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朝、ふと目が覚めると、智也は自分がベッドに眠っていることに気づいた。確かソファーで寝たはずなのにと怪訝に思う。
昨日の飲み会でうっかり昌史が酒を口にして酔ってしまったのは、先輩である自分たちにも責任がある。ただ関心のないことには潔いくらい関心のない亮人は智也と昌史をおいてさっさと先に帰ってしまったし、智也のさらに先輩である二人は女性でもあるため、どのみち昌史の介抱役としてはあまり適していない。
昌史の友人でもある伸行は車で来ていたので昌史も連れ帰ってもらえたらよかったのだが、昌史が完全に酔って寝てしまうより前にすでにもう先輩方を送るために車を出していたので、わざわざ電話で呼び戻すのもと諦めた。
一応起こしてみれば反応があったりするのだが、またすぐ眠るといった様子で埒が明かなく、智也は面倒になり自分の家へ連れ帰ることにした。昌史の家は知らないし、智也の家は飲んでいた場所から遠くなかったというのもある。タクシーに乗ってしまえばあっという間だった。
ワンメーターで申し訳ないと思いつつ、タクシーを降りてからはそろそろ本格的に眠っていそうな昌史を、以前サバイバルゲームにはまっていた時に覚えたファイヤーマンズキャリーという担ぎ方で運んだ。元は火災現場などで消防士が負傷した人を救出する際などに使用されていたらしい。意識不明の相手でも一人で運べるし、おまけに片手が自由になるため都合いい。
うつ伏せにした相手の両わきに手をやって抱え上げ、片方のわきの下に自分の首を差し入れてから肩に担ぎ上げるという方法だ。昌史は智也よりも背はあるが、全体的にごついわけではないので全然この方法で担げた。もしもっとあからさまにごつくてでかい相手だったなら、レンジャーロールのような少々アクロバティックな担ぎ方を、土の上ならまだしも道路でしなくてはいけなかったかもしれない。こちらは自分より重量のある相手でも遠心力を使って簡単に担げるが、前転するには場所的に少々抵抗あった。
タクシーを降りて自宅まですぐとはいえ、さすがに最近少々運動不足気味の智也にとって、昌史は結構な負荷だった。
酒はそこそこ強いが、ベッドまでようやく到達した時にはかなり息が切れていた。どう考えても全く起きる気配のない昌史にシャワーを浴びさせる余力はない。できれば風呂に入った状態で横たわって欲しいし、服も着替えさせたいところだ。しかし明日シーツを洗濯すればいいかと諦め、上着だけは脱がせた昌史を放置したまま、自分はシャワーを浴びに向かった。
何かいつも俺、損な役回りな気がするんだけど。
合コンへ行っても気づけば介抱役になることが多い。講義でチームを作り課題をこなすような時も、だいたいまとめ役になっている。もちろん自ら進んでやっていない。そんな犠牲精神は持ち合わせていないつもりだ。だというのに気づけば、というパターンが少なくない気がする。
おまけにテストプレイすれば俺が男のまま主人公で、こいつら攻略してく的なビジュアルになってるしな。
シャワーを終えて髪をタオルで拭きながら、ベッドへ横たわっている昌史の様子を見に来つつ微妙な顔になる。そして昌史はやはり起きる様子はない。
結局仕方なく、智也はソファーで眠ったはずだった。
「……勘違い? いや、俺酔ってないしな……」
怪訝に思いつつも、まあいいかと横たわったまま伸びする。夢の中で暖かい生き物に包まれるようにして抱きつかれていた気がする。とてもぬくぬくしていて、まだ春とはいえ肌寒い日も多いだけに心地よかった。
あの夢の生き物、何だったんだろな。でっかい犬? 熊じゃないわな。ぬくぬくする前に食われそう。いい感じの女の子が俺としては嬉しいけど、俺よりでかい女子か……、うん、包容力のある女子、悪くないな……。
先輩方二人が結構、いや、かなり強い女性たちだけに、優しくて包容力ある女性に包まれるように抱かれるのも悪くないと思える。
あー、人肌恋しいのかも。
高校の時つき合っていた人はいる。二年ほど続いたが、高校卒業と同時に別れた。服部 美賀(はっとり みか)という名前で、保育園の頃からの幼馴染でもある。高校までずっと同じ学校だったのもあり、何となくお互い運命だと思えたのか好きを履き違えてつき合った。それでもいい感じだったし不満はお互いなかったと思う。ただ、卒業後別々の進路になるとわかってから二人で考え、決めた。
そんな感じだから別れたとはいえ仲はいい。今でもたまに連絡を取ったりする。ただし、よりが戻ることはない。美賀にはすでに同棲を考えている彼氏がいる。
俺にはいないけどな、あれ以来、彼女。
何気にため息つきながら、智也はようやく起き上がった。そして目に入ってきたソファーに、固まったように正座している昌史がいることに気づき、無言のままビクッとなる。
「……っびっくりした。いたのか」
「……すみません」
「んあ? あー、ああ。酔ったことか? 仕方ないだろ、わざとじゃないんだし。むしろ未成年のお前に酒飲ませてしまった俺らのが悪いんだよ、世間的には」
「あ、その、それもだけど……」
「他に何かあるのか?」
「……その、あ……、いえ。えっと……その、そうだ、ベッド占領しちゃって……」
「ああ。それも仕方ないし、目が覚めてわざわざ俺をこっちに寝かせてくれたんだろ? ありがとうな」
「えっと、いいカッコしたいとこですが、そちらには先輩が多分トイレに起きた後に間違えてご自分で来られました」
「マジか。それで起こしちゃったとかならごめんな」
「本当にその、謝らないでください……謝るの、ほんっと俺なんで……。ほんっとに……」
そこまで? と智也が不思議に思うくらい、昌史はやたら恐縮し、反省しているようだった。
昨日の飲み会でうっかり昌史が酒を口にして酔ってしまったのは、先輩である自分たちにも責任がある。ただ関心のないことには潔いくらい関心のない亮人は智也と昌史をおいてさっさと先に帰ってしまったし、智也のさらに先輩である二人は女性でもあるため、どのみち昌史の介抱役としてはあまり適していない。
昌史の友人でもある伸行は車で来ていたので昌史も連れ帰ってもらえたらよかったのだが、昌史が完全に酔って寝てしまうより前にすでにもう先輩方を送るために車を出していたので、わざわざ電話で呼び戻すのもと諦めた。
一応起こしてみれば反応があったりするのだが、またすぐ眠るといった様子で埒が明かなく、智也は面倒になり自分の家へ連れ帰ることにした。昌史の家は知らないし、智也の家は飲んでいた場所から遠くなかったというのもある。タクシーに乗ってしまえばあっという間だった。
ワンメーターで申し訳ないと思いつつ、タクシーを降りてからはそろそろ本格的に眠っていそうな昌史を、以前サバイバルゲームにはまっていた時に覚えたファイヤーマンズキャリーという担ぎ方で運んだ。元は火災現場などで消防士が負傷した人を救出する際などに使用されていたらしい。意識不明の相手でも一人で運べるし、おまけに片手が自由になるため都合いい。
うつ伏せにした相手の両わきに手をやって抱え上げ、片方のわきの下に自分の首を差し入れてから肩に担ぎ上げるという方法だ。昌史は智也よりも背はあるが、全体的にごついわけではないので全然この方法で担げた。もしもっとあからさまにごつくてでかい相手だったなら、レンジャーロールのような少々アクロバティックな担ぎ方を、土の上ならまだしも道路でしなくてはいけなかったかもしれない。こちらは自分より重量のある相手でも遠心力を使って簡単に担げるが、前転するには場所的に少々抵抗あった。
タクシーを降りて自宅まですぐとはいえ、さすがに最近少々運動不足気味の智也にとって、昌史は結構な負荷だった。
酒はそこそこ強いが、ベッドまでようやく到達した時にはかなり息が切れていた。どう考えても全く起きる気配のない昌史にシャワーを浴びさせる余力はない。できれば風呂に入った状態で横たわって欲しいし、服も着替えさせたいところだ。しかし明日シーツを洗濯すればいいかと諦め、上着だけは脱がせた昌史を放置したまま、自分はシャワーを浴びに向かった。
何かいつも俺、損な役回りな気がするんだけど。
合コンへ行っても気づけば介抱役になることが多い。講義でチームを作り課題をこなすような時も、だいたいまとめ役になっている。もちろん自ら進んでやっていない。そんな犠牲精神は持ち合わせていないつもりだ。だというのに気づけば、というパターンが少なくない気がする。
おまけにテストプレイすれば俺が男のまま主人公で、こいつら攻略してく的なビジュアルになってるしな。
シャワーを終えて髪をタオルで拭きながら、ベッドへ横たわっている昌史の様子を見に来つつ微妙な顔になる。そして昌史はやはり起きる様子はない。
結局仕方なく、智也はソファーで眠ったはずだった。
「……勘違い? いや、俺酔ってないしな……」
怪訝に思いつつも、まあいいかと横たわったまま伸びする。夢の中で暖かい生き物に包まれるようにして抱きつかれていた気がする。とてもぬくぬくしていて、まだ春とはいえ肌寒い日も多いだけに心地よかった。
あの夢の生き物、何だったんだろな。でっかい犬? 熊じゃないわな。ぬくぬくする前に食われそう。いい感じの女の子が俺としては嬉しいけど、俺よりでかい女子か……、うん、包容力のある女子、悪くないな……。
先輩方二人が結構、いや、かなり強い女性たちだけに、優しくて包容力ある女性に包まれるように抱かれるのも悪くないと思える。
あー、人肌恋しいのかも。
高校の時つき合っていた人はいる。二年ほど続いたが、高校卒業と同時に別れた。服部 美賀(はっとり みか)という名前で、保育園の頃からの幼馴染でもある。高校までずっと同じ学校だったのもあり、何となくお互い運命だと思えたのか好きを履き違えてつき合った。それでもいい感じだったし不満はお互いなかったと思う。ただ、卒業後別々の進路になるとわかってから二人で考え、決めた。
そんな感じだから別れたとはいえ仲はいい。今でもたまに連絡を取ったりする。ただし、よりが戻ることはない。美賀にはすでに同棲を考えている彼氏がいる。
俺にはいないけどな、あれ以来、彼女。
何気にため息つきながら、智也はようやく起き上がった。そして目に入ってきたソファーに、固まったように正座している昌史がいることに気づき、無言のままビクッとなる。
「……っびっくりした。いたのか」
「……すみません」
「んあ? あー、ああ。酔ったことか? 仕方ないだろ、わざとじゃないんだし。むしろ未成年のお前に酒飲ませてしまった俺らのが悪いんだよ、世間的には」
「あ、その、それもだけど……」
「他に何かあるのか?」
「……その、あ……、いえ。えっと……その、そうだ、ベッド占領しちゃって……」
「ああ。それも仕方ないし、目が覚めてわざわざ俺をこっちに寝かせてくれたんだろ? ありがとうな」
「えっと、いいカッコしたいとこですが、そちらには先輩が多分トイレに起きた後に間違えてご自分で来られました」
「マジか。それで起こしちゃったとかならごめんな」
「本当にその、謝らないでください……謝るの、ほんっと俺なんで……。ほんっとに……」
そこまで? と智也が不思議に思うくらい、昌史はやたら恐縮し、反省しているようだった。
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