恋愛ゲームは続行中

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 目の前にいる、昌史に似ている気がする綺麗な顔立ちの青年が微笑んできた。ただ服装など貴族のようにしか見えない彼が、甘いセリフを囁き、また微笑む。その笑みに見いられていると、優雅に手を差し出してきた。ダンスに誘われたようだ。
 智也はそれにこたえるため、そっと手を伸ばし──

「……いてぇ」

 どうやらあり得ないことにベッドから落ちたらしい。おかげで目を覚ましたが、背中を打ったらしくズキズキする。とりあえず、まだ落ちた状態で横たえたままだった体を起こし、目に手のひらの腹を当てた。

「あー……」

 篠原 智也(しのはら ともや)は、二年目となる大学生活の勉強以外の時間や労力を、ほとんど大学でのサークル活動に費やしていた。
 昨日もそのサークルメンバーと作っていたものがようやく形となってきたので、家でも遅くまでテストしていた。おかげで寝不足らしい。

 だからといってベッドから落ちるか? ベタなわりに稀有すぎんだろ……。

 とりあえず座ったまま体を伸ばし、背中の痛みがましになっていることを確認し、智也はのろのろ立ち上がった。
 洗面所で歯みがきしながら生ぬるい気持ちになる。
 テストしていたのはサークルメンバー皆で作っているゲームだった。コンテストに出す予定のゲームがようやく形になってきていた。そのため昨日も家へ帰って様々なテストをしていて、眠るのが遅くなった。
 そのゲームの登場人物はとりあえずサークルメンバーがモデルにされている。なぜメンバーをモデルにしたかといえば、単に一から考えるのが面倒だったからというのが主な理由のようだが、デザインなどを主だって手掛けたのが先輩二人なので理由は少々怪しい。
 攻略相手の一人が、一つ年下である後輩、辻村 昌史(つじむら まさふみ)にそっくりのキャラクターだった。おかげさまでその育成キャラクターが昌史にしか見えず、挙句夢にまで登場してきた。

 生ぬるい気持ちにもなるわ……。

 しかも智也はテストプレイする際に主人公を女性にするつもりしかなかったというのに、一つ上の先輩である太田 美恵(おおた みえ)が勝手にキャラメイクを行った結果、主人公が男性になっていた。しかも智也そっくりだった。

「ちょ、何してんっすか」
「いいじゃない。主人公は性別や多少外見弄れる設定予定でしょ」
「いや、だからこそかわいい感じの女の子にしようと……だいたい俺みたいな平凡な作り、モデルに合わないでしょ……」
「でも作ったんだからこれで動かして」
「もうほんとこの腐女子は……」
「いいから動かす!」

 結局テストプレイする段階になった時点でかなり遅い時間になっていたので、あとは家へ持ち帰るということで昨日は活動を解散していた。大学でプレイしていれば、帰宅するまでに赤の他人とはいえ様々な人を目の当たりにしていただろうし、夢にまで出てこなかったかもしれない。だが自宅だったため、ゲームを弄った後は寝るだけだった。結果、攻略中のキャラクターが夢に出てきた。
 その後、支度を済ませ智也は大学へ向かった。授業はこれでもちゃんと受けている。

「テストプレイ、どうだった?」

 最初の授業の後、カフェで同じ講義を取っているサークルメンバーの一人である佐久間 亮人(さくま あきと)が聞いてきた。
 亮人は普段から眼鏡をかけている。智也的に眼鏡キャラはだいたい眼鏡でできているか、眼鏡を押し上げる行為で人を圧するタイプに区分されると思っている。だが亮人は第三のタイプだ。眼鏡が個性ではないし、人を圧するタイプでもない。むしろどちらかといえば無気力だ。プログラミングやゲームのことに関してはそれなりに熱意があるものの、中身のないゲームに対しては全く興味を示さない。
 またプログラムが得意な眼鏡という印象だとパズルゲームなどを好みそうなイメージを持ちそうだが、亮人はストーリー重視だったりする。第一印象クラッシャーと智也は時折勝手に呼んでいる。
 亮人の問いに答えようとする前に、智也たちの姿を見つけたらしい昌史が「篠原先輩!」と声かけながら近づいてきた。

「おぅ」

 亮人は別にどうでもいいのか、「俺もいるけど」などといった主張は全くしない。むしろ智也の答えを待っていたようで、もう一度「テストプレイどうだった」と同じ質問をしてきた。

「それな。とりあえず辻村くんとダンス踊る夢、見たわ……」
「えっ?」

 それを聞いた昌史はなぜか耳まで赤くなっている。普通に考えて赤くなるところではない。むしろ引くところだろう。

「辻村くん、反応バグってんぞ」

 呆れたように言えば昌史がまだ少し赤いまま困ったように智也を見てきた。

「えっ? そ、そうですか」
「お前の夢は俺としてはどうでもいい。プレイ内容について聞いているんだけど」
「アキ、わかってるけど、その結果ってことだよ。お前もストーリー重視ならそういうとこ汲んでこいよ。とりあえずゲーム性は悪くないし今のところプログラムもちゃんと作動してるけど、話に足りない要素まだまだ多すぎかな。修正がいる部分もあるし」
「なるほど……」

 その後サークルメンバー全員で集まってから、改めて智也はテストプレイの感想と提案、ミスなどを指摘し、皆で話し合った。
 そもそも攻略対象の、元庶民である青年たち三人がなぜいきなり伯爵家に現れ、その伯爵家の子息もしくは令嬢がその攻略対象を育成しなければならないのか。普通に意味わからない。
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