突然ニートになった俺

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7話

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 何と言うか、多分もう駄目だ。
 空良は呆然としながら思う。何故そうなるのだ。我ながら理解出来ない。
 確かに雪夜はハイスペック男子だ。それは前から認めている。身長もスタイルも顔も笑顔も、ついでに性格もいい癖に実家が金持ちそうなだけでなく大学生にして既に自分の腕でそこそこ稼いでいる。
 だがハイスペック「男子」なのだ。そして自分も男子だ。正直なところ、僻みからくる腹立たしささえ感じそうだと思われる同性だと言うのに、好きになる馬鹿がどこにいる。

 ……ここだよ……!

 空良は頭を抱えた。

 何なの? バカなの? 単純なの?

 恋愛もしたことない童貞かよと自分を罵倒したい。確かに恋愛経験が豊富とは自分に嘘を吐いても自分が切ないだけなので言わないが、一応経験は人並み程度にはある。だというのにハイスペック男子に好かれ、妹にそれを指摘されただけで好きになるとか、頭が悪いのを通りこして脆弱性しか感じられない。空良がパソコンだったなら今頃既にウィルスまみれだった気がする。

 いや……でも。

 頭を抱えて悶え抜いた後にふと冷静になって考える。
 よくよく考えると妹に言われて急に好きになったのではない気がする。それよりも前から気にしていたのが、改めて人から言葉にされることで浮き彫りになった。そんな感じがしないでもない。

 ……だってさ、いくら世話になってるからって男相手にさ……料理好きでもなんでもねーのに作ったもん美味しく食べてもらいたいとか、思う?

 それに綺麗に掃除をして喜んでもらいたいなどとも思うだろうか。それも基本的に家事を好きではない男が。そもそも家事は「せめて何かしよう」と思い、始めた筈だった。

 ……うわー……前から絶対俺、あいつのこと好きじゃんか……キモ……何、俺……キモ……。

 頭を抱えてぶんぶんと振っていると、ふと視線を感じた。見ればまた雪夜が心配そうに空良を見ている。

「だ、大丈夫だからな!」
「はい……」

 空良が真っ赤になってへたり込んで以来、雪夜はちょくちょく心配そうに見てくる。最初は「こいつの頭、大丈夫か」といった心配をされているのかと思ったが、どうやら純粋に具合を心配してくれているようだ。本当にいい人だと思う。
 所々、妙な態度や言葉が見受けられるが、いい人には違いない。おまけにハイスペックだ。男でも惚れてしまうのは仕方がないと空良は自分に言い聞かせた。ただ、自分はその惚れ方が性的な方に偏ってしまっただけだ。

 性的──

 あれほど無駄に心配してはドン引きしていたというのに、むしろ自分がそれを望む側になるとは、と空良は手で顔を覆った。だがすぐにまた視線に気付き「風呂入ってくるわ!」と誤魔化そうとした。

「……本当に大丈夫ですか?」
「当たり前だろ」
「……あの、僭越ではありますが、お背中、流しましょうか」

 これは、と空良はハッとなった。

 とうとうBL展開が来たのでは? 背中を、と言われて俺が遠慮してもニコニコと実行してきて、いざ、どうやってそんなに泡立てたと聞きたくなるくらいボディーソープを……いや、雪夜の家は石鹸だったな、石鹸を泡立てると最初は本当に背中を洗ってくるんだけど何故か手で洗ってくるやつだ……! このほうが丁寧に洗えるからと言われ、そんなものかと思っていると背後から指を滑らせ、俺の乳首に触れてくるんだ。石鹸のせいでぬるぬると刺激され、恥ずかしいことに乳首を勃たせながらも「……っやめ」と息も絶え絶えな感じに抵抗してみせるけど「ほら、ここも洗わないと」とか何でもないようにもう片方の手が俺の息子に伸びてきて──

「空良先輩?」
「んぁっ?」

 気づけばまた駄目な妄想をしていた。これでも空良は腐男子ではない。もちろんゲイでもない。無理やり読む以外でそういった本を読みたいとは思わない。性的表現がないのならいい話かもしれないと思えるものも確かにあるのだが、妹の嗜好なのかもしくはBLがそういうものなのか、性的表現がない作品をいまのところほぼ目にしていない。男同士のセックスを読んだり見たりするのは正直、空良にとっては少々気持ちが悪い。エロ本を読むのであれば女の子じゃなきゃ楽しめない。
 ただ、今までなら悪影響のせいでつい妙な発想をしてしまっていたと言えたし、想像しつつもドン引きしていたのだが、今は違う。

 ……俺の息子がバカ正直……!

 どうやら雪夜のことを本当に好きらしい。男でも雪夜限定で反応してくる自分の下肢を微妙に思いつつ「せ、背中とかいいから……」と慌てて断った。慌てるのは仕方がない。何とか雪夜に自分が勃起してしまっていることをバレずにこの場を離れたい。

「でも様子窺ってないと空良先輩、風呂の中で倒れてしまわないか心配で……」

 ああ、そっちっ?
 ですよね!

 またもや自分だけが汚れている感じが半端ない。ただ今はあれこれ言っている暇がないので、何とか断りをいれてようやく洗面所へ向かった。トイレにとりあえず入ってようやくスッキリはしたが、おかずは先ほどの妄想の続きだった為に虚無感さえ少々覚えていた。とりあえずせっかくなので宣言した通りに風呂も入った。
 風呂から出ると雪夜が「今日も風呂上がりの空良先輩が尊い……可愛い……貢いであげたい……」などとふわふわしたような笑顔で言っている。最初の頃は結構誤魔化していたところがあったが、最近はそこそこあからさまに言うようになってきた。

「そのよくわからんこと、最近あんま言うの隠してこねーのな……」
「はい。空良先輩が慈悲深い天使だからこんな俺のこと、引かずにこうしてまだ一緒にいてくれるので、嬉しいのとありがたいのもあって、つい」

 いや、お前のこと好きだとわかった今でも引いてますけどね?
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