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4話
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新生活が始まった。
毎朝、ニートである空良がなるべく寝坊しないようにと起きて部屋を出ると既にいつも雪夜が朝食の準備をしている。
やたらでかい窓から入ってくる清々しい朝日を浴びながら、キラキラ爽やかなイケメンの顔を拝みつつ食事を終えるとニコニコした雪夜がさっと洗い物を済ませてしまう。
その後、雪夜が学校へ出かけると帰ってくるまで何もすることがないのでぼんやりテレビを観るか本を読むか携帯電話でアプリゲームをする。
せめて掃除をしようと思い、雪夜に掃除機や他の掃除道具の場所を聞けば「そんな、とんでもない! 空良先輩にそんなことさせられないのでどうかゆっくりなさっててください!」と場所を教えてもらえなかった。自分で探そうと思ったが見つけられず、またあまり深く人の家を探すのも憚られたので諦めた。
毎日雪夜が帰ってくるまでボーッと過ごすのは、最初こそ最高だと思ったけれどもすぐに飽きた。だが夕食の買い物にすら出掛けられない。家の鍵を持っていないのだ。鍵をかけずに外出は出来ない。しかもマンションの出入口はオートロックだ。出入りする人に紛れて入ることは出来るだろうが、それを待つ自分は不審者以外の何者でもないだろう。
ようやく雪夜が帰ってくると正直めちゃくちゃテンションが上がる。まるで飼い主が帰ってきた時の飼い犬かというくらい、まとわりつきたくなるのをグッと堪えている有り様だ。
そして夕食を作るのも中々手伝いすらさせてもらえないので、せめて雪夜が作っている間、そばでその様子を見ていたり話しかけたりしていた。
夜は食事をして何か飲みながら会話をして一緒に過ごす。その後、風呂は別々に入り、眠る時も別の部屋なので「おやすみなさい」と挨拶を交わし、眠る。
そしてまた朝になると朝食を一緒にとり──
「って何かこの生活駄目だろ……!」
自分が駄目になっていくところしか浮かばない。いや、既に駄目になっている気がする。しかも控えめなお願いだなと思っていたが、雪夜が外出している間全く外に出られないというのはある意味軟禁状態ではないだろうか。
電話は自由にかけられるし、後先を考えなければ家も自由に出られる。ただし世間では働いているか勉強しているであろう時間帯に電話をする相手がまず浮かばないし、自分の今後はさておき、空良を信頼して家を預けてくれている雪夜に申し訳ない気がして外出強行突破は出来ない。
自分の考え過ぎだろうかとも思うが、それでもとりあえず今のままは駄目だと思った。
「外へ出たい?」
「うん」
「じゃあ今度、俺が休みの日にどこか一緒に……」
「いや、そーじゃなくて普段お前が学校に行ってる間に」
「何か不都合がありましたか?」
雪夜が心配そうな顔で聞いてくる。
「いや、そういうんじゃないけど……俺もすることがなくて時間もて余してるから……」
「読書やゲームをされているのでは」
「う。そ、そーだけどそれだけじゃ飽きるよ。せめて家の掃除をしたりとかならまだ少しはマシかもだけど」
外出することに比べたらあまり有意義とは言えないが、少しは生産性のあることだろうし間違いなく今よりはマシだろう。
というか、雪夜のこの反応……、と空良はハッとなる。
だいたい空良がハッとなる時は基本的に鋭い考えが浮かぶよりも斜め上な発想が浮かんでいるのだとそろそろ自分で気づくべきだが、それに気づくようなら友だちからちょくちょく駄目出しばかりされていないし、下手をすれば首にもなっていなかったかもしれない。今もまた斜め上なことしか浮かんではいなかった。
もしや雪夜は実はすごいドエスで、空良に油断させながら本当に監禁とか軟禁とかを目論んでいるのではないだろうかと空良は少し後退りをした。こうして何でもないような感じを装いつつ、空良を外へ出さないつもりなのではないだろうか。
そんな感じのBL展開が、前に実家へ帰った時に妹が強引に貸してくれた本の中にあった。気づいた時にはもう遅く、その部屋の中でどんどん監禁してきた相手にのめり込むしかなく、性的に堕ちていくやつだった。それを読んだ時何が空良にとって一番怖いと思ったかというと、どう考えてもバッドエンドなのに幸せな感じで話が終わっていたところだ。妹に「この終わりって……」と言えば「そうなのよ、ひたすら溺れ合うとこ最高よね」とニコニコされ、とりあえず笑顔を返しながら改めてBL怖いと思っていた。
「……わかりました」
雪夜がため息を吐く。空良は胸をドキドキと緊張させながら頷いた。
掃除をするほうがましだと空良は口にした。家から出してくれなさそうな気がするので、雪夜はきっと掃除道具の場所を教えてくれるのだろう。そうして軽い軟禁状態は続く。でもそれでもいい。何もしないよりはましだろう。
「う、ん」
「合鍵をではお作りしますね」
「え?」
「そうしたら空良先輩もお好きな時に出かけられますもんね。すみません……俺が家に帰ってきた時に先輩がここにいるって状態に酔ってしまっていて。空良先輩もてっきり引きこもってたいのかと思い込んでました……」
何これこないだもこんなことあった……!
俺だけが汚れている感じしかしない……!
空良はまたもや顔を両手で覆った。
毎朝、ニートである空良がなるべく寝坊しないようにと起きて部屋を出ると既にいつも雪夜が朝食の準備をしている。
やたらでかい窓から入ってくる清々しい朝日を浴びながら、キラキラ爽やかなイケメンの顔を拝みつつ食事を終えるとニコニコした雪夜がさっと洗い物を済ませてしまう。
その後、雪夜が学校へ出かけると帰ってくるまで何もすることがないのでぼんやりテレビを観るか本を読むか携帯電話でアプリゲームをする。
せめて掃除をしようと思い、雪夜に掃除機や他の掃除道具の場所を聞けば「そんな、とんでもない! 空良先輩にそんなことさせられないのでどうかゆっくりなさっててください!」と場所を教えてもらえなかった。自分で探そうと思ったが見つけられず、またあまり深く人の家を探すのも憚られたので諦めた。
毎日雪夜が帰ってくるまでボーッと過ごすのは、最初こそ最高だと思ったけれどもすぐに飽きた。だが夕食の買い物にすら出掛けられない。家の鍵を持っていないのだ。鍵をかけずに外出は出来ない。しかもマンションの出入口はオートロックだ。出入りする人に紛れて入ることは出来るだろうが、それを待つ自分は不審者以外の何者でもないだろう。
ようやく雪夜が帰ってくると正直めちゃくちゃテンションが上がる。まるで飼い主が帰ってきた時の飼い犬かというくらい、まとわりつきたくなるのをグッと堪えている有り様だ。
そして夕食を作るのも中々手伝いすらさせてもらえないので、せめて雪夜が作っている間、そばでその様子を見ていたり話しかけたりしていた。
夜は食事をして何か飲みながら会話をして一緒に過ごす。その後、風呂は別々に入り、眠る時も別の部屋なので「おやすみなさい」と挨拶を交わし、眠る。
そしてまた朝になると朝食を一緒にとり──
「って何かこの生活駄目だろ……!」
自分が駄目になっていくところしか浮かばない。いや、既に駄目になっている気がする。しかも控えめなお願いだなと思っていたが、雪夜が外出している間全く外に出られないというのはある意味軟禁状態ではないだろうか。
電話は自由にかけられるし、後先を考えなければ家も自由に出られる。ただし世間では働いているか勉強しているであろう時間帯に電話をする相手がまず浮かばないし、自分の今後はさておき、空良を信頼して家を預けてくれている雪夜に申し訳ない気がして外出強行突破は出来ない。
自分の考え過ぎだろうかとも思うが、それでもとりあえず今のままは駄目だと思った。
「外へ出たい?」
「うん」
「じゃあ今度、俺が休みの日にどこか一緒に……」
「いや、そーじゃなくて普段お前が学校に行ってる間に」
「何か不都合がありましたか?」
雪夜が心配そうな顔で聞いてくる。
「いや、そういうんじゃないけど……俺もすることがなくて時間もて余してるから……」
「読書やゲームをされているのでは」
「う。そ、そーだけどそれだけじゃ飽きるよ。せめて家の掃除をしたりとかならまだ少しはマシかもだけど」
外出することに比べたらあまり有意義とは言えないが、少しは生産性のあることだろうし間違いなく今よりはマシだろう。
というか、雪夜のこの反応……、と空良はハッとなる。
だいたい空良がハッとなる時は基本的に鋭い考えが浮かぶよりも斜め上な発想が浮かんでいるのだとそろそろ自分で気づくべきだが、それに気づくようなら友だちからちょくちょく駄目出しばかりされていないし、下手をすれば首にもなっていなかったかもしれない。今もまた斜め上なことしか浮かんではいなかった。
もしや雪夜は実はすごいドエスで、空良に油断させながら本当に監禁とか軟禁とかを目論んでいるのではないだろうかと空良は少し後退りをした。こうして何でもないような感じを装いつつ、空良を外へ出さないつもりなのではないだろうか。
そんな感じのBL展開が、前に実家へ帰った時に妹が強引に貸してくれた本の中にあった。気づいた時にはもう遅く、その部屋の中でどんどん監禁してきた相手にのめり込むしかなく、性的に堕ちていくやつだった。それを読んだ時何が空良にとって一番怖いと思ったかというと、どう考えてもバッドエンドなのに幸せな感じで話が終わっていたところだ。妹に「この終わりって……」と言えば「そうなのよ、ひたすら溺れ合うとこ最高よね」とニコニコされ、とりあえず笑顔を返しながら改めてBL怖いと思っていた。
「……わかりました」
雪夜がため息を吐く。空良は胸をドキドキと緊張させながら頷いた。
掃除をするほうがましだと空良は口にした。家から出してくれなさそうな気がするので、雪夜はきっと掃除道具の場所を教えてくれるのだろう。そうして軽い軟禁状態は続く。でもそれでもいい。何もしないよりはましだろう。
「う、ん」
「合鍵をではお作りしますね」
「え?」
「そうしたら空良先輩もお好きな時に出かけられますもんね。すみません……俺が家に帰ってきた時に先輩がここにいるって状態に酔ってしまっていて。空良先輩もてっきり引きこもってたいのかと思い込んでました……」
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