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28話
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「もちろん、他のルートでも選択肢にミスがあればそういった終わりはあります」
フィンリーの表情など意に介していないといった様子で、デイリーは薄らと笑みを浮かべながら続けてくる。
「ちょ、待っ」
「例えばリースはあなたと一緒になっても安心できないようで、あなたをひたすら束縛します。あなたはあなたの仕事があるというのに外出することすら全てリースに報告しなければならず、ほんの少しでも誰かと話していると知られると数日は仕置きだと文字通り縛られ、ひたすら嬲られる。次第にあなたはリースの言われるがまま、自分の意志では何もできなくなっていきます」
「いや何それ怖い……!」
「ジェイクはヤンデレらしく、あなたを得てもやはりリースと同じくまだ心配が抜けないのか、とうとうあなたを監禁するようになります。繋がれ自由を奪われたあなたはジェイクの言いなりになるしかなく、次第に心が──」
「ほんと待って! 怖くて聞きたくない以上に、どういうことなんだよ! だいたいあのゲームはCERO-Aの全年齢対象なんだぞ。ただでさえ登場人物ほぼ皆おかしいってのに、何その闇でしかないバッドエンド……!」
「そこですか」
デイリーがおかしげに笑う。
「え、あ、いや、違う。そこじゃない。……あんた、何者なんだよ……何であのゲームのこと、知ってるんだ」
「それはさておき」
「さておくなよ……! なにより聞きたいとこだよ!」
「もちろん本物のゲームにはそんなバッドエンドはないでしょうね。登場人物は個性的であってもハッピーエンド以外は大して悪くもないぬるいバッドエンドか無難なノーマルエンドだったんじゃないでしょうか。だいたいゲームの主人公は女でしょう。あなたが主人公の時点で大きく変わっていると思いませんか?」
「う。そ、れは確かに……。じゃあ今のこれは何なんだよ。あのゲームであってゲームでない今のこれは」
「もちろん、あなたの人生ではありませんか」
「そ、れはそうだけど! でもあまりにあのゲームの内容だろ」
「それはまあ、あのゲームの世界観ですしね」
「でもあのままじゃないんだろ」
「そうですね。あなたの言う全年齢対象? それだってもう既に変わっているでしょう?」
「どういう意味だよ」
そう言った後に思い出した。目の前の人物のせいで思い切りレーディングがCERO-Zの十八歳以上が対象な行為をカリッドから受けたことを。
途端に顔が熱くなるのがわかった。それを誤魔化すように思い切りデイリーを俯き加減で睨む。
「クソ! あんたが変なもん俺に盛って変えたんじゃないか。っていうか今時CERO-Zなんて規制対象過ぎて取り扱う会社ほぼないんだぞ。内容を十七歳以上対象のCERO-Dにあえて変更するくらいなんだぞ。それを……」
「あなたが少々ずれていることはよくわかりました。まあこの世界では通用しない話に今時も何もあったものではありませんけどね。とにかく、私が変えてるんですよ、仰る通り。すべて」
「……え?」
満面の笑みを浮かべながら言われたことに、睨んでいたフィンリーは思わずポカンと口を開けた。
「そんなに無防備に口を開けて。またあの甘いものを差し上げましょうか?」
だがそう言われ慌てて口を閉じてから、少ししておずおずと口を開いた。
「本当にあんた、何者なんだ……。何が目的なんだ。俺をこの世界に送ったのもあんたなのか?」
「質問が多いですね。あなたを送ったのは私ですよと認めたらむしろ信じるんですか」
「信じるしかないだろ……俺以外知り得ないことを知ってんだぞ。何なんだよ……まさか……あんた、転生ものでよくある神ってやつ?」
ハッとなりフィンリーはデイリーを改めて見た。桃に勧められるがまま、転生ものの漫画や小説をいくつか読んだことがあるが、その中でよくあったのが「死ぬ予定でなかったのに手違いで死なせてしまったため、代わりに望む属性を選んでから転生させる」といった数あるパターンに出てくる神の存在だ。とはいえデイリーを見ていてこれっぽっちも神を連想できない。むしろ──
「神? ははは、こいつはおかしい。私が神。はは、神」
「笑い過ぎだろ……!」
いつも落ち着いた様子しか見せてこないデイリーがひたすら笑っているところはあまりに珍しくてますます怖い。
「神が媚薬を無理やり盛ると?」
「媚薬を無理やり盛ってきた自覚はあるんだな? それに神様だって好き勝手くらいするだろ、神様なんだから」
「ふふ、その発想は悪くないですね。好きですよ、あなたのこと、私も」
なぶり殺してあげますよと言われているのかと錯覚しそうな表情で言われてもちっとも嬉しくない。あとこの男同士を歓迎するかのような世界観で言われるのはなおさら嬉しくない。
「俺は好きじゃない」
「おや、ふられちゃいましたね」
「煩い! そんな気全然ないくせに。いいからあんたが何者なのか言えよ! 言わないってことはむしろただ単にやたら情報にだけ詳しい一般人とかなのか?」
「はは、何ですかそれは。一般人にあなたをこの世界へ送ったり、世界観を好きに変えたりする力があると? 一般という言葉がゲシュタルト崩壊しそうですね。あと先ほどからあなたが声を潜めることもなく他の者に聞かれては怪しまれるようなことばかり大声で言っているにも関わらず、私が好きにさせていることについても何故か考えたらどうですか」
「どういう意味だよ」
言いながら辺りを見回すと、場所は変わっていないはずなのにどこか違和感しかない空気が漂っていることに気づいた。
「ようやく気付きました? あなたは中庭にいるようでいない状態なんですよ、今。私が力を使って次元を歪ませていますので。だから好きに転生について叫べるというわけです、よかったですね」
「じゃあやっぱり神……」
「私を見るたびにわけもなく怖がっていた理由を考えてみてごらんなさい」
ばれていたようだ。フィンリーはそっと目を逸らした。
確かにデイリーを見るたびに妙に心許無かったり心臓に悪いと思ったりしていた。冷たそうな造形ではあるが、丁寧な言動で接してくる相手に対しわけもなく怖いと思っていた。まあ実際ろくでもないものを飲ませてきたわけだが、そういったことをしそうだなどと思っていたわけではない。ただ落ち着かなかった。この世界では珍しい黒髪や妖しげな琥珀色の目が原因というわけではない、何かがフィンリーを落ち着かなくさせていた。
「私は魔の世界の生き物なんですよ」
今、心のどこかでなんとなく思っていたがあえて口にしなかったフィンリーに、デイリーはにっこりと自ら決定打となる事柄を明確にしてきた。
フィンリーの表情など意に介していないといった様子で、デイリーは薄らと笑みを浮かべながら続けてくる。
「ちょ、待っ」
「例えばリースはあなたと一緒になっても安心できないようで、あなたをひたすら束縛します。あなたはあなたの仕事があるというのに外出することすら全てリースに報告しなければならず、ほんの少しでも誰かと話していると知られると数日は仕置きだと文字通り縛られ、ひたすら嬲られる。次第にあなたはリースの言われるがまま、自分の意志では何もできなくなっていきます」
「いや何それ怖い……!」
「ジェイクはヤンデレらしく、あなたを得てもやはりリースと同じくまだ心配が抜けないのか、とうとうあなたを監禁するようになります。繋がれ自由を奪われたあなたはジェイクの言いなりになるしかなく、次第に心が──」
「ほんと待って! 怖くて聞きたくない以上に、どういうことなんだよ! だいたいあのゲームはCERO-Aの全年齢対象なんだぞ。ただでさえ登場人物ほぼ皆おかしいってのに、何その闇でしかないバッドエンド……!」
「そこですか」
デイリーがおかしげに笑う。
「え、あ、いや、違う。そこじゃない。……あんた、何者なんだよ……何であのゲームのこと、知ってるんだ」
「それはさておき」
「さておくなよ……! なにより聞きたいとこだよ!」
「もちろん本物のゲームにはそんなバッドエンドはないでしょうね。登場人物は個性的であってもハッピーエンド以外は大して悪くもないぬるいバッドエンドか無難なノーマルエンドだったんじゃないでしょうか。だいたいゲームの主人公は女でしょう。あなたが主人公の時点で大きく変わっていると思いませんか?」
「う。そ、れは確かに……。じゃあ今のこれは何なんだよ。あのゲームであってゲームでない今のこれは」
「もちろん、あなたの人生ではありませんか」
「そ、れはそうだけど! でもあまりにあのゲームの内容だろ」
「それはまあ、あのゲームの世界観ですしね」
「でもあのままじゃないんだろ」
「そうですね。あなたの言う全年齢対象? それだってもう既に変わっているでしょう?」
「どういう意味だよ」
そう言った後に思い出した。目の前の人物のせいで思い切りレーディングがCERO-Zの十八歳以上が対象な行為をカリッドから受けたことを。
途端に顔が熱くなるのがわかった。それを誤魔化すように思い切りデイリーを俯き加減で睨む。
「クソ! あんたが変なもん俺に盛って変えたんじゃないか。っていうか今時CERO-Zなんて規制対象過ぎて取り扱う会社ほぼないんだぞ。内容を十七歳以上対象のCERO-Dにあえて変更するくらいなんだぞ。それを……」
「あなたが少々ずれていることはよくわかりました。まあこの世界では通用しない話に今時も何もあったものではありませんけどね。とにかく、私が変えてるんですよ、仰る通り。すべて」
「……え?」
満面の笑みを浮かべながら言われたことに、睨んでいたフィンリーは思わずポカンと口を開けた。
「そんなに無防備に口を開けて。またあの甘いものを差し上げましょうか?」
だがそう言われ慌てて口を閉じてから、少ししておずおずと口を開いた。
「本当にあんた、何者なんだ……。何が目的なんだ。俺をこの世界に送ったのもあんたなのか?」
「質問が多いですね。あなたを送ったのは私ですよと認めたらむしろ信じるんですか」
「信じるしかないだろ……俺以外知り得ないことを知ってんだぞ。何なんだよ……まさか……あんた、転生ものでよくある神ってやつ?」
ハッとなりフィンリーはデイリーを改めて見た。桃に勧められるがまま、転生ものの漫画や小説をいくつか読んだことがあるが、その中でよくあったのが「死ぬ予定でなかったのに手違いで死なせてしまったため、代わりに望む属性を選んでから転生させる」といった数あるパターンに出てくる神の存在だ。とはいえデイリーを見ていてこれっぽっちも神を連想できない。むしろ──
「神? ははは、こいつはおかしい。私が神。はは、神」
「笑い過ぎだろ……!」
いつも落ち着いた様子しか見せてこないデイリーがひたすら笑っているところはあまりに珍しくてますます怖い。
「神が媚薬を無理やり盛ると?」
「媚薬を無理やり盛ってきた自覚はあるんだな? それに神様だって好き勝手くらいするだろ、神様なんだから」
「ふふ、その発想は悪くないですね。好きですよ、あなたのこと、私も」
なぶり殺してあげますよと言われているのかと錯覚しそうな表情で言われてもちっとも嬉しくない。あとこの男同士を歓迎するかのような世界観で言われるのはなおさら嬉しくない。
「俺は好きじゃない」
「おや、ふられちゃいましたね」
「煩い! そんな気全然ないくせに。いいからあんたが何者なのか言えよ! 言わないってことはむしろただ単にやたら情報にだけ詳しい一般人とかなのか?」
「はは、何ですかそれは。一般人にあなたをこの世界へ送ったり、世界観を好きに変えたりする力があると? 一般という言葉がゲシュタルト崩壊しそうですね。あと先ほどからあなたが声を潜めることもなく他の者に聞かれては怪しまれるようなことばかり大声で言っているにも関わらず、私が好きにさせていることについても何故か考えたらどうですか」
「どういう意味だよ」
言いながら辺りを見回すと、場所は変わっていないはずなのにどこか違和感しかない空気が漂っていることに気づいた。
「ようやく気付きました? あなたは中庭にいるようでいない状態なんですよ、今。私が力を使って次元を歪ませていますので。だから好きに転生について叫べるというわけです、よかったですね」
「じゃあやっぱり神……」
「私を見るたびにわけもなく怖がっていた理由を考えてみてごらんなさい」
ばれていたようだ。フィンリーはそっと目を逸らした。
確かにデイリーを見るたびに妙に心許無かったり心臓に悪いと思ったりしていた。冷たそうな造形ではあるが、丁寧な言動で接してくる相手に対しわけもなく怖いと思っていた。まあ実際ろくでもないものを飲ませてきたわけだが、そういったことをしそうだなどと思っていたわけではない。ただ落ち着かなかった。この世界では珍しい黒髪や妖しげな琥珀色の目が原因というわけではない、何かがフィンリーを落ち着かなくさせていた。
「私は魔の世界の生き物なんですよ」
今、心のどこかでなんとなく思っていたがあえて口にしなかったフィンリーに、デイリーはにっこりと自ら決定打となる事柄を明確にしてきた。
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