ホンモノの恋

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31話

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 嫉妬したと告げはしたが怒っているのではなく、とりあえず聖恒は二人で話したかった。嫉妬というのも大げさかもしれない。ただちょっと気に入らなかったというか、恵のことをわかっている感じを口にされたのが嫌だっただけだ。
 困惑しつつ「ここ、とか?」と一応教えてくれた恵に示された教室へ入ると「勝手にイライラしてごめんね」と聖恒はとりあえず謝った。

「いや、構わないけど……一体何にイライラすることあったんだ?」

 恵が困惑したまま聞いてくる。

「……俺の知らない人がめぐちゃんのこととてもわかってるって感じだったのと、その人たちがめぐちゃんと同じ歳なとこと、普段俺の知らないところで一緒にいるとこ」

 思ったままのことを伝えると笑われた。少し拗ねた気持ちになると頭をくしゃりと撫でられる。家庭教師してくれていた時にもたまにこうして撫でられたことを思い出す。あれが好きだった。嬉しかった。
 今、恋人同士になっても嬉しさは変わらない。だが少しだけ、子ども扱いされたような気持ちもしてしまうのは、やはりつき合っているからかもしれない。

「ごめんね、別に馬鹿にして笑ったんじゃない。きよがかわいいなあと思って」
「……弟みたいに?」
「案外根に持つなあ」

 恵がますますおかしそうにする。

「きよはもっと淡々、サクサクとしてるって思ってたよ」

 それは俺も思っていたと聖恒は内心頷く。だが恵に言われると少し緊張した。

「……がっかりする?」
「がっかり? まさか!」

 恵がまた笑う。そういえば最近、知り合った頃に比べてよく笑ってくれるようになったなと聖恒は何となく気づいた。

「むしろ嬉しいよ。俺のことでそうなってくれるきよが嬉しい」
「……殺し文句か」
「は?」
「な、何でもない」
「イライラした理由を素直に打ち明けてくれるとこや、俺のことでそんな風に思ってくれるとこがな、かわいいなって思ったんだよ。そりゃ前は弟みたいでかわいいなと思ってたのも本当だけど、今は好きな人としてかわいいよ」

 優しい声で穏やかな様子で、綺麗な顔をした恋人がそんなことを言ってくれる。恵がいつも振られていたという理由がわからなさ過ぎて、聖恒はむしろ微妙な顔で恵を見た。
 向こうから来る理由はすぐわかる。まず恵の見た目に惹かれてなのは間違いない。穏やかそうなところもだろうと最初の頃は思っていたし今も聖恒の中では思っているが、恵曰く学校では素っ気ないらしい。先ほど恵の友人らしき人たちとのやりとりを見ていても聖恒と接する時に比べて確かに淡々としていたような気もする。
 それでもつき合って接していたら恵がただ素っ気ないだけの人だとは誰も思わないと思う。恵自身、つき合った相手には心を配っていたとは言っていた。
 そして先ほどみたいな殺し文句などを言われた日には、別れたいどころかむしろ犯したいとしか思えない。いや、今までは女性とつき合ってきただろうしさすがにそれはないかもしれないが、どう考えてもさらに惚れるしかないと聖恒は思う。
 ちなみに女性の中には聖恒が経験したようなまさに犯してくる勢いの人もいるだろうが、少なくとも恵の口からは聞いたことはない。

 まあ、俺も言ってないけど……。

「きよ?」
「あ、ああごめん。めぐちゃんがカッコよすぎてちょっと俺ドキドキしてた」
「……きよはとことんストレートだね。俺はこれでも照れや恥ずかしい気持ちこらえてがんばって言ったのにな」

 今度は苦笑された。

「……カッコいいし、かわいい」
「また言う」
「めぐちゃんだって俺に言うだろ。……とりあえずイライラした理由はさっきのこと。めぐちゃんが悪いんじゃないし、何かごめん」
「いいよ謝らなくても。だって俺がきよの様子変だと気づいて、きよはどうしたんだろうって気にする前に先に教えてくれたし、そういうとこ、いいなあって思うよ」
「……そんだら正直に言うついでにも一個言っていい?」
「何?」

 恵が穏やかな笑みを浮かべながら聖恒に聞いてきた。そういった穏やかな表情を浮かべられると少々言いづらいとは思ったが、やはり言う。

「めぐちゃんとしたい」
「……っえ」
「たまにいちゃいちゃはしてるけど、その、きっぱり言うとエッチしたい」
「あー……」

 顔が熱くなるのを感じながらも言い切ると、恵も赤くなりながら、少し困った顔もしてきた。

「嫌?」
「うーん……そりゃ嫌じゃないよ。俺だって男だしきよの気持ち凄いわかる。まあそんなハッキリ言われるとは思ってなかったけど」
「じゃあしよ」

 ニッコリ笑って恵を引き寄せようとすると慌てて少し距離を取られた。

「ま、待て」
「何で」
「ここでする気か……?」
「人、来なさそうなとこなんだよね?」
「絶対来ない訳じゃない……! それに教室とか無理」
「めぐちゃんはどこでも無理って言うくせに。じゃあホテル行こ?」

 唇を尖らせながら言うと「かわいい顔して何言ってんだ」とまた困惑された。

「ホテルならそれ目的の場所だしいいでしょ?」
「男同士でも構わないってホテルは限られてるらしいよ」
「調べてくれたのっ?」

 少し嬉しくなって聞けば「いや、ち、違う。そう聞いたことあるだけ……」と赤い顔を背けられた。今すぐ押し倒したい欲望を何とかこらえてもう一度聖恒は「構わないホテル見つけて行こうよ」と近づいた。

「……でもその、あと一年……あと一年は我慢しよう……!」
「……は?」

 近づくと両腕をつかまれてまた引き離されてた。そして言われた言葉に聖恒はポカンとなる。思わず低い声が出た。恵は気まずそうに顔を逸らしている。

「……待って。今凄く心当たりあって、それが当たりじゃないことを願い倒したんだけど、違うと言って欲し過ぎて聞くね……」
「……多分それ」
「言わせてよ……。……まさか俺が未成年だから……」
「……そう」

 今まで別れを告げられたのって、この「クソ」がつくほど真面目な部分のせいじゃないだろうか。
 思わずそう思ってしまうくらい、聖恒は目の前が暗くなりそうになりながら呆然とした。
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