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4Thursday
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夏休みに入っても、生徒会メンバーは寮で軽い感じの会議をすることもある。寮のそれぞれ各部屋に繋がるスペースが広めに取ってあるので、そこにテーブルやホワイトボードを置いてあるのだ。他にも省スペースのキッチンもある。
休みに入る前からちょくちょく会議は開いている。とはいえ特に進展している内容とも思えない。会議というよりは情報の共有と、注意の周知徹底と言ったほうが正しいかもしれない。
今のところわかっているのは、どうやら去年あったような薬物関係の問題が発生しているらしいということと、それに関連してそうな生徒に風紀一般の慧が襲われたということ。そして瑠生の弟が同じくそれらに関連してそうな場所に誘われたということだろうか。
そこから確定できないとはいえ浮かぶのは、小さくとも違法なカジノスペースをどこかで設けている誰かがいて、その誰かがここの生徒の少なくとも数名と何らかの関係があるということだろうか。そしてカジノと言われているくらいなので賭けごとが繰り広げられているのはわかるが、又聞きだがそれ以外でも何でも行われているということ。恐らく何でもというのは慧に使われていたようなハーブなどの薬物や売買春行為じゃないかと思われる。
幸いというか被害にあったという声は聞こえてこないが、今回は去年のように噂にあまりなっていないだけの可能性もある。裏で被害にあっている生徒はいるかもしれない。現に慧が被害にあっているし、瑠生の弟が誘われている。二人とも目立つ生徒ではあり、たまたまかもしれない。だがそれでもこの短期間で二人が関わったという事実は軽く見られない。
ただ、風紀側にすらまだ情報を公にしていないのは昔からの決まりごとでもある。明確なことに対し明確に動けることなら生徒会と風紀が結託して動くのだが、今のようにちょっとした情報ですら慎重に扱う段階だと実際にそれらを知る生徒が少ないほうがいいこともある。
……でもまあ風紀の委員長と副委員長のあの二人なら別に知ってても構わねぇんじゃないかな。
皆の話を記録しつつ、三里はふと思った。実際ちゃんと話したことすらない相手のことなので発言することでもないと黙っているが、風紀の基久と拓実は情報を共有していてもマイナスにならない気がする。生徒会メンバーになっていてもおかしくない二人だくらいは話しなくてもわかる。だからこそ委員長と副委員長をやっているのだろうが。
ただそれでもそういったルールに例外を作ると少しずつ曖昧になっていくため、昔から守られているらしい。風紀にも必要とあらば伝える情報もあるが、基本的には今回のような場合ある程度までは生徒会のみで動く。
慧が襲われた時も、本人とそしてそれを発見した雫には口止めしているようである。
「旅行や帰省で寮を離れる予定がある人、いるかな」
会長の宏がテーブルに肘をついて手で顔をささえつつ、穏やかな笑みを浮かべて聞いてくる。それでわかったことは、誰一人ゆっくり帰省する者がいないことだろうか。
一応家の絡みなどで帰ることは皆ある。三里もそうだ。正直帰りたくないとさえ思っているが、帰らないと父親が煩そうだしそうなると母親までもが父親の味方をしてくる。帰ってもどうせまたパーティだの食事会だの何だのだろと思っている三里としては、できるだけ寮に留まっていたいくらいだ。
他の皆も「用事で帰りはしても、ゆっくり過ごしはしない」といった感じだった。
ただ旅行に関しては、ちょくちょく行く者がいた。永久は家族旅行だと言っていた。妹もいるしなと三里はぼんやり思う。良紀は慰安旅行的なものだと言っていたが、とりあえず三里としては絶対に遭遇したくなさそうな旅行だなと思う。
宏も家族旅行をするらしい。永久のように妹がいるとは聞いたことはある。ちなみにその旅行に千鶴もついていくようだが、三里ですらこの二人はある意味夫婦なのだろうなくらいの認識はあるのでサラリと流す。
後は休み後半に生徒会皆で行く旅行くらいだろうか。誰一人普通の友人と旅行する者はいないが、男なので驚くに値しない。以前いつものように押しまくられ気づけばホテルだった女子大生の一人が言っていたが、女子はことあるごとに友人と旅行するらしい。高校を卒業する時も卒業旅行に行ったよと楽しげに話していた。
多分三里は高等部を卒業する時もそんな旅行はしないだろう。とはいえ自分には友人と呼べる相手が特にいなかったとも思い微妙になるが、良紀も「そういう関係じゃない男と一緒に旅行とか、多分三日もいれば喧嘩しかしない気がしますね」とおかしそうに笑っていたので、きっと大抵の男子はそうなのじゃないかと思うことにする。
まず基本的に、旅行の計画を立てない。どこに観光してどこで食べるかといったことを計画しない。目的地にたどり着くのが目的というのだろうか。なので去年の生徒会の旅行でも皆で滞在したのはいいが、共通の目的もなく結局好き勝手やっていた。まあだからこそ今年もこうして皆で行くのかもしれないが。
「とりあえず面倒かもだけど、数日離れる時はここに、いつからいつまでっていう予定だけ書いててくれたらありがたいな」
宏の言葉に全員で返事をしたところで今日の会議は終わった。終わると皆好きに過ごすが、大抵は学校の生徒会室のようにこのスペースで暫くのんびりしている。その内、瑠生がお茶とお茶菓子を用意してくれる。
書記である三里は会議が終わった後はいつも、同じ書記の良紀と永久とで一旦集まることになっていた。それぞれが記録にとった内容をまとめて議事録にするためだ。時間を空けると忘れがちになるため、毎回会議が終わってからすぐに行っている。
「こんな感じでいいでしょうね」
途中で瑠生が淹れてくれたお茶を堪能しながら三人で議事録を仕上げた。
「三里ちゃんは旅行とか行かなくても度々ご実家に帰るんでしょう?」
良紀がニコニコ聞いてきた。
「……帰らねーと親、うるせぇんで」
「ふふ、パーティとかですか。お疲れ様です。ああでも三里ちゃんも、もう二年ですしそろそろあれじゃないですか、社交的なこと以外にも会社のことも覚えさせられるんじゃないですか」
「……マジっすか……」
三里は微妙な顔した。正直まだ親の仕事を継ぐ云々について考えていない。とはいえ他にやりたいこともないというのが現状でもある。
仕事を継ぐのが嫌なわけではない。ただ父親のような社交性だけはどう頑張っても身につかない気、しかしない。
高等部を卒業しても大学へ行くので実際仕事を行うのは何年も先だとは思うが、落ち着かなくなる。
……親父の仕事な……。最初は一般社員扱いとしても営業とかは絶対無理だろ。せめて企画とか……? さすがにただの事務でいいなんて言ったらはっ倒されそうだよな。
はぁっとため息ついていると、良紀が「もしお父様のお仕事じゃないことを考えておられるんでしたらウチで働きます?」とニッコリ言ってきた。なので三里も青い顔色になりながらなんとかニッコリと「遠慮するっす」と答えた。
良紀のところも一応社名などがある。中身は間違いなくヤのつく家業だとしても、外見上彼らはビジネスマン扱いになるらしい。
「ウチはわりと自由な家風だし仕事もそれぞれに合ったことを割り振るようにしてるんで、きっと三里ちゃんに向いてる仕事もあるかもしれませんよ?」
ニコニコ言われている内容が、本気か冗談かわからない。
「ほら、三里ちゃんは見た目いいですし、社交性なくともモテますからね、女性を取り扱うような……」
女性を取り扱うって、何……っ?
微妙なだけでなくドン引きしつつ三里は首をぶんぶん振った。
「良紀先輩も知ってんじゃねーっすか! 俺がほんとはそーゆーんもマジ苦手って……!」
「あれ? そうだっけ?」
穏やかな表情で良紀は首を傾げてくる。
「い、いや、俺マジほんと……」
微妙な顔でますます必死になって首を振っていると「アハハ」と良紀に笑われた。どうやら冗談だったらしい。
「ほんと三里ちゃんは見た目に反してるとこかわいいです」
「いや、マジ嬉しくねぇんでやめろ……ください」
青い顔で言うも良紀は楽しげに三里の頭を撫でてくる。ふと視線を感じた気がしてずっと黙ってでき上がった議事録をチェックしている永久のほうを見るが、全くもって三里を見てなどいなかった。
知ってたけど!
そう思いつつ、三里は何とか良紀の手から逃れた。
だいたい見た目に反してるって何だ。
後で三里はぼんやり思った。自分の顔はわりと整っているとは思っている。自分が大規模な会社の跡取りだという理由が恐らく強いとは思うが、顔もあって女に誘われているのだろうと思う程度には思っている。
整っている見た目に反して……としても、何なのだ。
その時ふと永久が「ろくでもない」と言っていたのを思い出した。言われた時は三里の女性遍歴のことを言われているのだと思ったし、多分それで間違っていないと思うが、もしや自分の顔は整っているのではなく、チャラそうに見えるだけ、なのだろうか。
パーティなどで三里を誘ってくるのは大抵似たタイプが多い。それもこれもやはり自分が整った顔なのではなく、チャラそうだからなのではないのだろうか。父親にも、似たようなタイプの女性ばかりがくるのは「お前が軽そうに見えるか、もしくは操縦しやすそうに見えるんじゃないのか」と言われたことがある。その時はわざと言っているのだと思っていた。
三里は口を少し引きつらせる。
だがチャラそうというのは良紀みたいなのを言うのであって、あくまでも自分の顔はどちらかといえば男らしいとかそういうのじゃないのだろうかと思おうとするのだが、一度「チャラい顔」と脳内に浮かぶと、もうそうとしか思えなくなってくる。
いやいやいや……。
ひたすら考えてどうやら時間が経っていたらしい。自分の顔のことでこれほど時間を過ごせるなんてまさしくチャラいからじゃないのかと自分に突っ込みたくなる。とりあえず腹が減ったしと部屋を出ると、ちょうど良紀と永久も偶然食堂へ向かおうとしていたところらしく、良紀が「せっかくだから一緒に行って食べましょう」と三里と永久の肩をつかんできた。
永久からは小さく舌打ちが聞こえてきて三里は内心「礼儀正しいんじゃねぇのかよ」と少しおかしくなる。ただ先輩の誘いに対して無下に断るつもりはないらしく、嫌そうにしながらも永久は大人しく一緒についてきた。
休みに入る前からちょくちょく会議は開いている。とはいえ特に進展している内容とも思えない。会議というよりは情報の共有と、注意の周知徹底と言ったほうが正しいかもしれない。
今のところわかっているのは、どうやら去年あったような薬物関係の問題が発生しているらしいということと、それに関連してそうな生徒に風紀一般の慧が襲われたということ。そして瑠生の弟が同じくそれらに関連してそうな場所に誘われたということだろうか。
そこから確定できないとはいえ浮かぶのは、小さくとも違法なカジノスペースをどこかで設けている誰かがいて、その誰かがここの生徒の少なくとも数名と何らかの関係があるということだろうか。そしてカジノと言われているくらいなので賭けごとが繰り広げられているのはわかるが、又聞きだがそれ以外でも何でも行われているということ。恐らく何でもというのは慧に使われていたようなハーブなどの薬物や売買春行為じゃないかと思われる。
幸いというか被害にあったという声は聞こえてこないが、今回は去年のように噂にあまりなっていないだけの可能性もある。裏で被害にあっている生徒はいるかもしれない。現に慧が被害にあっているし、瑠生の弟が誘われている。二人とも目立つ生徒ではあり、たまたまかもしれない。だがそれでもこの短期間で二人が関わったという事実は軽く見られない。
ただ、風紀側にすらまだ情報を公にしていないのは昔からの決まりごとでもある。明確なことに対し明確に動けることなら生徒会と風紀が結託して動くのだが、今のようにちょっとした情報ですら慎重に扱う段階だと実際にそれらを知る生徒が少ないほうがいいこともある。
……でもまあ風紀の委員長と副委員長のあの二人なら別に知ってても構わねぇんじゃないかな。
皆の話を記録しつつ、三里はふと思った。実際ちゃんと話したことすらない相手のことなので発言することでもないと黙っているが、風紀の基久と拓実は情報を共有していてもマイナスにならない気がする。生徒会メンバーになっていてもおかしくない二人だくらいは話しなくてもわかる。だからこそ委員長と副委員長をやっているのだろうが。
ただそれでもそういったルールに例外を作ると少しずつ曖昧になっていくため、昔から守られているらしい。風紀にも必要とあらば伝える情報もあるが、基本的には今回のような場合ある程度までは生徒会のみで動く。
慧が襲われた時も、本人とそしてそれを発見した雫には口止めしているようである。
「旅行や帰省で寮を離れる予定がある人、いるかな」
会長の宏がテーブルに肘をついて手で顔をささえつつ、穏やかな笑みを浮かべて聞いてくる。それでわかったことは、誰一人ゆっくり帰省する者がいないことだろうか。
一応家の絡みなどで帰ることは皆ある。三里もそうだ。正直帰りたくないとさえ思っているが、帰らないと父親が煩そうだしそうなると母親までもが父親の味方をしてくる。帰ってもどうせまたパーティだの食事会だの何だのだろと思っている三里としては、できるだけ寮に留まっていたいくらいだ。
他の皆も「用事で帰りはしても、ゆっくり過ごしはしない」といった感じだった。
ただ旅行に関しては、ちょくちょく行く者がいた。永久は家族旅行だと言っていた。妹もいるしなと三里はぼんやり思う。良紀は慰安旅行的なものだと言っていたが、とりあえず三里としては絶対に遭遇したくなさそうな旅行だなと思う。
宏も家族旅行をするらしい。永久のように妹がいるとは聞いたことはある。ちなみにその旅行に千鶴もついていくようだが、三里ですらこの二人はある意味夫婦なのだろうなくらいの認識はあるのでサラリと流す。
後は休み後半に生徒会皆で行く旅行くらいだろうか。誰一人普通の友人と旅行する者はいないが、男なので驚くに値しない。以前いつものように押しまくられ気づけばホテルだった女子大生の一人が言っていたが、女子はことあるごとに友人と旅行するらしい。高校を卒業する時も卒業旅行に行ったよと楽しげに話していた。
多分三里は高等部を卒業する時もそんな旅行はしないだろう。とはいえ自分には友人と呼べる相手が特にいなかったとも思い微妙になるが、良紀も「そういう関係じゃない男と一緒に旅行とか、多分三日もいれば喧嘩しかしない気がしますね」とおかしそうに笑っていたので、きっと大抵の男子はそうなのじゃないかと思うことにする。
まず基本的に、旅行の計画を立てない。どこに観光してどこで食べるかといったことを計画しない。目的地にたどり着くのが目的というのだろうか。なので去年の生徒会の旅行でも皆で滞在したのはいいが、共通の目的もなく結局好き勝手やっていた。まあだからこそ今年もこうして皆で行くのかもしれないが。
「とりあえず面倒かもだけど、数日離れる時はここに、いつからいつまでっていう予定だけ書いててくれたらありがたいな」
宏の言葉に全員で返事をしたところで今日の会議は終わった。終わると皆好きに過ごすが、大抵は学校の生徒会室のようにこのスペースで暫くのんびりしている。その内、瑠生がお茶とお茶菓子を用意してくれる。
書記である三里は会議が終わった後はいつも、同じ書記の良紀と永久とで一旦集まることになっていた。それぞれが記録にとった内容をまとめて議事録にするためだ。時間を空けると忘れがちになるため、毎回会議が終わってからすぐに行っている。
「こんな感じでいいでしょうね」
途中で瑠生が淹れてくれたお茶を堪能しながら三人で議事録を仕上げた。
「三里ちゃんは旅行とか行かなくても度々ご実家に帰るんでしょう?」
良紀がニコニコ聞いてきた。
「……帰らねーと親、うるせぇんで」
「ふふ、パーティとかですか。お疲れ様です。ああでも三里ちゃんも、もう二年ですしそろそろあれじゃないですか、社交的なこと以外にも会社のことも覚えさせられるんじゃないですか」
「……マジっすか……」
三里は微妙な顔した。正直まだ親の仕事を継ぐ云々について考えていない。とはいえ他にやりたいこともないというのが現状でもある。
仕事を継ぐのが嫌なわけではない。ただ父親のような社交性だけはどう頑張っても身につかない気、しかしない。
高等部を卒業しても大学へ行くので実際仕事を行うのは何年も先だとは思うが、落ち着かなくなる。
……親父の仕事な……。最初は一般社員扱いとしても営業とかは絶対無理だろ。せめて企画とか……? さすがにただの事務でいいなんて言ったらはっ倒されそうだよな。
はぁっとため息ついていると、良紀が「もしお父様のお仕事じゃないことを考えておられるんでしたらウチで働きます?」とニッコリ言ってきた。なので三里も青い顔色になりながらなんとかニッコリと「遠慮するっす」と答えた。
良紀のところも一応社名などがある。中身は間違いなくヤのつく家業だとしても、外見上彼らはビジネスマン扱いになるらしい。
「ウチはわりと自由な家風だし仕事もそれぞれに合ったことを割り振るようにしてるんで、きっと三里ちゃんに向いてる仕事もあるかもしれませんよ?」
ニコニコ言われている内容が、本気か冗談かわからない。
「ほら、三里ちゃんは見た目いいですし、社交性なくともモテますからね、女性を取り扱うような……」
女性を取り扱うって、何……っ?
微妙なだけでなくドン引きしつつ三里は首をぶんぶん振った。
「良紀先輩も知ってんじゃねーっすか! 俺がほんとはそーゆーんもマジ苦手って……!」
「あれ? そうだっけ?」
穏やかな表情で良紀は首を傾げてくる。
「い、いや、俺マジほんと……」
微妙な顔でますます必死になって首を振っていると「アハハ」と良紀に笑われた。どうやら冗談だったらしい。
「ほんと三里ちゃんは見た目に反してるとこかわいいです」
「いや、マジ嬉しくねぇんでやめろ……ください」
青い顔で言うも良紀は楽しげに三里の頭を撫でてくる。ふと視線を感じた気がしてずっと黙ってでき上がった議事録をチェックしている永久のほうを見るが、全くもって三里を見てなどいなかった。
知ってたけど!
そう思いつつ、三里は何とか良紀の手から逃れた。
だいたい見た目に反してるって何だ。
後で三里はぼんやり思った。自分の顔はわりと整っているとは思っている。自分が大規模な会社の跡取りだという理由が恐らく強いとは思うが、顔もあって女に誘われているのだろうと思う程度には思っている。
整っている見た目に反して……としても、何なのだ。
その時ふと永久が「ろくでもない」と言っていたのを思い出した。言われた時は三里の女性遍歴のことを言われているのだと思ったし、多分それで間違っていないと思うが、もしや自分の顔は整っているのではなく、チャラそうに見えるだけ、なのだろうか。
パーティなどで三里を誘ってくるのは大抵似たタイプが多い。それもこれもやはり自分が整った顔なのではなく、チャラそうだからなのではないのだろうか。父親にも、似たようなタイプの女性ばかりがくるのは「お前が軽そうに見えるか、もしくは操縦しやすそうに見えるんじゃないのか」と言われたことがある。その時はわざと言っているのだと思っていた。
三里は口を少し引きつらせる。
だがチャラそうというのは良紀みたいなのを言うのであって、あくまでも自分の顔はどちらかといえば男らしいとかそういうのじゃないのだろうかと思おうとするのだが、一度「チャラい顔」と脳内に浮かぶと、もうそうとしか思えなくなってくる。
いやいやいや……。
ひたすら考えてどうやら時間が経っていたらしい。自分の顔のことでこれほど時間を過ごせるなんてまさしくチャラいからじゃないのかと自分に突っ込みたくなる。とりあえず腹が減ったしと部屋を出ると、ちょうど良紀と永久も偶然食堂へ向かおうとしていたところらしく、良紀が「せっかくだから一緒に行って食べましょう」と三里と永久の肩をつかんできた。
永久からは小さく舌打ちが聞こえてきて三里は内心「礼儀正しいんじゃねぇのかよ」と少しおかしくなる。ただ先輩の誘いに対して無下に断るつもりはないらしく、嫌そうにしながらも永久は大人しく一緒についてきた。
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