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3話
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「これが俺がいつも話している悟だ」
大典は連れてきた悟をぐっとつき出すようにニコニコと紹介した。
「マジ先輩半端ないっすねえー、勝手にどんな話されてんだか」
「……ほんと大典、お前って」
悟は淡々と、大吉はカウンター内から微妙そうな顔で大典を見てくる。だが他の客に「注文いっすか」と言われ、大吉はそちらへ行ってしまった。
「今のが俺の昔からの親友。いい奴だぞ。あと飯も美味いからまぁ、とりあえず食え」
「はぁ」
ビールといくつかの小皿料理を注文し、先に来たビールで乾杯した。
「お前、馬鹿なこと言って悠賀くん困らせんじゃねーぞ」
ビールを置いてきた大吉が呆れたような顔で言ってくる。
「きっちゃん、何でそういうこと言うんだよ。俺がそんなことするはずないだろう? なあ、悟」
「はは」
「……ったく。あの、悠賀くん」
「はい?」
「こいつ、鬱陶しいかもだけど根はいいやつなんであまり嫌わねーでやって」
「はぁ」
「ひでぇな、何で俺嫌われてる前提なんだよ」
「自分の胸に聞いてみろ」
「……なんも返ってこねーぞ」
「ほんとに聞くやつがあるか」
大典と大吉が慣れたやり取りをしている間、悟は黙々と食べているようだった。
せっかくの機会だし酒の力を借りたらどうにかなるのではと実は内心ちょっとだけ思っていた大典だが、結局どうにもならなかった。大典が何を言おうが悟はのらりくらりとしていた。翌日は土曜で休みなのもあり、どんどん飲めと勧めた大典がむしろ飲み過ぎた勢いだ。
「なぁお前堅物なの?」
「そう見えるならそれでいっすけど」
「俺、お勧めだぞ」
「マジ先輩半端ないっすねえー、ほんとに。あんた自分の性別忘れてんの? それともどう見ても男にしか見えない俺が女に見えるヤバイ薬でもキめてんの?」
「キめてねぇよ……! 俺、多分どっちもいけんの」
「へぇ。そっすか」
「悟は無理?」
「まぁ、基本的にはそっすね」
「んだよー何でも試せよぉ」
どうやらその後軽くだが泣きながら絡んでいたらしい。翌日思い切り呆れながら大吉が携帯電話で教えてくれた。とてつもなくやらかした感しかない。これからがんがん恰好よく攻めてやろうと狙っている相手にまず醜態を見せてどうするのか。幸いというか大吉が「こいつの面倒は見とくから悟くんはもう帰りなよ。ごめんな。金はこいつからもらっとくし」と対処してくれたようだ。ちなみに携帯電話で教えてくれたのはその金を寄越せという連絡のついでだ。
大典は職場が家から近いため自宅通いで、ついでに昔から仲のいい大吉の店も近い。悟も社員寮に入っているのを大典は知っているので大吉の店からそう遠くはないだろう。とはいえ醜態を見せただけでなく一人で帰す羽目になって申し訳なさしかない。
ただ謝りたくとも悟の連絡先をまだ聞いていないことに今さら気づいた。明後日顔を合わせたら是が非でも謝った上で聞き出そうと心に誓う。
その日の夜も大吉の店へ行った。昨日の金を払うついでに結局そこでおでんを食べる。
「俺めちゃくちゃ失態してんじゃねえか」
「ほんとにな」
「悟、怒ってた?」
「別に怒ってねーけど引いてたんじゃね?」
「っうぅ」
「何、大典。失恋でもしたん?」
常連の一人が楽しそうに聞いてきた。
「リコちゃん、何で楽しそうなの」
「そりゃ楽しいよ。ヤンキーっぽいのはさておき、あんたみたいに背が高くて美形イケメンが失恋して嘆いてる様、楽しくない訳ないっしょ」
「リコちゃん鬼かよ」
「酒のあてによいわー」
「一度寝た仲だろ!」
「一度だけでそんなこと言われてもな。あとウチ今彼氏持ちだから絶対それ軽々しく口にすんなよ」
「リコちゃんマジ鬼」
一度そういう関係になったと言っても、その時はお互い彼氏彼女と別れたてで魔が差したというのだろうか。別にお互いそういう意味で好きになることもなく、かと言って気まずくなることもなく、この店で顔を合わせれば今のように話したりする仲が続いている相手だ。
「馬鹿をからかうのその辺にしといてやって」
「はーい大将。その代わりこれ。この長ネギときのこの和風アヒージョ、大典のつけで」
「リコちゃん本気で鬼かよ……」
すでに連れとなにやら楽しげに喋っている常連客に呟いた後、大典は「俺、美形なんだよな?」と大吉に聞く。
「俺に聞くなよ」
「なのに何で悟はその気にならねーんだ」
「お前が股にぶら下げてるもんあるからだろ」
「そんなもん人間の半分はぶら下げてんだろ」
「そういう問題じゃねえし、俺にそういう話振るのやめろ。相談相手になれねぇぞ、男相手とかわかんねーんだから」
「きっちゃんまでつれねぇ」
週明け、作業現場に向かう車は別だったので現場で隙を見て大典は悟に話しかけた。
「悟、ごめんな」
「何すか」
「いや、醜態見せちゃって、その」
「ああ。全然問題ないっすね」
「マジかよ、やっぱ悟、いい奴だな」
さらっと流され、大典は一気にテンションが上がった。
「じゃあよ、せっかくだから仕事の後デートしねーか」
「何がせっかくなんすか。マジ先輩半端ないっすねえー、とっととこの部分仕上げてください」
「まあ俺にかかればあっという間だしな」
「はは」
「お前も俺にかかればあっという間にとろとろになんぞ。マジだから」
「マジ先輩半端ないっすねえー、どっちがって話っすよ」
「何か言ったか?」
口癖は聞こえたのだがその後がよく聞こえなかった。
「いえ、作業に集中してくださいっつったんすよ」
大典は連れてきた悟をぐっとつき出すようにニコニコと紹介した。
「マジ先輩半端ないっすねえー、勝手にどんな話されてんだか」
「……ほんと大典、お前って」
悟は淡々と、大吉はカウンター内から微妙そうな顔で大典を見てくる。だが他の客に「注文いっすか」と言われ、大吉はそちらへ行ってしまった。
「今のが俺の昔からの親友。いい奴だぞ。あと飯も美味いからまぁ、とりあえず食え」
「はぁ」
ビールといくつかの小皿料理を注文し、先に来たビールで乾杯した。
「お前、馬鹿なこと言って悠賀くん困らせんじゃねーぞ」
ビールを置いてきた大吉が呆れたような顔で言ってくる。
「きっちゃん、何でそういうこと言うんだよ。俺がそんなことするはずないだろう? なあ、悟」
「はは」
「……ったく。あの、悠賀くん」
「はい?」
「こいつ、鬱陶しいかもだけど根はいいやつなんであまり嫌わねーでやって」
「はぁ」
「ひでぇな、何で俺嫌われてる前提なんだよ」
「自分の胸に聞いてみろ」
「……なんも返ってこねーぞ」
「ほんとに聞くやつがあるか」
大典と大吉が慣れたやり取りをしている間、悟は黙々と食べているようだった。
せっかくの機会だし酒の力を借りたらどうにかなるのではと実は内心ちょっとだけ思っていた大典だが、結局どうにもならなかった。大典が何を言おうが悟はのらりくらりとしていた。翌日は土曜で休みなのもあり、どんどん飲めと勧めた大典がむしろ飲み過ぎた勢いだ。
「なぁお前堅物なの?」
「そう見えるならそれでいっすけど」
「俺、お勧めだぞ」
「マジ先輩半端ないっすねえー、ほんとに。あんた自分の性別忘れてんの? それともどう見ても男にしか見えない俺が女に見えるヤバイ薬でもキめてんの?」
「キめてねぇよ……! 俺、多分どっちもいけんの」
「へぇ。そっすか」
「悟は無理?」
「まぁ、基本的にはそっすね」
「んだよー何でも試せよぉ」
どうやらその後軽くだが泣きながら絡んでいたらしい。翌日思い切り呆れながら大吉が携帯電話で教えてくれた。とてつもなくやらかした感しかない。これからがんがん恰好よく攻めてやろうと狙っている相手にまず醜態を見せてどうするのか。幸いというか大吉が「こいつの面倒は見とくから悟くんはもう帰りなよ。ごめんな。金はこいつからもらっとくし」と対処してくれたようだ。ちなみに携帯電話で教えてくれたのはその金を寄越せという連絡のついでだ。
大典は職場が家から近いため自宅通いで、ついでに昔から仲のいい大吉の店も近い。悟も社員寮に入っているのを大典は知っているので大吉の店からそう遠くはないだろう。とはいえ醜態を見せただけでなく一人で帰す羽目になって申し訳なさしかない。
ただ謝りたくとも悟の連絡先をまだ聞いていないことに今さら気づいた。明後日顔を合わせたら是が非でも謝った上で聞き出そうと心に誓う。
その日の夜も大吉の店へ行った。昨日の金を払うついでに結局そこでおでんを食べる。
「俺めちゃくちゃ失態してんじゃねえか」
「ほんとにな」
「悟、怒ってた?」
「別に怒ってねーけど引いてたんじゃね?」
「っうぅ」
「何、大典。失恋でもしたん?」
常連の一人が楽しそうに聞いてきた。
「リコちゃん、何で楽しそうなの」
「そりゃ楽しいよ。ヤンキーっぽいのはさておき、あんたみたいに背が高くて美形イケメンが失恋して嘆いてる様、楽しくない訳ないっしょ」
「リコちゃん鬼かよ」
「酒のあてによいわー」
「一度寝た仲だろ!」
「一度だけでそんなこと言われてもな。あとウチ今彼氏持ちだから絶対それ軽々しく口にすんなよ」
「リコちゃんマジ鬼」
一度そういう関係になったと言っても、その時はお互い彼氏彼女と別れたてで魔が差したというのだろうか。別にお互いそういう意味で好きになることもなく、かと言って気まずくなることもなく、この店で顔を合わせれば今のように話したりする仲が続いている相手だ。
「馬鹿をからかうのその辺にしといてやって」
「はーい大将。その代わりこれ。この長ネギときのこの和風アヒージョ、大典のつけで」
「リコちゃん本気で鬼かよ……」
すでに連れとなにやら楽しげに喋っている常連客に呟いた後、大典は「俺、美形なんだよな?」と大吉に聞く。
「俺に聞くなよ」
「なのに何で悟はその気にならねーんだ」
「お前が股にぶら下げてるもんあるからだろ」
「そんなもん人間の半分はぶら下げてんだろ」
「そういう問題じゃねえし、俺にそういう話振るのやめろ。相談相手になれねぇぞ、男相手とかわかんねーんだから」
「きっちゃんまでつれねぇ」
週明け、作業現場に向かう車は別だったので現場で隙を見て大典は悟に話しかけた。
「悟、ごめんな」
「何すか」
「いや、醜態見せちゃって、その」
「ああ。全然問題ないっすね」
「マジかよ、やっぱ悟、いい奴だな」
さらっと流され、大典は一気にテンションが上がった。
「じゃあよ、せっかくだから仕事の後デートしねーか」
「何がせっかくなんすか。マジ先輩半端ないっすねえー、とっととこの部分仕上げてください」
「まあ俺にかかればあっという間だしな」
「はは」
「お前も俺にかかればあっという間にとろとろになんぞ。マジだから」
「マジ先輩半端ないっすねえー、どっちがって話っすよ」
「何か言ったか?」
口癖は聞こえたのだがその後がよく聞こえなかった。
「いえ、作業に集中してくださいっつったんすよ」
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