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7話
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悟は元々愛想のいいほうではない。仕事などでしなければならないとなるとできるが、そうでないなら別にどうでもいいというのだろうか。前の職場でもそれで別に問題はなかったし、今の職場でも特に問題はない。
今の職場に転職したのは単に待遇がこちらのほうがよかったというだけだ。あまり気軽に転職するつもりはないが、どうせなら待遇がいいほうがいい。
高校までは卒業したものの、悟は昔からとび職に就くつもりだった。頭は悪くないし大学も悟のレベルなら行けただろうが、とび職になるのに特に必要そうではなかったので就職した。何故とび職になりたかったのかともし聞かれても言うつもりはない。子どもの頃に高いところで作業している人を見て単に恰好がいいと憧れただけだなどと口が裂けても言わない。
ところで愛想があまりよくないのもあって、高校の頃もあまりたくさん誰かと付き合ってはいない。友だちという意味でも、彼女という意味でもだ。友だちは多くないがどのみち一人でいるか気心の知れた一部の友だちとたまに遊ぶくらいで十分だったし、彼女もいればいたでそれなりに、という程度だった。あまり性欲が強くないのかもしれないが、たまにすれば十分というのだろうか。もちろんというか、長続きはしたことがない。大抵は向こうから別れを切り出してくるパターンだった。こちらから口にした場合、泣かれると少し興が乗る時もありまたしばらく続いたりもしたが、結局別れることになった。
「お前別に性格悪い訳じゃないんだけどな」
「だけど?」
「わかりにくいんだよ圧倒的に。女に伝わんねーんだよ」
「仕方ないし別にいいかな」
「そういうとこだぞ」
仲のいい友だちは呆れつつもしつこく言ってくることはないので楽だったりする。
しつこいといえば、と悟は仕事の手を一瞬休めてちらりと少し離れたところにいる相手を見た。
今の職場に来てしばらくして悟についた先輩が大典だ。見た目は少々派手というか昔少しやんちゃしてましたという名残りが残った風で頭も悪そうだ。
それよりも何よりも、とにかくしつこいし煩いし面倒臭い。なのでチョロそうなのもあって悟は適当にあしらっては流していた。悟としては別に職場で問題を起こしたい訳でもない。
煩いのは変わりないが、しばらくすると思ったより面倒でもないしだんだん慣れてもきていた。ただ、こちらとしては全く興味がない上で、大典も基本的に女が好きそうではあるくせに最近やたらと妙な誘い方をしてくるようになった。それは面倒なのでますます適当にあしらっていたのだが、本人は気づいていないのか気にしていないのか、あっけらかんとしている。そして何だかこう、馬鹿で面白い。
この間も「あとさータカさんがしばらく一緒だろし飯食って仲よくしろって五千円くれた」などと言ってきて思わず少し笑ってしまった。笑った? と聞かれたので笑ってないと答えたが、普段全然ではあるもののやたら恰好つけて妙な誘い方をしてくるのならせめて今も貰ったこと伏せるなりして恰好つけて誘えばいいのにと思うとつい笑ってしまった。多分大典の地が出たのだろう。
その後連れていかれた店で大典がバイセクシャルだと判明した。呆れつつもいつものように「マジ先輩半端ないっすねえー、ほんとに。あんた自分の性別忘れてんの? それともどう見ても男にしか見えない俺が女に見えるヤバイ薬でもキめてんの?」と言えば「俺、多分どっちもいけんの」と返ってきたのだ。
「悟は無理?」
「まぁ、基本的にはそっすね」
「んだよーなんでも試せよぉ」
大典は結構酔っていたようで軽くではあるが泣きながら絡んできた。酒に強そうな顔をして呆気ないなと思っていた悟は、その泣き顔に気づくと思わずまじまじと見てしまった。
男に興味はないので気にしていなかったが、そういえば大典は結構綺麗な顔立ちをしている。その顔を歪めて涙を少しではあるが流している様は正直言って、悪くなかった。完全に予想外だったが、結構そそられた。
酔って泣いているのも悪くないが、こちらの言動に対して泣く大典も見てみたくなる。はっきり言って「泣かせたい」と思ってしまった。
週明け、現場で謝ってきた大典だがまたすぐに調子に乗って「お前も俺にかかればあっという間にとろとろになんぞ。マジだから」などと言ってくる。思わず鼻で笑いたくなった。
「マジ先輩半端ないっすねえー、どっちがって話っすよ」
「何か言ったか?」
「いえ、作業に集中してくださいっつったんすよ」
いつものようにあしらいながらも思っていたのは「あんたはとろとろにするよりされて泣いてるほうが似合ってるよ」といったことだ。
その後も相変わらず大典は馬鹿だ。もちろん年上の先輩に対し「馬鹿ですね」などと明確には口にしないが、流しはする。やたらと自分の筋肉を自慢してきた時も「腕だけでこの綺麗さだぞ。体はもっと綺麗だからな。この体でお前を喜ばせてやることも余裕だぞ」などと作業中に何言ってんだといった馬鹿なことをほざいてきたので「マジ先輩半端ないっすねえー」といつものように流しつつぼそりと「喜ぶ側は先輩でしょ」と付け足しておいた。聞こえても構わないが、どうやら空気の流れは馬鹿に味方しないのか、こういった時大抵大典は聞き漏らす。
「何て? ちょっと聞こえにくかったんだけど」
「俺を喜ばせてくれんならこことっとと終わらせてくださいっつったんすよ」
実際綺麗な体をしているとは悟も思う。男に元々興味はないのでガチムチとした体はむしろご遠慮願いたいし、かといってガリガリに痩せた体は痛々しそうで興が乗らないだろう。実際馬鹿なのはさておき、見た目も頭の悪そうなセンスだが顔は美形だ。それに綺麗な体つきをしているし何より泣き顔がいい。
悟は鼻で笑いつつ「突っ込まれるならそっちなのにね」と内心ニコニコ思っていた。
ついでに「妙に自信満々に変な口調で話してくんの面白すぎるからそろそろやめれや」とも思っている。
今の職場に転職したのは単に待遇がこちらのほうがよかったというだけだ。あまり気軽に転職するつもりはないが、どうせなら待遇がいいほうがいい。
高校までは卒業したものの、悟は昔からとび職に就くつもりだった。頭は悪くないし大学も悟のレベルなら行けただろうが、とび職になるのに特に必要そうではなかったので就職した。何故とび職になりたかったのかともし聞かれても言うつもりはない。子どもの頃に高いところで作業している人を見て単に恰好がいいと憧れただけだなどと口が裂けても言わない。
ところで愛想があまりよくないのもあって、高校の頃もあまりたくさん誰かと付き合ってはいない。友だちという意味でも、彼女という意味でもだ。友だちは多くないがどのみち一人でいるか気心の知れた一部の友だちとたまに遊ぶくらいで十分だったし、彼女もいればいたでそれなりに、という程度だった。あまり性欲が強くないのかもしれないが、たまにすれば十分というのだろうか。もちろんというか、長続きはしたことがない。大抵は向こうから別れを切り出してくるパターンだった。こちらから口にした場合、泣かれると少し興が乗る時もありまたしばらく続いたりもしたが、結局別れることになった。
「お前別に性格悪い訳じゃないんだけどな」
「だけど?」
「わかりにくいんだよ圧倒的に。女に伝わんねーんだよ」
「仕方ないし別にいいかな」
「そういうとこだぞ」
仲のいい友だちは呆れつつもしつこく言ってくることはないので楽だったりする。
しつこいといえば、と悟は仕事の手を一瞬休めてちらりと少し離れたところにいる相手を見た。
今の職場に来てしばらくして悟についた先輩が大典だ。見た目は少々派手というか昔少しやんちゃしてましたという名残りが残った風で頭も悪そうだ。
それよりも何よりも、とにかくしつこいし煩いし面倒臭い。なのでチョロそうなのもあって悟は適当にあしらっては流していた。悟としては別に職場で問題を起こしたい訳でもない。
煩いのは変わりないが、しばらくすると思ったより面倒でもないしだんだん慣れてもきていた。ただ、こちらとしては全く興味がない上で、大典も基本的に女が好きそうではあるくせに最近やたらと妙な誘い方をしてくるようになった。それは面倒なのでますます適当にあしらっていたのだが、本人は気づいていないのか気にしていないのか、あっけらかんとしている。そして何だかこう、馬鹿で面白い。
この間も「あとさータカさんがしばらく一緒だろし飯食って仲よくしろって五千円くれた」などと言ってきて思わず少し笑ってしまった。笑った? と聞かれたので笑ってないと答えたが、普段全然ではあるもののやたら恰好つけて妙な誘い方をしてくるのならせめて今も貰ったこと伏せるなりして恰好つけて誘えばいいのにと思うとつい笑ってしまった。多分大典の地が出たのだろう。
その後連れていかれた店で大典がバイセクシャルだと判明した。呆れつつもいつものように「マジ先輩半端ないっすねえー、ほんとに。あんた自分の性別忘れてんの? それともどう見ても男にしか見えない俺が女に見えるヤバイ薬でもキめてんの?」と言えば「俺、多分どっちもいけんの」と返ってきたのだ。
「悟は無理?」
「まぁ、基本的にはそっすね」
「んだよーなんでも試せよぉ」
大典は結構酔っていたようで軽くではあるが泣きながら絡んできた。酒に強そうな顔をして呆気ないなと思っていた悟は、その泣き顔に気づくと思わずまじまじと見てしまった。
男に興味はないので気にしていなかったが、そういえば大典は結構綺麗な顔立ちをしている。その顔を歪めて涙を少しではあるが流している様は正直言って、悪くなかった。完全に予想外だったが、結構そそられた。
酔って泣いているのも悪くないが、こちらの言動に対して泣く大典も見てみたくなる。はっきり言って「泣かせたい」と思ってしまった。
週明け、現場で謝ってきた大典だがまたすぐに調子に乗って「お前も俺にかかればあっという間にとろとろになんぞ。マジだから」などと言ってくる。思わず鼻で笑いたくなった。
「マジ先輩半端ないっすねえー、どっちがって話っすよ」
「何か言ったか?」
「いえ、作業に集中してくださいっつったんすよ」
いつものようにあしらいながらも思っていたのは「あんたはとろとろにするよりされて泣いてるほうが似合ってるよ」といったことだ。
その後も相変わらず大典は馬鹿だ。もちろん年上の先輩に対し「馬鹿ですね」などと明確には口にしないが、流しはする。やたらと自分の筋肉を自慢してきた時も「腕だけでこの綺麗さだぞ。体はもっと綺麗だからな。この体でお前を喜ばせてやることも余裕だぞ」などと作業中に何言ってんだといった馬鹿なことをほざいてきたので「マジ先輩半端ないっすねえー」といつものように流しつつぼそりと「喜ぶ側は先輩でしょ」と付け足しておいた。聞こえても構わないが、どうやら空気の流れは馬鹿に味方しないのか、こういった時大抵大典は聞き漏らす。
「何て? ちょっと聞こえにくかったんだけど」
「俺を喜ばせてくれんならこことっとと終わらせてくださいっつったんすよ」
実際綺麗な体をしているとは悟も思う。男に元々興味はないのでガチムチとした体はむしろご遠慮願いたいし、かといってガリガリに痩せた体は痛々しそうで興が乗らないだろう。実際馬鹿なのはさておき、見た目も頭の悪そうなセンスだが顔は美形だ。それに綺麗な体つきをしているし何より泣き顔がいい。
悟は鼻で笑いつつ「突っ込まれるならそっちなのにね」と内心ニコニコ思っていた。
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