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127話
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おまけに一緒に歩いているのはほぼ小さな子どもばかりだ。一人はリゼと似た年齢かもしれないが、あとの三人は明らかに子どもだ。とはいえ森の中をのんびり仲良く散歩という状況はないだろう。
一体どういった関係なのだろうと二人とも内心思いつつ、危険はなさそうだが気にはしておこうと歩いているとリゼと似た年齢の少女が近くを通りかかった時、どこかに足を取られたのだろうか、ふらついてきた。
「危ない」
サファルが咄嗟に支えると、その少女が頭を上げてきた。
「申し訳ありません。……お強いんですね。その、ありがとうございます」
「あ、えっと、うん」
知らない相手にはちゃんと敬語を使うサファルがため口のような返答になったのは少し動揺してだ。
強い? って何が? 少なくとも腕力は下手をすると子どもよりも弱いんだけど。
っていうか、それより……この子……もしかして……目が……?
「姉さま、大丈夫ですか」
サファルが戸惑っていると子どもの一人が駆けつけてきた。それに続いてあとの二人の子どもも駆けつけてくる。
「大丈夫、ありがとうギル。それに二人も」
姉さま、と呼びかけた少年は少女を支える。それを見て、やはり少女は盲目なのだとサファルは確信した。尚更、そんな少女が森の中にいることに違和感を覚える。
「お前さん方はまたどうしてこんな森の中を?」
遅れてやってきた老人が無事を確認するように子どもたちを一瞥した後にサファルたちを見てきた。
「……旅の途中だ」
あんたたちこそどうしてだよ? などと思いつつどう答えようかとサファルが考えている横でカジャックが答えた。
「ふむ……方向からしてイントから来たと見えるが。あちらに変わった様子はなかったですかな」
「変わった……? えっと、俺らは確かにイントから来たけど、ほんとに旅の一環だったからもし変わってても元々のイントを知らないんです」
「ああ、いや。わしらはそもそもイント国民でな。じゃが三国会議というものがあったのは……うむ、知っておられるか。その後少ししてからそこから出てきたんじゃ。お前さん方はわしらよりも後にここに着いた。じゃからその後何かもしイントに変わった動きがあれば、と思っての」
三国会議の後、少ししてから出てきた。
何だか引っかかる言い方だった。クエンティ王の側近が、あの会議についてあまりいい顔をしていなかったのをサファルは思い出す。
「お、じいさん。俺らね、イントを出てから寄り道してたからここに着くの遅かったんです。だから多分、おじいさんたちより俺らのほうが早く出てた可能性高いかも。……あの、三国会議でなにか困った決定でもありましたか? こんな……おじいさんや子どもたちが出てこなければならないような……」
とても心配になって聞けば、老人はじっとサファルを見てから何故か少し笑ってきた。
「あの……?」
「いや、すまんの。ふと、大昔に知り合いだったやつを何故か思い出してな。青年、わしらはこんなでも術者でな。一般人ではない。一般の民たちは多少のことでは多分何も分からないだろうし変わらないであろうな、イントに大きな異変が起きれば別だがの」
イントに大きな異変?
ますます気になる言い方だった。とはいえ老人は突っ込んでは話すつもりはなさそうだし、子どもたちもどこか警戒しているような気配がある。それにサファルたちも三国会議に関わることなら内容が分からないままではあるが、あまり足を踏み入れないほうがいいだろうことくらいは分かっている。
「引き留めて申し訳なかったの、旅の人。お前さん方にウンディーネとサラマンダーの加護がありますよう」
「ありがとうございます。あなた方もお気をつけて」
「……」
礼を告げたサファルの横でカジャックは黙ったまま老人をじっと見ていた。だがその後に軽く頭を下げる。
歩き出してしばらくしてから、サファルはようやくカジャックに聞いた。
「カジャックは途中、何であんなに警戒してたんですか?」
「……あのご老人はかなりの術者だ。多分目を盲いた少女も」
かなりの術者。別にそれは警戒する理由にはならない。──こんな森の中でなければ。
各国それぞれが、高位魔術師を数名は抱えているというのをサファルも聞いたことはある。カジャックやサファルは特殊なパターンだとして、通常は相当の魔力の持ち主は各国お抱えの存在か、もしくは何か理由があってそれこそ隠れるようにして暮らしているかじゃないだろうか。
その場合、老人たちがここにいるのはイント国お抱えの術者としてか、何らかの理由があって隠れているかと思われる。人柄がよさそうとか云々は関係ない。もちろん例外もあるがカジャックが警戒する理由として、一応対象が分からないまま貴族から逃げている身としては十分だろうとサファルも思った。
「でも……何でかなりの持ち主だって分かったんですか? 確かカジャックでも見ただけでは魔力、感じとれないんですよね?」
「少女はお前に触れただけでお前の魔力が強いと言っていた。目が見えない分敏感なだけかもしれないけどな」
「え、あ、お強いって、そういう……」
ですよね、腕力絡みの訳ないですよね。
そう思いつつも男としてはそちらが強いと一度くらいは言われてみたい。
「あと、あのご老人は多分俺たちの魔力の強さを分かっていたからこそイントの様子を聞いてきたんじゃないかと思う」
「何でなんですか?」
「あの人自身言っていただろう。一般人なら多少のことでは分からないだろうと。なのに俺たちに何か変わった様子はなかったか聞いてきた」
「あ」
そんなこと、サファルはこれっぽっちも気づかなかった。
「俺とお前の魔力属性すら見抜いていた」
「えっ? いつ?」
「……ウンディーネとサラマンダーと言っていただろう」
「……、……あー! あー、あれ、そういう意味……」
そういえば水の精霊と火の精霊の名前だったと、サファルは言われて思い出した。
一体どういった関係なのだろうと二人とも内心思いつつ、危険はなさそうだが気にはしておこうと歩いているとリゼと似た年齢の少女が近くを通りかかった時、どこかに足を取られたのだろうか、ふらついてきた。
「危ない」
サファルが咄嗟に支えると、その少女が頭を上げてきた。
「申し訳ありません。……お強いんですね。その、ありがとうございます」
「あ、えっと、うん」
知らない相手にはちゃんと敬語を使うサファルがため口のような返答になったのは少し動揺してだ。
強い? って何が? 少なくとも腕力は下手をすると子どもよりも弱いんだけど。
っていうか、それより……この子……もしかして……目が……?
「姉さま、大丈夫ですか」
サファルが戸惑っていると子どもの一人が駆けつけてきた。それに続いてあとの二人の子どもも駆けつけてくる。
「大丈夫、ありがとうギル。それに二人も」
姉さま、と呼びかけた少年は少女を支える。それを見て、やはり少女は盲目なのだとサファルは確信した。尚更、そんな少女が森の中にいることに違和感を覚える。
「お前さん方はまたどうしてこんな森の中を?」
遅れてやってきた老人が無事を確認するように子どもたちを一瞥した後にサファルたちを見てきた。
「……旅の途中だ」
あんたたちこそどうしてだよ? などと思いつつどう答えようかとサファルが考えている横でカジャックが答えた。
「ふむ……方向からしてイントから来たと見えるが。あちらに変わった様子はなかったですかな」
「変わった……? えっと、俺らは確かにイントから来たけど、ほんとに旅の一環だったからもし変わってても元々のイントを知らないんです」
「ああ、いや。わしらはそもそもイント国民でな。じゃが三国会議というものがあったのは……うむ、知っておられるか。その後少ししてからそこから出てきたんじゃ。お前さん方はわしらよりも後にここに着いた。じゃからその後何かもしイントに変わった動きがあれば、と思っての」
三国会議の後、少ししてから出てきた。
何だか引っかかる言い方だった。クエンティ王の側近が、あの会議についてあまりいい顔をしていなかったのをサファルは思い出す。
「お、じいさん。俺らね、イントを出てから寄り道してたからここに着くの遅かったんです。だから多分、おじいさんたちより俺らのほうが早く出てた可能性高いかも。……あの、三国会議でなにか困った決定でもありましたか? こんな……おじいさんや子どもたちが出てこなければならないような……」
とても心配になって聞けば、老人はじっとサファルを見てから何故か少し笑ってきた。
「あの……?」
「いや、すまんの。ふと、大昔に知り合いだったやつを何故か思い出してな。青年、わしらはこんなでも術者でな。一般人ではない。一般の民たちは多少のことでは多分何も分からないだろうし変わらないであろうな、イントに大きな異変が起きれば別だがの」
イントに大きな異変?
ますます気になる言い方だった。とはいえ老人は突っ込んでは話すつもりはなさそうだし、子どもたちもどこか警戒しているような気配がある。それにサファルたちも三国会議に関わることなら内容が分からないままではあるが、あまり足を踏み入れないほうがいいだろうことくらいは分かっている。
「引き留めて申し訳なかったの、旅の人。お前さん方にウンディーネとサラマンダーの加護がありますよう」
「ありがとうございます。あなた方もお気をつけて」
「……」
礼を告げたサファルの横でカジャックは黙ったまま老人をじっと見ていた。だがその後に軽く頭を下げる。
歩き出してしばらくしてから、サファルはようやくカジャックに聞いた。
「カジャックは途中、何であんなに警戒してたんですか?」
「……あのご老人はかなりの術者だ。多分目を盲いた少女も」
かなりの術者。別にそれは警戒する理由にはならない。──こんな森の中でなければ。
各国それぞれが、高位魔術師を数名は抱えているというのをサファルも聞いたことはある。カジャックやサファルは特殊なパターンだとして、通常は相当の魔力の持ち主は各国お抱えの存在か、もしくは何か理由があってそれこそ隠れるようにして暮らしているかじゃないだろうか。
その場合、老人たちがここにいるのはイント国お抱えの術者としてか、何らかの理由があって隠れているかと思われる。人柄がよさそうとか云々は関係ない。もちろん例外もあるがカジャックが警戒する理由として、一応対象が分からないまま貴族から逃げている身としては十分だろうとサファルも思った。
「でも……何でかなりの持ち主だって分かったんですか? 確かカジャックでも見ただけでは魔力、感じとれないんですよね?」
「少女はお前に触れただけでお前の魔力が強いと言っていた。目が見えない分敏感なだけかもしれないけどな」
「え、あ、お強いって、そういう……」
ですよね、腕力絡みの訳ないですよね。
そう思いつつも男としてはそちらが強いと一度くらいは言われてみたい。
「あと、あのご老人は多分俺たちの魔力の強さを分かっていたからこそイントの様子を聞いてきたんじゃないかと思う」
「何でなんですか?」
「あの人自身言っていただろう。一般人なら多少のことでは分からないだろうと。なのに俺たちに何か変わった様子はなかったか聞いてきた」
「あ」
そんなこと、サファルはこれっぽっちも気づかなかった。
「俺とお前の魔力属性すら見抜いていた」
「えっ? いつ?」
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