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タクヤとマサヨシ
4話
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「……なぜ謝ってるんです……?」
表情のないまま、昌義が聞いてくる。
「……悪態ついたのと、後は……なぜ、だろな。なんとなくかも。いや、あれだ。軽い部分に対して? 付き合って欲しいと思ったのは嘘じゃない……が、まあなんとなく謝られてもだし、こういうところが俺は駄目なんだろうけどな」
言っていてだんだん自分でもよくわからなくなってきて、卓也は自嘲気味に笑う。
「いえ……オーナーは駄目じゃないです」
その言葉に卓也は昌義を見るが、やはり無表情だ。だが今の昌義が自分の意に沿わないことはしない、言わないとわかっている卓也は顔を綻ばせた。
「そうか。……なあ、だったら改めて言わせろよ。俺はお前が好きなんだよ。だから付き合ってくれないか? 嫌なら、そう言え」
偉そうに聞こえるだろうとわかっている。だが言い直すこともなく卓也はじっと昌義を見た。
「……どうすればいいかわかりません」
「なにがだ。お前の気持ちがわかんねえのか? それとも付き合い方か?」
嫌なら断ってくるだろう昌義の言葉に、卓也は優しく聞く。
「付き合い、かた?」
「だったら考えるな。決まりなんて、ねぇから」
嬉しくなり、顔を綻ばせたまま卓也は昌義を引き寄せた。
「今まで嫌な思い、多分色々してきたんだろ。でも俺に対しては嫌な時はいつものようにきっぱり、言えばいい。仕事や付き合いに影響するなんてこと、絶対ねぇよ。で、俺はお前にキスしていいか?」
引き寄せた昌義の表情は変わらない。だがコクリと黙って頷いてきた。卓也はさらに笑顔になり、そのまま昌義の顔を支えて唇にキスをした。
そっと触れ、ゆっくりと動かし、そしてじっくりと味わう。表情と同じように昌義の反応はほとんどない。それでも瞳を閉じ、卓也に唇を委ねてくる昌義を卓也はかわいいと思った。
好きだという言葉が聞けなくても、無表情であっても、反応すらほぼなくても十分だった。
なくても、伝わるものってあるんだな、と思った。
結局その日はキスしかしていない。普段の卓也からは考えられないが、昌義に対しては急ぐ気はなかった。
一緒に飲みに行った日はそのまま昌義が泊まっていくことが増えたが、いつもひたすらキスをするくらいだ。ゆっくりと、時間をかけて唇から昌義に気持ちを伝え、そして昌義の気持ちを探り確認するようなキス。
最初は全く反応がなかった昌義も、少しずつだが次第に唇を啄み、舐め、味わってくるようになった。そうなるとそれがまたかわいくて愛しくて、抱きしめさらにキスを返したくなる。
そしてそれ以上触れたくもなる。だが我慢する。元々表情を見せてこない昌義に思うことはあったが、普段の反応や実際キスをしてみて、過去に多分受けてきたであろうことのせいか、恐らく不感症気味なのではないかと卓也は思っている。それもあって、焦りたくなかった。本人が淡々としていようが、本当に不感症気味なのだとしたら精神的なもののような気がするからだ。
「お前、今まで誰かと付き合ったことはあんの?」
飲んでいる時に聞いたことある。
「まあ……」
「いつ頃? 男? 女?」
「中学くらい。女……です」
「そっか。じゃあ経験もあんのか?」
「はあ」
経験はあるらしいが、同じ頃くらいからたまに男からの性的接触を受けるようにもなり、それがきっかけかどうかはわからないが女とも特に付き合いたいと思わなくなっていったらしい。
きっかけだろうよと卓也はそっと思った。
昌義は淡々と言葉少なげに言うが、多分長年の間に何度も不快な目に合ったのではないだろうかと言葉の端々から感じられた。そして前のオーナーが昌義に対してある意味引導を渡してきたのではないかと思われた。
……俺はその美容院のオーナーを知れば殺しかねねぇな。
内心また腸が煮えくり返ったが、その時はただ「そうか」ととだけ卓也は返していた。
そんなこともあり、卓也は焦らずゆっくりと昌義に触れていきたいと考えているのだ。
客である海優と付き合うようになった志生にある日「近藤ちゃんと進展はあるんですか」と聞かれたことがある。普通に「ある」と答えた。卓也自身、かなり進展があると思っているからだ。
おもしろい程ポカンとしてきた志生に、どこまで云々は言ってないし昌義のことを詳しく言う気もなかった。基本ろくでもない部分もある志生だが、多分昌義の過去やらなんやらを言えば、かなり真摯に受け止めてくるだろうことはわかっている。本人には「サド」と言いつつも、実は相手の気持ちへの配慮が出来るやつだとも卓也は知っている。
それでも昌義のことはかなり個人的なことだし自分が言うことではない。それに志生は人を甚振るのが好きな反面、観察眼に優れているからか限度を判断できる男だとも思っている。だから昌義のことをいちいち言わなくても、志生が普段ああいった性格であろうがこちらがハラハラしたり心配するようなことにならないともわかっていた。
「お前、自分の顔は好きじゃねえの?」
飲んだ帰り、いつものように泊まりにきた昌義にキスをした後で、卓也はそっと手を昌義の顔に添えながら聞く。言っている意味がわからないとばかりに、昌義は表情は変わらないが少し首を傾げてきた。
「仕事、楽しかったりするんだろ? 俺といるのも嫌じゃねえんだろ?」
今度はコクリと頷いてきた。
「じゃあさ、楽しいって気持ち、顔に出してみ?」
卓也が言うと少し間があった後に「わかりません」と返ってきた。
「笑っていいんだぞ? お前の綺麗な顔で色んな表情出しても誰もなんもしねえし、もしなんかしようとしてくるやついても俺がさせない」
じっと昌義を見て、頬に添えている手を今度は髪にやってゆっくりと撫でる。昌義はただされるがままで、そして今度はなにも言ってこなかった。だがじっと卓也の髪を見てくる。
卓也は苦笑しながら昌義の手に触れ、それを自分の髪にやった。
「髪、触りたいなら触っていいぞ。好きなだけ」
するとその手をおずおずと、卓也の髪を梳くようにして昌義は撫でてきた。そしてその手を、指を髪や頭に這わせてくる。
髪に触れる行為は昌義にとっては特別なことでもないだろうに、何故かまるで他の人がする愛情表現と同じように感じられた。その感触は気持ちがよく、卓也は目を閉じて顔を綻ばせた。
「ほんっと髪、好きよな? でもやっぱお前の手は気持ちいいな。なあ、プライベートならいつだって好きに触っていいんだぞ。髪だけじゃない。お前は俺と付き合ってんだ。好きなようにしたらいい」
「はい」
ぼそりとした声じゃなく、割とはっきりと返ってきて、卓也は目を開けて昌義を見た。
「はい」
昌義はもう一度口にする。
「……だから、オーナーも、好きに……してくれたら、いいです」
それは昌義からしたら精一杯の表現だったのかもしれない。卓也は満面の笑みを浮かべて昌義を抱きしめた。
だが違うんだ、と心の中で呟く。
好きにしたいのは凄くある。けれどもお前が伴ってないと意味がない。
とはいえゆっくりとだが昌義が自分を見、そして感じてくれてきている気はしている。下の反応はなさそうでも、少しだけ細められる目や卓也に向けて動く視線だけでも伝わってきた。
最初は唇にだけしていたキスも、最近は瞼から耳、首筋などにもしている。ゆっくりと触れ、そして好きだと、好きだから触れたいと伝えるようなキスを、熱が伝わるであろう所々に落としていく。
その際に見られる昌義の、多分生まれ持っているせいで今までも被害に合ってきたのであろう「なにか」が辛いほどの我慢を卓也にある意味強いてくるが、それでも卓也はゆっくりと味わい、そして味わわせるように接していた。
「好きに、な。だったら俺の頼み、聞いてくれねえか」
キスの合間に囁くと、昌義がコクリと頷いてくる。
「オーナーって呼ぶの、職場だけにしてくんねえ? 名前でさ、呼べよ」
「……オーナーを……?」
「そう。……呼んでくれ。呼ばねえと俺もお前のこと、ガラテアとか彫刻って呼ぶぞ」
昌義にセクハラやパワハラをそれも多分かなりしていたのであろう相手もオーナーの筈である。そんな相手と同じように呼んで欲しくないなと思っていた。
「……ガラテア……?」
志生には伝わったギリシア神話だが、どうやら昌義には伝わらなかったようだ。怪訝そうな響きが言葉に感じられた。
「……彫刻って呼ばれても、別に嫌じゃないですが」
「……お前、そういうとこはほんっとなんも気にしねえのな。いいけどさ。いや、よくねえけどさ! 呼ばねえよ。でもいいから俺のことは名前! だいたい志生のことは名前で呼んでる癖に、なんなのお前」
「志生さんがそう呼ぶように、と」
「わかってるよ! くそ。だったら俺も言ってんだろ今。呼べよ」
「……でもオーナーですし」
「……」
ほんと、こういうとこ頑固というか。
卓也はため息をつきそうになった。もしくは少しずつ自分のことを心から受け入れてくれているように思えていたのすら幻想だったのだろうかとさえ思えた。
「……卓也さん」
黙っていると不意にボソリと、卓也の耳元で昌義が少し戸惑いを含みつつ呟いた。ぞくりとしたなにかが卓也の耳から体に走る。
「サンキュー……、マサ」
卓也はまたぎゅっと昌義を抱きしめた。昌義は「……卓也、さん……」と何度か噛みしめるように呟いていた。
大丈夫、昌義なりに受け入れてくれているとはっきり実感した。無表情だけれども、反応もほぼないけれども、それでも昌義はある意味卓也に饒舌にとは言えなくとも気持ちを語ってくれているじゃないか、と。
好きだ、と改めて思う。
感情を伝えるのが難しくても、俺がゆっくり拾っていこう。
なにもかも取りこぼさないとばかりに卓也は昌義をまたさらにぎゅっと抱きしめた。
表情のないまま、昌義が聞いてくる。
「……悪態ついたのと、後は……なぜ、だろな。なんとなくかも。いや、あれだ。軽い部分に対して? 付き合って欲しいと思ったのは嘘じゃない……が、まあなんとなく謝られてもだし、こういうところが俺は駄目なんだろうけどな」
言っていてだんだん自分でもよくわからなくなってきて、卓也は自嘲気味に笑う。
「いえ……オーナーは駄目じゃないです」
その言葉に卓也は昌義を見るが、やはり無表情だ。だが今の昌義が自分の意に沿わないことはしない、言わないとわかっている卓也は顔を綻ばせた。
「そうか。……なあ、だったら改めて言わせろよ。俺はお前が好きなんだよ。だから付き合ってくれないか? 嫌なら、そう言え」
偉そうに聞こえるだろうとわかっている。だが言い直すこともなく卓也はじっと昌義を見た。
「……どうすればいいかわかりません」
「なにがだ。お前の気持ちがわかんねえのか? それとも付き合い方か?」
嫌なら断ってくるだろう昌義の言葉に、卓也は優しく聞く。
「付き合い、かた?」
「だったら考えるな。決まりなんて、ねぇから」
嬉しくなり、顔を綻ばせたまま卓也は昌義を引き寄せた。
「今まで嫌な思い、多分色々してきたんだろ。でも俺に対しては嫌な時はいつものようにきっぱり、言えばいい。仕事や付き合いに影響するなんてこと、絶対ねぇよ。で、俺はお前にキスしていいか?」
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そっと触れ、ゆっくりと動かし、そしてじっくりと味わう。表情と同じように昌義の反応はほとんどない。それでも瞳を閉じ、卓也に唇を委ねてくる昌義を卓也はかわいいと思った。
好きだという言葉が聞けなくても、無表情であっても、反応すらほぼなくても十分だった。
なくても、伝わるものってあるんだな、と思った。
結局その日はキスしかしていない。普段の卓也からは考えられないが、昌義に対しては急ぐ気はなかった。
一緒に飲みに行った日はそのまま昌義が泊まっていくことが増えたが、いつもひたすらキスをするくらいだ。ゆっくりと、時間をかけて唇から昌義に気持ちを伝え、そして昌義の気持ちを探り確認するようなキス。
最初は全く反応がなかった昌義も、少しずつだが次第に唇を啄み、舐め、味わってくるようになった。そうなるとそれがまたかわいくて愛しくて、抱きしめさらにキスを返したくなる。
そしてそれ以上触れたくもなる。だが我慢する。元々表情を見せてこない昌義に思うことはあったが、普段の反応や実際キスをしてみて、過去に多分受けてきたであろうことのせいか、恐らく不感症気味なのではないかと卓也は思っている。それもあって、焦りたくなかった。本人が淡々としていようが、本当に不感症気味なのだとしたら精神的なもののような気がするからだ。
「お前、今まで誰かと付き合ったことはあんの?」
飲んでいる時に聞いたことある。
「まあ……」
「いつ頃? 男? 女?」
「中学くらい。女……です」
「そっか。じゃあ経験もあんのか?」
「はあ」
経験はあるらしいが、同じ頃くらいからたまに男からの性的接触を受けるようにもなり、それがきっかけかどうかはわからないが女とも特に付き合いたいと思わなくなっていったらしい。
きっかけだろうよと卓也はそっと思った。
昌義は淡々と言葉少なげに言うが、多分長年の間に何度も不快な目に合ったのではないだろうかと言葉の端々から感じられた。そして前のオーナーが昌義に対してある意味引導を渡してきたのではないかと思われた。
……俺はその美容院のオーナーを知れば殺しかねねぇな。
内心また腸が煮えくり返ったが、その時はただ「そうか」ととだけ卓也は返していた。
そんなこともあり、卓也は焦らずゆっくりと昌義に触れていきたいと考えているのだ。
客である海優と付き合うようになった志生にある日「近藤ちゃんと進展はあるんですか」と聞かれたことがある。普通に「ある」と答えた。卓也自身、かなり進展があると思っているからだ。
おもしろい程ポカンとしてきた志生に、どこまで云々は言ってないし昌義のことを詳しく言う気もなかった。基本ろくでもない部分もある志生だが、多分昌義の過去やらなんやらを言えば、かなり真摯に受け止めてくるだろうことはわかっている。本人には「サド」と言いつつも、実は相手の気持ちへの配慮が出来るやつだとも卓也は知っている。
それでも昌義のことはかなり個人的なことだし自分が言うことではない。それに志生は人を甚振るのが好きな反面、観察眼に優れているからか限度を判断できる男だとも思っている。だから昌義のことをいちいち言わなくても、志生が普段ああいった性格であろうがこちらがハラハラしたり心配するようなことにならないともわかっていた。
「お前、自分の顔は好きじゃねえの?」
飲んだ帰り、いつものように泊まりにきた昌義にキスをした後で、卓也はそっと手を昌義の顔に添えながら聞く。言っている意味がわからないとばかりに、昌義は表情は変わらないが少し首を傾げてきた。
「仕事、楽しかったりするんだろ? 俺といるのも嫌じゃねえんだろ?」
今度はコクリと頷いてきた。
「じゃあさ、楽しいって気持ち、顔に出してみ?」
卓也が言うと少し間があった後に「わかりません」と返ってきた。
「笑っていいんだぞ? お前の綺麗な顔で色んな表情出しても誰もなんもしねえし、もしなんかしようとしてくるやついても俺がさせない」
じっと昌義を見て、頬に添えている手を今度は髪にやってゆっくりと撫でる。昌義はただされるがままで、そして今度はなにも言ってこなかった。だがじっと卓也の髪を見てくる。
卓也は苦笑しながら昌義の手に触れ、それを自分の髪にやった。
「髪、触りたいなら触っていいぞ。好きなだけ」
するとその手をおずおずと、卓也の髪を梳くようにして昌義は撫でてきた。そしてその手を、指を髪や頭に這わせてくる。
髪に触れる行為は昌義にとっては特別なことでもないだろうに、何故かまるで他の人がする愛情表現と同じように感じられた。その感触は気持ちがよく、卓也は目を閉じて顔を綻ばせた。
「ほんっと髪、好きよな? でもやっぱお前の手は気持ちいいな。なあ、プライベートならいつだって好きに触っていいんだぞ。髪だけじゃない。お前は俺と付き合ってんだ。好きなようにしたらいい」
「はい」
ぼそりとした声じゃなく、割とはっきりと返ってきて、卓也は目を開けて昌義を見た。
「はい」
昌義はもう一度口にする。
「……だから、オーナーも、好きに……してくれたら、いいです」
それは昌義からしたら精一杯の表現だったのかもしれない。卓也は満面の笑みを浮かべて昌義を抱きしめた。
だが違うんだ、と心の中で呟く。
好きにしたいのは凄くある。けれどもお前が伴ってないと意味がない。
とはいえゆっくりとだが昌義が自分を見、そして感じてくれてきている気はしている。下の反応はなさそうでも、少しだけ細められる目や卓也に向けて動く視線だけでも伝わってきた。
最初は唇にだけしていたキスも、最近は瞼から耳、首筋などにもしている。ゆっくりと触れ、そして好きだと、好きだから触れたいと伝えるようなキスを、熱が伝わるであろう所々に落としていく。
その際に見られる昌義の、多分生まれ持っているせいで今までも被害に合ってきたのであろう「なにか」が辛いほどの我慢を卓也にある意味強いてくるが、それでも卓也はゆっくりと味わい、そして味わわせるように接していた。
「好きに、な。だったら俺の頼み、聞いてくれねえか」
キスの合間に囁くと、昌義がコクリと頷いてくる。
「オーナーって呼ぶの、職場だけにしてくんねえ? 名前でさ、呼べよ」
「……オーナーを……?」
「そう。……呼んでくれ。呼ばねえと俺もお前のこと、ガラテアとか彫刻って呼ぶぞ」
昌義にセクハラやパワハラをそれも多分かなりしていたのであろう相手もオーナーの筈である。そんな相手と同じように呼んで欲しくないなと思っていた。
「……ガラテア……?」
志生には伝わったギリシア神話だが、どうやら昌義には伝わらなかったようだ。怪訝そうな響きが言葉に感じられた。
「……彫刻って呼ばれても、別に嫌じゃないですが」
「……お前、そういうとこはほんっとなんも気にしねえのな。いいけどさ。いや、よくねえけどさ! 呼ばねえよ。でもいいから俺のことは名前! だいたい志生のことは名前で呼んでる癖に、なんなのお前」
「志生さんがそう呼ぶように、と」
「わかってるよ! くそ。だったら俺も言ってんだろ今。呼べよ」
「……でもオーナーですし」
「……」
ほんと、こういうとこ頑固というか。
卓也はため息をつきそうになった。もしくは少しずつ自分のことを心から受け入れてくれているように思えていたのすら幻想だったのだろうかとさえ思えた。
「……卓也さん」
黙っていると不意にボソリと、卓也の耳元で昌義が少し戸惑いを含みつつ呟いた。ぞくりとしたなにかが卓也の耳から体に走る。
「サンキュー……、マサ」
卓也はまたぎゅっと昌義を抱きしめた。昌義は「……卓也、さん……」と何度か噛みしめるように呟いていた。
大丈夫、昌義なりに受け入れてくれているとはっきり実感した。無表情だけれども、反応もほぼないけれども、それでも昌義はある意味卓也に饒舌にとは言えなくとも気持ちを語ってくれているじゃないか、と。
好きだ、と改めて思う。
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