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毎年この国にも一応短い夏はやってくる。冬が長い分、皆が夏をとても楽しみにしている。ザリガニパーティーもその一つだが、他にも昼の間はずっと日光浴を楽しんだり自然の中に身を置いてのんびり過ごしたりもする。
「クリード。何をそんなにかしこまっているのです」
ウィルフレッドたちも今、王子や王女という肩書きと仕事を忘れてのんびり城の裏にある湖のほとりで日光浴を楽しんでいた。
リストリア王国第一王子であるクリードも久しぶりに仕事としてではなく遊びにこのケルエイダ王国へやってきており、アレクシアが「では皆と一緒に日光浴でも」と誘ったらしい。
一度ラルフに誘われ城下町の者があつまる公園へウィルフレッドは足を運んだことがある。そこでは皆、羞恥心をどこへ置き忘れてきたのかと問いたくなるくらいほぼ裸で過ごしていた。魔界ですらむしろパーティーなどでは皆秩序ある姿で過ごしていた記憶しかない。
「日光浴は気持ちいいし最高の眺めでしょ」
ラルフはニコニコと言っていたが、女より男が多かったし、自分と同じものがぶら下がっている肌色の光景に多少引いていたウィルフレッドは「俺は奥ゆかしいほうが好みなので」と適当な返事をしておいた。
その時のことをことを思えば、日光浴と言えども皆控えめな露出でしかない。だというのにクリードは少し耳を赤くしながら実際かしこまっているように見えた。
ウィルフレッドは生ぬるい目でクリードをそっと見る。
兄たちも相当美形ではあるが、クリードも負けていない。しかもリストリア王国次期王という存在だ。あれでモテなければ誰がモテるというのか。普通に考えれば女慣れし過ぎている勢いのはずだ。
次に同じくそっとルイやラルフを見る。この二人を見慣れているから余計にクリードの様子に生ぬるい気持ちになるのだろうかと思う。
ルイはあまり派手な噂はないものの、全く何もない訳じゃないことは女性への接し方を見れば一目瞭然だ。そしてラルフは言わずもがな。
アレクシアに関しては分からない。さすがに王女だけに浮いた噂は弟であるウィルフレッドも全く聞かないのだが、クリードへの接し方を見ていると、どう見ても余裕で手のひらで転がしているようにしか見えないのだ。
今も何故クリードがかしこまっているか分かっているだろうに、何でもないかのように声をかけてそばへ近寄って行った。クリードはと言えばさらに顔を赤くしながらそわそわしている。
……魔性だ。姉上は魔性の生き物。
自分の中で改めて再確認しつつ、ウィルフレッドはそっとクリードのために祈ってやった。とはいえ元魔王だ。祈ると言っても神の信者にはなれないし祈りの言葉も覚える気がない。恐らく敬虔な信者からすれば冒涜的な呪いでさえあるかもしれない。ウィルフレッドには魔力がほぼないので何の効力もないのがむしろ幸いといったところかもしれない。
「何考えてんの」
アレクシアたちから少し離れたところでウィルフレッドがぼんやりしているとラルフが声をかけてきた。
「……兄上。兄上はクリードのこと、どう思いますか」
「クリード? また何で。まぁうん、いい人だよね。俺らの兄様と違って」
ニコニコと言うラルフにウィルフレッドは微妙な顔を向けた。
「ルイ兄様のことですか……」
「だって兄様ほどひたすら含みありそうな人、俺知らないもん」
確かにそれは否定しないが、と内心頷いてからウィルフレッドはさらに聞いた。
「でも姉上に対して少し物足りないやつなのでは」
「まぁ、今さっきのような様子を見てたらねえ。でもウィルはあまり他の国を知らないからかもだけど、クリードって結構やり手だし男としてもかなりスマートな人だよ」
「……あれで?」
「あはは。まぁそう見えないよねー姉様と一緒のとこ見てたら」
でも、とラルフはニコニコ続けてきた。
リストリア王国の第一王子として、クリードは余りあるほどの功績を残しているのだという。また、ルイと同い年であり、アレクシアよりも社交界デビューの早かったクリードは当然のように引く手あまたといった風に女性が近づいてきていたが、とても上手くあしらっていたらしい。
「そもそも我らが兄様と対等に付き合える時点で凄くない? さすがに童貞ではないだろうけど、誰かに言い寄られても基本的に丁重なお断りをしてたみたいだよ。もったいないよねえ」
「……もったいないと思うのは兄上くらいです」
「えー。ウィルって結構ストイックだよね」
飽きただけだ、と心の中で言い返す。
「じゃあ、ああなるのは姉上に対してだけってやつですか」
「みたいだねー。よほど好きなんじゃない? クリードもかわいそうに。姉様みたいな人に惚れちゃってさ」
まあ、それは分かる。
「でもさ、クリードだからこそ、姉様も受けたんだと思うよ、結婚の話。要はそれほどの人ってことだよ、クリードも」
相変わらずニコニコと言うラルフに、ウィルフレッドはそういえばとふと思った。
クリードのことから全然離れるが、基本的にチャラくていい加減そうなラルフだが、人を悪く言うことがまずない。褒めることならこうやって楽しげに話すが、貶すような内容は避けられる内容ならわりと避けているように思える。
……こいつも結構読めないやつだと前から思っているが、基本善人だからなのだろうか。
「ところでウィル。その薄着、扇情的だね。よかったらここ抜けて二人きりでもっと楽しいことしようか」
「よくないのでしません」
「えぇー、冷たい」
いや、例え善人でなくてもこいつほんと何考えてんのか分かんねーわ……!
ウィルフレッドは微妙な顔でじろりとラルフを見ながら思い直した。
「クリード。何をそんなにかしこまっているのです」
ウィルフレッドたちも今、王子や王女という肩書きと仕事を忘れてのんびり城の裏にある湖のほとりで日光浴を楽しんでいた。
リストリア王国第一王子であるクリードも久しぶりに仕事としてではなく遊びにこのケルエイダ王国へやってきており、アレクシアが「では皆と一緒に日光浴でも」と誘ったらしい。
一度ラルフに誘われ城下町の者があつまる公園へウィルフレッドは足を運んだことがある。そこでは皆、羞恥心をどこへ置き忘れてきたのかと問いたくなるくらいほぼ裸で過ごしていた。魔界ですらむしろパーティーなどでは皆秩序ある姿で過ごしていた記憶しかない。
「日光浴は気持ちいいし最高の眺めでしょ」
ラルフはニコニコと言っていたが、女より男が多かったし、自分と同じものがぶら下がっている肌色の光景に多少引いていたウィルフレッドは「俺は奥ゆかしいほうが好みなので」と適当な返事をしておいた。
その時のことをことを思えば、日光浴と言えども皆控えめな露出でしかない。だというのにクリードは少し耳を赤くしながら実際かしこまっているように見えた。
ウィルフレッドは生ぬるい目でクリードをそっと見る。
兄たちも相当美形ではあるが、クリードも負けていない。しかもリストリア王国次期王という存在だ。あれでモテなければ誰がモテるというのか。普通に考えれば女慣れし過ぎている勢いのはずだ。
次に同じくそっとルイやラルフを見る。この二人を見慣れているから余計にクリードの様子に生ぬるい気持ちになるのだろうかと思う。
ルイはあまり派手な噂はないものの、全く何もない訳じゃないことは女性への接し方を見れば一目瞭然だ。そしてラルフは言わずもがな。
アレクシアに関しては分からない。さすがに王女だけに浮いた噂は弟であるウィルフレッドも全く聞かないのだが、クリードへの接し方を見ていると、どう見ても余裕で手のひらで転がしているようにしか見えないのだ。
今も何故クリードがかしこまっているか分かっているだろうに、何でもないかのように声をかけてそばへ近寄って行った。クリードはと言えばさらに顔を赤くしながらそわそわしている。
……魔性だ。姉上は魔性の生き物。
自分の中で改めて再確認しつつ、ウィルフレッドはそっとクリードのために祈ってやった。とはいえ元魔王だ。祈ると言っても神の信者にはなれないし祈りの言葉も覚える気がない。恐らく敬虔な信者からすれば冒涜的な呪いでさえあるかもしれない。ウィルフレッドには魔力がほぼないので何の効力もないのがむしろ幸いといったところかもしれない。
「何考えてんの」
アレクシアたちから少し離れたところでウィルフレッドがぼんやりしているとラルフが声をかけてきた。
「……兄上。兄上はクリードのこと、どう思いますか」
「クリード? また何で。まぁうん、いい人だよね。俺らの兄様と違って」
ニコニコと言うラルフにウィルフレッドは微妙な顔を向けた。
「ルイ兄様のことですか……」
「だって兄様ほどひたすら含みありそうな人、俺知らないもん」
確かにそれは否定しないが、と内心頷いてからウィルフレッドはさらに聞いた。
「でも姉上に対して少し物足りないやつなのでは」
「まぁ、今さっきのような様子を見てたらねえ。でもウィルはあまり他の国を知らないからかもだけど、クリードって結構やり手だし男としてもかなりスマートな人だよ」
「……あれで?」
「あはは。まぁそう見えないよねー姉様と一緒のとこ見てたら」
でも、とラルフはニコニコ続けてきた。
リストリア王国の第一王子として、クリードは余りあるほどの功績を残しているのだという。また、ルイと同い年であり、アレクシアよりも社交界デビューの早かったクリードは当然のように引く手あまたといった風に女性が近づいてきていたが、とても上手くあしらっていたらしい。
「そもそも我らが兄様と対等に付き合える時点で凄くない? さすがに童貞ではないだろうけど、誰かに言い寄られても基本的に丁重なお断りをしてたみたいだよ。もったいないよねえ」
「……もったいないと思うのは兄上くらいです」
「えー。ウィルって結構ストイックだよね」
飽きただけだ、と心の中で言い返す。
「じゃあ、ああなるのは姉上に対してだけってやつですか」
「みたいだねー。よほど好きなんじゃない? クリードもかわいそうに。姉様みたいな人に惚れちゃってさ」
まあ、それは分かる。
「でもさ、クリードだからこそ、姉様も受けたんだと思うよ、結婚の話。要はそれほどの人ってことだよ、クリードも」
相変わらずニコニコと言うラルフに、ウィルフレッドはそういえばとふと思った。
クリードのことから全然離れるが、基本的にチャラくていい加減そうなラルフだが、人を悪く言うことがまずない。褒めることならこうやって楽しげに話すが、貶すような内容は避けられる内容ならわりと避けているように思える。
……こいつも結構読めないやつだと前から思っているが、基本善人だからなのだろうか。
「ところでウィル。その薄着、扇情的だね。よかったらここ抜けて二人きりでもっと楽しいことしようか」
「よくないのでしません」
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