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27話
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案の定迎えに来ていたのはジェイクだったし、帰りの馬車で散々文句を言われた。
「本当にあなたという人は」
「悪かったと言っただろ」
「だいたい黙って出かける人がありますか」
「だからそれは王子が」
また同じことをとうんざりしながら言いかけて、ふとどこへ行くか誰かに言わないとというフィンリーの言葉に対してカリッドは「家の方には私の使いに伝えさせましょう」と言ったはずだと思い出した。
「王子の使いから伝言はなかったのか」
「夜遅くにありましたよ……だからここへ迎えにも来てるんです。ですがそれまでどれほど心配したと思っているんです。おまけに夜更けなので即迎えに行きたくとも行けずで」
「あー……」
フィンリーがあんな状態だっただけに連絡の入れようもなかっただろうと思いかけたところで、あんな状態になる前に普通は既に連絡を入れているはずではと気づく。夜分というのは初めからわざとだったのだろう。デイリーの媚薬は多分カリッドも予想外だったように思っていたが、それもわからなくなってきた。だいたい、フィンリーの口からは結局「デイリーに薬を盛られた」など一言も告げていないのだ。だというのにカリッドはデイリーが薬を盛ったことに言及していた。ただなんとなくだが、カリッドの様子からもデイリーに命令したというよりはデイリーが勝手に行った気はする。とはいえ、なんらかの思惑があってカリッドがフィンリーの家にすぐ連絡を入れなかったのは間違いないとも思えた。
昨日や今朝のカリッドの態度を思うと地位が高くとも思いやりのある優しい性格をしているようにしか見えないが、確かにところどころ「ん?」となるようなところもあった。カリッドの美形極まりない笑顔が浮かぶ。ただの俺様のほうがむしろ楽だったのではないだろうか。俺様キャラは鬱陶しいかもしれないが実際偉い存在だし、偉そうなだけなら扱いは楽そうだ。わけのわからない存在すぎるデイリーはさておき、今のカリッドがもしかしたら一番わかりにくい攻略キャラかもしれない。
なんで俺様貫かなかったんだよ……!
「で、何もされていないでしょうね」
考え事をしていたからだろうか、ちゃんと話を聞いていなかった。
「え、何?」
「……カリッド王子に何もされていないでしょうねと聞いたんです」
「なっ、にも、されて、ない」
「……何をされたんです?」
「さ、れてない、っつっただろ!」
「は」
「……ジェイク。確かにお前は俺の身内だし幼馴染だし親友だと俺も思ってるけどさ、でも一応世話係でもあるんだからな」
鼻で笑ってきたジェイクを微妙な顔で見れば逆に「そうですよ」と力強く肯定された。
「オレはあなたの世話係なんです。あなたのことを全て把握しておかなければ行き届いたお世話もできません」
「あ、いや、そこまでは……」
「あなたの世話係であることにオレは誇りを持っているんです」
「ジェイク……」
まさかそんなにその仕事に情熱を捧げてくれているとはとフィンリーは少し感動する。
「あなたがいつ精通なさったかすらオレは把握してるんですからね。しかもすぐにお一人でなさることを覚えておられました」
「今すぐ忘れて」
フィンリーは当時外見は少年でも中身の知識は大人だったため、今の体でも射精できることを知るととてつもなく冷静に自慰へ移行したが、当時既に年が離れていたとかならまだしも年のほぼ変わらないジェイクが何故それらを理解した上で把握していたのか。感動など塵となって消えた。
つかなんで知ってんだよ見てたのかよ……。
「だいたい何故そんなに狼狽えるんです。……フィンリー様、まさか処女を失われたのでは……」
「つか、何でそこで処女って発想っ? 精通したの知ってんなら俺にもちゃんとついてるの知ってるよな? そこは普通失うなら童貞だろ……!」
「どうでもいいんですよそんなことは。で、奪われたんですか」
「目が怖い、目が! 奪われてないに決まってんだろ……! いい加減にしろ。それに相手は第二王子だぞ。皇族侮辱罪で捕まりたいのか」
すでに捕まるようなことを昨日しでかしたのはフィンリーだが、カリッドが気にするなと言ってくれたのでもう気にしないことにする。なんとか、気にしないことにする。
ジェイクはその後も疑わしそうな様子ではあったが、とりあえずは辛うじて信じてくれた。
翌日、いつものようにやってきたリースにも同じような心配をされ、フィンリーは辟易していた。その上、数日後に何でもなかったようにやって来たカリッドに対してのジェイクの塩対応レベルが格上げされており、色々と胃が痛い。カリッドはといえば、相変わらず無駄に綺麗な笑顔で優雅に対応しつつジェイクに対して直接さらりと「私に対する振舞いも、フィンリーにまとわりつくしょせん犬ですしね、仕方ありません」などと言って、煽っているようにしか思えない。
「町へ行きたい……アートと遊びたい」
胡散臭い居心地の悪い空気から逃げるようにして中庭へやって来ると、椅子にへたり込んだ。静かでのどかな空気はフィンリーを癒してはくれるが、町の気さくな雰囲気の中で女を見れば口説いているアートと馬鹿な話をして酒を酌み交わしたいと切に思う。男の友情最高だと心から思う。
「知っていますか? アートを選んでも選択肢を間違えていると悪い終わりもあるんですよ。商家ですが事業に失敗し、飲んだくれるアートは男のあなたを選んだことを後悔しいずれ女の元へ行きます」
「何それ、別に俺、アートをそういう目で見てないし、そもそも確かあのゲームってそういうあからさまなバッドエンドなんてなか……、……えっ?」
ははっと乾いた笑い声を上げながら言いかけ、フィンリーはハッとなり慌てて声のしたほうを見る。声でもちろんわかっていたが、そこにはデイリーがやはりどこか怖いと思わせられる笑みを浮かべながら立っていた。
「本当にあなたという人は」
「悪かったと言っただろ」
「だいたい黙って出かける人がありますか」
「だからそれは王子が」
また同じことをとうんざりしながら言いかけて、ふとどこへ行くか誰かに言わないとというフィンリーの言葉に対してカリッドは「家の方には私の使いに伝えさせましょう」と言ったはずだと思い出した。
「王子の使いから伝言はなかったのか」
「夜遅くにありましたよ……だからここへ迎えにも来てるんです。ですがそれまでどれほど心配したと思っているんです。おまけに夜更けなので即迎えに行きたくとも行けずで」
「あー……」
フィンリーがあんな状態だっただけに連絡の入れようもなかっただろうと思いかけたところで、あんな状態になる前に普通は既に連絡を入れているはずではと気づく。夜分というのは初めからわざとだったのだろう。デイリーの媚薬は多分カリッドも予想外だったように思っていたが、それもわからなくなってきた。だいたい、フィンリーの口からは結局「デイリーに薬を盛られた」など一言も告げていないのだ。だというのにカリッドはデイリーが薬を盛ったことに言及していた。ただなんとなくだが、カリッドの様子からもデイリーに命令したというよりはデイリーが勝手に行った気はする。とはいえ、なんらかの思惑があってカリッドがフィンリーの家にすぐ連絡を入れなかったのは間違いないとも思えた。
昨日や今朝のカリッドの態度を思うと地位が高くとも思いやりのある優しい性格をしているようにしか見えないが、確かにところどころ「ん?」となるようなところもあった。カリッドの美形極まりない笑顔が浮かぶ。ただの俺様のほうがむしろ楽だったのではないだろうか。俺様キャラは鬱陶しいかもしれないが実際偉い存在だし、偉そうなだけなら扱いは楽そうだ。わけのわからない存在すぎるデイリーはさておき、今のカリッドがもしかしたら一番わかりにくい攻略キャラかもしれない。
なんで俺様貫かなかったんだよ……!
「で、何もされていないでしょうね」
考え事をしていたからだろうか、ちゃんと話を聞いていなかった。
「え、何?」
「……カリッド王子に何もされていないでしょうねと聞いたんです」
「なっ、にも、されて、ない」
「……何をされたんです?」
「さ、れてない、っつっただろ!」
「は」
「……ジェイク。確かにお前は俺の身内だし幼馴染だし親友だと俺も思ってるけどさ、でも一応世話係でもあるんだからな」
鼻で笑ってきたジェイクを微妙な顔で見れば逆に「そうですよ」と力強く肯定された。
「オレはあなたの世話係なんです。あなたのことを全て把握しておかなければ行き届いたお世話もできません」
「あ、いや、そこまでは……」
「あなたの世話係であることにオレは誇りを持っているんです」
「ジェイク……」
まさかそんなにその仕事に情熱を捧げてくれているとはとフィンリーは少し感動する。
「あなたがいつ精通なさったかすらオレは把握してるんですからね。しかもすぐにお一人でなさることを覚えておられました」
「今すぐ忘れて」
フィンリーは当時外見は少年でも中身の知識は大人だったため、今の体でも射精できることを知るととてつもなく冷静に自慰へ移行したが、当時既に年が離れていたとかならまだしも年のほぼ変わらないジェイクが何故それらを理解した上で把握していたのか。感動など塵となって消えた。
つかなんで知ってんだよ見てたのかよ……。
「だいたい何故そんなに狼狽えるんです。……フィンリー様、まさか処女を失われたのでは……」
「つか、何でそこで処女って発想っ? 精通したの知ってんなら俺にもちゃんとついてるの知ってるよな? そこは普通失うなら童貞だろ……!」
「どうでもいいんですよそんなことは。で、奪われたんですか」
「目が怖い、目が! 奪われてないに決まってんだろ……! いい加減にしろ。それに相手は第二王子だぞ。皇族侮辱罪で捕まりたいのか」
すでに捕まるようなことを昨日しでかしたのはフィンリーだが、カリッドが気にするなと言ってくれたのでもう気にしないことにする。なんとか、気にしないことにする。
ジェイクはその後も疑わしそうな様子ではあったが、とりあえずは辛うじて信じてくれた。
翌日、いつものようにやってきたリースにも同じような心配をされ、フィンリーは辟易していた。その上、数日後に何でもなかったようにやって来たカリッドに対してのジェイクの塩対応レベルが格上げされており、色々と胃が痛い。カリッドはといえば、相変わらず無駄に綺麗な笑顔で優雅に対応しつつジェイクに対して直接さらりと「私に対する振舞いも、フィンリーにまとわりつくしょせん犬ですしね、仕方ありません」などと言って、煽っているようにしか思えない。
「町へ行きたい……アートと遊びたい」
胡散臭い居心地の悪い空気から逃げるようにして中庭へやって来ると、椅子にへたり込んだ。静かでのどかな空気はフィンリーを癒してはくれるが、町の気さくな雰囲気の中で女を見れば口説いているアートと馬鹿な話をして酒を酌み交わしたいと切に思う。男の友情最高だと心から思う。
「知っていますか? アートを選んでも選択肢を間違えていると悪い終わりもあるんですよ。商家ですが事業に失敗し、飲んだくれるアートは男のあなたを選んだことを後悔しいずれ女の元へ行きます」
「何それ、別に俺、アートをそういう目で見てないし、そもそも確かあのゲームってそういうあからさまなバッドエンドなんてなか……、……えっ?」
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