月と太陽

44話 ※

　懸命になって日陽は那月のものに吸いつき、舐め、味わう。那月を気持ちよくさせたいと思っていたが、正直今は自分も気持ちよかった。舌や上顎、いわゆる硬口蓋の部分に擦れると特に堪らない。軟口蓋までいくと少々えづきそうになるが、それすらも興奮した。

「ん、ふ」
「日陽が、咥えてくれるなんて……っん、俺、死ぬのかな……、っは、ぁ……」

　馬鹿だなと言いたいところだったが言う余裕もない。何も刺激させていない日陽の下肢がとても重くて痛いほどになってきた。後ろの穴まで勝手にひくつくのがわかる。それでもひたすら咥えて那月の先から何から何まで味わった。

「っぁ、あ……っ。ね、ねえ、日陽っ、ちょっと、離れ、て……！　俺、我慢して、たからそろそろ、ヤバ、い。早漏汚名返上、できないどころか上乗せにな、る……、って、っね、っちょ、ほんと離れてっ」

　熱の籠った声の那月がだんだん焦ってくるのがかわいくて離れられなかった。

「っあっ、ダメっ、ねっ、おねがっ、ぁ、あ、あっ」

　那月の腰が引けたかと思うと、今度はぐっと押し込まれた。途端、日陽の口の中に熱いどろりとしたものが広がる。さすがにそれは先ほど思ったものと違い、味がしないわけなかった。

「あ……、は……。……、……っああっ、ご、ごめんっ。ぺってして！　ね、日陽！　ごめん！　ぺって！」
「……ぅ」
「う……っ、てなにっ？　っちょ、飲んだの？　飲んじゃったの？」

　赤い顔のまま焦ったように必死になって聞いてくる那月がおかしくてかわいくて、日陽は笑いながら舌を出した。

「不味いな」

　言った途端、いきなりキスされた。だが今度は長い濃いキスではなくすぐに那月は離れる。

「ぅ……俺の、間接的に味わっちゃった……」

　とても不味そうに言う那月に日陽はまた笑う。すると抱き寄せられ、押し倒された。黙っていると那月も黙ったまま、日陽の下を脱がせてくる。

「下着、濡れちゃったね」
「黙って脱がすなら最後まで黙ってろよ……」
「先から溢れてる」
「……お前なー」
「凄い触って欲しそう」

　那月は嬉しそうに言いながらも、日陽のものには触れずに手を伸ばしてベッドのサイドボードからローションを取り出してきた。

「そんなん言ってる、くせに触って……くれないまま、そっち？」

　正直、キスしている時も那月のを咥えている時もずっと我慢していたせいで、日陽のそれはかなりズキズキしていた。多分少し擦られただけでも達せそうな気がする。見てもわかるくらいに充血し、パンパンに張っているというのに、那月は「うん」と楽しそうに笑いながらローションで指を濡らし、日陽の中へ入れてきた。

「あ……」
「……？　日陽、あの、……もしかして、自分で広げた？」

　指を入れた途端、那月は怪訝そうな顔しながら聞いてくる。日陽も微妙な顔になりながら、じわじわ熱くなってくる顔を逸らした。

「じゅ、準備……しただけ、だ」
「俺とするために？」

　さっきから何でこう、恥ずかしいことを聞いてくるのだと日陽がムッとして反らした顔を戻し、那月の顔を睨むように見ると、那月は真っ赤になりながらさらに嬉しそうな顔していた。

「……っさ、いきんしてなかったし……それに俺自身が凄いお前としたかっ」

　言いかけているとまたいきなりキスされた。今度はしっかりと舌を絡めてくる。

「ん、は……、お前の味、するんじゃないのか？」
「してもいい。日陽、大好き……」

　何度もキスを繰り返してきて、日陽はまた蕩けそうな気分になった。するとようやく那月が少し体を離し、先ほどは指で濡らしてきたが今度はローションを直接日陽の中へ注入してきた。中にとろとろと入ってくるのがわかる。最初は冷たかったが、すぐに中で蕩けていくようだった。尻の中が次第にぬるぬるしてくるのが日陽にもわかった。
　まるで浣腸みたいだが、専用のローションだからか便意がもよおされることもない。それどころか頭の中がふわふわしてきた。いつもよりも入れられ、穴の中にたっぷりのローションを注入されることが気持ちのいいことなのだと、知りたくなかったが思わざるを得なかった。
　そこへまた那月の指が入ってくる。

「ね、日陽の中、凄いとろとろでぐちょぐちょになってる」
「っく、は……、いちいち、言う、な！」
「でも俺が言った途端、日陽のちんこ、ぷるんって揺れたよ？　気持ちいいんだよね？」
「あーもう、煩さ、い……っん、ぁっ」
「日陽の中で温められたローション、日陽の中でぬるぬる絡みついて凄いえっちな感じになってる」
「は、ん……っ、んっ」
「お尻なのに、俺とえっちなことするための穴になってる……」

　那月が低い声で囁いてくる度に、日陽の体の奥が疼いた。言われた通り、受け入れるところではないのに那月とセックスする穴になっている。どうしようもなく那月が欲しかった。

　そうだよ、だから早く……！

「はーっ、はー……、早、く……」
「早く、何？　前、触って欲しい？」

　多分那月はわかっていて聞いている。ムッとしながらも、言葉で欲しがる那月をかわいいとさえ思った。

「くそっ、ちんこじゃない！　早く、お前の……っはーっ、はぁっ、入れろよ！　わかってんだろ！　お前が好きだから、ちゃんとそこ、お前用になってんだよ！」

　叫ぶように言っていた。悲鳴にも近い。それだけ那月が欲し
「っひ、あっ、ああっ、あっ」

　那月は一瞬ポカンとした後にまた真っ赤になり、笑みすら引っ込めて指を抜くと、日陽の中へ入ってきた。
　そういえば那月が射精した後、日陽も那月も那月のものに触れていない。だというのにいつの間にか完全に復活していたんだなと蕩けてあまり働かなくなった頭の片隅で日陽は思った。
　しっかり解れていたにも関わらず、一番太い部分が入った瞬間は衝撃を感じて自然と悲鳴にも似た声が出る。いつものこととはいえ、恥ずかしい。そして背中が反り返るような衝撃の後に、痺れる電流が走るような感覚を覚えた。遠慮なく入ってくる那月の硬くて太い感覚が凄くて、日陽は自然と涙が滲み、またさらに声が出る。腹の中が苦しくもあるのに、得も言われぬ快楽が突き刺さった。

「ぜ、んぶ入った……」

　那月が嬉しそうに言ってきた。その表情がまた愛おしい。
　いつの間に自分はこんなに那月が好きになっていたのだろうなと日陽はぼんやりと思った。それとも最初からだったのだろうか。
　ずるり、とせっかく深く入っていたものが抜けていく。

「っあっ、あ、っふ」

　出て行くときの、中がぞろりと抜け落ちそうな、それでいてきゅんと張り詰めるような感覚も堪らなかった。だがその快楽を堪能しきる前にまたごりごりとした熱いものが日陽の穴を広げてくる。途中からは日陽の弱い部分を那月の張った部分が擦ってきて、おかしくなりそうだった。

「ひ、あっ、あっ、だめ、っあっ、はっ」
「ダメ？　何がダメ？」
「死ぬ、無理、だめっ、はっ、ああっ」
「もう、日陽かわいい、っん、く……、好き、大好きだよ……、ね、大好き……っ」
「好き、俺もっ、あっ、好きっ、好き……っあ、あっ、っイ、むりっ、ぁあっイクっ、イっ、ぁあっ」

　本当に那月が大好きで。どうしようもないくらい大好きで、それが溢れ出るかのように日陽は思い切り激しく射精しだす。それとともに那月の動きが速くなった。

「っ待っ、ぁ……っ、イってる……っ、イ、ってるっ、からっ、待って……っあっ、激し……、無理だっ、て……っ、あっ、あ……っ」

　射精したというのに結局また自分のものが重くなってしまった。情けないことに、那月の激しい律動にまた反応し、挙げ句那月が達する時にまた同じく達してしまった。
　その後もう一度、今度は二人でゆっくり抱き合った。