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11話
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どうにも隙があまりない。
生智は珍しくため息を吐きながら思った。
初めてのデートは想像を絶するほどに健全だった。もちろんそんなことすら問題ないくらい嬉しかったし楽しかったのだが、びっくりするほど早くに帰らされ、ふと我に返るとキスどころか手すら握っていないことに気づいて唖然とした。
平日は中々二人きりになれない。当然と言えば当然だが、向こうは仕事をしている訳だ。生徒たちが休み時間であっても教師たちは次の授業の準備といった何らかの仕事をしている。
昼休みはさすがに衛二も休み時間になるが、元々生徒と昼食をとるタイプではないからか、生智が「一緒に昼食おう」と誘ってもあっさり断ってくる。
エロ漫画とかだとめっちゃ軽率に先生、生徒とヤってんのにな。休み時間だろうが授業中だろうが誰もいねー教室とか体育倉庫とかなんかそーゆとこで。
微妙な気持ちで思いつつ、現実が甘くないことを実感する。
唯一可能性があるのが放課後の居残り授業だが、昨日その最中に生智がいきなり衛二を引き寄せキスをした後「もう次から居残り授業なしな」と言われてしまった。抵抗されなかったし、生智としてはかなり気持ちよかったから衛二もそれなりに受け入れてくれたのではと思っていただけに唖然となった。
「え、なんでだよ……!」
「なんでもクソもあるか。こんなことするためにやってんじゃないんだぞ。それにお前の今の成績だったら居残る必要もない」
「はぁっ? んなもん、真面目に授業受け損じゃねーの」
「……正条。お前は何のために義務教育でもない学校へ来てるんだ」
「え? そりゃ高校とかくらいは出とくもんだからだろ?」
「まぁ、間違ってるとは言わないけどな。でも俺目当てで形だけ真面目に授業受けても最終的にお前の身につかないし、俺だって心は動かされないからな」
「う、受け損ってのは言葉のあやっつーか、思わず出ただけだし……」
つい苦しい言い訳をすると微妙な顔でため息を吐かれた。どうみてもその直前に恋人とキスをしていた風に見えない。
「……なー」
「何だ」
「俺、キス下手? それなりに自分では上手いと思ってたけど」
「お前な。英語の質問しろ」
「えー。えっと、い、Is the kiss I do……」
「違う」
「マジか。簡単な質問すら英語難しいな」
「そうじゃない。お前のキスがどうこうっていうのを英語で聞けって言ったんじゃない」
「んだよ、違うのかよ」
チッと舌打ちすると、また微妙な顔をされた後で笑われた。
「なんで笑ってんの? 俺に惚れた?」
「そんな訳あるか。本当にお前は馬鹿だなって思ったんだよ」
結局ようやく二度目のキスをしたというのにそんなやりとりで終わってしまった。
とはいえ初めの頃に比べたら何となく、衛二が生智に対して本当に何となくだが気を許してくれているような気もする。隙がなくて中々関係性を深められないのだが、それでも少しずつ前進できている気がするのだ。
衛二を本気にさせるには、相手が大人だから到底言葉で惚れさせるなんて無理だと思っていた。そのため、抱きしめたりキスをしたりしてこちらを向かせるものじゃないかと何となく思っていたのだが、そういう訳でもないのだろうかと生智は首を傾げる。
ま、キスしたいのは先生振り向かせるためっつーより俺がしたいからだけどな。
キスどころかそれ以上のこともしたい。そういうことがしたいのはもちろん自分が青い春真っ盛りの発情期だからというのもある。だが衛二のことが好きだからであって、誰でもいいというのは本当にない。ただやりたいだけなら気にせず誰か見繕っている。
発情期のガキと言えども、生智は両想いになった衛二としたい。
「……でもやり方、ちゃんとはわかんねーな。そーゆーのってネットとか調べたら載ってんのかな」
その前にちゃんとした両想いになるべきではあるが、知っておくに越したことはない、と生智は家に帰ったら調べることにした。
翌日、多少のショックに休み時間も自分の席でぼんやりしていると将が「いっちゃんどうしたんだよ」と話しかけてくる。
「あ? なんつーか、男ってキモイよな」
「は? え、なんの話? いっちゃんだって俺だって男だけどっ?」
「いやー、女っていいよな……って話」
「ああ! それならわかる。女いいよな。すげーいい匂いしそうだし柔らかそーだし」
「たもの言い方は童貞くさいな」
「うるせーよ! つか結局いっちゃん、どーしたんだよ」
「結局? ああ、別にどーもしない」
ぼんやりとはしていたが、さすがにポロリと漏らすほど生智はうっかり者ではない。寝る、とだけ呟くとそのまま机に突っ伏した。
男同士の行為に関してなんとなくはわかっていたが、実際調べると色々と引いた。文章だけでも尻の穴がひゅっとなったが、画像を見てしまうと引くどころではなかった。
だが不思議なことに、自分と衛二として考えるとむしろ興奮してきた。思い切り引いていたくせに、結局その後衛二で抜いた。
でもマジ、俺、少なくとも受け入れるんだけは無理。マジ無理。
未だにショックと引き具合にぼんやりとしつつも、やはり衛二相手だと思うと全然平気そうだった。それでも自分が男を受け入れる勇気はない。自分は思っていたよりもヘタレだなと、生智は苦笑した。
ぼんやりはしたが、トラウマになるとかそういうレベルではないのは、調べた後に衛二のことを思って抜いているのでもわかる。むしろやはり自分は衛二のことが好きなんだなと改めて実感した。
やっぱり好きだし、引くに引けない。絶対後悔だけはしねーように、もっと積極的に行こう。
気合いを新たにして日々挑むようにしているとあっという間に日々は過ぎていった。
キスは結局数えるほどしかできていない。舌すら入れられていない。それでも最近はますますいい感じになってきたのではないかと思えるようになっていた。
相変わらず衛二は基本的に素っ気ないが、主に接するのが学校でだから仕方がない。それでも、もしかしたら衛二も少しは生智のことを好きになってくれているんじゃないかと多少の期待をする程度には二人で話す時の態度とかが軟化している気がする。
ただ、衛二は相変わらず余裕といった様子だった。
『最近さらにしつこくなったな』
SNSでメッセージを送った後にそう返ってきた。
『そりゃあ。俺、先生好きだからな。で、次の休みは何する?』
『何もしない』
『駄目。こないだの休みは映画館行って終わったし、何だかんだで次の休みの日が期限の最後なんだからな! ざけんな』
『ふざけてない』
『なぁ、ほんとさ、最後だろ? お願い。先生の家で過ごさせて。人目とか気にせずゆっくり二人で過ごさせて。お願い』
頑なに家へ入れてくれない衛二に、だめもとで頼み込む。文字を打ちながら頭さえ下げていた。すると返事が返ってこなくなる。
駄目か、と思い切りがっかりしていると通知が来た。
『仕方ない。わかった』
『いいの?』
『お前が頼んどいて何だそれは』
『びっくりした。やった。もう取り消しなしな!』
わかったという文字を見た瞬間、生智はものすごくテンションが上がった。
二人きりだ。
恋人期間の筈だったのに、ほぼ恋人らしいことをしていないまま終わるのかと思っていたが、可能性が出てきた。せめてゆっくり過ごして抱きしめるくらいはしたい。
本当ならあわよくばもっとそれ以上のこともしたい。調べた成果を生かしたい。とはいえ本当の恋人ではないのだ。さすがにそれは許してもらえなさそうだとは生智もわかっている。
それでも嬉しくて堪らなかった。
生智は珍しくため息を吐きながら思った。
初めてのデートは想像を絶するほどに健全だった。もちろんそんなことすら問題ないくらい嬉しかったし楽しかったのだが、びっくりするほど早くに帰らされ、ふと我に返るとキスどころか手すら握っていないことに気づいて唖然とした。
平日は中々二人きりになれない。当然と言えば当然だが、向こうは仕事をしている訳だ。生徒たちが休み時間であっても教師たちは次の授業の準備といった何らかの仕事をしている。
昼休みはさすがに衛二も休み時間になるが、元々生徒と昼食をとるタイプではないからか、生智が「一緒に昼食おう」と誘ってもあっさり断ってくる。
エロ漫画とかだとめっちゃ軽率に先生、生徒とヤってんのにな。休み時間だろうが授業中だろうが誰もいねー教室とか体育倉庫とかなんかそーゆとこで。
微妙な気持ちで思いつつ、現実が甘くないことを実感する。
唯一可能性があるのが放課後の居残り授業だが、昨日その最中に生智がいきなり衛二を引き寄せキスをした後「もう次から居残り授業なしな」と言われてしまった。抵抗されなかったし、生智としてはかなり気持ちよかったから衛二もそれなりに受け入れてくれたのではと思っていただけに唖然となった。
「え、なんでだよ……!」
「なんでもクソもあるか。こんなことするためにやってんじゃないんだぞ。それにお前の今の成績だったら居残る必要もない」
「はぁっ? んなもん、真面目に授業受け損じゃねーの」
「……正条。お前は何のために義務教育でもない学校へ来てるんだ」
「え? そりゃ高校とかくらいは出とくもんだからだろ?」
「まぁ、間違ってるとは言わないけどな。でも俺目当てで形だけ真面目に授業受けても最終的にお前の身につかないし、俺だって心は動かされないからな」
「う、受け損ってのは言葉のあやっつーか、思わず出ただけだし……」
つい苦しい言い訳をすると微妙な顔でため息を吐かれた。どうみてもその直前に恋人とキスをしていた風に見えない。
「……なー」
「何だ」
「俺、キス下手? それなりに自分では上手いと思ってたけど」
「お前な。英語の質問しろ」
「えー。えっと、い、Is the kiss I do……」
「違う」
「マジか。簡単な質問すら英語難しいな」
「そうじゃない。お前のキスがどうこうっていうのを英語で聞けって言ったんじゃない」
「んだよ、違うのかよ」
チッと舌打ちすると、また微妙な顔をされた後で笑われた。
「なんで笑ってんの? 俺に惚れた?」
「そんな訳あるか。本当にお前は馬鹿だなって思ったんだよ」
結局ようやく二度目のキスをしたというのにそんなやりとりで終わってしまった。
とはいえ初めの頃に比べたら何となく、衛二が生智に対して本当に何となくだが気を許してくれているような気もする。隙がなくて中々関係性を深められないのだが、それでも少しずつ前進できている気がするのだ。
衛二を本気にさせるには、相手が大人だから到底言葉で惚れさせるなんて無理だと思っていた。そのため、抱きしめたりキスをしたりしてこちらを向かせるものじゃないかと何となく思っていたのだが、そういう訳でもないのだろうかと生智は首を傾げる。
ま、キスしたいのは先生振り向かせるためっつーより俺がしたいからだけどな。
キスどころかそれ以上のこともしたい。そういうことがしたいのはもちろん自分が青い春真っ盛りの発情期だからというのもある。だが衛二のことが好きだからであって、誰でもいいというのは本当にない。ただやりたいだけなら気にせず誰か見繕っている。
発情期のガキと言えども、生智は両想いになった衛二としたい。
「……でもやり方、ちゃんとはわかんねーな。そーゆーのってネットとか調べたら載ってんのかな」
その前にちゃんとした両想いになるべきではあるが、知っておくに越したことはない、と生智は家に帰ったら調べることにした。
翌日、多少のショックに休み時間も自分の席でぼんやりしていると将が「いっちゃんどうしたんだよ」と話しかけてくる。
「あ? なんつーか、男ってキモイよな」
「は? え、なんの話? いっちゃんだって俺だって男だけどっ?」
「いやー、女っていいよな……って話」
「ああ! それならわかる。女いいよな。すげーいい匂いしそうだし柔らかそーだし」
「たもの言い方は童貞くさいな」
「うるせーよ! つか結局いっちゃん、どーしたんだよ」
「結局? ああ、別にどーもしない」
ぼんやりとはしていたが、さすがにポロリと漏らすほど生智はうっかり者ではない。寝る、とだけ呟くとそのまま机に突っ伏した。
男同士の行為に関してなんとなくはわかっていたが、実際調べると色々と引いた。文章だけでも尻の穴がひゅっとなったが、画像を見てしまうと引くどころではなかった。
だが不思議なことに、自分と衛二として考えるとむしろ興奮してきた。思い切り引いていたくせに、結局その後衛二で抜いた。
でもマジ、俺、少なくとも受け入れるんだけは無理。マジ無理。
未だにショックと引き具合にぼんやりとしつつも、やはり衛二相手だと思うと全然平気そうだった。それでも自分が男を受け入れる勇気はない。自分は思っていたよりもヘタレだなと、生智は苦笑した。
ぼんやりはしたが、トラウマになるとかそういうレベルではないのは、調べた後に衛二のことを思って抜いているのでもわかる。むしろやはり自分は衛二のことが好きなんだなと改めて実感した。
やっぱり好きだし、引くに引けない。絶対後悔だけはしねーように、もっと積極的に行こう。
気合いを新たにして日々挑むようにしているとあっという間に日々は過ぎていった。
キスは結局数えるほどしかできていない。舌すら入れられていない。それでも最近はますますいい感じになってきたのではないかと思えるようになっていた。
相変わらず衛二は基本的に素っ気ないが、主に接するのが学校でだから仕方がない。それでも、もしかしたら衛二も少しは生智のことを好きになってくれているんじゃないかと多少の期待をする程度には二人で話す時の態度とかが軟化している気がする。
ただ、衛二は相変わらず余裕といった様子だった。
『最近さらにしつこくなったな』
SNSでメッセージを送った後にそう返ってきた。
『そりゃあ。俺、先生好きだからな。で、次の休みは何する?』
『何もしない』
『駄目。こないだの休みは映画館行って終わったし、何だかんだで次の休みの日が期限の最後なんだからな! ざけんな』
『ふざけてない』
『なぁ、ほんとさ、最後だろ? お願い。先生の家で過ごさせて。人目とか気にせずゆっくり二人で過ごさせて。お願い』
頑なに家へ入れてくれない衛二に、だめもとで頼み込む。文字を打ちながら頭さえ下げていた。すると返事が返ってこなくなる。
駄目か、と思い切りがっかりしていると通知が来た。
『仕方ない。わかった』
『いいの?』
『お前が頼んどいて何だそれは』
『びっくりした。やった。もう取り消しなしな!』
わかったという文字を見た瞬間、生智はものすごくテンションが上がった。
二人きりだ。
恋人期間の筈だったのに、ほぼ恋人らしいことをしていないまま終わるのかと思っていたが、可能性が出てきた。せめてゆっくり過ごして抱きしめるくらいはしたい。
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