トーカティブレティセント

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シキとミヒロ

17話

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 思い返しても告白してくれた海優くんは出会った頃からは想像できないほど、色々な表情を見せてくれたし饒舌だった。俺に心を開いてくれたからだろうか。それとも、ちゃんと親と向き合い進路を決めたからだろうか。
 ともかく俺と海優くんは晴れて付き合うことになった訳だが、美容院の次の予約が一カ月後だった俺の気持ちは表現し難い。
 付き合うことになったのだから本来ならば美容院の予約関係なくデートすればいいのだろうが、そもそもなぜ海優くんが月二回の美容院を一回に変えたか、である。せっかく進路が明確になったのなら、勉強を大いに頑張ってもらいたい。後悔だけはして欲しくないし、俺のせいで受験が失敗したとなると俺がまず耐えがたい。
 とりあえず三年の今は一番大事な時期だ。受験が終わればそれこそ隙あらば会っていちゃついてやる。海優くんが嫌がろうが涙を流そうが。いや、むしろそういう海優くんは見たいのだが。
 なので俺は悶々とした思いを抱えつつSNSや直接電話したりといったやりとりだけで我慢して次の予約を待った。

「ヘッドスパ?」
「あれ? 知らない?」
「いえ、知ってますけど、俺予約してない」

 当日お待ちかねの海優くんが来店した時は天使が舞いおりたのかと思った。だがもちろん顔には出さなかったのだが何故か卓也さんに生ぬるい表情で見られた上にニヤニヤされたので、とりあえず卓也さんはムカつく人だと再認識した。
 俺は基本的に表に出ないはずだが、付き合うことになった翌日には「機嫌戻ったな、お前」と卓也さんにニヤリと言われた。結局その日の夜に飲みにつき合わされた際に海優くんと付き合うことになったのも吐かされた。まあ海優くんは店のお客様でもあるから、俺も仕方なく言ったまでのことだ。
 そして今、俺はニコニコと海優くんを二階に案内していて、怪訝そうにされたので「ヘッドスパをするからだよ」と説明していた。

「時間捻りだして予約入れた。俺がおごるから、やってみない? 時間、あるよね? 気持ちいいよ。頭もすっきりするし勉強も捗るかなって思って」

 俺の説明の途中で一瞬困ったような顔をしてきた海優くんは「あ、勉強……、なんだよかった」と変にホッとしている。

「よかったって、どういう意味?」

 個室に案内し、椅子に座らせると俺は海優くんの太ももあたりに膝かけをかけながら聞く。すると海優くんはまた困ったような顔をしてきた。やはり思った通り海優くんの表情が前に比べて豊かになっている。親とのこともあるだろうが、俺にも心を許してくれるようになったのもきっとあるだろうなと思うと、困った表情であろうがけっこう嬉しい。

「いえ……。おごりはいいです。俺もしてみたいなって思ってたんで是非お願いします」

 少し困った顔のまま海優くんは微笑む。

「ふーん?」

 俺もニッコリと笑い、海優くんの耳元に唇を近づけると「言わないならそれでもいいけど」と囁いた。途端ピクリと海優くんは肩を震わせる。そして俺をさらに困ったように見てきた。

「……それです」
「どれ」
「そういうこと、する気なのかな、って。志生さん俺に悪戯してたじゃないですか。その上ここ、個室だから……」
「ああ、ミヒロくん、なにかを期待しちゃった?」
「してません」

 お早い否定だった。でも赤くなっているのがかわいいし、お互い好き同士とわかったというのにもちろん俺がなにもしない訳がない。

「ちゃんとヘッドスパするよ。俺、仕事は真面目だから」
「仕事、は……?」

 海優くんが微妙な顔で聞き返してくるのを笑顔でスルーし、俺は「軽く倒すね」と言いながらシャンプーチェアーを動かす。
 普段のシャンプーもヘッドスパなどをする場合も完全に倒さないが足は楽にしてもらうように上げている。首への負担を減らすためでもある。シャンプーの時は、シャワーの飛沫が顔に当たることもないのでタオルはかけていない。

「首、ちょっとごめんね」

 専用のストックスペースからホットタオルを出すと、俺は仰向けになっている海優くんの首の下に暖かいそれを挟みこんだ。途端、目を瞑っている海優くんの表情が綻ぶ。気持ちいいんだろうなと俺はそっと笑ってから次に顔の上にもタオルを乗せた。

「……タオル?」
「ああ、ヘッドスパの時はね、してるんだ。別に泡やシャワーのお湯が飛ぶ訳じゃないけど、まあ寛いでもらうためかな?」

 他のお客様にもしていることだ。海優くんだけにじゃない。でもまあ見えていない海優くんが俺に次になにをされるんだろうとハラハラするかもしれないかと思うと楽しい。本当は海優くんの表情を見ていたいけれども。

「普通のヘッドスパだと最初にシャンプーするけど、まずはオイルマッサージするね」

 俺は海優くんの耳元に囁く。やっぱりタオル邪魔だなとも思うが、ピクリと反応しているのはわかる。楽しいなと思いつつも、俺は「冷たいよ」と断り、先に冷やした炭酸水を頭皮に擦り込むようにしてかけ、マッサージをした。そして専用オイルを大さじ一杯程度たらし、また丁寧にしっかりツボを押しながらマッサージしていく。
 マッサージでは皮膚や筋肉を指圧し、血行を促進させる。海優くんの頭皮はもともといい感じなのだがさらに健康になるよう念も送る。
 ヘッドスパには種類があるが、どれも頭皮を健康にするだけじゃなく髪の健康、そしてフェイスリフト効果がある。体の不調にもいい影響があるし精神的ストレスの緩和やリフレッシュ、リラクゼーションの効果もある。
 受験勉強で大変な海優くんにぴったりだ。現にタオルを顔にかけていても海優くんが相当リラックスしているのがわかる。
 あと、海優くんのスパに関しては俺にもとても楽しい効果がある。しっかりマッサージをしたところで俺は海優くんの頭に蒸しタオルを巻いた。

「お疲れ様。一旦10分ほどこのままにするね」
「……あ、はい」

 返事をする海優くんの声が掠れている。気持ちよくて眠っていたのかなと俺はニッコリとした。

「他のお客様だとその間に別の仕事をしに行くんだけど、ちゃんと時間枠とってるから、足のマッサージもするね」
「え?」
「本当はフットバスで足を綺麗にしてからなんだけど、ミヒロくんの足はそんなのしなくても綺麗だから」
「は?」

 怪訝そうな海優くんの声を無視し、俺は「失礼します」と足元に移動して靴と靴下を脱がせ、履いているパンツも遠慮なく脱がせた。下着も脱がせたいが諦める。

「ちょ、なにを……」
「あ、動かないでね、頭にタオル巻いてるから。ちゃんと膝掛けしてるし、大丈夫だよ」

 本当は服を脱がせるとこまでなんて当然しないけど。そういうメニューをする場合は専用のものを着てもらうし、そもそも俺は基本担当していない。

「……っ。なに……する気ですか」
「ただのマッサージだよ。寛いで」

 俺は海優くんに見えていないにも関わらずニッコリ微笑むとまた専用オイルでゆっくりと足のマッサージを行う。
 海優くんに合うだろうなと俺が思ったオイルを使う。体質や気分などによってオイルもさまざまある。ふわりといい香りが広がった。
 まずはゆっくりオイルを擦りこんでコリをほぐしていく。ひざ裏にリンパがあるのでひざ裏に持っていくようマッサージをすると筋肉が和らいでくる。
 そして足は内蔵や各器官と繋がりのある部位なので、裏を特に徹底的にマッサージする。脳神経にもつながっているからか、最初は足すら緊張させていた海優くんがまた先程のようにリラックスしてきたのがわかった。
 かわいいなあとしみじみしながら俺はオイルをどんどん浸透させていく。
 本来ならここで終了というところまで行うと、俺はそのままオイルを追加して太もものほうまで手を伸ばしていく。

「……ん、っ」

 海優くんの足がピクリと震えた。構わずマッサージの要領でしっかりオイルを伸ばしていく。しっかりといえども足の裏にするのと違って今度は優しく手や指を這わせていく。

 こういうオイルって洗い流さないから便利だよね。

 時折海優くんが俺からしたら凄くやらしい声を小さく漏らしてくれている。本当に感じやすいなと改めて楽しく思った。

 太ももは確かに感じるかもだけれども……内ももとか、裏とか、ね……?
 顔が見たいな。でも見えてなくて次になにをされるのかと戦々恐々としているであろう海優くんを想像するのも楽しいな。

 浸透するまでオイルは擦りこむものなのだが、俺が優しく這わせるばかりなのでそれは長らくぬるぬるとしたままだ。俺の指と海優くんの肌の間をいい感じに潤滑してくれている。

 それにしてもこんなに感じてるなら、もしかして前、ヤバくなってないかな。

 俺は間違いなく大いに期待して膝掛けの中からそっと海優くんの股間に下着の上からだが手をやった。

「っちょ……」

 だよね。

 俺はそれを確認するとまたニッコリと微笑む。

「……ねえ、ミヒロくん。いくら個室だからといって店には人がたくさんいていつ誰が入ってくるかもわからないこんな場所で触れられたら、恥ずかしいだろうね」

 本当は誰も入ってこないけどもね。

 海優くんの手が俺を妨害しようと伸びてきた。

「待って。こんなになってるのに妨害しても仕方ないよ? 大きくしたまま下に降りるのかな? そんなことより声、出ちゃうとほんと誰か来るかもだよ? その手はタオルで口を押さえるのに使ったほうがいいんじゃないかな」
「……やっぱり志生さん、意地悪じゃないですか……!」

 むしろタオルを手で取ると、海優くんは真っ赤になって目に涙を浮かべたような表情になりながら俺をじっとりと睨んできた。

 本当に、堪らないな。

「普段会えないの我慢してるご褒美、欲しくて」

 俺が囁くように言うと、でも海優くんは取ったタオルをまた自分の顔に押しつけ「志生さんの変態」などと言いながらもそのまま両手でタオルを押さえてくれた。

 やっぱり、かわいい。
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