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45話
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アルバイトを終えてから家へ帰る時に携帯電話を見れば大学の友人からメッセージが来ていた。歩きながら携帯電話を弄るのがあまり好きではない寿也はその場では何も返信せずにズボンのポケットに携帯電話をしまい、そのまま家路についた。すると今日は先にアルバイトを終えていた人間のままである鈴に出迎えられる。
「おかえり、寿也」
「ただいま、鈴。猫の姿でもいつもそう言ってくれてるんだろうなあ」
「うん、言ってるよ」
いつもはゴロゴロいいながら寿也の足に顔や体を擦りつけてくるせいか、鈴はどこか物足りなさそうにしている。そして少し首を傾げた後に両手を広げて寿也を抱きしめようとしてきた。
「鈴」
苦笑しながら寿也は手を伸ばしてそれを遠慮させてもらう。
「何?」
「別に嫌じゃないけどね、普段あまり日本人は抱擁し合って帰宅の挨拶はしないんだよ」
「何で? じゃあ体を擦りつけたほうがいいかな」
「それは外国の人でもしない気がする……もっと変かな……。すごく嬉しい時や悲しい時みたいに感情の起伏が激しい時は抱きしめ合って喜んだり悲しんだりすることはあるけどね、普段は恋人同士はさておき、家族でもあまりしないかな」
「変なの」
変なのだろうか。苦笑したまま寿也も首を傾げた。
「ねえ、寿也は何でスマホで手紙送るの」
夕食の後にうっかり忘れていた友人への返信を思い出して行っていると、それを見ていた鈴が聞いてきた。
「何でって……」
「手紙のやり取りはしないの?」
「手紙? って便箋とか? あーないなあ。小学校の時にさ、上級生が卒業する際にカード作ってメッセージを書いた記憶くらいかな」
「そうなんだ。昔は紙でやり取りしてたのにね。うっかりそれをめちゃくちゃにしてしまった時はオレ、怒られたりしたなあ」
「はは。うっかりでどうやってめちゃくちゃにしたんだ? 爪で紙研ぐとかはさすがにしなさそうだけど」
思わず聞き返すと鈴は少し考えた後に「昔はえっと、筆? で書いてたんだ……それが乾かない内にオレ、紙の上歩いちゃってそこらじゅう墨だらけにしたり、とかかな」
「……いつの時代」
昔と言われてもつい、今の自分とそう大差ない生活習慣や生活用品を浮かべてしまっていた。だがそういえば鈴は二百年くらい生きている猫だったと思い出す。
「手紙、かあ。そういうのも今あえていいのかもだな。でもいざ手で書こうとしたら浮かばなさそう」
「そういうもの?」
「わからないけど。そういえばさ、手紙といえば最近、変な事件この近く、かな? 起きてるらしい」
ふと思い出して口にすれば、鈴が「変な、って?」とまた首を傾げてきた。
「変質者が出るのとはちょっと違う感じなのかな。襲われて倒れている人のそばにはいつも燃えた紙クズ? か何かが散らばってるって噂。でも放火でもないんだよな。別に襲われた人の周辺で火事もなくて。で、倒れてた人もひどい怪我をしていたりするんだけど皆そろって襲われた記憶がすっぽり抜けてるらしい」
「死んだりはしてないの?」
「うーん、どうだろ。俺も詳しく知ってるんじゃなくてこないだ学校で友だちに聞いただけでさ。でも多分死んではないんじゃないかな。殺人事件とは言ってなかった気がする」
「ふーん」
鈴は特に関心なさそうに相槌を打ってきてから少ししてハッとなったように寿也を見てきた。
「関係ないかもだけど、寿也も気をつけて」
「え? ああうん、もし通り魔的なのだったら俺も絶対ないとは言えないもんな。あ、そういえば襲われた人たちは手紙の怨念がどうとか言ってるらしいとか聞いたかも? でもそれって絶対噂の尾びれ──」
「ほんと気をつけて! 人間の仕業でも気をつけて欲しいけど、あやかしの仕業だとしたら寿也も目をつけられるかもなんだから」
通り魔ならわかるが、あやかしだと目をつけられるかもというのは微妙にわからない。
「俺、あやかしに狙われやすいのか? まさかな」
とりあえず冗談を言って苦笑したが、鈴は真顔で頷いている。
「え、冗談で言ったんだけど」
怪訝な顔をすれば鈴も怪訝な顔をしてきた。
「何でそこで冗談言えるのかわからないんだけど。前に言ったよね。オレのあやかしの匂いにつられて他のあやかしが寄ってきたりするかもしれないって」
そういえばそんなことを言っていたな、と寿也は薄っすら思い出した。
「あー。でも危険はそんなないって鈴、言ってなかった? 寄ってくるのは大抵無害だったりあまり影響もないようなやつらだって」
「言ったけど……気をつけるに越したことないし。そういえばオレ、寿也が無防備に寄って行くのも気をつけないととも言った。今もほんと無防備そう……」
「あれ、俺、ディスられてる?」
「でぃす? ディスカッションのこと? 意見交換してるつもりはないけど」
「じゃなくて否定的な意味のdisのほうかな……ディスリスペクトとかね。というかあえて説明するのは微妙な気持ちになるなこれ」
「オレは寿也の無防備っぷりに微妙な気持ちになるよ。オレの大事な主だから尊敬だってしてるけど、そういうとこだけは呆れてるからね」
飼い猫に呆れられた。
今一番微妙な気持ちになったかもしれない、と寿也はまた苦笑した。
「おかえり、寿也」
「ただいま、鈴。猫の姿でもいつもそう言ってくれてるんだろうなあ」
「うん、言ってるよ」
いつもはゴロゴロいいながら寿也の足に顔や体を擦りつけてくるせいか、鈴はどこか物足りなさそうにしている。そして少し首を傾げた後に両手を広げて寿也を抱きしめようとしてきた。
「鈴」
苦笑しながら寿也は手を伸ばしてそれを遠慮させてもらう。
「何?」
「別に嫌じゃないけどね、普段あまり日本人は抱擁し合って帰宅の挨拶はしないんだよ」
「何で? じゃあ体を擦りつけたほうがいいかな」
「それは外国の人でもしない気がする……もっと変かな……。すごく嬉しい時や悲しい時みたいに感情の起伏が激しい時は抱きしめ合って喜んだり悲しんだりすることはあるけどね、普段は恋人同士はさておき、家族でもあまりしないかな」
「変なの」
変なのだろうか。苦笑したまま寿也も首を傾げた。
「ねえ、寿也は何でスマホで手紙送るの」
夕食の後にうっかり忘れていた友人への返信を思い出して行っていると、それを見ていた鈴が聞いてきた。
「何でって……」
「手紙のやり取りはしないの?」
「手紙? って便箋とか? あーないなあ。小学校の時にさ、上級生が卒業する際にカード作ってメッセージを書いた記憶くらいかな」
「そうなんだ。昔は紙でやり取りしてたのにね。うっかりそれをめちゃくちゃにしてしまった時はオレ、怒られたりしたなあ」
「はは。うっかりでどうやってめちゃくちゃにしたんだ? 爪で紙研ぐとかはさすがにしなさそうだけど」
思わず聞き返すと鈴は少し考えた後に「昔はえっと、筆? で書いてたんだ……それが乾かない内にオレ、紙の上歩いちゃってそこらじゅう墨だらけにしたり、とかかな」
「……いつの時代」
昔と言われてもつい、今の自分とそう大差ない生活習慣や生活用品を浮かべてしまっていた。だがそういえば鈴は二百年くらい生きている猫だったと思い出す。
「手紙、かあ。そういうのも今あえていいのかもだな。でもいざ手で書こうとしたら浮かばなさそう」
「そういうもの?」
「わからないけど。そういえばさ、手紙といえば最近、変な事件この近く、かな? 起きてるらしい」
ふと思い出して口にすれば、鈴が「変な、って?」とまた首を傾げてきた。
「変質者が出るのとはちょっと違う感じなのかな。襲われて倒れている人のそばにはいつも燃えた紙クズ? か何かが散らばってるって噂。でも放火でもないんだよな。別に襲われた人の周辺で火事もなくて。で、倒れてた人もひどい怪我をしていたりするんだけど皆そろって襲われた記憶がすっぽり抜けてるらしい」
「死んだりはしてないの?」
「うーん、どうだろ。俺も詳しく知ってるんじゃなくてこないだ学校で友だちに聞いただけでさ。でも多分死んではないんじゃないかな。殺人事件とは言ってなかった気がする」
「ふーん」
鈴は特に関心なさそうに相槌を打ってきてから少ししてハッとなったように寿也を見てきた。
「関係ないかもだけど、寿也も気をつけて」
「え? ああうん、もし通り魔的なのだったら俺も絶対ないとは言えないもんな。あ、そういえば襲われた人たちは手紙の怨念がどうとか言ってるらしいとか聞いたかも? でもそれって絶対噂の尾びれ──」
「ほんと気をつけて! 人間の仕業でも気をつけて欲しいけど、あやかしの仕業だとしたら寿也も目をつけられるかもなんだから」
通り魔ならわかるが、あやかしだと目をつけられるかもというのは微妙にわからない。
「俺、あやかしに狙われやすいのか? まさかな」
とりあえず冗談を言って苦笑したが、鈴は真顔で頷いている。
「え、冗談で言ったんだけど」
怪訝な顔をすれば鈴も怪訝な顔をしてきた。
「何でそこで冗談言えるのかわからないんだけど。前に言ったよね。オレのあやかしの匂いにつられて他のあやかしが寄ってきたりするかもしれないって」
そういえばそんなことを言っていたな、と寿也は薄っすら思い出した。
「あー。でも危険はそんなないって鈴、言ってなかった? 寄ってくるのは大抵無害だったりあまり影響もないようなやつらだって」
「言ったけど……気をつけるに越したことないし。そういえばオレ、寿也が無防備に寄って行くのも気をつけないととも言った。今もほんと無防備そう……」
「あれ、俺、ディスられてる?」
「でぃす? ディスカッションのこと? 意見交換してるつもりはないけど」
「じゃなくて否定的な意味のdisのほうかな……ディスリスペクトとかね。というかあえて説明するのは微妙な気持ちになるなこれ」
「オレは寿也の無防備っぷりに微妙な気持ちになるよ。オレの大事な主だから尊敬だってしてるけど、そういうとこだけは呆れてるからね」
飼い猫に呆れられた。
今一番微妙な気持ちになったかもしれない、と寿也はまた苦笑した。
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