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23話
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確信があった訳ではない。もしかしたら自分の独りよがりの可能性だってあった。それでもキスしたくて堪らなくて、聖恒は思わず告白する前にキスしていた。場所が場所だけに簡単なキスだったが、それでも最高に甘くて蕩けそうだった。
おまけに好きだと言えば、好きだと返ってきた。あまりにも嬉しくて、むしろ一気に気が抜けた。だがお互い微笑み合うと、キスの感触を思い出す。
……ヤバい。めっちゃ二人きりになりてえ。
そわそわしまくりそうな自分を何とか抑えると、聖恒はドライブに誘った。真面目な恵だから「夜だし親が心配するかもだろ」などと言って帰そうとしてくるかもと少し思っていたら「うん」とだけ返ってきた。車が動き出す。
先生らしい保護者っぷりなんてなかった。もちろん残念なことに実際もう聖恒の先生ではないけれども、そういった扱いを引きずってくることもなくドライブに付き合ってくれている。とてつもなく嬉しくなった。嬉しさに武者震いしそうなほどだった。
そして気づく。好きだと打ち明け合ったが、つき合おうとはお互い何も言っていない。当然のようにつき合った感覚ではあったが、やはりちゃんと言葉にしておきたいなと聖恒は思った。
恵とのやりとりで、一瞬恵が誰かと夜景を見に行ったのかと思った時はかなりムッとしてしまったし、自分は存外ヤキモチ妬きらしい。冷めているほうなのでもっと流せるタイプだと思っていたのはおこがましかった。
声かけると恵は運転を続けたまま優しく聞いてくれる。
「何」
「俺はめぐちゃんが好き」
「……うん」
嬉しそうに恵が肯定してくれた。実際横顔も嬉しそうに見えた。
運転しているからこちらを見ることがない分、聖恒は恵を見て堪能した。あまりあからさまにじろじろ見ると視線を感じて運転しにくいかもと思い、一応できる限り自然を装って窺っている。
「めぐちゃんも、……俺が、好き」
聖恒は噛みしめるように言葉を発した。まだふわふわしている。恵が好きだと言ってくれたのだという事実と夢のような気持ちに、本当にふわりと浮き上がってしまいそうだった。
「……ぃなあ」
恵が何か言ったことに気づく。
「っえっ?」
「……うん、好きだよ」
優しく言われ聖恒は一瞬固まった。心臓が破裂するかと思った。そんな自分の拙い反応が恥ずかしくて、誤魔化すように咳払いした後で続けた。
「……ええと……。あ、そう。両思いだよね」
「そうだね」
「じゃあ、つき合ってる?」
好きだと言い合ったところなのに、こう言うともの凄くドキドキした。誰かを好きになるって心臓の負担が凄いのだなと検討違いなことをつい思う。今までだって好きになったことはあるはずなのに、こんなことは初めてだった。
「うん、つき合ってる。もしまだつき合ってないなら、きよ、俺とつき合って」
ああ……。
生きててよかった、そう思った。そして恵を好きになってよかったと。ついでにとても興奮してしまったので「はい!」と答えたあと頭の中でひたすら単純な計算をし倒した。
「きよ? 大丈夫?」
「六十三……」
「……えっ?」
ふと聞かれてつい丁度出していた答えを口にしてしまい、慌てて「何でもないよ」と言い直した。そして話を逸らす目的兼、知りたかったので話題を変えた。
「そんで、今ってどこ向かってるの?」
「着いてからのお楽しみ。もーすぐかな」
「えー気になるなあ」
その、前に行ったという夜景が楽しめるところだろうかと思ったりしたが、山というよりどこか港の方へ向かっている気がする。海でも見るのかなとも思っていると「着いたよ」と恵は車を停めた。
車のライトが消えると辺りはとても暗いが、一応何となくは見える。ただどこなのかはさっぱりわからない。むしろどこでもないような気もする。
「ひたすら人気のないとこってこと?」
それならそれでいいけどもと聖恒が少しドキドキしていると「まあ、それもあるけど……ちょっと外、出ようか」と恵が苦笑してきた。
言われた通りドアを開けて外へ出る。何もないとはいえ、草むらだからかとても静かなところだからか、クビキリギスの「ジー」という声の他にもいくつかの種類のコオロギがリィリィ、ギーと鳴いている声がよく聞こえてきた。海の潮の匂いもする。
「……もう夏だなー」
同じようなことを思ったのか、恵が呟いている。
「うん」
「きよ、見て」
言われて恵のそばへ近づいた聖恒は恵が指さす方を見た。夜の真っ黒な海が見える。その先に高速道路だろうか、道なりにオレンジ色のライトがあった。そしてそのさらに向こうだ。
「ぅわ……マジで……」
神秘的、幻想的ともいえるのに近代的過ぎる夜景があった。
「夜の工場って凄いよな」
恵が笑いかけてくる。
「うん……びっくりした。こんなに綺麗なんだ。工場なの? ってまだ働いてる人いんの」
「綺麗だろ。人は……そうだな、夜勤の人もいるよ。工場だから休みなく動いてるとこ多いだろうし。でも閉まっててもライトアップしてるとこもあるだろうな」
「へえ……」
あまりに美しい光景に、知らず知らずお互い自然と手を繋いでいた。それに気づくと、純粋に夜景を楽しんでいたはずがまたドキドキしてくる。
「……めぐちゃん、キスしたい」
「……っえっと、……うん……。あ、でも車の中入ろうか。少し蒸すし、蚊もいるっぽい」
車の中とか喜んで。聖恒はニッコリ微笑んだ。
おまけに好きだと言えば、好きだと返ってきた。あまりにも嬉しくて、むしろ一気に気が抜けた。だがお互い微笑み合うと、キスの感触を思い出す。
……ヤバい。めっちゃ二人きりになりてえ。
そわそわしまくりそうな自分を何とか抑えると、聖恒はドライブに誘った。真面目な恵だから「夜だし親が心配するかもだろ」などと言って帰そうとしてくるかもと少し思っていたら「うん」とだけ返ってきた。車が動き出す。
先生らしい保護者っぷりなんてなかった。もちろん残念なことに実際もう聖恒の先生ではないけれども、そういった扱いを引きずってくることもなくドライブに付き合ってくれている。とてつもなく嬉しくなった。嬉しさに武者震いしそうなほどだった。
そして気づく。好きだと打ち明け合ったが、つき合おうとはお互い何も言っていない。当然のようにつき合った感覚ではあったが、やはりちゃんと言葉にしておきたいなと聖恒は思った。
恵とのやりとりで、一瞬恵が誰かと夜景を見に行ったのかと思った時はかなりムッとしてしまったし、自分は存外ヤキモチ妬きらしい。冷めているほうなのでもっと流せるタイプだと思っていたのはおこがましかった。
声かけると恵は運転を続けたまま優しく聞いてくれる。
「何」
「俺はめぐちゃんが好き」
「……うん」
嬉しそうに恵が肯定してくれた。実際横顔も嬉しそうに見えた。
運転しているからこちらを見ることがない分、聖恒は恵を見て堪能した。あまりあからさまにじろじろ見ると視線を感じて運転しにくいかもと思い、一応できる限り自然を装って窺っている。
「めぐちゃんも、……俺が、好き」
聖恒は噛みしめるように言葉を発した。まだふわふわしている。恵が好きだと言ってくれたのだという事実と夢のような気持ちに、本当にふわりと浮き上がってしまいそうだった。
「……ぃなあ」
恵が何か言ったことに気づく。
「っえっ?」
「……うん、好きだよ」
優しく言われ聖恒は一瞬固まった。心臓が破裂するかと思った。そんな自分の拙い反応が恥ずかしくて、誤魔化すように咳払いした後で続けた。
「……ええと……。あ、そう。両思いだよね」
「そうだね」
「じゃあ、つき合ってる?」
好きだと言い合ったところなのに、こう言うともの凄くドキドキした。誰かを好きになるって心臓の負担が凄いのだなと検討違いなことをつい思う。今までだって好きになったことはあるはずなのに、こんなことは初めてだった。
「うん、つき合ってる。もしまだつき合ってないなら、きよ、俺とつき合って」
ああ……。
生きててよかった、そう思った。そして恵を好きになってよかったと。ついでにとても興奮してしまったので「はい!」と答えたあと頭の中でひたすら単純な計算をし倒した。
「きよ? 大丈夫?」
「六十三……」
「……えっ?」
ふと聞かれてつい丁度出していた答えを口にしてしまい、慌てて「何でもないよ」と言い直した。そして話を逸らす目的兼、知りたかったので話題を変えた。
「そんで、今ってどこ向かってるの?」
「着いてからのお楽しみ。もーすぐかな」
「えー気になるなあ」
その、前に行ったという夜景が楽しめるところだろうかと思ったりしたが、山というよりどこか港の方へ向かっている気がする。海でも見るのかなとも思っていると「着いたよ」と恵は車を停めた。
車のライトが消えると辺りはとても暗いが、一応何となくは見える。ただどこなのかはさっぱりわからない。むしろどこでもないような気もする。
「ひたすら人気のないとこってこと?」
それならそれでいいけどもと聖恒が少しドキドキしていると「まあ、それもあるけど……ちょっと外、出ようか」と恵が苦笑してきた。
言われた通りドアを開けて外へ出る。何もないとはいえ、草むらだからかとても静かなところだからか、クビキリギスの「ジー」という声の他にもいくつかの種類のコオロギがリィリィ、ギーと鳴いている声がよく聞こえてきた。海の潮の匂いもする。
「……もう夏だなー」
同じようなことを思ったのか、恵が呟いている。
「うん」
「きよ、見て」
言われて恵のそばへ近づいた聖恒は恵が指さす方を見た。夜の真っ黒な海が見える。その先に高速道路だろうか、道なりにオレンジ色のライトがあった。そしてそのさらに向こうだ。
「ぅわ……マジで……」
神秘的、幻想的ともいえるのに近代的過ぎる夜景があった。
「夜の工場って凄いよな」
恵が笑いかけてくる。
「うん……びっくりした。こんなに綺麗なんだ。工場なの? ってまだ働いてる人いんの」
「綺麗だろ。人は……そうだな、夜勤の人もいるよ。工場だから休みなく動いてるとこ多いだろうし。でも閉まっててもライトアップしてるとこもあるだろうな」
「へえ……」
あまりに美しい光景に、知らず知らずお互い自然と手を繋いでいた。それに気づくと、純粋に夜景を楽しんでいたはずがまたドキドキしてくる。
「……めぐちゃん、キスしたい」
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