氷の王子

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6話

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 最近大地は今学校で流行っているらしいSNSを勝一の勧めでやり始めた。ゲームもできるしメールみたいなやりとりもできるし、フレンド申請をしたりされたりで色んな知り合いもそこの中でだけだが増える。

「これけっこうおもしろいぞ。お前なんでやらねえの」

 大地が圭悟に聞くも「めんどくさいから」と返ってきた。

「めんどくさいってなんだよ」
「んで実際知り合いでもないむしろ全く知らないやつとやりとりしなくちゃなんだよ」
「それがまた面白いけど」
「まーまー、大地。圭悟はそーゆーとこ変に硬派だから放っておけよ」

 怪訝そうに大地が圭悟を見ると、勝一がおかしげに笑ってきた。
 先程から三人でこれといってなにかをする訳でもなく廊下で壁にもたれつつダラダラしていた。大地はスマートフォンでそのSNSを開いて色々見たりしたりしつつだからたまに返事も上の空になる。

「ふーん?」
「硬派とかじゃないだろ。っていうか勝一、お前もしそれで誰かと知り合いになって浮気でも考えてんなら別れるしその前にお前九割殺すからな」
「色々待て。だいたいんなもん考えてねえっつーの。俺めっちゃお前好きだろが! つか九割ってもうそれほぼ完全に死にかかってるじゃねぇかよ」

 つっけんどんに言い放つ圭悟に対し、勝一が微妙な顔で突っ込んでいる。そんな二人のやりとりを大地はそれこそ微妙な顔で見た。

「お前ら俺の前では痴話喧嘩してくんなよ。別にお前らが付き合ってんのは気になんねーけどあまり男同士でいちゃこらしてんの見たい訳じゃねえぞ」
「それは俺だって見たくないな」
「俺も見たくねーわ」
「いや、そんなこと言ってるお前らけっこうナチュラルにいちゃついてきてんだからなっ?」
「いついちゃついたんだよ」

 二人が声を揃えて聞いてくる。大地はさらに微妙な顔をした。

「今の会話でその自覚ねえのかよ……! もうお前ら重傷だよな、あっちいけ」
「んなこと言うなよ」
「そうそう。だいたいマジであっち行ったら寂しがるくせによぉ」

 シッシと追い払うようにした大地に二人が抱き寄せてくる。

「離せ、うぜぇ! 寂しがるとかなんだよ、ちょっとだけはそーかもだけど!」

 大地の言葉に「ちょっとはそうなんかい」と二人は内心笑いながら突っ込みつつ、さらに羽交い絞めにする。
 ふとそんな折に零二が通りかかった。ちらりと大地たちを見た後も興味がないといった風で歩いていく零二に、むしろ大地が「おい!」と話しかける。その声に零二はまたちらりと大地を見るが、結局そのまま歩を進めていった。
 大地は二人を振りほどくと零二のほうに走っていき、そして何やら話しかけたかと思うとすぐに戻ってきた。

「……大地、氷王子と仲よくなったんじゃねぇのか」
「それな。一緒にいるの増えたと思ってたけど幻覚か? それともお前がまとわりついてるだけか?」

 勝一と圭悟が大地をまた羽交い絞めにしながら苦笑してくる。

「じゃねーよ、ちゃんと喋ってるし、そもそも仲よくなったんじゃなくて昔からこんなだったし!」

 なんとか二人を振りほどこうとしながら大地が言うと、二人はさらに苦笑してきた。

「昔からとか何言ってんだよ。だいたい付き合い最近ないって言ってただろ」
「なかったけど、でも昔から変わってなかったんだよ! 多分俺がなんか勝手に距離置いてただけ」
「へえ。んで今は何言いにいったんだ?」
「昼一緒に食おうっつったら用事あるって言われた」
「あー……」

 その後チャイムが鳴ったのでそれぞれ教室に戻る。大地は「なんか本読んでて眠いから俺保健室行く」と言ったものの、丁度授業受け持ちだった担任に頭をがっしりとつかまれ教室に放り込まれた。担任の受け持ちは数学なのだが大地にとってひたすらわからない内容すぎてどのみち眠気が襲ってくる。

 数学って数式覚えたってどこにどう使っていいかわかんねえしそもそもその数式自体何が言いてぇのかわからねえ。でもまだ国語なら俺いけるかもしれない。

 本を読むのは意外に楽しい。読んでいて、ああここはこういう意味なんだろうなとか考えたり察したりするのは楽しい。

 結局国語ってそういうのじゃなかったっけ? ああでも駄目だ、俺、漢字わからねえ。零二は小学生でも読めるって言ってた……でも俺、いっぱい読めねえしな……。でも……零二、俺聞くの全部教えてくれて……めんどくさそうにしてるけど……いい、やつ……。

「……いてぇ」
「痛くしたんだから当たり前。ほら、起きろ馬鹿ものが」

 気づけば夢の世界に旅立っていた大地は堂々とうつ伏せていたらしい。思いきり腕を捻りあげられて、むしろ今自分ががっつり寝ていたことに大地は気付いた。

「センセーが暴力」
「むしろお前が俺に授業妨害という暴力食らわしてきてんだからな? ほら皆、授業中断恨むなら立原恨めよー」

 担任はそんなことを言いながら教卓のほうに戻って行く。

「なんつーこと言いやがんだよ」
「お前がガチで寝るからだろ」

 圭悟があからさまに「バカだな」といった表情を隠そうともせずに笑いながら大地を見てきた。
 授業が終わった後、担任はさらに教室を出る前に大地の頭を小突いて行く。

「アイツ絶対俺に恨みがある」
「そりゃまあお前いつもさぼったり寝てるから恨んでもおかしくないだろ」
「いつもなのかよ。だったら仕方ねえな」

 むしろある意味気に入られてんだろ、と思いながらも圭悟も勝一もそれは口にしない。
 今日は教室がわりと騒がしかったので隣のクラスの勝一と一緒に、いつも誰かたむろしている空き教室に弁当を持ちつつ向かっていた。
 その教室では相変わらず似たようなメンツが何やら食べているか既に食べ終え、好き勝手にゲームをしたり雑誌を読んだりしていた。

「あれ? そいや総司いねーの?」

 前は大抵ここにいてパンを食べてるか小さなチョコレートを堪能しているか寝てるか喋ってるかだった総司をそういえば最近はあまり見ないなと思いつつ聞くと「針谷と一緒だろ」と他の友人が返してくる。

「あー」

 頷きつつ適当なところへ座り、大地は圭悟たちと弁当を食べだした。腹が減っていたのでとりあえずひたすらかけこむと大地はふと思い出し、誰ともなく「なあ」と口を開いた。特に返事は返ってこないが多分聞いてくれているだろうとそして続ける。

「そいやさー、お前らって悪いことしたりするだろ? 俺にも少しだけ悪い遊びっての教えてくれない?」

 途端、目の前の二人は何やら吹き出しているし違うところにいた他の友人も「はっ?」と唖然としたように大地を見てくる。

「……お前、何言ってんの?」

 圭悟が微妙な顔を向けてきた。

「いや、俺さー、零二にさ『お前が経験したことない遊びとかなら俺のが知ってる』的なこと言ったはいいけど、よく考えなくても知らんかったな、と。お前ら絶対なんか悪い遊びしてるだろ? なのに俺誘ってくれたことねーだろ」
「俺はバカらしいことはしない」
「あー圭悟と勝一はそうかもだけど、ほら、お前らはどうよ」

 実際圭悟と勝一は真面目ではないが悪ぶっている訳でもない。ただそれなりに好き勝手やっているといった印象はある。
 でもここにいる他の友人たちはけっこうよそで喧嘩したり何やらしているのは大地でも知っている。そしてそういったことに自分たちのリーダーらしい総司や大地を巻き込まないようにしてくれているのも知っている。

「ざけんな、何言ってんだお前」

 今も素っ気なく言われたが怒っているというよりは呆れつつも大地を思って言ってくれている感じがする。

「いやうん、まあそうなんだろけどさ、あれだ、ちょっとだけ悪い感じで」
「寝言は寝て言え」
「んだよケチ」
「ざけんな」

 そんなやりとりで結局「悪い遊び」はさせてもらえそうになかった。
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