金の鈴

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51話

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 飲み会の帰りだった。
 歩きながら寿也は携帯電話の画面で時間を見る。もう日付は既に変わっていた。

「すず、心配してるかな」

 ところで最近すずの様子が少しおかしい気がしている。というより鈴の、だろうか。猫の姿だとあまりわからないが、人間の姿だとどこかよそよそしいというか、違和感が少々ある。あと何か言おうとしてやめるといったことがたまにあるのも気になる。
 もしかして何か言いたいことがあるのだろうかと思うのだが、多分鈴の性格だと無理に聞いても言ってくれないだろうと、気になりつつも様子を見ていた。
 今日の飲み会で奏流が言ってきた「最近すずちゃんに変わった様子はない?」という言葉も多少気になっていた。

「変わったって、どういう? 体調とか?」
「あー、まあ、うん、そうだね」
「何だよ、歯切れ悪いな」
「あはは。大丈夫そうならいいや、うん」

 変わった様子といえばまさに違和感や何か言おうとしている感じが当てはまる気がするのだが、奏流は当然すずが人間になれるのを知らないはずだ。だからそういうことではないのだろうが、奏流はたまにすずのことで何か知っているような素振りを見せてくることがあるように寿也には思えていた。すずの正体を知っていて隠している寿也が変に意識して勝手にそう思っているだけだろうが、こういう時に「やっぱり何か知っている? いやまさかな」などと考えてしまう。

 あれか、最近やたらあやかしに出会うせいであいつにまでそんな風に思えちゃってんのかもな。現実とファンタジーの見分けついてないヤツみたいじゃないか俺……。

 少し自分を微妙に思いつつ、ふとすずが何か言おうとしているのは、ひょっとしたら最近立て続けにあやかしと出会っているのもあり、また「自分のせいかも」とか思っているのだろうかと頭に過った。田舎から帰ってくる時に言っていた「あやかしの匂いがついてるかもしれない、ってこと。似てるけど寿也が言うように猫がそうなるみたいに他のあやかしが寄ってきたりする、かもしれない。……だから、ごめんなさい」という鈴の言葉を思い出す。
 あの時寿也はちゃんと「すずと一緒に生活するの俺好きだから謝らないでくれ」と言ったはずだ。今じゃすずがいない生活なんてそれこそ想像できない、とも。

 ……ああでも寄ってくるあやかしは基本危険はないと思うけど、気をつけないといけないのは俺が無防備に寄っていく場合とか言ってたな。この間も無防備だって言われたばかりだもんな。もしかしてその辺について何か言いたいことでもある、とか?

 無防備に関しては、はっきり言って自覚がないので気をつけるも何も、どこがどう無防備なのか説明して欲しいくらいだ。なのでもし何かそれについて言いたいのであればむしろ言って欲しいかもしれない。ただ、寿也としても自分から寄っていった記憶はない。覚にしても文車妖妃にしても、無防備云々はさておき、寿也から寄っていってはいないはずだ。どちらかといえば向こうから来ているのではないだろうか。

「……結局鈴が何を言おうとしてるのかわからないし、言ってきてくれないことにはどうしようもないか」

 ぼそりと呟くと歩きながら首を回した。酒に酔ってはいないが少々疲れたかもしれない。別にアルバイトが特に忙しいとか大学の授業が急にきつくなったとかではない。多分飲み会に参加していた彼らのせいだろうと寿也は苦笑した。
 飲み会には大学の友人だけでなく、人間の姿の文車妖妃や覚もいた。別に寿也が話したのではないのだがどこから察知したのだろうか、当たり前のように混じっていた。寿也も行くまで知らなかったのですずも知らないだろう。後で知ったらまた煩そうだ。
 あやかし同士仲間意識とかそういうものはないのだろうか。この人間の世界で、種別は違うにしても同じあやかしに出会えて嬉しいといった様子は彼らには全く見られない。特にすずはむしろ「こっち来んな」くらいの勢いで嫌がっている節がある。
 それも飼い主である寿也が変に絡むからだろうか。やはり「自分のせいで」とか考えて最近どこかおかしいのだろうか。最近ますます心配性のようになっていたすずを思い、寿也は歩きながら今度は首をそっと傾げた。
 とりあえず心配性なすずがもしかしたら途中迎えに来るかもしれないので、帰ろうとした寿也に対して送ると何度も言ってきたあの二人には丁重にお断りさせてもらっていた。面倒だがそうしないとさらにひと悶着ありそうでしかない。

「本当に大丈夫ですから」
「でもお前一人はやめておいたほうが……」
「文車妖妃は駄目だ。あんたこそ送り狼になりそうじゃないですか。そんな物騒な肉の塊胸にくっつけてるやつに寿也を送らせられません」
「何だって? たかが覚のくせに誰に向かってそんな口利いてんだい? あと今の私は章妃だから。そんな呼び方しないでくれないか」
「ヒメって柄か……」
「何か言ったかい」
「な、何も。と、とにかく寿也は俺が送ります」
「お前こそ送り狼とやらになるつもりだろう。それも実際寿也食うほうのね」
「なっ、そんなことしないっつってんだろ! あんたにしてもあの猫にしても本当に失礼だな」
「……ちょっと二人とも……いくら周りも酔ってるからって、もう少し言葉に気をつけて……」

 バレてもいいとでも思っているのかとドン引きしながら、寿也は何とか二人を振り切って帰ってきていた。改めて時間を見て、こんなに遅くなっているとはと足を早めた。
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