17 / 20
17
しおりを挟む
とにかくこの場を収拾しなければと、結弦がさらに何か言おうとした。すると拓が背後から結弦の口元というか顔を手で覆ってきた。
「っぶ。何すんだよ」
「お前はむしろ黙っとけ。余計ややこしくなる」
手は離してくれたが、ため息つきそうな勢いで拓が前を見ながら言ってくる。
「は? 馬鹿を扱うみたいな言動するな」
「違わないだろ」
「違うわ!」
言い返していると咳払いが聞こえた。見れば旭日がますます困惑したような顔をしている。それと共に、結弦は自分が拓の腕の中にいると今さら気づいた。
「と、とりあえず離して」
少しもがきながら拓から離れようとしたが、ちっとも身動きとれない。
俺は少し筋トレすべきなのか?
結弦の周りの友人で筋トレしていると口にしている者はいないものの、拓の裸を見たからわかる。多分している人は少なからずいる。
「佐野くん、離してって言ってるけど?」
もがいているつもりでいる結弦がびくともしないままの状態に内心唖然としていると、困惑していたはずの旭日が少し笑みを浮かべながら拓に首を傾げてきた。
「佐野が本当に嫌がることはしてない」
「それは君の主観でしょ。離してって言ったら離してあげるべきじゃないの」
「部外者は黙ってください」
「部外者? 一緒にいた俺たちに割って入ってきた君のことかな」
「最近佐野と知り合ったばかりのあんたのことですよ」
……何、この変な空気。
もがこうとするのを止め、結弦は拓の腕の中にいるまま唖然と立ち尽くした。なぜこの二人は、初対面で心なしか喧嘩腰なのか。二人とも普段物静かだったり穏やかだったりするだけに、謎でしかない。
結崎さんはもしかしたら、いまだに本当にそうか実感ないけど、もしかしたら俺に好意抱いてくれている可能性が無きにしも非ずだから、もしかしたらそういう態度になってしまったのかもしれないと百歩譲って考えられたとして……っていうか俺は何回もしかしたらって言ってんのか。
とにかく、そうだとしても拓はなぜなのかわからない。
……あ、そういえば三坂くんは結崎さんがフォークだと思ってるんだっけか?
それこそもしかしたら獲物を取られると焦っての言動なのかもしれない。
……だよ、な。結崎さんが俺をってのですらあり得ないのに、三坂くんもが俺を獲物じゃなくてそういう意味で、なんてあるわけない。
……ない、わな……。
「とにかく、いきなり邪魔してきたのは君だよ。何? 君も彼が好きなの? だとしてもいきなり失礼だと思うけど、そうじゃないなら俺のすることに干渉しないで欲しいな」
いや、だからあり得ないんですって……。って、結崎さんはほんとに俺のこと……? マジ意味わかんない。ほんと何で?
何を言うのかと結弦は旭日を困惑しながら見た。
「あんたに言われるいわれはない。失礼なのはすみません。でもこいつは俺のなんで」
い、いやいやいやいや……! 三坂くんこそほんっと何言ってんだよ……!
まさか自分がフォークで結弦がケーキだとばらすつもりなのだろうか。そういえば拓は隠す気は特にない的なことを前に言っていた気がする。
結弦は焦って腕の中から拓を見上げようとした。だがその前に、ため息つきながら旭日が近づいてきた。
「そう。わかった。君の気持ちはね。だからと言って佐野くんを諦めるってわけじゃないけど」
「そこは諦めてください」
「なぜ? 佐野くんから直接君が好きだから諦めてくれって言われたんじゃないのに?」
「……おい。お前からも言えよ」
旭日の言葉にほんの少し無言になった拓だったが、抱えたままの結弦に少し屈みながらぶっきらぼうに言ってくる。
「は? な、何を」
「三坂くんのものだから諦めてくださいって」
「いや、何でだよ……!」
フォークとケーキだとばらせと言うのか。思わず速攻で突っ込みを入れるように言い返すと、拓はムッとした顔になった。ついでに旭日は少しおかしそうに両手をわざとらしく上げ、おそらく呆れている。
「じゃあ、この人にかわいい言われながら色々されたいのか」
せめてそろそろ腕から解放して欲しいところだが、抱え込まれたまま拓がまた屈むようにして、今度は耳元で囁いてきた。耳がそんなに弱いつもりはなかったが、ちょくちょく拓に食べられているせいか、もう少しで変な声が出そうになる。何とかそれを堪えるため下唇を噛みしめてから、結弦は斜め上をじろりと見上げた。拓は無表情に近い顔をしている。
拓の言ったことは極論でしかないが、絶対違うとも断言できない。いまだに少々懐疑的ではあるが、とりあえず旭日は結弦をかわいいと少なくとも思っているようだ。何かの間違いでしかないと思うが、とりあえず。そして先ほどのやり取りを思い返せば、拓の言うように穏やかであるはずの旭日に笑顔のままぐいぐい進められ気づけば確かに色々されそうな気もしないではない。
そ、れは困る。
「おっ、れは……み、さかく、ん……も、の……あき……く、ださ……い」
ここは言われた通りにするかと思ったはいいが、実際口にしようとすれば笑えるぐらい口にできなかった。何とか最後まで言ったつもりだが、くっついているはずの拓にすら「何て?」と言われる。
くっそ。思ってもないことだからだろ、多分こんなに言いにくいの……。ああもう顔、クソ熱いんだけど……!
「っぶ。何すんだよ」
「お前はむしろ黙っとけ。余計ややこしくなる」
手は離してくれたが、ため息つきそうな勢いで拓が前を見ながら言ってくる。
「は? 馬鹿を扱うみたいな言動するな」
「違わないだろ」
「違うわ!」
言い返していると咳払いが聞こえた。見れば旭日がますます困惑したような顔をしている。それと共に、結弦は自分が拓の腕の中にいると今さら気づいた。
「と、とりあえず離して」
少しもがきながら拓から離れようとしたが、ちっとも身動きとれない。
俺は少し筋トレすべきなのか?
結弦の周りの友人で筋トレしていると口にしている者はいないものの、拓の裸を見たからわかる。多分している人は少なからずいる。
「佐野くん、離してって言ってるけど?」
もがいているつもりでいる結弦がびくともしないままの状態に内心唖然としていると、困惑していたはずの旭日が少し笑みを浮かべながら拓に首を傾げてきた。
「佐野が本当に嫌がることはしてない」
「それは君の主観でしょ。離してって言ったら離してあげるべきじゃないの」
「部外者は黙ってください」
「部外者? 一緒にいた俺たちに割って入ってきた君のことかな」
「最近佐野と知り合ったばかりのあんたのことですよ」
……何、この変な空気。
もがこうとするのを止め、結弦は拓の腕の中にいるまま唖然と立ち尽くした。なぜこの二人は、初対面で心なしか喧嘩腰なのか。二人とも普段物静かだったり穏やかだったりするだけに、謎でしかない。
結崎さんはもしかしたら、いまだに本当にそうか実感ないけど、もしかしたら俺に好意抱いてくれている可能性が無きにしも非ずだから、もしかしたらそういう態度になってしまったのかもしれないと百歩譲って考えられたとして……っていうか俺は何回もしかしたらって言ってんのか。
とにかく、そうだとしても拓はなぜなのかわからない。
……あ、そういえば三坂くんは結崎さんがフォークだと思ってるんだっけか?
それこそもしかしたら獲物を取られると焦っての言動なのかもしれない。
……だよ、な。結崎さんが俺をってのですらあり得ないのに、三坂くんもが俺を獲物じゃなくてそういう意味で、なんてあるわけない。
……ない、わな……。
「とにかく、いきなり邪魔してきたのは君だよ。何? 君も彼が好きなの? だとしてもいきなり失礼だと思うけど、そうじゃないなら俺のすることに干渉しないで欲しいな」
いや、だからあり得ないんですって……。って、結崎さんはほんとに俺のこと……? マジ意味わかんない。ほんと何で?
何を言うのかと結弦は旭日を困惑しながら見た。
「あんたに言われるいわれはない。失礼なのはすみません。でもこいつは俺のなんで」
い、いやいやいやいや……! 三坂くんこそほんっと何言ってんだよ……!
まさか自分がフォークで結弦がケーキだとばらすつもりなのだろうか。そういえば拓は隠す気は特にない的なことを前に言っていた気がする。
結弦は焦って腕の中から拓を見上げようとした。だがその前に、ため息つきながら旭日が近づいてきた。
「そう。わかった。君の気持ちはね。だからと言って佐野くんを諦めるってわけじゃないけど」
「そこは諦めてください」
「なぜ? 佐野くんから直接君が好きだから諦めてくれって言われたんじゃないのに?」
「……おい。お前からも言えよ」
旭日の言葉にほんの少し無言になった拓だったが、抱えたままの結弦に少し屈みながらぶっきらぼうに言ってくる。
「は? な、何を」
「三坂くんのものだから諦めてくださいって」
「いや、何でだよ……!」
フォークとケーキだとばらせと言うのか。思わず速攻で突っ込みを入れるように言い返すと、拓はムッとした顔になった。ついでに旭日は少しおかしそうに両手をわざとらしく上げ、おそらく呆れている。
「じゃあ、この人にかわいい言われながら色々されたいのか」
せめてそろそろ腕から解放して欲しいところだが、抱え込まれたまま拓がまた屈むようにして、今度は耳元で囁いてきた。耳がそんなに弱いつもりはなかったが、ちょくちょく拓に食べられているせいか、もう少しで変な声が出そうになる。何とかそれを堪えるため下唇を噛みしめてから、結弦は斜め上をじろりと見上げた。拓は無表情に近い顔をしている。
拓の言ったことは極論でしかないが、絶対違うとも断言できない。いまだに少々懐疑的ではあるが、とりあえず旭日は結弦をかわいいと少なくとも思っているようだ。何かの間違いでしかないと思うが、とりあえず。そして先ほどのやり取りを思い返せば、拓の言うように穏やかであるはずの旭日に笑顔のままぐいぐい進められ気づけば確かに色々されそうな気もしないではない。
そ、れは困る。
「おっ、れは……み、さかく、ん……も、の……あき……く、ださ……い」
ここは言われた通りにするかと思ったはいいが、実際口にしようとすれば笑えるぐらい口にできなかった。何とか最後まで言ったつもりだが、くっついているはずの拓にすら「何て?」と言われる。
くっそ。思ってもないことだからだろ、多分こんなに言いにくいの……。ああもう顔、クソ熱いんだけど……!
20
あなたにおすすめの小説
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
タトゥーの甘い檻
マリ・シンジュ
BL
執着系わんこ攻(大学生)× 高潔な美形教授受(30代)
どのお話も単体でお楽しみいただけます。
「先生、ここ……僕の瞳を入れるから。ずっと、僕だけを見てて」
真面目な大学教授・新城が、大学生の・羽生にだけ許した、あまりにも淫らな「わがまま」。
それは、誰にも見えない内腿の奥深くに、消えないタトゥーを刻むこと。
「下書き」と称して肌を赤く染めるペン先の冷たさ。
アトリエの無機質なライトの下、四つん這いで晒される大人の矜持。
ずっと年下の青年の、必死で、残酷で、純粋な独占欲。
愚かだと知りながら、新城はその熱に絆され、ゆっくりと「聖域」を明け渡していく――。
「……お前のわがままには、最後まで付き合う」
針が通るその時、二人の関係は一生消えない「共犯」へと変わる。
執着攻め×年上受け、密やかに刻まれる秘め事のお話。
期待の名探偵の頭脳は、俺に全振りされている。
さんから
BL
高校生探偵後輩×漫画描き先輩
部活の後輩・後生掛 清志郎は、数々の難事件を解決してきた期待の名探偵だ。……だけど高校に入学してから探偵の活動を控えているらしく、本人いわくその理由は俺・指宿 春都にあると言う。
「俺はイブ先輩だけに頼られたいし、そのために可能な限りあなたの傍にいたいんですっ」
いつもそう言って、しょうもないことばかりに推理力を使う後生掛。頭も見た目も良いコイツがどうして俺に執着してるのかが分からなくて──。
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?
monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。
そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。
主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。
※今回の表紙はAI生成です
※小説家になろうにも公開してます
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる