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足場を架けるには一応資格がいる。少なくとも足場の組立て等作業従事者として、特別教育の受講を済ませていなければならない。昔はなかったものだが、労働安全衛生規則の一部改正によって足場の組立て、解体又は変更の作業に関わる業務が特別教育を必要とする業務に追加され義務となった。よって大典が働く職場で受講していない者は一人としていない。
高さ五メートル以上の構造となる足場組立、解体の場合の責任者は足場の組立て等作業主任者という資格を取得しなければならない。これは二十一歳以上でとび職の経験が三年以上あるか、建築や造船に関する学科を修めた大学や専門学校を出てとび職の経験が二年以上ある者でないと受けられない。
またとび技能士という資格もある。これの三級はとび職として働くための知識が備わっていたら特に受験資格は不問であり、悟のように高校を卒業してとび職の経験が二年しか経っていない者でも取得出来る。ちなみに二級は三級合格者でいて実務経験が二年あれば受けられるため、おそらく悟も近々取得予定かもしれない。一級ともなると七年以上の実務経験か二級合格後二年以上の実務経験、三級合格後三年以上の実務経験など受験資格は厳しくなる。とはいえ高卒の悟でも順調にいけば今の大典の年齢で一級を取ることも可能な訳で、決して難しすぎる訳ではない。
大典でも足場の組立て等作業主任者も持っているしとび技能士も一級を取得している。ただそれを友人に言えば「朝妻が?」「お前が資格?」「うっそだろ」などと驚かれる。納得がいかない。これでも仕事はちゃんとやっているし我ながらできる奴だとも大典は自分で思っていた。
「そう思うよな悟も」
「マジ先輩半端ないっすねえー、そんなとこひょいひょい歩きながらくだらねぇこと言ってるくらいならその筋交先に固定してください」
「おぅ」
言われた通りぐっと押し込んでしっかり固定させ、大典はニコニコと悟を見た。
「ところで俺のこの綺麗な筋肉、いいと思わないか? 無駄な筋肉はつけたくない主義でな、仕事で勝手についたままじゃなくてこれでもジムで調整してんだぞ。変にガチムチしてない肉体美ってのは俺のことだ」
「マジ先輩半端ないっすねえー」
「だろ? 腕だけでこの綺麗さだぞ。体はもっと綺麗だからな。この体でお前を喜ばせてやることも余裕だぞ」
ニコニコとしながら言っているところで下のほうから何かを打ち付けるような音が響いてきた。
「マジ先輩半端ないっすねえー、喜ぶ側は先輩でしょ」
「何て? ちょっと聞こえにくかったんだけど」
「俺を喜ばせてくれんならここ、とっとと終わらせてくださいっつったんすよ」
「おぅ」
午後からはお互い少し離れた場所での作業となった。別の者と一緒に仕事をしている際に離れたところで作業をしている悟が目に入ってきた。
悟は大典や他の従業員に比べると小柄な方になるのだろうか。それでも百七十はおそらくあるだろうに、着痩せするタイプだからか実際それなりに華奢だからか知らないが──できればその辺も含めてもっと深く知りたいと頑張っているところなのだが──そのせいで余計小柄に見えるのかもしれない。だが仕事をしている時の様子はとてつもなく恰好がいいし腕まくりをして力を入れている時の腕に出る筋などは大典からしたら性的なほどいい。
「やべーな」
「お前がか?」
「俺じゃねっすよ! 悟」
「悠賀? あいつの何がやべーんだ」
「エロくねっすか」
「やばいのやっぱお前だよ」
「何で。でも仕事もできるしさくさく働くしでいい奴入ってきたって山井さんこないだ言ってたじゃねっすか」
「まぁ、それはな。それとどうエロが繋がんの? あと、あいつ結構素っ気ないだろ」
「それはタカさんも言ってたっすけど。いい奴っすよ」
「まぁそりゃ悪い奴とまでは思ってねーけど。俺からしたらお前くらいが馬鹿で扱いやすくて楽だわ。見た目は気にくわねぇけどな」
「馬鹿とか言わんでくださいよ! 失礼な。つか見た目気にくわないって何すか」
「背は高いしイケメンだしでムカつくだろ。まぁ怒んなって。後でクリームパンやるから」
「アヤのやつっすか」
「だな」
「絶対くれっすよ」
「ぶふ。了解」
アヤというパン屋があるのだが、そこのパンが大典はかなり気に入っている。中でもクリームパンが絶品だ。ブリオッシュ生地のパンの中に甘さ控えめの、卵とミルクの優しい香り、濃厚なバニラ風味の広がるバニラビーンズ入りのカスタードクリームがたっぷりと入っている。最高に美味い。おもわずニヤニヤとしていると軽く頭をはたかれ「仕事の手は止めんな」と何故か笑いながら言われた。
「つか、悟って寮では素っ気ねーんすか」
「いや、仕事でも素っ気ねーだろ。まぁ寮でもそうだけど。皆で飲もうとかゲームしようとかいう話になっても大抵来ねーぞ。酒飲めねーんかな」
酒が飲めない?
大吉の店でいくら飲んでも淡々としていた悟を大典は思い浮かべた。もしかして自分は相当レアなシーンを味わえたのだろうかなどと思いつつ、もし万が一悟が酒を飲めない振りをしていたら悪いしと、特に何も言わないことにした。
「酒はさておき、あれっすよ。一人が好きな奴もいるだろーし。でもあいつ、仕事中俺が話しかけたらいつも付き合ってくれるっすよ」
「へえ。つか適当に流してんじゃねーのかそれ」
「そんなこと、……ねっす」
多分。
何を言っても全然なびいてくれない悟を思いながら大典は首を縦に振ったり横に振ったりする。結果「お前がやっぱやばいわ」と頭をつかまれ笑われた。
高さ五メートル以上の構造となる足場組立、解体の場合の責任者は足場の組立て等作業主任者という資格を取得しなければならない。これは二十一歳以上でとび職の経験が三年以上あるか、建築や造船に関する学科を修めた大学や専門学校を出てとび職の経験が二年以上ある者でないと受けられない。
またとび技能士という資格もある。これの三級はとび職として働くための知識が備わっていたら特に受験資格は不問であり、悟のように高校を卒業してとび職の経験が二年しか経っていない者でも取得出来る。ちなみに二級は三級合格者でいて実務経験が二年あれば受けられるため、おそらく悟も近々取得予定かもしれない。一級ともなると七年以上の実務経験か二級合格後二年以上の実務経験、三級合格後三年以上の実務経験など受験資格は厳しくなる。とはいえ高卒の悟でも順調にいけば今の大典の年齢で一級を取ることも可能な訳で、決して難しすぎる訳ではない。
大典でも足場の組立て等作業主任者も持っているしとび技能士も一級を取得している。ただそれを友人に言えば「朝妻が?」「お前が資格?」「うっそだろ」などと驚かれる。納得がいかない。これでも仕事はちゃんとやっているし我ながらできる奴だとも大典は自分で思っていた。
「そう思うよな悟も」
「マジ先輩半端ないっすねえー、そんなとこひょいひょい歩きながらくだらねぇこと言ってるくらいならその筋交先に固定してください」
「おぅ」
言われた通りぐっと押し込んでしっかり固定させ、大典はニコニコと悟を見た。
「ところで俺のこの綺麗な筋肉、いいと思わないか? 無駄な筋肉はつけたくない主義でな、仕事で勝手についたままじゃなくてこれでもジムで調整してんだぞ。変にガチムチしてない肉体美ってのは俺のことだ」
「マジ先輩半端ないっすねえー」
「だろ? 腕だけでこの綺麗さだぞ。体はもっと綺麗だからな。この体でお前を喜ばせてやることも余裕だぞ」
ニコニコとしながら言っているところで下のほうから何かを打ち付けるような音が響いてきた。
「マジ先輩半端ないっすねえー、喜ぶ側は先輩でしょ」
「何て? ちょっと聞こえにくかったんだけど」
「俺を喜ばせてくれんならここ、とっとと終わらせてくださいっつったんすよ」
「おぅ」
午後からはお互い少し離れた場所での作業となった。別の者と一緒に仕事をしている際に離れたところで作業をしている悟が目に入ってきた。
悟は大典や他の従業員に比べると小柄な方になるのだろうか。それでも百七十はおそらくあるだろうに、着痩せするタイプだからか実際それなりに華奢だからか知らないが──できればその辺も含めてもっと深く知りたいと頑張っているところなのだが──そのせいで余計小柄に見えるのかもしれない。だが仕事をしている時の様子はとてつもなく恰好がいいし腕まくりをして力を入れている時の腕に出る筋などは大典からしたら性的なほどいい。
「やべーな」
「お前がか?」
「俺じゃねっすよ! 悟」
「悠賀? あいつの何がやべーんだ」
「エロくねっすか」
「やばいのやっぱお前だよ」
「何で。でも仕事もできるしさくさく働くしでいい奴入ってきたって山井さんこないだ言ってたじゃねっすか」
「まぁ、それはな。それとどうエロが繋がんの? あと、あいつ結構素っ気ないだろ」
「それはタカさんも言ってたっすけど。いい奴っすよ」
「まぁそりゃ悪い奴とまでは思ってねーけど。俺からしたらお前くらいが馬鹿で扱いやすくて楽だわ。見た目は気にくわねぇけどな」
「馬鹿とか言わんでくださいよ! 失礼な。つか見た目気にくわないって何すか」
「背は高いしイケメンだしでムカつくだろ。まぁ怒んなって。後でクリームパンやるから」
「アヤのやつっすか」
「だな」
「絶対くれっすよ」
「ぶふ。了解」
アヤというパン屋があるのだが、そこのパンが大典はかなり気に入っている。中でもクリームパンが絶品だ。ブリオッシュ生地のパンの中に甘さ控えめの、卵とミルクの優しい香り、濃厚なバニラ風味の広がるバニラビーンズ入りのカスタードクリームがたっぷりと入っている。最高に美味い。おもわずニヤニヤとしていると軽く頭をはたかれ「仕事の手は止めんな」と何故か笑いながら言われた。
「つか、悟って寮では素っ気ねーんすか」
「いや、仕事でも素っ気ねーだろ。まぁ寮でもそうだけど。皆で飲もうとかゲームしようとかいう話になっても大抵来ねーぞ。酒飲めねーんかな」
酒が飲めない?
大吉の店でいくら飲んでも淡々としていた悟を大典は思い浮かべた。もしかして自分は相当レアなシーンを味わえたのだろうかなどと思いつつ、もし万が一悟が酒を飲めない振りをしていたら悪いしと、特に何も言わないことにした。
「酒はさておき、あれっすよ。一人が好きな奴もいるだろーし。でもあいつ、仕事中俺が話しかけたらいつも付き合ってくれるっすよ」
「へえ。つか適当に流してんじゃねーのかそれ」
「そんなこと、……ねっす」
多分。
何を言っても全然なびいてくれない悟を思いながら大典は首を縦に振ったり横に振ったりする。結果「お前がやっぱやばいわ」と頭をつかまれ笑われた。
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