恋愛ゲームは続行中

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 亮人そっくりのクリス攻略を始めたが、クリスの妙に淡々とした話し方などまで亮人に似ており、つい笑ってしまう。時折亮人とやり取りしているみたいだとさえほんのり思ったりもした。

「このシナリオさあ、林くんが考えたんっすか? それとも外山さん?」
「私が考えたやつもあるし林くんが考えたのもあるよ。何で?」
「いや、だってアキにすげー似てるなって思って」
「まあ参考にしたし。うふふ、アキトモかあ」
「……そこ、変な呼び方しないでください」
「確かに私はあえて選ぶならマサトモ派だけど」
「そういうことじゃない……! かけ合わせて端折るなっつってんっすよ。もしくはキャラ名で呼んでくださいよ。俺らの名前じゃなくて」
「別にいいでしょ。そのほうがサークルメンバー内でも親しみやすいしわかりやすいんだし。っていうか佐久間くんは似てるんだとして、辻村くんは似てなかったの?」

 暖簾に腕押し、糠に釘とは本当にこのことだなと智也はため息ついた。

「ったく。イアンも辻村くんに似てましたよ。でも俺、クリスがアキに似てるって思うほど辻村くんのこと知らなかったし」

 プレイを始めた頃より今はもう少し昌史のことも知るようになった気はするし、何ならそこまで知らなくともプレイ当初に昌史が夢に出てきたわけだが、そんなことを今口にして望美たちを喜ばせる気はない。望美は美恵ほどBLを愛好しているわけではなさそうだが、嫌いではない時点で智也からすれば五十歩百歩だ。

「幼馴染BLも悪くないなあ、そう聞くと」
「そもそも俺らは本気でそういうんじゃないんで現実に持ち込まないでくださいよ。あと外山さんは男女ものの乙女ゲーが好きなんでしょ。だったら純粋に女主人公で楽しみましょうよ」
「それはそれ、これはこれ」
「そんなウチヨソ言い出すオカンみたいな……」

 呆れた顔していると、伸行が「俺も会話に入れてくださいよ」と入ってきた。相変わらず望美に全くそういう関心を持たれていないようだが、諦める気はさらさらないようでもある。

「そういえば林くんは自分に似たアンディのシナリオ、よく書けたな」
「ああそれ! いやー俺に似たキャラとかさすがに俺もわからないんで、アンディルートはほぼ望美先輩に任せてしまいました」
「あ、そうなんだ」

 へえ、と智也が頷いていると望美が楽しそうに微笑んできた。一見ゆるふわ系の見た目だけにかわいいが、中身を知っているので智也としてはほんわかできない。

「何すか、今の笑み」
「何でもないよ。あ、友だちの返信きた。私、そろそろ帰るね」
「えっ、待って望美先輩! 俺も一緒に……」
「一緒にって、私これから友だちと会うんだけど」
「お、送るんで! ほら、外は薄暗くなってきてるし」
「? 別にいらないけど」
「そんなぁ! 送らせて!」

 相変わらず全然これっぽっちも意識されていない伸行が少々不憫で、智也は「こいつうるさいから俺としても作業の邪魔だし、送らせたげてくださいよ外山さん」と助け舟を出す。

「えー? 別にいいけど。じゃあちょっとカバン取ってくるね」

 望美がロッカーへ向かうのを見てから、伸行が目を潤ませながら智也に抱きつきかねない勢いで礼を言ってきた。

「マジありがとうです智也先輩。邪魔って言われたのはさておき、ほんっと恩にきます」
「……まあ、がんばって」
「はい! あ、お礼には全然ならないんだけど心の準備的に」
「何の?」
「クリスルート終わったらアンディルートもするでしょ?」
「まあ、やらされるだろな」
「シナリオ、俺噛んでない分ね、多分アンディルートが一番居たたまれない内容だと思うんで、智也先輩もがんばってください」
「は? いや、何をがんばれと……って、そんな心の準備いらないんだけど!」
「へへ。じゃあ、俺もがんばってきます!」
「がんばるが違う……! はぁ。とりあえずお前はほんと、がんばれ」
「はい!」

 元気だけはいっちょ前といった感じの伸行は、嬉しそうに望美の後を追っていった。それを苦笑しながら見送ってから、智也は昨日自宅でプレイしていて少々気になっていた箇所のプログラム修正を続ける。それが終わると確認もかねて部室でゲームを少しプレイしていた。

「今は佐久間先輩のルートされてるんでしたっけ」
「っわ。辻村くん、いつからいたんだよ。来てたなら先に声かけてよ」

 突然ゲームのことを言われ、ちょうど修正箇所をプレイしていて集中していた智也は、結構びっくりしながら声がしたほうへ頭を上げた。

「すみません。何か集中されてるっぽかったから。でも全然気づかれなくてつい、声かけたくなって」
「まあいいけどさ。あとアキのルートじゃなくてクリスな。お前も自分に似た攻略キャラいんのにその辺受け入れすぎじゃないか?」
「当然ですよ」

 何が当然なんだと思ったが、口にする前に昌史が続けてきた。

「今、どこまでやってんですか」
「えっと、まあわりと好感度高くなってきてな。今まではアキに似すぎてて笑えるレベルだったけど、昨日くらいからクリスの話し方がやたら甘くてさ。絶対アキ、言わなさそうすぎてそれはそれで笑えるっつーか」
「……」

 笑いながら言えば、昌史は妙に真剣そうな顔を近づけてゲームの画面をじっと見てきた。ちょうど画面ではクリスが大福にチョコレートをかけたような、やたら甘いけど智也的に違和感しかないようなセリフを吐いているところだった。
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