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11話
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週末にはそこそこ作業は進んだと思われる。この調子でいけば予定どおりで進められそうだと車で会社へ戻りながら皆で言っていた。
「今日こそは俺に付き合え」
今週も終わったと腕や首を回していると、またいつものように一人さっさと帰ろうとしていた悟を見つけた。大典は駆けつけて腕をつかむ。
「マジ先輩半端ないっすねえー。毎日そういうことばっか言ってて飽きねえんすか」
「飽きるほどお前となんもできてねーだろ!」
「ぶは。マジ半端ねえな。……じゃあ、いっすよ」
「駄目って言われてもな、俺──え? いいっつった?」
「言いましたよ」
今日こそは何が何でもどうにかしてやりたいと気合いを入れていた大典は拍子抜けして口をポカンと開けたまま悟を見た。
「ただでさえ馬鹿みたいなのにどう見ても馬鹿って顔してますよ」
「……お前、職場で俺の後輩って自覚ある?」
「何なら年下の自覚すらありますよ。で、ついてくるんっすか、どうするんっすか」
「え、行く!」
既に歩き出していた悟に大典は慌ててついて行った。
「前も思ったけどお前の部屋って何もねえのな」
寮となっているマンションに着いても人気があまりないのはおそらく皆週末だからと遊びに出ているのだろう。そのまま悟の家まで行くと大典は勝手に座りながら口にする。
「勝手に座ったりとかほんと半端ないっすねえ。ベッドも机もあるってのに何がないっつーんです」
「何かこう、置きもんとか漫画とかゲームとか」
「先輩の部屋の想像がつきますね」
「どういう意味だよ」
「そのままです。ああ、何か飲みますか? 何もない部屋ですし水くらいしかねえっすけど」
部屋着に着替えながら悟が振り返ってきた。何もないなどと言いながら着替えている悟の後ろ姿をガン見だった大典は逸らしようもなく、めちゃくちゃ目が合う。
「え、あ、ああ。って水しかねえのに何か飲むかって何だよ」
「近くにコンビニありますんで他に飲みたいものあるならどうぞ買ってきてください」
「俺が行くんかよ。……何か仕事中と対応違うくねえ?」
「俺はいつもこんなもんですよ」
「……水って水道水?」
「さすがにペットボトルでありますよ」
「じゃあ一応くれよ」
「ええ」
着替え終えた悟がニコニコと玄関近くの狭いキッチンにある冷蔵庫からペットボトルを出してきた。どうぞと差し出され、大典は礼を言いながら受け取る。だが別に喉が渇いている訳ではないので一旦机の上に置いた。
「で、付き合えってことですが俺に何の用っすか」
大典の近くに座ると悟が机に頬杖をつきながら聞いてくる。
「用っつーか……お前さ、俺があんだけ毎日口説いてんのに何で気づかねえ上に何考えてんのかわかんねえ行動ばっかすんの」
「はは。口説くって、外でヤろうとかのことっすか」
「も、もっとこう、ロマンチックっつーかカッコいい感じに言ったぞ俺!」
「ぶは。マジ半端ないっすね、あまり笑わさんでくれます?」
「今どこに笑うとこあったよ? つか言えよ。何考えてんのお前」
「別に特に」
頬杖をついたまま涼しげな顔で簡素に返してくる悟を大典はジロリと睨んだ。
「何も考えてねえのに俺を追い出したり唇舐めたり、家に来んなっつったりすんのかよ」
「そのままっすけどね、どれも」
「そのままじゃわかるかよ!」
「用はなさそうなんで帰るよう言っただけだし舐めたいから舐めただけだし来て欲しくねえからそう言っただけっすよ」
何故言いたいことが通じないのかと大典はマジマジと悟を見た。もしかして頭よさそうに見えて実は頭が悪いのだろうか。だとしたらあまり言っても把握ができないだろうし、かわいそうかもしれない。
「先輩今、何か失礼なこと考えてますよね」
「べ、別に考えてねえし。つか、じゃあなんで今日はいいっつったんだよ」
「いいからっすけど」
「あああああああもう!」
「じゃあ言いますけど」
通じなさ過ぎて泣きそうだし、もっとイライラしてもいいはずなのに頬杖をつきながら大典を見て笑いかけてくる悟が格好よくて「何だよ」とすぐに答えてしまう。そういえば「惚れたら負け」という言葉がなかっただろうか。きっと昔の偉い人だか何だかが作った言葉に違いない。だから仕方がないのだろう、格好よさに負けてきっとつい言いなりのようになってしまうのかもしれない。しかし男としては恰好もつけたいし主導権も握りたい。
……いやでも悟も男だよな。この場合どうなんだ? お互い恰好つけたいし主導権握りたいとなった場合どうなるんだ?
そんなことを考えていたからだろうか。悟が何か言ったらしいのだが全く聞いてなかった。
「何て?」
「人の話はちゃんと聞いてください。同じ言葉繰り返すつもりねえっすよ」
「悪かったから! えっと、じゃあ言いますけどっつったのは耳に入ってる。何言ったんだよ。頼む、言ってくれよ」
必死になり、大典は悟の頬杖をついている腕をつかんだ。しっかりとした筋肉が手に伝わってきてついニヤつきそうになったが顔を引き締めて「頼む」ともう一度悟に言う。
「聞かなくても問題ないっすよ」
「俺にはある! 聞きたいんだよ、言ってくれ頼むから」
「仕方ないっすね。今日ここへ来たがったってことは俺に何されても文句は言えないですねご愁傷様ですって言ったんすよ」
「何て」
「今日こそは俺に付き合え」
今週も終わったと腕や首を回していると、またいつものように一人さっさと帰ろうとしていた悟を見つけた。大典は駆けつけて腕をつかむ。
「マジ先輩半端ないっすねえー。毎日そういうことばっか言ってて飽きねえんすか」
「飽きるほどお前となんもできてねーだろ!」
「ぶは。マジ半端ねえな。……じゃあ、いっすよ」
「駄目って言われてもな、俺──え? いいっつった?」
「言いましたよ」
今日こそは何が何でもどうにかしてやりたいと気合いを入れていた大典は拍子抜けして口をポカンと開けたまま悟を見た。
「ただでさえ馬鹿みたいなのにどう見ても馬鹿って顔してますよ」
「……お前、職場で俺の後輩って自覚ある?」
「何なら年下の自覚すらありますよ。で、ついてくるんっすか、どうするんっすか」
「え、行く!」
既に歩き出していた悟に大典は慌ててついて行った。
「前も思ったけどお前の部屋って何もねえのな」
寮となっているマンションに着いても人気があまりないのはおそらく皆週末だからと遊びに出ているのだろう。そのまま悟の家まで行くと大典は勝手に座りながら口にする。
「勝手に座ったりとかほんと半端ないっすねえ。ベッドも机もあるってのに何がないっつーんです」
「何かこう、置きもんとか漫画とかゲームとか」
「先輩の部屋の想像がつきますね」
「どういう意味だよ」
「そのままです。ああ、何か飲みますか? 何もない部屋ですし水くらいしかねえっすけど」
部屋着に着替えながら悟が振り返ってきた。何もないなどと言いながら着替えている悟の後ろ姿をガン見だった大典は逸らしようもなく、めちゃくちゃ目が合う。
「え、あ、ああ。って水しかねえのに何か飲むかって何だよ」
「近くにコンビニありますんで他に飲みたいものあるならどうぞ買ってきてください」
「俺が行くんかよ。……何か仕事中と対応違うくねえ?」
「俺はいつもこんなもんですよ」
「……水って水道水?」
「さすがにペットボトルでありますよ」
「じゃあ一応くれよ」
「ええ」
着替え終えた悟がニコニコと玄関近くの狭いキッチンにある冷蔵庫からペットボトルを出してきた。どうぞと差し出され、大典は礼を言いながら受け取る。だが別に喉が渇いている訳ではないので一旦机の上に置いた。
「で、付き合えってことですが俺に何の用っすか」
大典の近くに座ると悟が机に頬杖をつきながら聞いてくる。
「用っつーか……お前さ、俺があんだけ毎日口説いてんのに何で気づかねえ上に何考えてんのかわかんねえ行動ばっかすんの」
「はは。口説くって、外でヤろうとかのことっすか」
「も、もっとこう、ロマンチックっつーかカッコいい感じに言ったぞ俺!」
「ぶは。マジ半端ないっすね、あまり笑わさんでくれます?」
「今どこに笑うとこあったよ? つか言えよ。何考えてんのお前」
「別に特に」
頬杖をついたまま涼しげな顔で簡素に返してくる悟を大典はジロリと睨んだ。
「何も考えてねえのに俺を追い出したり唇舐めたり、家に来んなっつったりすんのかよ」
「そのままっすけどね、どれも」
「そのままじゃわかるかよ!」
「用はなさそうなんで帰るよう言っただけだし舐めたいから舐めただけだし来て欲しくねえからそう言っただけっすよ」
何故言いたいことが通じないのかと大典はマジマジと悟を見た。もしかして頭よさそうに見えて実は頭が悪いのだろうか。だとしたらあまり言っても把握ができないだろうし、かわいそうかもしれない。
「先輩今、何か失礼なこと考えてますよね」
「べ、別に考えてねえし。つか、じゃあなんで今日はいいっつったんだよ」
「いいからっすけど」
「あああああああもう!」
「じゃあ言いますけど」
通じなさ過ぎて泣きそうだし、もっとイライラしてもいいはずなのに頬杖をつきながら大典を見て笑いかけてくる悟が格好よくて「何だよ」とすぐに答えてしまう。そういえば「惚れたら負け」という言葉がなかっただろうか。きっと昔の偉い人だか何だかが作った言葉に違いない。だから仕方がないのだろう、格好よさに負けてきっとつい言いなりのようになってしまうのかもしれない。しかし男としては恰好もつけたいし主導権も握りたい。
……いやでも悟も男だよな。この場合どうなんだ? お互い恰好つけたいし主導権握りたいとなった場合どうなるんだ?
そんなことを考えていたからだろうか。悟が何か言ったらしいのだが全く聞いてなかった。
「何て?」
「人の話はちゃんと聞いてください。同じ言葉繰り返すつもりねえっすよ」
「悪かったから! えっと、じゃあ言いますけどっつったのは耳に入ってる。何言ったんだよ。頼む、言ってくれよ」
必死になり、大典は悟の頬杖をついている腕をつかんだ。しっかりとした筋肉が手に伝わってきてついニヤつきそうになったが顔を引き締めて「頼む」ともう一度悟に言う。
「聞かなくても問題ないっすよ」
「俺にはある! 聞きたいんだよ、言ってくれ頼むから」
「仕方ないっすね。今日ここへ来たがったってことは俺に何されても文句は言えないですねご愁傷様ですって言ったんすよ」
「何て」
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