偽りの仮面

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19話 ※

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 待ち合わせのホテルへ向かう前に伊吹は自宅でひとり、風呂に入っていた。
 芳は童貞で、だが伊吹を傷つけないよう、大切にできるよう男同士の行為を勉強しているのだと聞いている。
 伊吹が女だったらそれを聞いて引いていただろうか。芳を見かけ倒しの情けない男だと思っていただろうか。
 実際伊吹は男であるのでわからない。そして男である伊吹としてはそれを聞いた時、とてつもなく芳が愛しいと思った。
 あんなに格好がよくて大人で仕事もできる人が、自分の為に懸命になって性の勉強をしてくれている上にそれを打ち明けてくれた。かわいくて愛しくてならない。
 仮面を外してからの芳を伊吹はますます好きになっていた。

 そんなの俺だって勉強したくなる。

 男には皆目興味がないので、ネットなどで見る男同士の行為は知れば知るほど正直ドン引きだった。とりあえず画像は極力避けた。とはいえ芳と絡み合うのだと思うと滾る。

 愛って凄いな……。

 思わず芳みたいなことを考えてしまいつつ、やり方を伊吹も理解していった。
 風呂で自分の穴の準備をしたが、実は今までひとりでも慣らす努力はしてきている。いきなり入るものではないと知ったし、せっかく芳が初めてでのシチュエーションを用意してくれるなら、そこで失敗なく最後までしたいと思ったからだ。
 一応それまでも芳とはたまに抜き合う行為をする際に後ろを弄られる程度はしている。だが抜き合う自体がたまになので心許なく、自分でもするしかなかった。普段もっと芳としたくとも、お互いきっと抜き合うだけじゃ終われなくなりそうで、「初めて」に気合いを入れたいのであろう芳が抑え気味なのはわかっていた。

 ……でも自分じゃ今のとこ、まだ気持ちよくないし、前立腺とやらも見つけられないんだよね。

 痛みには耐えたいとは思うが、できればせっかくなので気持ちよくもなれたらなりたい。

 まぁ、芳とようやく最後までできるだけでもいっか。

「どうかしたのか……?」
「ううん。芳、早く──」

 しよう、と伊吹はベッドへ芳を誘った。笑い合い、服を脱がせ合いながらベッドへ倒れ込むと体を絡ませ合った。体の硬くて大きな二人が絡み合う光景は伊吹としては興奮材料でもなんでもないはずだが、相手が芳だというだけで堪らなく芯から疼いた。おまけに芳の引き締まった体を見ていると、男に興味がなくとも気持ちが高揚してくる。

「伊吹……好きだよ、凄く愛してる」

 芳は優しく囁くとキスを続けてきた。例え童貞だと打ち明けてこようが、愛の囁きがこの上なく似合う人に、伊吹はまた笑みを浮かべた。

「どうした?」
「ううん。俺も好き。大好きだよ、芳」

 すると芳も微笑む。
 素肌が触れ合う感触はこんなに気持ちがいいものだっけかと伊吹は思った。そしてゆっくり這わせるように触れてくる芳の手や指を敏感に肌が感じ取ってくる。ただ肩や腕に触れられるだけでも気持ちがよく、その手がようやく待ち望んでいたところに触れると、擦り合いなら今までもしているというのに伊吹は小さく体をしならせた。

「気持ちいい?」
「うん……」
「もっと触って欲しい?」
「う、ん」
「……舐めていい?」
「う……、は?」

 流れでつい頷きつつ、伊吹はハッとなった。触られても今まで舐められたことはない。芳に、だけでなく前の彼女からも誰からも。

「え、ちょ、待っ」
「本当は前から舐めたかった。伊吹のこのかわいくてあまりに愛しいここを、口に含んでひたすら愛したくて……でも気持ちが高揚し過ぎて抑えられなさそうで堪えてたんだ」

 何て言い方なんだろう、と芳の口調に慣れた筈の伊吹は赤面した。両手で目を覆っていると芳が残念そうに「……駄目だろうか」と聞いてくる。

 駄目な訳あるか。

 むしろして欲しさはある。ただ、それと同時に妙な恥ずかしさと芳の物言いに対しての居たたまれなさに襲われていた。

「……あの、いえ……お願いします……」

 何とか答えると少し間があってから温かいものがぬるりと自分のものに触れてくるのがわかった。そして次にさらに温かくてぬるぬるとした中に包まれる。

「わ……」
「気持ち悪いか?」

 口に含みながら芳が聞いてくる。上手い訳ではないのかもしれないが、なにぶん伊吹自体が初体験のことで、よさしかわからない。思わず目を覆っていた手を退けると伊吹は自分のものを咥えている芳を見た。そして男同士だというのに視覚的にも興奮した。

「ううん……ヤバい、気持ちいい……」
「よかった」
「……あの、俺も芳にしようか?」

 できるかどうかはわからないが、裸で抱き合っても今の行為を見ても興奮するだけだったので芳にならできそうな気がする。だが芳は口に含みながら首を振ってきた。

「含みながら首振んのやめて……」
「ああ、悪い。喋りにくくてな。お前はいい」
「何で」
「俺を何だと思ってるんだ。童貞だぞ。そんなことお前にされたら一気に達してしまうぞ」
「……そんなこと、男らしく言えるのって芳だけじゃないかな……」
「情けないか?」
「ううん、むしろカッコよくてイきそうになった」
「それはよかった」

 フッと少し笑うと芳が口の動きを速めてきた。やらしい音を立てながら時折吸い込まれ、フェラチオは初体験だった伊吹はあっという間にのぼりつめた。

「か、顔離して! イ、イくから、イっちゃうからっ、早く……! ちょ、お願……っぁ、も、駄……」

 押し退けようとしても駄目だった。どうしようもなく、芳の口の中で伊吹は果ててしまった。
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