかった。大丈夫だ。それに桃から聞いたことのある転生ものの話でたまにある、乙女ゲームにうっかり転生した主人公は男だというのにその中では女扱いを受けてしまい恋人や嫁として求婚される、といったパターンもあり得ない。フィンリーは昔から「坊ちゃん」として認識されているし今のところ出会ってしまった攻略キャラ二人もフィンリーのことを男だと把握している。大丈夫だ。
言い聞かせつつ、昨日のジェイクの顔が浮かんだ。見間違いであるはずの表情をした顔だ。
いやうん、絶対あれ、見間違い! 絶対! 大丈夫だ!
必死にうんうんと頷いていると「どうかされましたか」とジェイクの声が聞こえた。
「っひ?」
「フィンリーさま?」
ハッとなり振り返ると、とてつもなく間近にジェイクがいた。心配そうにじっとフィンリーを見ている。
「な、なんでもないよ! っていうかなんでここにジェイクがいるの? まだ俺、きがえすんでないよ?」
「しょうらいはオレがフィンリーさまのみのまわりのおせわをするので、いまからおてつだいしておぼえようとおもって」
待て、とフィンリーは焦った。このままいくと将来もしかしたらあんな顔で自分とリースを見てきたかもしれないジェイクが自分の服を脱がし、服を着せることになる。
え、無理。自意識過剰かもしれないが、無理だろそんなの。
「え、ええっと! いや、俺さ、その、じりつするおとなめざしてるから、そろそろじぶんできがえようとおもってたんだよね! だからジェイクのても、あなたのてもかりずにおきがえするよ! ふたりはあっちいってて」
「ですがフィンリー様……」
「ほんとだいじょうぶ。俺、じぶんできがえてみたいんだ」
「かしこまりました。ジェイク、行きましょう」
「……うん」
ジェイクが少し悲しげに頷く。やはり自意識過剰すぎたのだろうか、このいたいけなショタを傷つけてしまっただろうかとフィンリーは少しドキリとした。ジェイクの様子を窺おうとして少し覗き込もうとしたフィンリーはだが、とてつもなくじっとこちらを見ていたジェイクに気づき、ベッドの上で思い切り飛び退いた。
だがとりあえずリースについて書き留めてからでないと眠れない気がした。いや、眠いのだがきっと深い眠りにつけないというのだろうか。他にもいる攻略キャラに関してはまた後回しにするとしても今日出会ってしまったリースくらいまでは書いておきたい。
リース・フラートンは現実でもゲームの中でもフラートン家の三男だ。フィンリーにとってもそうだが、ゲームのヒロインにとっても幼馴染で兄のような存在の従兄である。ただゲームではヒロインの婚約者でありシューリス家の次期当主となる予定だった。婿養子という、家同士の政略婚である。皇帝派であるシューリス家に対し貴族派であるフラートン家の結びつきは、お互いかなり有力な貴族であったため、両派の派閥を緩和させいい流れになるというのが両家の目論見でもあった。とはいえ他キャラを攻略するルートではリースは妹のようにヒロインを大事に思ってくれており、親の説得に協力してくれたりと束縛系とは思えない行動を取ってくれる。ただ分岐前はやはり所々束縛してくるらしい。ヤンデレよりは怖くないかもしれないが、普通がなによりだと思う弘斗にとっては束縛系も十分怖いと思っていた。
リースとジェイクどちらかを選ぶ分岐でリースを選ぶと、今度はリースがメアリとジェイクからヒロインが受けている嫌がらせなどについて話を聞くこととなる。リースが直接ヒロインの継母や妹と話をしようとするが無駄だった。そんな中、リースに慰められている内に二人はお互い本気で好意を持つようになる。ヒロインと結婚すれば継母や妹とも義理の家族となる訳だが、束縛が強いだけあってヒロインが他の者から不幸にされることだけは許せず、結局自分のルートでもリースはヒロインの父親に手紙を送る。その後はジェイクルートと似ている。継母と妹は家を出て、二人は晴れて結婚し結ばれる。ヤンデレだったはずのジェイクからはヒロインが幸せならと、報復されることはない。都合のよいハッピーエンド第二弾だ。婚約者だったことを思えばジェイクルートよりは正規なのだろうか。
ここまでをメモしてようやくフィンリーは安心し、灯りを消してベッドへ入った。だがまだどこかスッキリしない。何か肝心なことを忘れている気がする。だが幼児として起きていられない眠気に勝つことができず結局そのまま眠ってしまったが、朝目が覚めた途端「ヒロイン俺じゃねぇか……!」と叫んでいた。
「フィンリー様? どうかされましたか?」
朝の支度はさすがにまだジェイクの仕事ではないため他の使用人がついているのだが、ベッドまでやってきたその人が驚いている。
「な、なんでもないよ。ちょっとへんなゆめみちゃった」
あはは、と誤魔化しつつ、フィンリーの脳内ではひたすら「いやいやいやいやいや待って待って待って」と騒がしい。
ゲームのヒロインの名前はフィンリー・シューリスだった。自分の名前と一語一句変わらない。そういえば顔はさておき髪や目の色も同じだ。どう考えてもヒロイン枠だ。
ただ、今のところ出会っている他のキャラとの関りが所々微妙な違いがある中でひと際大きな重要な違いがある。性別だ。「俺」ことフィンリー・シューリスは到底ヒロインにはなり得ない。乙女ゲームであり攻略キャラたちが皆男である上で、自分もまごうことなき男だからだ。
だよ、な? 俺はヒロイン枠だけどヒロインにはならねえよな?
脳内で言い切った後に少し気弱になりながら自分に言い聞かせた。きっとあれだ。ヒロインと攻略キャラとの恋愛ではなく、主人公と登場人物たちとの友情を育むあれだ。絶対そうに違いない。だいたい妹の桃がプレイしていたゲームは間違いなく乙女ゲームだった。BLも軽く嗜む妹ではあったが、少なくとも決してBLゲームではなかった。大丈夫だ。それに桃から聞いたことのある転生ものの話でたまにある、乙女ゲームにうっかり転生した主人公は男だというのにその中では女扱いを受けてしまい恋人や嫁として求婚される、といったパターンもあり得ない。フィンリーは昔から「坊ちゃん」として認識されているし今のところ出会ってしまった攻略キャラ二人もフィンリーのことを男だと把握している。大丈夫だ。
言い聞かせつつ、昨日のジェイクの顔が浮かんだ。見間違いであるはずの表情をした顔だ。
いやうん、絶対あれ、見間違い! 絶対! 大丈夫だ!
必死にうんうんと頷いていると「どうかされましたか」とジェイクの声が聞こえた。
「っひ?」
「フィンリーさま?」
ハッとなり振り返ると、とてつもなく間近にジェイクがいた。心配そうにじっとフィンリーを見ている。
「な、なんでもないよ! っていうかなんでここにジェイクがいるの? まだ俺、きがえすんでないよ?」
「しょうらいはオレがフィンリーさまのみのまわりのおせわをするので、いまからおてつだいしておぼえようとおもって」
待て、とフィンリーは焦った。このままいくと将来もしかしたらあんな顔で自分とリースを見てきたかもしれないジェイクが自分の服を脱がし、服を着せることになる。
え、無理。自意識過剰かもしれないが、無理だろそんなの。
「え、ええっと! いや、俺さ、その、じりつするおとなめざしてるから、そろそろじぶんできがえようとおもってたんだよね! だからジェイクのても、あなたのてもかりずにおきがえするよ! ふたりはあっちいってて」
「ですがフィンリー様……」
「ほんとだいじょうぶ。俺、じぶんできがえてみたいんだ」
「かしこまりました。ジェイク、行きましょう」
「……うん」
ジェイクが少し悲しげに頷く。やはり自意識過剰すぎたのだろうか、このいたいけなショタを傷つけてしまっただろうかとフィンリーは少しドキリとした。ジェイクの様子を窺おうとして少し覗き込もうとしたフィンリーはだが、とてつもなくじっとこちらを見ていたジェイクに気づき、ベッドの上で思い切り飛び退いた。
4
あなたにおすすめの小説
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
憎くて恋しい君にだけは、絶対会いたくなかったのに。
Q矢(Q.➽)
BL
愛する人達を守る為に、俺は戦いに出たのに。
満身創痍ながらも生き残り、帰還してみれば、とっくの昔に彼は俺を諦めていたらしい。
よし、じゃあ、もう死のうかな…から始まる転生物語。
愛しすぎて愛が枯渇してしまった俺は、もう誰も愛する気力は無い。
だから生まれ変わっても君には会いたく無いって願ったんだ。
それなのに転生先にはまんまと彼が。
でも、どっち?
判別のつかないままの二人の彼の愛と執着に溺死寸前の主人公君。
今世は幸せになりに来ました。
猫になった俺、王子様の飼い猫になる
あまみ
BL
車に轢かれそうになった猫を助けて死んでしまった少年、天音(あまね)は転生したら猫になっていた!?
猫の自分を受け入れるしかないと腹を括ったはいいが、人間とキスをすると人間に戻ってしまう特異体質になってしまった。
転生した先は平和なファンタジーの世界。人間の姿に戻るため方法を模索していくと決めたはいいがこの国の王子に捕まってしまい猫として可愛がられる日々。しかも王子は人間嫌いで──!?
*性描写は※ついています。
*いつも読んでくださりありがとうございます。お気に入り、しおり登録大変励みになっております。
これからも応援していただけると幸いです。
11/6完結しました。
悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで
二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。
処刑されたくない悪役宰相、破滅フラグ回避のため孤独なラスボス竜を懐柔したら番として溺愛される
水凪しおん
BL
激務で過労死した俺が転生したのは、前世でやり込んだBLゲームの悪役宰相クリストフ。
しかも、断頭台で処刑される破滅ルート確定済み!
生き残る唯一の方法は、物語のラスボスである最強の”魔竜公”ダリウスを懐柔すること。
ゲーム知識を頼りに、孤独で冷徹な彼に接触を試みるが、待っていたのは絶対零度の拒絶だった。
しかし、彼の好物や弱みを突き、少しずつ心の壁を溶かしていくうちに、彼の態度に変化が訪れる。
「――俺の番に、何か用か」
これは破滅を回避するためのただの計画。
のはずが、孤独な竜が見せる不器用な優しさと独占欲に、いつしか俺の心も揺さぶられていく…。
悪役宰相と最強ラスボスが運命に抗う、異世界転生ラブファンタジー!
婚約解消されたネコミミ悪役令息はなぜか王子に溺愛される
日色
BL
大好きな王子に婚約解消されてしまった悪役令息ルジア=アンセルは、ネコミミの呪いをかけられると同時に前世の記憶を思い出した。最後の情けにと両親に与えられた猫カフェで、これからは猫とまったり生きていくことに決めた……はずなのに! なぜか婚約解消したはずの王子レオンが押しかけてきて!?
『悪役令息溺愛アンソロジー』に寄稿したお話です。全11話になる予定です。
*ムーンライトノベルズにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる