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7話
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気づけば寝ていたようで、目が覚めてぼんやり起き上がるとさすがに体の痛みやだるさは楽になっていた。
それにしても、と新二は思う。気づけば寝るくらい、多分疲れきっていたのだろう。
「……だいたいあの馬鹿、いくら切れてたからって調子に乗ってマジ何回すれば気が済むんだ、どっかおかしいんじゃねーのか」
普通そんなに何度も勃起し射精するものなのかと目を細めながらブツブツ考えていると「起きたのか」と顕太が近づいてきた。
「ああ。お前ももう、機嫌は直ったのか?」
「機嫌? あー、うん、まあ。スノーマンはムカつくけど新二にはもう怒ってないよ」
「ったく。俺からしたら理不尽極まりないんだけど」
はぁ、とため息を吐くも、なんとなく顕太の様子がおかしい気がして、新二は顕太を見上げた。
「どうかしたのか?」
「んー? ああ、いや。……新二さーなんでそんないつも眠いんだよ」
「俺? いや別にそんな眠いつもりはないし、別にお前にも『眠い』とか言ってねーだろ」
「でもよく寝るし」
「今まで寝てたのは多分お前のせいだろ。それに多少眠い時もお前だってあるだろ? お前こそ眠いとか言ったりしてる気がするけど」
怪訝に思い、新二が逆に聞けば「まあそりゃあるけど」と言いつつも納得いかないといった表情をしている。そんなに自分は眠そうにしていただろうかと新二のほうが納得がいかない。
いや、言われてみるとそういえば寝ていたということは今日に限らずちょくちょくあるが、そんなに珍しいことなのだろうかと思う。自分よりも周りのほうが「眠い」とよく言っている気がする。
「あーもしかして俺、話の途中で寝た? だったら悪い。まだ話、もしかして終わってなかった?」
「……ううん。まあ新二が別に違和感ないならいいよ。今からどうする? どっか出かける?」
気を取り直したように顕太がニコニコと聞いてきた。
「別に……あ、そういや近所で今日、祭りなかったっけ」
「ああ! なんかあったな、一週間くらい前? そんくらいからやたら提灯飾ってたよな」
「そこ行かねーか」
「行く!」
先ほどまでなんとなくおかしかった気がしたが、今はもういつもの顕太だった。嬉しそうにニコニコしながら「いっぱい撮らねーと」などと言っている。
「……俺は撮るなよ」
「なんで!」
「だってお前撮ったらネットにあげるだろ……」
「別にいーだろ。お前気にしすぎなんだよ。他のヤツのも見てみろよ、皆毎日、今日は何したとかどこ行ったとか書いてるし画像載せてんぞ」
「それとお前のとはなんか違うってわかれよ!」
呆れたように言っても「同じだろー」と顕太は気にした様子もない。先ほどの訳のわからない何かを気にするなら、こちらをもっと気にして欲しいと新二は微妙な気持ちになった。
近所の祭りはさほど大きなものでもなかったが神輿を見たり出店を回ったりした。
「なー、お前なんで唐揚げ買ったの」
暫く祭りと店を堪能した後で、二人はいくつか買ったものを持ち帰り、狭いがベランダにキャンプ用の椅子とテーブルのセットを置いてそこへ食べ物を乗せていく。
「なんでって、祭りには唐揚げっしょ」
顕太が当然だろといった風に返してくる。
「だって唐揚げならコンビニのが安くで美味くねーか」
「それ言うなら新二が買ったフランクだってそーだろ。コンビニのが断然安くて美味い」
「……」
珍しく言い返せずに新二は黙って買い置きしてある缶ビールをとりあえず二本、持ってくる。
「結局雰囲気だよな、雰囲気」
「でもその場で食うんじゃなくて持って帰んなら雰囲気もへったくれもなくないか」
「新二は変なとこほんと気にするよな。入れ物や買った時の雰囲気も全部入れんの、そこは! だいたいそれなら焼きそばだってコンビニの冷食のが美味くね?」
「まーな」
でも、こういうところで買った焼きそばの説得力は半端ない。やはり味というか雰囲気なのかもしれないと新二もなんとなく納得した。
二人で椅子に座り、缶のまま乾杯してビールに口をつけたところで花火が上がった。
「こーゆーのって夏ってイメージだよな」
新二が言うと顕太も「それな」とニコニコ同意してくる。
「でも秋の祭りもいーもんだって」
「まあな。つかお前、やたら撮ってたやつ、なんもSNSに上げてねーだろな」
「あっ、ビール最高!」
「……バカ太……」
「ちょ、ちょ! 新二まで俺の兄貴みたいに呼ぶなよな」
「一史がお前をバカ太って言うの改めて今、わかるって実感してる」
「わからないでっ? いいの撮れたんだよだって! 新二がその場で食う用のブドウ飴やたら嬉しそうに買ってるとことかめっちゃ可愛かった!」
「そんなのまで撮ったのかっ? くそ」
油断していた。後で一応確認しておかねばと新二はため息を吐いた後に顕太が買った唐揚げを一つ取った。
「……意外と美味いな」
「だろだろ? つか花火、規模は小さいみたいだけど結構綺麗よな。去年もやってたんかなー。気づかなかったよな」
「多分出かけてたかなんかだろうな。俺、未だにこれがなんの祭りかわかってねーけど」
「あ、それ俺も」
だよな、と顔を合わせて笑った。ビールも屋台で買った食べ物も花火もどれもが新二の中に染み込んでくる感じがする。
「なーなー、花火見ながらキスとか、ちょっとロマンチックだと思わん?」
男二人だと恋人同士でもあっという間に食べ物はなくなる。食べ終わってもまだ少しずつ打ち上がる花火に、顕太がキラキラした目を向けながら言ってくる。
「キスしてたら花火なんて見えねーだろ」
「そこに論理的な返しいらないから!」
呆れながらも顕太が椅子から身を乗り出して顔を近づけてきた。
キスをしながらも花火が上がっているのがわかるのは、やはりもっと近くで見るか、もっと大きな打ち上げ花火なのだろう。それでも薄目を開けて横を窺うと花火は見える。
「なー、新二。俺とキスしながら花火に夢中なのもどうかと思うけど」
少しだけ唇を離した状態で顕太がおかしそうに囁いてきた。
「だったらもっと夢中にさせたらいいだろ」
新二も笑いながら囁いた。自分は案外雰囲気に弱かったなとそして内心思う。結局顕太が載せた画像を確認したのは翌日になってからだった。
それにしても、と新二は思う。気づけば寝るくらい、多分疲れきっていたのだろう。
「……だいたいあの馬鹿、いくら切れてたからって調子に乗ってマジ何回すれば気が済むんだ、どっかおかしいんじゃねーのか」
普通そんなに何度も勃起し射精するものなのかと目を細めながらブツブツ考えていると「起きたのか」と顕太が近づいてきた。
「ああ。お前ももう、機嫌は直ったのか?」
「機嫌? あー、うん、まあ。スノーマンはムカつくけど新二にはもう怒ってないよ」
「ったく。俺からしたら理不尽極まりないんだけど」
はぁ、とため息を吐くも、なんとなく顕太の様子がおかしい気がして、新二は顕太を見上げた。
「どうかしたのか?」
「んー? ああ、いや。……新二さーなんでそんないつも眠いんだよ」
「俺? いや別にそんな眠いつもりはないし、別にお前にも『眠い』とか言ってねーだろ」
「でもよく寝るし」
「今まで寝てたのは多分お前のせいだろ。それに多少眠い時もお前だってあるだろ? お前こそ眠いとか言ったりしてる気がするけど」
怪訝に思い、新二が逆に聞けば「まあそりゃあるけど」と言いつつも納得いかないといった表情をしている。そんなに自分は眠そうにしていただろうかと新二のほうが納得がいかない。
いや、言われてみるとそういえば寝ていたということは今日に限らずちょくちょくあるが、そんなに珍しいことなのだろうかと思う。自分よりも周りのほうが「眠い」とよく言っている気がする。
「あーもしかして俺、話の途中で寝た? だったら悪い。まだ話、もしかして終わってなかった?」
「……ううん。まあ新二が別に違和感ないならいいよ。今からどうする? どっか出かける?」
気を取り直したように顕太がニコニコと聞いてきた。
「別に……あ、そういや近所で今日、祭りなかったっけ」
「ああ! なんかあったな、一週間くらい前? そんくらいからやたら提灯飾ってたよな」
「そこ行かねーか」
「行く!」
先ほどまでなんとなくおかしかった気がしたが、今はもういつもの顕太だった。嬉しそうにニコニコしながら「いっぱい撮らねーと」などと言っている。
「……俺は撮るなよ」
「なんで!」
「だってお前撮ったらネットにあげるだろ……」
「別にいーだろ。お前気にしすぎなんだよ。他のヤツのも見てみろよ、皆毎日、今日は何したとかどこ行ったとか書いてるし画像載せてんぞ」
「それとお前のとはなんか違うってわかれよ!」
呆れたように言っても「同じだろー」と顕太は気にした様子もない。先ほどの訳のわからない何かを気にするなら、こちらをもっと気にして欲しいと新二は微妙な気持ちになった。
近所の祭りはさほど大きなものでもなかったが神輿を見たり出店を回ったりした。
「なー、お前なんで唐揚げ買ったの」
暫く祭りと店を堪能した後で、二人はいくつか買ったものを持ち帰り、狭いがベランダにキャンプ用の椅子とテーブルのセットを置いてそこへ食べ物を乗せていく。
「なんでって、祭りには唐揚げっしょ」
顕太が当然だろといった風に返してくる。
「だって唐揚げならコンビニのが安くで美味くねーか」
「それ言うなら新二が買ったフランクだってそーだろ。コンビニのが断然安くて美味い」
「……」
珍しく言い返せずに新二は黙って買い置きしてある缶ビールをとりあえず二本、持ってくる。
「結局雰囲気だよな、雰囲気」
「でもその場で食うんじゃなくて持って帰んなら雰囲気もへったくれもなくないか」
「新二は変なとこほんと気にするよな。入れ物や買った時の雰囲気も全部入れんの、そこは! だいたいそれなら焼きそばだってコンビニの冷食のが美味くね?」
「まーな」
でも、こういうところで買った焼きそばの説得力は半端ない。やはり味というか雰囲気なのかもしれないと新二もなんとなく納得した。
二人で椅子に座り、缶のまま乾杯してビールに口をつけたところで花火が上がった。
「こーゆーのって夏ってイメージだよな」
新二が言うと顕太も「それな」とニコニコ同意してくる。
「でも秋の祭りもいーもんだって」
「まあな。つかお前、やたら撮ってたやつ、なんもSNSに上げてねーだろな」
「あっ、ビール最高!」
「……バカ太……」
「ちょ、ちょ! 新二まで俺の兄貴みたいに呼ぶなよな」
「一史がお前をバカ太って言うの改めて今、わかるって実感してる」
「わからないでっ? いいの撮れたんだよだって! 新二がその場で食う用のブドウ飴やたら嬉しそうに買ってるとことかめっちゃ可愛かった!」
「そんなのまで撮ったのかっ? くそ」
油断していた。後で一応確認しておかねばと新二はため息を吐いた後に顕太が買った唐揚げを一つ取った。
「……意外と美味いな」
「だろだろ? つか花火、規模は小さいみたいだけど結構綺麗よな。去年もやってたんかなー。気づかなかったよな」
「多分出かけてたかなんかだろうな。俺、未だにこれがなんの祭りかわかってねーけど」
「あ、それ俺も」
だよな、と顔を合わせて笑った。ビールも屋台で買った食べ物も花火もどれもが新二の中に染み込んでくる感じがする。
「なーなー、花火見ながらキスとか、ちょっとロマンチックだと思わん?」
男二人だと恋人同士でもあっという間に食べ物はなくなる。食べ終わってもまだ少しずつ打ち上がる花火に、顕太がキラキラした目を向けながら言ってくる。
「キスしてたら花火なんて見えねーだろ」
「そこに論理的な返しいらないから!」
呆れながらも顕太が椅子から身を乗り出して顔を近づけてきた。
キスをしながらも花火が上がっているのがわかるのは、やはりもっと近くで見るか、もっと大きな打ち上げ花火なのだろう。それでも薄目を開けて横を窺うと花火は見える。
「なー、新二。俺とキスしながら花火に夢中なのもどうかと思うけど」
少しだけ唇を離した状態で顕太がおかしそうに囁いてきた。
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