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「今、何て……?」
「いきなり食べるだなんてそんな、っていうか結構激しめな表現だね」
どうも行き違っている気がする。結弦は慌てて旭日の抱擁から逃れた。抱き寄せてきたものの、旭日も無理強いすることもなくあっさり離してくれる。
あれ? でも食べるって言い方に驚いてはいるけど怪訝そうじゃ、ない……ってことはやっぱフォーク?
いや、でも待て。激しめとか言った。うん? いや、え? でも「いきなりストレートに言うんだね」ってことかもしれない? いや、でも……。
旭日は確か「かわいい」「タイプ」だと言ってきた。自分にまず当てはまらないような単語すぎて聞き間違いな気もしないでもないが、合っているとしたら「激しめな表現」というのは性的な意味での「食べる」と受け止めたのではないだろうか。
って、そっち?
本当にそうなら、旭日は結弦が性的な意味で「俺を食わないで」と言ったと考えているわけだ。
い、いやいやいやいや! そ、そんな風に言ってないから! そんな、くっついたからすぐセックスに即繋がる脳の回路じゃないから!
「赤くなってるのもかわいいね」
「は、わ」
やはり「かわいい」と言った。聞き間違いではない。一体どういうことなのか。フォークではなく、結弦自身に興味を持っているということになるのだろうか。
そんなこと、ある?
フォークが身近に何人もいるほうが当然ながらあり得ないかもしれないが、見た目も性格もいい同性の先輩がこちらをかわいいと、そういう意味で好意的に思うことも、結弦にとっては十二分にあり得ない気がする。いくら一般的に異性愛だろうが同性愛だろうがあまりこだわらないものだとしても、結弦の性的指向は対象が女性のはずだけに余計そう考えてしまうのかもしれない。
っていうか、じゃあ助けてくれた時、怪我していたはずの俺の手、つかんでさあ、その手舐めてた気がしたのは? あれはどう……。
焦っているのもあり、考えれば考えるほどあれは旭日がフォークであり、結弦がケーキだと気づくきっかけだったような気がしてならない。とはいえ今や旭日がフォークだと断言できないだけにはっきり聞けない。
困惑しながら旭日を見れば笑みを向けられた。
「えっと……」
「君が階段から落ちてきた時は天使でも落ちてきたのかなって」
「は?」
性的指向の前に、この人大丈夫だろうか。
「っていうのは言い過ぎかもだけど」
かもじゃなくて相当言い過ぎだと思う。
「すごく好みの子が落ちてきてどうしようかと思ったよ。君の手に触れた自分の手に、後で思わずキスしちゃったくらいに」
ああ、なるほど。ケーキを味わおうとしたんじゃなくてキスか。なるほど。それならわかる。
……、いや、わからねえよ……! わかりたくない!
そうなるとやはり先ほど結弦が言った「食べる」という表現は、旭日からすれば性的な意味で言ったと捉えていることになる。結弦はもう一歩、旭日から離れる。そして思い切り自分の前で両手をぶんぶん振った。
「あ、あの! ち、違、違います。その、俺、食わないでって、そういう意味で……」
そういう意味で言ったのではなく、物理的に食われるのかと思ったと言いかけてやめた。抱き着かれてセックスに速結する思考回路も嫌だが、普通はフォークに速結もしないだろう。
「何が違うの?」
先ほどは少しポカンとしていた旭日だが、今はどこかおかしそうにしている。
「や。だから、その……」
「あー、ほんとかわいいなあ」
にこにこしている旭日が、また少し近づいてきた気がした。だがその前に「かわいいとかやめてください」という声と共に、結弦は後ろへ引っ張られる。
今のは結弦が言ったのではない。一瞬心の声が漏れたのかと自分でも思ったが、そもそも声が違う。そして「助かった」と思う反面、何でここにいるのかと微妙になった。
「何で? いやほんと、何で? お前どこにでも出没すんの? それともまさか俺のストーカー……」
「……人を危険な熊か変態みたいに言うな。あと反応間違ってる。そこは助けてくれてありがとう、だろ」
熊……確かにこの間、獲物に執着が強い熊っぽいとは思ったけど。
結弦を引っ張り自分の腕の中に引き寄せた拓が、呆れたように見下ろしてくる。
「あ、いや、まあそう、なん……だけ、ど」
そうだ、と当然のように言い切ると旭日に申し訳ないだろうかとつい思ってしまい、どもりがちになった。それをわかってか、拓がますます呆れたようにため息ついてきた。
「……ほんとお前……。あと、俺はバイト終えて帰る途中だっただけ。むしろお前のが俺の行く先にいる」
「いねえわ!」
「えっと、君、誰?」
一瞬ポカンとしていたらしい旭日が、苦笑しながら拓に聞いた。
「こいつの……」
まさかフォークだと言うつもりじゃないだろうな。
少し言いよどんでいる風に感じ、結弦は焦ったように口を開いた。
「……ダチ……?」
「ただの知り合いです!」
そして拓と声が被る。
「え?」
「あー……知り合いだな」
「と、友だちです」
「……」
旭日に聞き返され、言いなおしたらまた被った。旭日は無言で困惑した笑みを浮かべている。
「いきなり食べるだなんてそんな、っていうか結構激しめな表現だね」
どうも行き違っている気がする。結弦は慌てて旭日の抱擁から逃れた。抱き寄せてきたものの、旭日も無理強いすることもなくあっさり離してくれる。
あれ? でも食べるって言い方に驚いてはいるけど怪訝そうじゃ、ない……ってことはやっぱフォーク?
いや、でも待て。激しめとか言った。うん? いや、え? でも「いきなりストレートに言うんだね」ってことかもしれない? いや、でも……。
旭日は確か「かわいい」「タイプ」だと言ってきた。自分にまず当てはまらないような単語すぎて聞き間違いな気もしないでもないが、合っているとしたら「激しめな表現」というのは性的な意味での「食べる」と受け止めたのではないだろうか。
って、そっち?
本当にそうなら、旭日は結弦が性的な意味で「俺を食わないで」と言ったと考えているわけだ。
い、いやいやいやいや! そ、そんな風に言ってないから! そんな、くっついたからすぐセックスに即繋がる脳の回路じゃないから!
「赤くなってるのもかわいいね」
「は、わ」
やはり「かわいい」と言った。聞き間違いではない。一体どういうことなのか。フォークではなく、結弦自身に興味を持っているということになるのだろうか。
そんなこと、ある?
フォークが身近に何人もいるほうが当然ながらあり得ないかもしれないが、見た目も性格もいい同性の先輩がこちらをかわいいと、そういう意味で好意的に思うことも、結弦にとっては十二分にあり得ない気がする。いくら一般的に異性愛だろうが同性愛だろうがあまりこだわらないものだとしても、結弦の性的指向は対象が女性のはずだけに余計そう考えてしまうのかもしれない。
っていうか、じゃあ助けてくれた時、怪我していたはずの俺の手、つかんでさあ、その手舐めてた気がしたのは? あれはどう……。
焦っているのもあり、考えれば考えるほどあれは旭日がフォークであり、結弦がケーキだと気づくきっかけだったような気がしてならない。とはいえ今や旭日がフォークだと断言できないだけにはっきり聞けない。
困惑しながら旭日を見れば笑みを向けられた。
「えっと……」
「君が階段から落ちてきた時は天使でも落ちてきたのかなって」
「は?」
性的指向の前に、この人大丈夫だろうか。
「っていうのは言い過ぎかもだけど」
かもじゃなくて相当言い過ぎだと思う。
「すごく好みの子が落ちてきてどうしようかと思ったよ。君の手に触れた自分の手に、後で思わずキスしちゃったくらいに」
ああ、なるほど。ケーキを味わおうとしたんじゃなくてキスか。なるほど。それならわかる。
……、いや、わからねえよ……! わかりたくない!
そうなるとやはり先ほど結弦が言った「食べる」という表現は、旭日からすれば性的な意味で言ったと捉えていることになる。結弦はもう一歩、旭日から離れる。そして思い切り自分の前で両手をぶんぶん振った。
「あ、あの! ち、違、違います。その、俺、食わないでって、そういう意味で……」
そういう意味で言ったのではなく、物理的に食われるのかと思ったと言いかけてやめた。抱き着かれてセックスに速結する思考回路も嫌だが、普通はフォークに速結もしないだろう。
「何が違うの?」
先ほどは少しポカンとしていた旭日だが、今はどこかおかしそうにしている。
「や。だから、その……」
「あー、ほんとかわいいなあ」
にこにこしている旭日が、また少し近づいてきた気がした。だがその前に「かわいいとかやめてください」という声と共に、結弦は後ろへ引っ張られる。
今のは結弦が言ったのではない。一瞬心の声が漏れたのかと自分でも思ったが、そもそも声が違う。そして「助かった」と思う反面、何でここにいるのかと微妙になった。
「何で? いやほんと、何で? お前どこにでも出没すんの? それともまさか俺のストーカー……」
「……人を危険な熊か変態みたいに言うな。あと反応間違ってる。そこは助けてくれてありがとう、だろ」
熊……確かにこの間、獲物に執着が強い熊っぽいとは思ったけど。
結弦を引っ張り自分の腕の中に引き寄せた拓が、呆れたように見下ろしてくる。
「あ、いや、まあそう、なん……だけ、ど」
そうだ、と当然のように言い切ると旭日に申し訳ないだろうかとつい思ってしまい、どもりがちになった。それをわかってか、拓がますます呆れたようにため息ついてきた。
「……ほんとお前……。あと、俺はバイト終えて帰る途中だっただけ。むしろお前のが俺の行く先にいる」
「いねえわ!」
「えっと、君、誰?」
一瞬ポカンとしていたらしい旭日が、苦笑しながら拓に聞いた。
「こいつの……」
まさかフォークだと言うつもりじゃないだろうな。
少し言いよどんでいる風に感じ、結弦は焦ったように口を開いた。
「……ダチ……?」
「ただの知り合いです!」
そして拓と声が被る。
「え?」
「あー……知り合いだな」
「と、友だちです」
「……」
旭日に聞き返され、言いなおしたらまた被った。旭日は無言で困惑した笑みを浮かべている。
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