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24話
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「でっ、んか」
部屋に入ってきた人物に気づいて思わずまた区切るような呼び方をしてしまった。カリッドはそんなフィンリーに気づき、ギョッとしている。
「本当にいる……」
「え? どういう意味ですか? というか何故殿下がここへ」
自分でも不思議なくらい動揺しているのがわかる。確かに驚きはしたが、ここまで動揺しなくともというくらいフィンリーの心臓はドキドキとしていた。先ほどまでの妙なテンションの上がり具合といい、どうもおかしい。
「何故、と言われましても。ここは私の私室です」
「え……」
「私室に入った途端目に入ってきたのが、そなたがベッドの上から豪快に靴を脱ぎ放り投げているところでした」
「もっ、申し訳ございません……!」
どこの世界に王子の部屋に忍び込み、靴を豪快に脱いで騒いでいる者がいるというのか。ここに魔法で放り込まれたせいだとしても、王子の私室だと知らなかったとしても、靴で何もかも台無し感が半端ない。カリッドでなくとも驚くし引くだろう、というか首を切られてもおかしくないレベルではないだろうか。
慌ててベッドから飛び退いて土下座をしようとしたが、下りるまえにカリッドがやってきて「よい。そのままで」などと言ってきた。
「いえ、すぐさま下ります」
「よいと言っている。……というか謝る前に言い訳はしないのですか?」
「言い訳、ですか?」
「何故そなたがここにいるのかといった」
「あ、ああ……、いえ、聞かれたら答えますが、その前に無礼をお詫びしないと、と」
こんなところにまでサラリーマン気質かと自分に突っ込みたいが、仕方がない。もはや持って生まれた資質のようにフィンリーに染みついて取れないものだ。ふと笑い声がしたように思ったので恐る恐る顔を上げるとカリッドが思いのほか優しげな顔をしながらフィンリーの近くに腰を下ろしてきた。
「では聞きましょう。ですがその前に謝らせてください」
「殿下が?」
いきさつはさておき、不法侵入してベッドの上で靴を放り投げていたのはフィンリーだ。
「はい。いきなり無礼な真似をしてしまい、先ほどは本当に申し訳ありませんでした」
「あ」
正直うっかりしていた。いや、もちろん大いに動揺したからこそ逃げたくらいなのだが、その後も色んなことが起き過ぎていてうっかりしていた。思い出してしまい、少し顔が熱くなる。
ただ、カリッドがそんなに謝ってくるとは思っていなかった。フィンリーが女ならわからないでもない。女性に対して無礼だというマナーはあるだろうが、男同士だとその辺のマナーはどうしても薄れてしまうというか、性質の問題だろうか。むしろキスくらいで逃げるフィンリーが情けないのではとさえ、ほんのり思う。
「い、いえ……その、もう、忘れました、ので」
「それは困ります」
「は?」
「申し訳ないとは思っていますが、ですが私としては忘れてもらいたくはありません」
「……と、言われ、ても……」
「……とりあえず、一旦話を戻しましょう。聞かれたら答えるとおっしゃるのでしたら、聞きますね。何故そなたはここにいるんですか」
「そ、れはその……」
デイリーに魔法で飛ばされたからだが、改めて考えるとどう説明したものだろう。普通に「デイリーにここまで飛ばされたようです」と答えればいいのだろうが、そうしたらまず間違いなく「何故そうなったのか」と聞かれそうな気がする。デイリーと交わした会話は正直なところフィンリーにとってよくわからないものだったため、人に説明するには曖昧過ぎる。あとカリッドにキスをされた後デイリーにもキスをされたと口にしたくない。
というか、カリッドにされたことを思い出したからだろうか。いや、それが理由にしては変化がおかしいのだが、顔が熱くなるどころか、だんだんと体が異様に熱くなってきた。先ほどまでの妙なテンションといい動揺具合といい、キスが原因で体調がおかしくなるなんてことはあるのだろうか。
「フィンリー?」
「は……、ぁ」
熱い。中から蒸発してしまいそうなほど熱い。おまけに体の奥がどんどん疼いてくる。どう考えてもおかしい。
「……なんて顔をしているんです」
顔?
どんな顔をしているというのか。
しかしこれほど熱くて疼いて苦しいのなら、歪んできっと馬鹿みたいな不細工な顔になっているのかもしれない。
「あ……、っく」
元々性欲は人並みのはずだ。少なくとも人前でいきなり興奮して出したくて堪らなくなるなどという変態めいた性癖は持ち合わせていないはずだ。だというのに今、どうしようもなくきつかった。出したくて堪らない。出さないとおかしくなって死んでしまうのではというくらい、出したくて堪らない。間違いなく変だ。
ふと、デイリーが言った「あまり気にされなくともすぐにわかりますよ」という言葉をあの脳天が突き抜けそうなほど甘いなにかと共に思い出した。
「あ、あ……、クソ……」
思い切り扱いてしまいたい。いや、駄目だ。ずっとそんな葛藤でぐるぐるとする。
「……デイリーめ……余計なことを」
ぼそりとカリッドが何かを呟いた。しかしフィンリーとしてはそれどころではなかった。
「あ……も、死ぬ……」
「死にはしませんよ。でも苦しいですよね。楽になりたいですよね。……はぁ。フィンリー、私にもたれなさい。手伝って差し上げます」
「い、やで、す」
「大丈夫。そなたが普段人目を凌いで一人でしているであろうこと以外、私もしませんから。そなたのその状態では自分で楽になるのすら難しいでしょう。大丈夫。私に体を預けなさい」
部屋に入ってきた人物に気づいて思わずまた区切るような呼び方をしてしまった。カリッドはそんなフィンリーに気づき、ギョッとしている。
「本当にいる……」
「え? どういう意味ですか? というか何故殿下がここへ」
自分でも不思議なくらい動揺しているのがわかる。確かに驚きはしたが、ここまで動揺しなくともというくらいフィンリーの心臓はドキドキとしていた。先ほどまでの妙なテンションの上がり具合といい、どうもおかしい。
「何故、と言われましても。ここは私の私室です」
「え……」
「私室に入った途端目に入ってきたのが、そなたがベッドの上から豪快に靴を脱ぎ放り投げているところでした」
「もっ、申し訳ございません……!」
どこの世界に王子の部屋に忍び込み、靴を豪快に脱いで騒いでいる者がいるというのか。ここに魔法で放り込まれたせいだとしても、王子の私室だと知らなかったとしても、靴で何もかも台無し感が半端ない。カリッドでなくとも驚くし引くだろう、というか首を切られてもおかしくないレベルではないだろうか。
慌ててベッドから飛び退いて土下座をしようとしたが、下りるまえにカリッドがやってきて「よい。そのままで」などと言ってきた。
「いえ、すぐさま下ります」
「よいと言っている。……というか謝る前に言い訳はしないのですか?」
「言い訳、ですか?」
「何故そなたがここにいるのかといった」
「あ、ああ……、いえ、聞かれたら答えますが、その前に無礼をお詫びしないと、と」
こんなところにまでサラリーマン気質かと自分に突っ込みたいが、仕方がない。もはや持って生まれた資質のようにフィンリーに染みついて取れないものだ。ふと笑い声がしたように思ったので恐る恐る顔を上げるとカリッドが思いのほか優しげな顔をしながらフィンリーの近くに腰を下ろしてきた。
「では聞きましょう。ですがその前に謝らせてください」
「殿下が?」
いきさつはさておき、不法侵入してベッドの上で靴を放り投げていたのはフィンリーだ。
「はい。いきなり無礼な真似をしてしまい、先ほどは本当に申し訳ありませんでした」
「あ」
正直うっかりしていた。いや、もちろん大いに動揺したからこそ逃げたくらいなのだが、その後も色んなことが起き過ぎていてうっかりしていた。思い出してしまい、少し顔が熱くなる。
ただ、カリッドがそんなに謝ってくるとは思っていなかった。フィンリーが女ならわからないでもない。女性に対して無礼だというマナーはあるだろうが、男同士だとその辺のマナーはどうしても薄れてしまうというか、性質の問題だろうか。むしろキスくらいで逃げるフィンリーが情けないのではとさえ、ほんのり思う。
「い、いえ……その、もう、忘れました、ので」
「それは困ります」
「は?」
「申し訳ないとは思っていますが、ですが私としては忘れてもらいたくはありません」
「……と、言われ、ても……」
「……とりあえず、一旦話を戻しましょう。聞かれたら答えるとおっしゃるのでしたら、聞きますね。何故そなたはここにいるんですか」
「そ、れはその……」
デイリーに魔法で飛ばされたからだが、改めて考えるとどう説明したものだろう。普通に「デイリーにここまで飛ばされたようです」と答えればいいのだろうが、そうしたらまず間違いなく「何故そうなったのか」と聞かれそうな気がする。デイリーと交わした会話は正直なところフィンリーにとってよくわからないものだったため、人に説明するには曖昧過ぎる。あとカリッドにキスをされた後デイリーにもキスをされたと口にしたくない。
というか、カリッドにされたことを思い出したからだろうか。いや、それが理由にしては変化がおかしいのだが、顔が熱くなるどころか、だんだんと体が異様に熱くなってきた。先ほどまでの妙なテンションといい動揺具合といい、キスが原因で体調がおかしくなるなんてことはあるのだろうか。
「フィンリー?」
「は……、ぁ」
熱い。中から蒸発してしまいそうなほど熱い。おまけに体の奥がどんどん疼いてくる。どう考えてもおかしい。
「……なんて顔をしているんです」
顔?
どんな顔をしているというのか。
しかしこれほど熱くて疼いて苦しいのなら、歪んできっと馬鹿みたいな不細工な顔になっているのかもしれない。
「あ……、っく」
元々性欲は人並みのはずだ。少なくとも人前でいきなり興奮して出したくて堪らなくなるなどという変態めいた性癖は持ち合わせていないはずだ。だというのに今、どうしようもなくきつかった。出したくて堪らない。出さないとおかしくなって死んでしまうのではというくらい、出したくて堪らない。間違いなく変だ。
ふと、デイリーが言った「あまり気にされなくともすぐにわかりますよ」という言葉をあの脳天が突き抜けそうなほど甘いなにかと共に思い出した。
「あ、あ……、クソ……」
思い切り扱いてしまいたい。いや、駄目だ。ずっとそんな葛藤でぐるぐるとする。
「……デイリーめ……余計なことを」
ぼそりとカリッドが何かを呟いた。しかしフィンリーとしてはそれどころではなかった。
「あ……も、死ぬ……」
「死にはしませんよ。でも苦しいですよね。楽になりたいですよね。……はぁ。フィンリー、私にもたれなさい。手伝って差し上げます」
「い、やで、す」
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