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25話
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帰ろうと言われた時は、何か怒ったのだろうかと聖恒はハラハラした。
「え、帰るの……?」
「もう早い時間とは言えないだろ」
散々キスした。唇や首筋、耳などたくさん味わった。愛しくて堪らなくて、さらに服をめくり上げようとしたら止められ、帰ろうと言われたのだ。何かしたのか、やり過ぎたのか、不快だったのかと心配にもなる。
「めぐちゃん、俺男だよ。門限とかねーし、遅くなっても平気だよ?」
「未成年をつれ回したってことで俺が捕まっちゃうよ」
あははと恵に笑って言われたので、冗談なのか本気なのかわからない。
「俺がいいって言ってんのに?」
「きよはまだ親の承諾がないと駄目な歳なんだよ。だから俺は深夜に君をつれ回せない」
何だよそれ、と正直思った。真面目過ぎて意味わからない。
「ってことで、帰ろう」
「こんなにいい雰囲気だったのにっ?」
覆い被さっていた聖恒を押し退けてきた恵に唖然とすると、恵は軽くキスしてきた。
「いい雰囲気かもだけども。いい雰囲気っていうかエロい雰囲気な気がする」
囁くように言うと、本当に入ったほうとは逆のドアから恵は外へ出てしまった。そしてぐるりと回って前の運転席へ入ってくる。
「っていうかやっぱり暑いな。エンジンかけるよ。きよはそこのまま?」
「っ、前に乗る!」
唖然としたままでいるとそう言われ、聖恒は慌てて自分も一旦外へ出た。エアコンもなしで狭い車内、ひたすら抱き合い絡み合っていたせいで、先ほどまでは生ぬるく蒸していた外のほうが涼しくなっていた。
……こんなのあり?
正直、聖恒はかなりその気になっていた。男同士だし、詳しくどうすればいいかわかっていないのでさすがに最後までする気はなかったが、せめて抜き合いくらいはと考えていた。
聖恒も回り込むと助手席のドアを開けて中へ入る。熱気すらこもりかけていた車内は既にじわじわエアコンが効き始めていた。
「めぐちゃん、俺もっとイチャイチャしてたかったんだけど」
「俺もしたいけど、また今度な」
「……親に許可もらってたら、俺はめぐちゃんと深夜でも会えるしお泊まりだってできんの?」
軽く流された感じがしてムスッと言えば、恵が焦ったように聖恒を見てきた。
あ、今のなんかかわいい。
聖恒がそっと思っていると「な、何言ってるの……」と呟いてくる。
「だってそういうことだろ?」
「そうだけど……許可とか……。……あ、エンジンも暖まっただろうし、出すな?」
出す、か。どうせならめぐちゃんの口からなら「もう出る……」とかが聞きたかった。
「きよ?」
「うん……出して。……未成年ってめぐちゃん言うけど、ってことは血気盛んな男子高生だってこともわかってる?」
「……わかってる」
小さな声が返ってきた。聖恒がちらりと横顔を窺うと、暗いのでよくは見えないが恵が赤くなっているような気がした。
「……今度な」
ヤバい。
聖恒は外の景色を見る振りをして顔をそらした。今度なと言ってきた恵に、聖恒は体の芯からドクリとしたものを感じた。先ほどしていたキスと愛撫でかなり興奮していた感情と体が、せっかく一旦治まっていたというのに反応する。聖恒は必死になってまた数学の計算をひたすら行った。
帰るというのにおっ勃ててどうすんだよ俺。
「……きよ、怒ってる?」
しばらく黙っていると聞かれた。
「っえ?」
「いや……黙ってるから……」
「お、怒ってない、怒ってない! その……数学のこと考えてた。これで察して」
「え? あ……」
怪訝そうだった恵だが、途中でどうやら理解したようだった。ということは、恵にも数字のことを考えたりして気を紛らわそうとしたことがあるのかもしれないなどと思い、また少し興奮しそうになった。どうやら箸が転がってもおかしいお年頃のように、数字を考えてるのがわかると興奮するお年頃もあるようだ。
「ここまででいいよ」
以前家の前まで車で来てもらった時は、道路が少し狭くて迂回していたことを何気に思い出し、聖恒は待ち合わせしていた駅が近くなった時に言った。
「何言ってんの。家まで送るよ」
「いいって。家まで来たら親に紹介するからね、めぐちゃんが俺の彼氏になったって」
「ちょっとまだつき合い始めて数時間も経ってないから心の準備が……っていうかきよはそういうの、オープンなのか?」
とりあえず待ち合わせの時に停めていた辺りに恵は停車すると、微妙な顔で聞いてきた。
「別にオープンってわけじゃないけど……普通?」
「いや、俺ときよがつき合うことって一応、一般的じゃないと思うよ……」
「え? ああ、俺も男同士ってことで悩みましたよ!」
つい家庭教師をしてもらっていた頃のように敬語になってしまい、何となく恥ずかしさを感じて口を押さえると笑われた。
「笑ってんなよ。ところでめぐちゃん」
「何?」
「日曜の約束はまだ有効だよね?」
聖恒が聞くと、恵は一瞬だけポカンとした後で微笑んできた。
「ああ。デート、だろ」
「うん」
嬉しくなって聖恒もニッコリする。
「どこ行きたい?」
「じゃあホテル」
「……きよ」
「っちぇ。そんじゃ買い物。もしめぐちゃんが車出してくれるの面倒じゃなかったらアウトレット行きたい」
「いいよ」
最後にもう一度だけ軽くキスして、その日は別れた。家へ帰って部屋へ入ってから、聖恒は顔が燃えてるのではないかというくらい熱くなるのがわかった。
今まで生きてきた中でそして一番幸せな日だったと実感し、寝る前には車でのことを思い出しながら、とてつもなく扇情的だった恵をおかずにさせてもらった。
「え、帰るの……?」
「もう早い時間とは言えないだろ」
散々キスした。唇や首筋、耳などたくさん味わった。愛しくて堪らなくて、さらに服をめくり上げようとしたら止められ、帰ろうと言われたのだ。何かしたのか、やり過ぎたのか、不快だったのかと心配にもなる。
「めぐちゃん、俺男だよ。門限とかねーし、遅くなっても平気だよ?」
「未成年をつれ回したってことで俺が捕まっちゃうよ」
あははと恵に笑って言われたので、冗談なのか本気なのかわからない。
「俺がいいって言ってんのに?」
「きよはまだ親の承諾がないと駄目な歳なんだよ。だから俺は深夜に君をつれ回せない」
何だよそれ、と正直思った。真面目過ぎて意味わからない。
「ってことで、帰ろう」
「こんなにいい雰囲気だったのにっ?」
覆い被さっていた聖恒を押し退けてきた恵に唖然とすると、恵は軽くキスしてきた。
「いい雰囲気かもだけども。いい雰囲気っていうかエロい雰囲気な気がする」
囁くように言うと、本当に入ったほうとは逆のドアから恵は外へ出てしまった。そしてぐるりと回って前の運転席へ入ってくる。
「っていうかやっぱり暑いな。エンジンかけるよ。きよはそこのまま?」
「っ、前に乗る!」
唖然としたままでいるとそう言われ、聖恒は慌てて自分も一旦外へ出た。エアコンもなしで狭い車内、ひたすら抱き合い絡み合っていたせいで、先ほどまでは生ぬるく蒸していた外のほうが涼しくなっていた。
……こんなのあり?
正直、聖恒はかなりその気になっていた。男同士だし、詳しくどうすればいいかわかっていないのでさすがに最後までする気はなかったが、せめて抜き合いくらいはと考えていた。
聖恒も回り込むと助手席のドアを開けて中へ入る。熱気すらこもりかけていた車内は既にじわじわエアコンが効き始めていた。
「めぐちゃん、俺もっとイチャイチャしてたかったんだけど」
「俺もしたいけど、また今度な」
「……親に許可もらってたら、俺はめぐちゃんと深夜でも会えるしお泊まりだってできんの?」
軽く流された感じがしてムスッと言えば、恵が焦ったように聖恒を見てきた。
あ、今のなんかかわいい。
聖恒がそっと思っていると「な、何言ってるの……」と呟いてくる。
「だってそういうことだろ?」
「そうだけど……許可とか……。……あ、エンジンも暖まっただろうし、出すな?」
出す、か。どうせならめぐちゃんの口からなら「もう出る……」とかが聞きたかった。
「きよ?」
「うん……出して。……未成年ってめぐちゃん言うけど、ってことは血気盛んな男子高生だってこともわかってる?」
「……わかってる」
小さな声が返ってきた。聖恒がちらりと横顔を窺うと、暗いのでよくは見えないが恵が赤くなっているような気がした。
「……今度な」
ヤバい。
聖恒は外の景色を見る振りをして顔をそらした。今度なと言ってきた恵に、聖恒は体の芯からドクリとしたものを感じた。先ほどしていたキスと愛撫でかなり興奮していた感情と体が、せっかく一旦治まっていたというのに反応する。聖恒は必死になってまた数学の計算をひたすら行った。
帰るというのにおっ勃ててどうすんだよ俺。
「……きよ、怒ってる?」
しばらく黙っていると聞かれた。
「っえ?」
「いや……黙ってるから……」
「お、怒ってない、怒ってない! その……数学のこと考えてた。これで察して」
「え? あ……」
怪訝そうだった恵だが、途中でどうやら理解したようだった。ということは、恵にも数字のことを考えたりして気を紛らわそうとしたことがあるのかもしれないなどと思い、また少し興奮しそうになった。どうやら箸が転がってもおかしいお年頃のように、数字を考えてるのがわかると興奮するお年頃もあるようだ。
「ここまででいいよ」
以前家の前まで車で来てもらった時は、道路が少し狭くて迂回していたことを何気に思い出し、聖恒は待ち合わせしていた駅が近くなった時に言った。
「何言ってんの。家まで送るよ」
「いいって。家まで来たら親に紹介するからね、めぐちゃんが俺の彼氏になったって」
「ちょっとまだつき合い始めて数時間も経ってないから心の準備が……っていうかきよはそういうの、オープンなのか?」
とりあえず待ち合わせの時に停めていた辺りに恵は停車すると、微妙な顔で聞いてきた。
「別にオープンってわけじゃないけど……普通?」
「いや、俺ときよがつき合うことって一応、一般的じゃないと思うよ……」
「え? ああ、俺も男同士ってことで悩みましたよ!」
つい家庭教師をしてもらっていた頃のように敬語になってしまい、何となく恥ずかしさを感じて口を押さえると笑われた。
「笑ってんなよ。ところでめぐちゃん」
「何?」
「日曜の約束はまだ有効だよね?」
聖恒が聞くと、恵は一瞬だけポカンとした後で微笑んできた。
「ああ。デート、だろ」
「うん」
嬉しくなって聖恒もニッコリする。
「どこ行きたい?」
「じゃあホテル」
「……きよ」
「っちぇ。そんじゃ買い物。もしめぐちゃんが車出してくれるの面倒じゃなかったらアウトレット行きたい」
「いいよ」
最後にもう一度だけ軽くキスして、その日は別れた。家へ帰って部屋へ入ってから、聖恒は顔が燃えてるのではないかというくらい熱くなるのがわかった。
今まで生きてきた中でそして一番幸せな日だったと実感し、寝る前には車でのことを思い出しながら、とてつもなく扇情的だった恵をおかずにさせてもらった。
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