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12話
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仕事が終わり話しかけてきた大典に、帰ると言ったら即「だったら俺もお前ん家行く」と返してきた。大典がもはや犬のように見えて悟は内心ほんのり笑いを堪えていた。
「来ないでください」
「そうか、って、ええ? 何でだよ」
「何でもへったくれもねぇっすけど。来ないで欲しいから言ったまでです」
「そ、そう」
大典はとてつもなく唖然としていた。その顔がまた面白くて、もっと意地悪をしたくなる。とはいえ来ないで欲しいと言ったのは別に意地悪ではない。
悟は男同士での行為についてまだ何も調べていない。別に今日来たからといってそういった行為をするつもりはそもそもないのだが、そういう雰囲気に持って行こうとするであろう大典を楽しくあしらう際に、そういった流れの根本といっていい性的行為を詳しく知らないのでは楽しみが半減しそうでつまらないため断った。どうせならどういったものか把握してから楽しくあしらいたい。
唖然としていた大典はどうやらそのまま友人がやっているらしい店へ向かったと思われる。大典に興味を持つようになった悟としてはあまり面白くない。別に飲みたければ飲めばいいし店に行きたければ行けばいいのだが、その店が友人とやらの店というのが好みでないというのだろうか。どうやら店の常連に大典のことを憎からず思っている者もいそうだが、それは大典自体が何も思っていなさそうなので今のところどうでもいい。
まだ大典に対して特に興味を持っていない時にその店に行き、様子は見ている。そのため友人らしい店長が大典に対してこれっぽっちもそういった感情を抱いていないのは知っている。だが大典はバイセクシャルだ。友情にやたら熱そうな印象はあるのであまりないとは思うが、それでもかなり頼っている様子の友人に対してどうなるかなど百パーセント明確とも言えない。ただ、今現状付き合ってもいない関係であれこれ言う権利はないため、悟は特に何も言わなかった。
自宅へ帰るとシャワーを浴びてから簡単な自炊をする。コンビニエンスストアの弁当などを買うこともあるがすぐに飽きてしまうため、こうして自炊をしているが特に楽しんではいない。難しいものや凝ったものは作らないので料理自体は気軽にするが、拘りはないので内容や盛り付けなども適当だ。ただし煮物にしてもラーメンにしても何でも、鍋から直接食べるのは好きではないのでちゃんと皿に盛る。
食事後、携帯で動画を見たりして寛いでからいつもやっているように簡単な筋トレをこなした。筋肉フェチではないのでやたら筋肉を作りたいとは思わないが、仕事に役立つとは思っているので鍛えること自体は昔から続けている。それを終えてからようやくベッドに横になり、いつでも眠られる状態で携帯電話を弄り、検索してみた。
「……うわ」
元々そちらの気質はないし、今も男自体に興味は全くないせいで普通に引く。別に性差別的な考えは皆無だし誰が誰を好きになろうが正直興味もないが、少なくとも自分はやはり一般的に男は無理だなと実感する。最初に好奇心もあり動画などを見てしまったのが間違いだったかもしれない。立つものもこれでは萎むというものだ。悟はため息を吐いてから普通に方法について色々検索してみた。
調べていくと今度は少し興味が出てくる。男同士の性行為を見るのは萎えるが、それをするために行う準備などは案外悪くない気がした。他の男に対してはそれでも全く無理そうではあるが、大典相手だと思うと悪くない。いや、むしろ楽しそうかもしれない。実際、尻の穴を拡張されながら泣いている大典を想像してみたら自然と笑みがこぼれた。
「今日こそは俺に付き合え」
その後も毎日のように相変わらずな誘い方をしてきていた大典に対し、悟も同じように適当な対応をして受け流していた。それでますます業を煮やしたのか週末、仕事が終わってから大典が悟の腕をつかみながら珍しく直接的な誘い方をしてきた。
「マジ先輩半端ないっすねえー。毎日そういうことばっか言ってて飽きねえんすか」
「飽きるほどお前と何もできてねーだろ!」
「ぶは。マジ半端ねえな。……じゃあ、いっすよ」
「駄目って言われてもな、俺──え? いいっつった?」
「言いましたよ」
意気込んでいた大典が馬鹿みたいに口をポカンとあけて見てくる。改めて本当に頭が悪そうだなと悟は思った。とはいえ嫌いではない頭の悪さというのだろうか。こんなでも仕事はよくできる人だし、誰かと接する時の反応は悪くなく人のよさなども出ていて、こんな人とはいえちゃんと目上の人として尊敬できないこともない。
文句を言いつつもまるでやたら懐いている犬のように大典は寮までついてきた。週末もあってか、仕事を終えそのまま出かけている人が多いようだ。人気があまりないのは悟としても悪くない。
部屋に入ると大典は勝手に座り、まるで我が家かのように遠慮なく寛ぎだした。
「前も思ったけどお前の部屋って何もねえのな」
勝手に寛ぎながら本当に遠慮のないことで、と悟はそっと笑う。
「勝手に座ったりとかほんと半端ないっすねえ。ベッドも机もあるっつーのに何がないっつーんです」
大典を放っておいて悟は部屋着に着替え始めた。背後にめちゃくちゃ視線を感じるがそれも放っておく。
「何かこう、置きもんとか漫画とかゲームとか」
「先輩の部屋の想像がつきますね」
「どういう意味だよ」
「そのままです。ああ、何か飲みますか? 何もない部屋ですし水くらいしかねえっすけど」
わかっていて振り返ると、誤魔化す暇もなかった様子の大典と目が合う。大典はさらにわかりやすく動揺し出した。
「え、あ、ああ。って水しかねえのに何か飲むかって何だよ」
「近くにコンビニありますんで他に飲みたいものあるならどうぞ買ってきてください」
「俺が行くんかよ。……何か仕事中と対応違うくねえ?」
「俺はいつもこんなもんですよ」
さて、どう料理しようかな。
悟はペットボトルの水を取りに行きながら楽しげに微笑んだ。
「来ないでください」
「そうか、って、ええ? 何でだよ」
「何でもへったくれもねぇっすけど。来ないで欲しいから言ったまでです」
「そ、そう」
大典はとてつもなく唖然としていた。その顔がまた面白くて、もっと意地悪をしたくなる。とはいえ来ないで欲しいと言ったのは別に意地悪ではない。
悟は男同士での行為についてまだ何も調べていない。別に今日来たからといってそういった行為をするつもりはそもそもないのだが、そういう雰囲気に持って行こうとするであろう大典を楽しくあしらう際に、そういった流れの根本といっていい性的行為を詳しく知らないのでは楽しみが半減しそうでつまらないため断った。どうせならどういったものか把握してから楽しくあしらいたい。
唖然としていた大典はどうやらそのまま友人がやっているらしい店へ向かったと思われる。大典に興味を持つようになった悟としてはあまり面白くない。別に飲みたければ飲めばいいし店に行きたければ行けばいいのだが、その店が友人とやらの店というのが好みでないというのだろうか。どうやら店の常連に大典のことを憎からず思っている者もいそうだが、それは大典自体が何も思っていなさそうなので今のところどうでもいい。
まだ大典に対して特に興味を持っていない時にその店に行き、様子は見ている。そのため友人らしい店長が大典に対してこれっぽっちもそういった感情を抱いていないのは知っている。だが大典はバイセクシャルだ。友情にやたら熱そうな印象はあるのであまりないとは思うが、それでもかなり頼っている様子の友人に対してどうなるかなど百パーセント明確とも言えない。ただ、今現状付き合ってもいない関係であれこれ言う権利はないため、悟は特に何も言わなかった。
自宅へ帰るとシャワーを浴びてから簡単な自炊をする。コンビニエンスストアの弁当などを買うこともあるがすぐに飽きてしまうため、こうして自炊をしているが特に楽しんではいない。難しいものや凝ったものは作らないので料理自体は気軽にするが、拘りはないので内容や盛り付けなども適当だ。ただし煮物にしてもラーメンにしても何でも、鍋から直接食べるのは好きではないのでちゃんと皿に盛る。
食事後、携帯で動画を見たりして寛いでからいつもやっているように簡単な筋トレをこなした。筋肉フェチではないのでやたら筋肉を作りたいとは思わないが、仕事に役立つとは思っているので鍛えること自体は昔から続けている。それを終えてからようやくベッドに横になり、いつでも眠られる状態で携帯電話を弄り、検索してみた。
「……うわ」
元々そちらの気質はないし、今も男自体に興味は全くないせいで普通に引く。別に性差別的な考えは皆無だし誰が誰を好きになろうが正直興味もないが、少なくとも自分はやはり一般的に男は無理だなと実感する。最初に好奇心もあり動画などを見てしまったのが間違いだったかもしれない。立つものもこれでは萎むというものだ。悟はため息を吐いてから普通に方法について色々検索してみた。
調べていくと今度は少し興味が出てくる。男同士の性行為を見るのは萎えるが、それをするために行う準備などは案外悪くない気がした。他の男に対してはそれでも全く無理そうではあるが、大典相手だと思うと悪くない。いや、むしろ楽しそうかもしれない。実際、尻の穴を拡張されながら泣いている大典を想像してみたら自然と笑みがこぼれた。
「今日こそは俺に付き合え」
その後も毎日のように相変わらずな誘い方をしてきていた大典に対し、悟も同じように適当な対応をして受け流していた。それでますます業を煮やしたのか週末、仕事が終わってから大典が悟の腕をつかみながら珍しく直接的な誘い方をしてきた。
「マジ先輩半端ないっすねえー。毎日そういうことばっか言ってて飽きねえんすか」
「飽きるほどお前と何もできてねーだろ!」
「ぶは。マジ半端ねえな。……じゃあ、いっすよ」
「駄目って言われてもな、俺──え? いいっつった?」
「言いましたよ」
意気込んでいた大典が馬鹿みたいに口をポカンとあけて見てくる。改めて本当に頭が悪そうだなと悟は思った。とはいえ嫌いではない頭の悪さというのだろうか。こんなでも仕事はよくできる人だし、誰かと接する時の反応は悪くなく人のよさなども出ていて、こんな人とはいえちゃんと目上の人として尊敬できないこともない。
文句を言いつつもまるでやたら懐いている犬のように大典は寮までついてきた。週末もあってか、仕事を終えそのまま出かけている人が多いようだ。人気があまりないのは悟としても悪くない。
部屋に入ると大典は勝手に座り、まるで我が家かのように遠慮なく寛ぎだした。
「前も思ったけどお前の部屋って何もねえのな」
勝手に寛ぎながら本当に遠慮のないことで、と悟はそっと笑う。
「勝手に座ったりとかほんと半端ないっすねえ。ベッドも机もあるっつーのに何がないっつーんです」
大典を放っておいて悟は部屋着に着替え始めた。背後にめちゃくちゃ視線を感じるがそれも放っておく。
「何かこう、置きもんとか漫画とかゲームとか」
「先輩の部屋の想像がつきますね」
「どういう意味だよ」
「そのままです。ああ、何か飲みますか? 何もない部屋ですし水くらいしかねえっすけど」
わかっていて振り返ると、誤魔化す暇もなかった様子の大典と目が合う。大典はさらにわかりやすく動揺し出した。
「え、あ、ああ。って水しかねえのに何か飲むかって何だよ」
「近くにコンビニありますんで他に飲みたいものあるならどうぞ買ってきてください」
「俺が行くんかよ。……何か仕事中と対応違うくねえ?」
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さて、どう料理しようかな。
悟はペットボトルの水を取りに行きながら楽しげに微笑んだ。
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