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9話
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悟に対して大典はそのことしか頭にないといった様子過ぎて、ますますおかしく思っていた。着替えるだけで動揺してくるところからも、そういうことしか考えていない様子が窺える。
「え、いきなりっ?」
「は? なんすか」
「いや、服」
「はぁ。そりゃ着替えますよ。何で自分の部屋で作業着のまんまでいなきゃなんすか」
実際、素で着替えていたのだが大典の反応を見ているとわざとそんな風に言いたくもなる。
「まぁ、俺が綺麗な恰好してもあんたは汚いままいればいっすよ」
「何て?」
「適当に座っていっすけどベッドには腰掛けねーでくださいねっつったんっすよ」
今のはさすがに聞こえているだろうが、悟はあえて言い換えた。すると大典が首を傾げている。だがすぐに納得したかのようにうんうん頷くとニコニコと悟を見てきた。改めてチョロい。
そして着替えが終わっている悟に気づくとあからさまにがっかりした顔をしてくる。
「なあ、お前もう一回着替えないか?」
「ほんと半端ないっすねえー、何のために」
「そりゃ……」
わかっているがあえて聞くとさすがに言い淀んできた。悟は自分がベッドに腰かけてから、まあいいとばかりに話を振る。
「仲よくしてくださいって俺にお願い、するんでしょ」
「え? あー、えっと、そう、だな。仲よくしてくれるか?」
そうだな、と笑顔で大典はさらりといっそ爽やかな勢いで言ってきた。暑苦しいことばかり言ってきたくせにここでそれかと悟は微妙な顔をする。どうせならもっと面白く捉えて言動にして欲しいところだった。せめてもっと必死な様子で言ってみて欲しかった。拍子抜けだ。
「何だよ」
反応が普通で楽しくないんですよね。
「もっと必死に言えねーんすか」
「え。必死……」
「残念。まあ、先輩っすもんね」
「どういう……」
大典はひたすらわからないといった風にポカンとしている。
「別に。まぁ仲よくしますよ。じゃあ用、済んだんで帰っていいっすよ」
「いや待って!」
「何すか」
「何かこう、おかしくないか?」
「そっすか?」
確かに意地悪だろう。わざわざ来てもらい仲よくして欲しいと言わせた挙句「帰っていい」などと、下手をすると失礼でしかない。ただ大典に対してすでに興味をかなり抱いているのでむしろそう言った。おそらく悟を抱く側としてやる気満々なのであろう大典を素っ気ないほどの態度で帰そうとしたのはわざとだ。
だって楽しい。
ベッドに腰かけたまま淡々とした顔で悟は大典を見上げた。大典は戸惑いを隠すことない表情でじっと悟を見てくる。思わずため息が出るほどわかりやすいし馬鹿だなあと思うしかわいくさえある。
「ほんと先輩……」
「な、何だよ」
「いえ。気をつけて帰ってくださいね」
「は? 別に俺が気をつけるようなこと何もない……っつーか結局何なんだよ。わざわざここまで来て」
「お願いしたかったんじゃないんっすか?」
「いや、まぁそりゃ仲よくして欲しいけど」
ムッと唇を尖らせる大典が楽しくて、悟は立ち上がり近づくと呼びかけた。
「先輩。ちゃんとね、ちょっとだけ仲よくしてあげますよ」
笑みを浮かべると、残念ながら大典のほうが結構身長があるため悟は大典をそっと引っ張り、体を少し屈まさせた。そして近くなった大典の唇をぺろりと舐める。
やってみて、やはり嫌悪感がないことを実感する。男に対してこんなこと、普通では到底できそうにないはずが、全く嫌ではない。むしろ堪らないなと思う。
大典はといえば、残念な頭に理解が追いつかないのかポカンとした顔で悟を見てきた。
「は……?」
「じゃあ、帰ってください」
ニッコリと言えばようやく焦って「い、いやいや。そんなことされて俺が何もしねえで帰るとでも」と悟をつかもうとしてくる。なので悟から大典の手首をつかみ、それを阻んだ。
「マジ先輩半端ないっすねえー、駄目っすよ。後輩には優しくしないと。あとあんたのが背はあっても力で俺が負けるとでも?」
背は普通だが、昔からとび職を目指していた悟は自室でもよく筋トレなどはしていた。その辺の男相手に力で負ける気がしない。ましてや、筋肉の綺麗な大典とはいえ見た目に拘った鍛え方しかしていない相手に負ける訳がない。悟は笑みを浮かべながらいとも簡単に大典を引っぱった。
「そんじゃ、また明日。お疲れ様っす」
そして大典を追い出したのだが、後で「そういえばもっと抑えきれない状態にしてからにすればよかった」などと浮かんだ。今度こういう機会があれば、もっとじっくり甚振るようなキスをしてその気になった大典を放り出してみたい。トイレに駆け込むのか何とか堪えるのかわからないが、そういう大典を想像すると楽しい。満足した気持ちで悟はシャワーを浴びた。
翌日、大典は悟を見るなり何か言ってこようとしたのであえてスルーした。どのみち作業が始まったら否応なしに二人組になる。
「悟、お前の考えていることがわからないんだけど」
さすがに大典も仕事中はきちんと仕事をする。たまに道が逸れるが、ちょっとした軽口くらいだ。なのでまともに話してきたのは十時過ぎの小休憩の時だった。
「え、いきなりっ?」
「は? なんすか」
「いや、服」
「はぁ。そりゃ着替えますよ。何で自分の部屋で作業着のまんまでいなきゃなんすか」
実際、素で着替えていたのだが大典の反応を見ているとわざとそんな風に言いたくもなる。
「まぁ、俺が綺麗な恰好してもあんたは汚いままいればいっすよ」
「何て?」
「適当に座っていっすけどベッドには腰掛けねーでくださいねっつったんっすよ」
今のはさすがに聞こえているだろうが、悟はあえて言い換えた。すると大典が首を傾げている。だがすぐに納得したかのようにうんうん頷くとニコニコと悟を見てきた。改めてチョロい。
そして着替えが終わっている悟に気づくとあからさまにがっかりした顔をしてくる。
「なあ、お前もう一回着替えないか?」
「ほんと半端ないっすねえー、何のために」
「そりゃ……」
わかっているがあえて聞くとさすがに言い淀んできた。悟は自分がベッドに腰かけてから、まあいいとばかりに話を振る。
「仲よくしてくださいって俺にお願い、するんでしょ」
「え? あー、えっと、そう、だな。仲よくしてくれるか?」
そうだな、と笑顔で大典はさらりといっそ爽やかな勢いで言ってきた。暑苦しいことばかり言ってきたくせにここでそれかと悟は微妙な顔をする。どうせならもっと面白く捉えて言動にして欲しいところだった。せめてもっと必死な様子で言ってみて欲しかった。拍子抜けだ。
「何だよ」
反応が普通で楽しくないんですよね。
「もっと必死に言えねーんすか」
「え。必死……」
「残念。まあ、先輩っすもんね」
「どういう……」
大典はひたすらわからないといった風にポカンとしている。
「別に。まぁ仲よくしますよ。じゃあ用、済んだんで帰っていいっすよ」
「いや待って!」
「何すか」
「何かこう、おかしくないか?」
「そっすか?」
確かに意地悪だろう。わざわざ来てもらい仲よくして欲しいと言わせた挙句「帰っていい」などと、下手をすると失礼でしかない。ただ大典に対してすでに興味をかなり抱いているのでむしろそう言った。おそらく悟を抱く側としてやる気満々なのであろう大典を素っ気ないほどの態度で帰そうとしたのはわざとだ。
だって楽しい。
ベッドに腰かけたまま淡々とした顔で悟は大典を見上げた。大典は戸惑いを隠すことない表情でじっと悟を見てくる。思わずため息が出るほどわかりやすいし馬鹿だなあと思うしかわいくさえある。
「ほんと先輩……」
「な、何だよ」
「いえ。気をつけて帰ってくださいね」
「は? 別に俺が気をつけるようなこと何もない……っつーか結局何なんだよ。わざわざここまで来て」
「お願いしたかったんじゃないんっすか?」
「いや、まぁそりゃ仲よくして欲しいけど」
ムッと唇を尖らせる大典が楽しくて、悟は立ち上がり近づくと呼びかけた。
「先輩。ちゃんとね、ちょっとだけ仲よくしてあげますよ」
笑みを浮かべると、残念ながら大典のほうが結構身長があるため悟は大典をそっと引っ張り、体を少し屈まさせた。そして近くなった大典の唇をぺろりと舐める。
やってみて、やはり嫌悪感がないことを実感する。男に対してこんなこと、普通では到底できそうにないはずが、全く嫌ではない。むしろ堪らないなと思う。
大典はといえば、残念な頭に理解が追いつかないのかポカンとした顔で悟を見てきた。
「は……?」
「じゃあ、帰ってください」
ニッコリと言えばようやく焦って「い、いやいや。そんなことされて俺が何もしねえで帰るとでも」と悟をつかもうとしてくる。なので悟から大典の手首をつかみ、それを阻んだ。
「マジ先輩半端ないっすねえー、駄目っすよ。後輩には優しくしないと。あとあんたのが背はあっても力で俺が負けるとでも?」
背は普通だが、昔からとび職を目指していた悟は自室でもよく筋トレなどはしていた。その辺の男相手に力で負ける気がしない。ましてや、筋肉の綺麗な大典とはいえ見た目に拘った鍛え方しかしていない相手に負ける訳がない。悟は笑みを浮かべながらいとも簡単に大典を引っぱった。
「そんじゃ、また明日。お疲れ様っす」
そして大典を追い出したのだが、後で「そういえばもっと抑えきれない状態にしてからにすればよかった」などと浮かんだ。今度こういう機会があれば、もっとじっくり甚振るようなキスをしてその気になった大典を放り出してみたい。トイレに駆け込むのか何とか堪えるのかわからないが、そういう大典を想像すると楽しい。満足した気持ちで悟はシャワーを浴びた。
翌日、大典は悟を見るなり何か言ってこようとしたのであえてスルーした。どのみち作業が始まったら否応なしに二人組になる。
「悟、お前の考えていることがわからないんだけど」
さすがに大典も仕事中はきちんと仕事をする。たまに道が逸れるが、ちょっとした軽口くらいだ。なのでまともに話してきたのは十時過ぎの小休憩の時だった。
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