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99話
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森の中は村よりも雪が積もっているようだった。それでも本格的ではないとはいえ、既に雰囲気は変わっている。まだ何とか道は分かるものの、これ以上積もったら普段の森には慣れているサファルでも確かに道に迷う可能性はあるように思えた。もちろん道を把握してはいるが、雪により風景が一変する上にどこを見ても一見似た感じになる。同じような雪の積もった木々に雪の積もった地面。
「でも……綺麗だな」
元々村でも朝は早い。それもあり、夜明け前に出たサファルは目の前の景色に思わず呟いていた。白い木々の隙間から朝が明けそうな空が見えるのだが、白に反射してまるで光っているような、だが深い青をしている。逆に明かりのないはずの地面もまるでその深い青に照らされているように見えた。
ふとサファルはカジャックにもらった指輪を見る。雪の降る夜の森といった風に見える部分は今のような朝が明ける雪の森から見える空の色とも似ている気がした。えへへとニヤニヤしながら指輪を見た後に、サファルはまた風景を楽しみながら奥へどんどん入って行く。
そろそろ昼も過ぎた頃サファルはようやくカジャックの家付近にたどり着いた。会うのが久しぶりなのもありドキドキとしながら家の中を覗いたが、あいにくカジャックはいなかった。家で勝手に待とうかとも思ったが、少しでも早く会いたいとサファルは辺りを探すことにした。
家の周りは除雪されているが、少し歩くと森の奥だからか更に雪が積もっている気がする。これはあまり歩き回らないほうがいいかもしれないなとサファルが思い出したところでカジャックを見つけた。この雪が積もった中どうやって見つけるのか、木の実などを集めていたようだ。
少し遠い位置から気づいたのだが、雪の白にカジャックの黒っぽいコートは目を引いた。小柄だというのに遠目だとあまりそう見えないのはスタイルがいいからだろう。手足が長いだけでなく実際は結構いい筋肉の持ち主だというのに服を着ていると、とてもスリムに見える。ぴったりした服はそんなカジャックにとても似合っている。
って駄目だ俺。カジャックの体見てるとムラムラしてくる。
自分に微妙になりながらも仕方ないともサファルは思った。あの均等のとれた格好のいい美しい体に自分は抱かれ、そして触れることも出来るのだと思うとムラムラせずにはいられない。とはいえ久しぶりに会うというのにそれはどうなのかと思い目線を変えた。
フードを被っているのであまり表情などは見えないが、白い肌は分かる。あの美しいシルバーの髪も時折見えた。改めて、何て綺麗な人なんだろうとサファルは思った。目付きの悪さがどうしても印象深くなりがちだが、それ以外はとても整った顔立ちであり、色素の薄さはこの雪景色に溶け込むようだ。だいたい目付きも今ではサファルの中でトップクラスに大好きなチャームポイントになっている。
俺、こんな人と恋人とか、いつか罰当たんないかな……。
思わずまたニヤニヤとしていると、カジャックがこちらに気づいてきた。
「サファル?」
驚いた様子だが、その後すぐにサファルの元へ駆けつけてきてくれた。
「サファル……だよな」
「はい。まだ雪、深くないんで来ちゃいました」
「でもいつ深くなるか……」
「それなんですが……カジャックに相談なく決めてしまってすみません。俺、雪解けまでここにいさせてもらえませんか?」
「え……、村は……それにリゼは」
「村はそれこそ雪解けまで大して何も出来ません。あと、リゼは今、ルーカスの家にいるから……その、カジャック……迷惑でした?」
唖然としつつもどこか困惑している様子が感じ取られ、サファルはおずおずと聞いた。するとカジャックはまた驚いた顔になった後に小さく笑みを浮かべてきた。
「そんな訳がない。いらっしゃい、サファル。お前が大丈夫ならいいんだ。俺はむしろ来てくれて嬉しいよ」
そして木の実を持ったままぎゅっとサファルを抱きしめてきた。
カジャックの家に入るとすぐに囲炉裏の火を起こしてくれた。冷えた体がじんわりと暖まってくる。
村だと台所と共通の暖炉があり、それのせいでわりと煤だらけだったりもする。ここも囲炉裏により柱も天井も床も煤で黒くなってはいるが、家の雰囲気のせいだろうか。むしろそれが味を作っている気がする。煤で黒くなっているとはいえ、磨き込まれた床はいつ見ても綺麗だ。
温かい蜂蜜酒を淹れてくれたカジャックは村やリゼたちの様子を聞いてきていた。
「なるほど。確かに雪があると難しいな」
「はい。あの、俺……ほんとに雪解けまでここにいて構いません? 迷惑じゃない?」
「勝手に来ておいて?」
カジャックがおかしげに聞き返してきた。
「う」
「すまない。久しぶりのサファルが嬉しくてむしろ意地悪を言った。迷惑なはずないだろう。いてくれ」
「カジャック」
サファルこそ久しぶりのカジャックが嬉しくて、そして甘くて、飛び付くように抱きついた。カジャックはそんなサファルの背中をぽんぽんと優しく撫でてくる。
「……久しぶりなのに子ども扱いされてるような……」
「慈しんでるんだ」
「優しいのも大好きですが、今の俺は激しい感じのも大好きかもですけど」
「相変わらずだな。そういうのは夜に取っておくよ」
相変わらずカジャックはカジャックだよとサファルは突っ込みたかった。久しぶりだというのにこの落ち着きよう。サファル一人が興奮しているみたいで少々切ない。
とはいえ、非難するつもりはない。大袈裟なことを言えば文化の違いみたいなものだ。ずっと村や町での生活に慣れているサファルからすれば、夜は家族など誰かと一緒に眠るものだからむしろ昼のほうが性的なことをするものという感覚がある。実際周りがそうだった。だがずっとほぼ一人だったカジャックは明るいうちにする感覚がぴんとこないようだ。
確かに夜の明かりのない月だけのほの暗い中でぼんやり見える体や、それをまさぐる様子はある意味余計に気持ちを高ぶらせてくるかもしれない。サファルとしても、カジャックに比べて平凡極まりない自分の体があまり見えないほうが落ち着くかもしれないとは思えた。
「でも……綺麗だな」
元々村でも朝は早い。それもあり、夜明け前に出たサファルは目の前の景色に思わず呟いていた。白い木々の隙間から朝が明けそうな空が見えるのだが、白に反射してまるで光っているような、だが深い青をしている。逆に明かりのないはずの地面もまるでその深い青に照らされているように見えた。
ふとサファルはカジャックにもらった指輪を見る。雪の降る夜の森といった風に見える部分は今のような朝が明ける雪の森から見える空の色とも似ている気がした。えへへとニヤニヤしながら指輪を見た後に、サファルはまた風景を楽しみながら奥へどんどん入って行く。
そろそろ昼も過ぎた頃サファルはようやくカジャックの家付近にたどり着いた。会うのが久しぶりなのもありドキドキとしながら家の中を覗いたが、あいにくカジャックはいなかった。家で勝手に待とうかとも思ったが、少しでも早く会いたいとサファルは辺りを探すことにした。
家の周りは除雪されているが、少し歩くと森の奥だからか更に雪が積もっている気がする。これはあまり歩き回らないほうがいいかもしれないなとサファルが思い出したところでカジャックを見つけた。この雪が積もった中どうやって見つけるのか、木の実などを集めていたようだ。
少し遠い位置から気づいたのだが、雪の白にカジャックの黒っぽいコートは目を引いた。小柄だというのに遠目だとあまりそう見えないのはスタイルがいいからだろう。手足が長いだけでなく実際は結構いい筋肉の持ち主だというのに服を着ていると、とてもスリムに見える。ぴったりした服はそんなカジャックにとても似合っている。
って駄目だ俺。カジャックの体見てるとムラムラしてくる。
自分に微妙になりながらも仕方ないともサファルは思った。あの均等のとれた格好のいい美しい体に自分は抱かれ、そして触れることも出来るのだと思うとムラムラせずにはいられない。とはいえ久しぶりに会うというのにそれはどうなのかと思い目線を変えた。
フードを被っているのであまり表情などは見えないが、白い肌は分かる。あの美しいシルバーの髪も時折見えた。改めて、何て綺麗な人なんだろうとサファルは思った。目付きの悪さがどうしても印象深くなりがちだが、それ以外はとても整った顔立ちであり、色素の薄さはこの雪景色に溶け込むようだ。だいたい目付きも今ではサファルの中でトップクラスに大好きなチャームポイントになっている。
俺、こんな人と恋人とか、いつか罰当たんないかな……。
思わずまたニヤニヤとしていると、カジャックがこちらに気づいてきた。
「サファル?」
驚いた様子だが、その後すぐにサファルの元へ駆けつけてきてくれた。
「サファル……だよな」
「はい。まだ雪、深くないんで来ちゃいました」
「でもいつ深くなるか……」
「それなんですが……カジャックに相談なく決めてしまってすみません。俺、雪解けまでここにいさせてもらえませんか?」
「え……、村は……それにリゼは」
「村はそれこそ雪解けまで大して何も出来ません。あと、リゼは今、ルーカスの家にいるから……その、カジャック……迷惑でした?」
唖然としつつもどこか困惑している様子が感じ取られ、サファルはおずおずと聞いた。するとカジャックはまた驚いた顔になった後に小さく笑みを浮かべてきた。
「そんな訳がない。いらっしゃい、サファル。お前が大丈夫ならいいんだ。俺はむしろ来てくれて嬉しいよ」
そして木の実を持ったままぎゅっとサファルを抱きしめてきた。
カジャックの家に入るとすぐに囲炉裏の火を起こしてくれた。冷えた体がじんわりと暖まってくる。
村だと台所と共通の暖炉があり、それのせいでわりと煤だらけだったりもする。ここも囲炉裏により柱も天井も床も煤で黒くなってはいるが、家の雰囲気のせいだろうか。むしろそれが味を作っている気がする。煤で黒くなっているとはいえ、磨き込まれた床はいつ見ても綺麗だ。
温かい蜂蜜酒を淹れてくれたカジャックは村やリゼたちの様子を聞いてきていた。
「なるほど。確かに雪があると難しいな」
「はい。あの、俺……ほんとに雪解けまでここにいて構いません? 迷惑じゃない?」
「勝手に来ておいて?」
カジャックがおかしげに聞き返してきた。
「う」
「すまない。久しぶりのサファルが嬉しくてむしろ意地悪を言った。迷惑なはずないだろう。いてくれ」
「カジャック」
サファルこそ久しぶりのカジャックが嬉しくて、そして甘くて、飛び付くように抱きついた。カジャックはそんなサファルの背中をぽんぽんと優しく撫でてくる。
「……久しぶりなのに子ども扱いされてるような……」
「慈しんでるんだ」
「優しいのも大好きですが、今の俺は激しい感じのも大好きかもですけど」
「相変わらずだな。そういうのは夜に取っておくよ」
相変わらずカジャックはカジャックだよとサファルは突っ込みたかった。久しぶりだというのにこの落ち着きよう。サファル一人が興奮しているみたいで少々切ない。
とはいえ、非難するつもりはない。大袈裟なことを言えば文化の違いみたいなものだ。ずっと村や町での生活に慣れているサファルからすれば、夜は家族など誰かと一緒に眠るものだからむしろ昼のほうが性的なことをするものという感覚がある。実際周りがそうだった。だがずっとほぼ一人だったカジャックは明るいうちにする感覚がぴんとこないようだ。
確かに夜の明かりのない月だけのほの暗い中でぼんやり見える体や、それをまさぐる様子はある意味余計に気持ちを高ぶらせてくるかもしれない。サファルとしても、カジャックに比べて平凡極まりない自分の体があまり見えないほうが落ち着くかもしれないとは思えた。
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