ホンモノの恋

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32話

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 そもそもまだ自覚していない頃に見てしまった夢が悪かったのかもしれないと恵は思っている。あの夢のおかげもあって余計に自覚したかもしれないが、その後の罪悪感が半端なかった。
 ちなみに聖恒は未成年だが、真剣な交際なのであれば処罰回避でき、問題にならない可能性もある。とはいえあくまでも回避だし、男同士の場合はどうなるのかは恵もよくわからない。十八歳未満の少年少女と性行為や類似行為をすると、大抵の地域が定める青少年保護育成条例に違反する。未成年の同意があっても処罰される可能性はある。恵と聖恒のように、二十歳と十七歳であっても未成年の壁は厚い。
 だがそんな条例がなくとも、あの夢のせいで恵は罪悪感を抱えていて、手を出せずにいる。キスやくっついていちゃいちゃするくらいならできても、性行為は躊躇してしまう。

「周りよく見てめぐちゃん!」
「周り?」
「大学生と高校生のカップルなんていくらでもいるよっ? 中には中学生と付き合ってる大学生だっているって!」
「ちゅ、中学生はまずいんじゃないだろうか……」

 驚いて思わず呟くと「今はそこはどうでもいいから流して!」と両手で両頬をつかまれた。

「は、なしぇ」

ぎゅっとつかまれているせいで間抜けな話し方になった。だが聖恒は笑わない。

「俺、性少年なんだよ? 一年以上何もしないなんてそれこそ無理」
「青少年? 強調するものなのか……?」
「そこも流していい! めぐちゃん、考え直して。じゃないと俺、俺が嫌ってる強引に体をどうこうしようとするタイプになりかねないよ」

 必死な様子で言われ、恵は場違いだがほんわかとした気分になりそうだった。

 ……かわいいなぁ。

 だが、かわいいからこそなおさら躊躇する。今までつき合ってきた相手は同じ歳ばかりだった。それもあってセックスという行為を躊躇したことはないし、むしろつき合い始めてすぐに期待していた。
 聖恒は年下で未成年で、そして男だ。道徳云々だけでなく、余計に負担を強いることにもなる。
 そう思っていると「めぐちゃん……」と聖恒が囁いてきた。

「俺を受け入れるのが嫌だからとか、そんなんじゃない、よね……?」
「ち、違う! それは絶対にない!」

 即、頬をつかまれたまま顔を振る。その後で「……ん?」と違和感を覚えた。

 受け入れる、というのは……あれか。気持ちをとかそういう意味だよな。

 だがすぐにそう思い、気にならなくなる。

「だったら……! だったら……」

 聖恒は切なそうな顔で恵を見てきた。頬を挟まれているので恐らく自分は間抜けな顔なのだろうと思いつつも恵はつかまれたままでいた。
 同じ男だけに、気持ちはわかる。相手にお預け宣言なんかもらったら、恵もとても切ないだろうと思う。それに恵も聖恒が好きだからこそ、本音を言えばしたい。

「ごめんな……、……抜いてあげるくらいならできる」

 多分。

 それすら本当は類似性行為だから違反行為だ。だが恵は真面目だから捕まるのが嫌というよりは、聖恒をただ傷つけたくないし酷いことしたくなかった。

「抜いて欲しいんじゃないよ!」

 聖恒は恵の言葉にむしろムッとしてきた。しかしその後で申し訳なさそうな表情になる。

「……めぐちゃんを困らせたいのでもないんだ……。すごく好きなだけで……」

 くそ、かわいいな……。

 落ち込んだような聖恒を抱きしめ、そのままセックスしたらどんなに最高だろうかとは恵も思う。

 でも駄目だ……。

「ごめんな……」

 もう一度謝ると、聖恒がキッと恵を見据えてくる。

「めぐちゃん、俺のこと好きなんだよね?」
「? あ、ああ」

 改まってなんだと思いながら恵は肯定する。お互い好きだと何度も言っているだろうに、まだ未だに顔が熱くなる。抜いてあげられると言うより、好きだとか手を繋ぐとか、むしろそちらのほうが照れてしまうのは自分でも微妙だとは思うが仕方ない。

「抜いてくれるくらいはできるんだ?」
「……ま、ぁ」

 前言撤回だ、と恵は少し顔を逸らした。いや撤回というのとも違う。自分で言うのは全然平気だが言われると恥ずかしかった。人づき合いが苦手だったからなのか、これが恋愛というものなのか、ただ単に自分が変わっているだけなのかは今までもつき合ってきたことがあるくせに恵にはわからない。

「……わかった」
「何が?」
「めぐちゃんを説得するのはゆっくりするとして、とりあえずお互い抜き合う行為くらいはいいってことだよね」

 少し俯いて「わかった」と言ってきた聖恒を少し心配していると、顔を上げてニッコリ笑いながらそんなことを言ってきた。

「う、……え、いや、ちょ、待っ」

 そうだなと思って頷こうとして、恵は過ちに気づく。

 お互いし合うとか、挿入のないセックスみたいなものじゃないのか?

 思わず先ほどはつい「抜いてあげるくらいなら」と言ってしまったが、それすらどうかと思うのに、お互いになんてと恵は焦った。挿入するしないは恵の中で大きかったが、それでも抜き合うのも大概だと思った。慌てて「よくないよっ?」と言おうとしてキスをされる。

「は、っん、っちょ、き……っよ」

 キスの合間になんとか言おうとするのだがその前にまた唇で塞がれる。初めてキスをしてからつき合うようになり、それこそもう何度もキスしていた。お互いがお互いのキスに慣れていなかった頃の初々しさもたまらなくよかったが、こうして慣れたキスは恵をすぐに蕩かせてくる。

「っぁ、き、よ……、はな、しを……」
「困らせたくないとか言いながら、ごめんね……ん、めぐちゃん……好き……」

 主導権を握っている聖恒はキスの合間に上手く囁いてくる。それがまるでいいように翻弄されているみたいで、かといってこちらから積極的にキスをする場ではないだけに、恵はどうしようもなかった。ついぼんやりとしそうになっていると、ごそごそと聖恒が下で何かをしているのを感じる。
 それに反応するより先に、ズボンと下着をずらされたことに気づき、今度こそ「待て……!」となんとかようやく言えた。
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