12 / 20
12
しおりを挟む
翌日になると昨日のことが夢のようにも思えてくる。夢といっても「夢のようだ」という嬉しい感情ではなく、その言葉通りの意味だ。現実に起こったことのように思えない。もしかしたら本当に居眠りしている間に見た夢では? と考えてみたが、休日だった昨日に居眠りした記憶はない。
もしくは目覚めている状態で見る白昼夢か、と思ってみた。だがむしろ白昼夢のほうが何となく嫌だ。空想や妄想を映像として見たり、非現実的な幻想にふけっている状態を確か白昼夢と言うはずで、そうなると昌史に告白された上にキスされてしまった状況を智也が妄想したり幻想としてふけっている状態になってしまう。
ないだろ。ないわ。
ということで、やはり現実に起こったことなのだろう。となると昌史と顔を合わせることに妙な気まずさを覚えそうだ。実際何より気まずいのは昌史かもしれないが、言われてされたほうも十分気まずい。ただ、変に意識して避けてしまうのは何となくかわいそうな気がする。おそらく、泣きそうな顔していた昌史を思い出してしまうからだろう。
同情されんのも向こうにしてみたら嫌だろうけど、まあ無視するよりマシだよ、な……。
幸いというのだろうか、ファーストキスでもないため、そこまで憤りを感じはしないしトラウマにもなっていない。とはいえ告白はさておき、相手の許可なしにいきなりキスするのはルール違反だと智也は思う。何のルールだよと誰かに突っ込まれてもうまく説明しにくいが、何だろうか、マナー的なというのだろうか。
それくらいは文句言ってもいいのではと思ったが、結局言えなかった。多分昌史が明らかに落ち込んだ顔していたからだと思われる。
結局告白されたことなどに関して何も言えないまま、何も言われないまま数日が経った。何となく気まずいままだ。そんな中、明日は休みという放課後に突然、男子メンバーでの宅飲み話が出た。
持ちかけたのは伸行だ。せっかくサークル仲間だしというだけでなく、もっと親睦を深めることでさらにいいゲームができるのではといった内容を言われ、普段ならどうでもよさそうにしている亮人が珍しくその気になった。断る理由も特にないため、智也も了解する。場所は智也の家に即決まった。他は親元だが智也だけ一人暮らしだから、智也としても予想の範疇ではある。
それに、と智也は皆で自分の家まで向かいながら思った。
辻村くんといまだに何となく気まずい感じだしな。飲み会を機会に、今までみたいになれたらいいんだけど。
告白したのに今まで通りなど、昌史からすれば勝手な言い分かもしれない。だが男に興味は持てないし、それでもかわいい後輩だから避けたくもない。
帰宅途中にあるコンビニエンスストアで酒やジュース、食べ物を買い、家へ着くとそれらを並べ、さっそく宅飲みを開始した。
一見性格や好みなど皆それぞれバラバラそうではあるが、同じサークル仲間の上、一緒にゲームを作っているからだろうか。思っていた以上に会話も盛り上がり、飲み食いしながら楽しく過ごせた。未成年二人はちゃんとノンアルコール飲料を飲んでいる。昌史は元々酒が得意ではなさそうだし、伸行も酒が飲みたいというよりひたすらわいわい飲み食いするのが楽しいようで、健全で何よりだと思う。
他のサークルでは無理やりではないものの、盛り上がるため未成年でもこっそり酒を飲ませているところもあるようだ。
「ヤリサーって噂のあそこなんてわりと多いっぽいですよ」
「林もそこがよかったんじゃないのか」
「勘弁してくださいよ、亮人先輩。俺、これでも純情な青年なんですから。あとできれば童貞は望美先輩にもらって欲しい」
「お前童貞なの」
「いや、そこは優しい先輩としてさらっと流すとこっしょ。それに昌史だって童貞ですけど」
「まあどうでもいいけどな」
「ええぇ。聞き返しといて何っすかそれ」
「……っていうか俺のことまで言う必要あった?」
皆泊っていくつもりで来ているのもあり、ある程度時間が経ったら、ちょくちょく会話したり飲み食いを続けたりしながらもそれぞれわりと自由に過ごしだす。智也も休憩がてら部屋を移動してパソコンをつけた。そしてテストプレイのゲームを立ち上げる。とりあえず日課になっているのもあり、少しはしないと何となく気になってしまう。かなり見なれた、聞きなれたオープニングをスキップし、保存していた内容を開いた。
今攻略しているのは伸行にそっくりなキャラクター、アンディだ。明るく裏表のなさそうな雰囲気が、一番進めやすそうな気になる。
……でも林くんが言ってたしなあ。一番居たたまれない内容だって。
攻略はわりと進んだが、構え過ぎていたのもあるのだろう。恐れていたほど居たたまれなくはない。恐れていたほどは。
とりあえず直すべき箇所がないか、再確認が必要な箇所はないかと注意を払いながらゲームを進めた。
そろそろ最後の恋愛イベントが発生しそうだといったところで、智也は背後に人の気配を感じた。振り向くと昌史がいる。
「……いたのか」
「は、はい。今……」
顔がほんのり赤いのは気まずいからだろうか。少なくとも酒は口にしていないはずだと智也は何となく思う。
「後の二人は?」
「今、映画見てます。テレビつけたら深夜映画やってて……」
「お前は見ないの?」
「……ホラー映画で……」
「苦手なのか」
「……まあ」
まあ、と認めた時は気まずそうな昌史が少々仏頂面になる。
昌史が背後にいたことで少し緊張したものの、ホラー映画が苦手で逃げてきたのであろうイケメンを思うとほんわかした気持ちになった。
もしくは目覚めている状態で見る白昼夢か、と思ってみた。だがむしろ白昼夢のほうが何となく嫌だ。空想や妄想を映像として見たり、非現実的な幻想にふけっている状態を確か白昼夢と言うはずで、そうなると昌史に告白された上にキスされてしまった状況を智也が妄想したり幻想としてふけっている状態になってしまう。
ないだろ。ないわ。
ということで、やはり現実に起こったことなのだろう。となると昌史と顔を合わせることに妙な気まずさを覚えそうだ。実際何より気まずいのは昌史かもしれないが、言われてされたほうも十分気まずい。ただ、変に意識して避けてしまうのは何となくかわいそうな気がする。おそらく、泣きそうな顔していた昌史を思い出してしまうからだろう。
同情されんのも向こうにしてみたら嫌だろうけど、まあ無視するよりマシだよ、な……。
幸いというのだろうか、ファーストキスでもないため、そこまで憤りを感じはしないしトラウマにもなっていない。とはいえ告白はさておき、相手の許可なしにいきなりキスするのはルール違反だと智也は思う。何のルールだよと誰かに突っ込まれてもうまく説明しにくいが、何だろうか、マナー的なというのだろうか。
それくらいは文句言ってもいいのではと思ったが、結局言えなかった。多分昌史が明らかに落ち込んだ顔していたからだと思われる。
結局告白されたことなどに関して何も言えないまま、何も言われないまま数日が経った。何となく気まずいままだ。そんな中、明日は休みという放課後に突然、男子メンバーでの宅飲み話が出た。
持ちかけたのは伸行だ。せっかくサークル仲間だしというだけでなく、もっと親睦を深めることでさらにいいゲームができるのではといった内容を言われ、普段ならどうでもよさそうにしている亮人が珍しくその気になった。断る理由も特にないため、智也も了解する。場所は智也の家に即決まった。他は親元だが智也だけ一人暮らしだから、智也としても予想の範疇ではある。
それに、と智也は皆で自分の家まで向かいながら思った。
辻村くんといまだに何となく気まずい感じだしな。飲み会を機会に、今までみたいになれたらいいんだけど。
告白したのに今まで通りなど、昌史からすれば勝手な言い分かもしれない。だが男に興味は持てないし、それでもかわいい後輩だから避けたくもない。
帰宅途中にあるコンビニエンスストアで酒やジュース、食べ物を買い、家へ着くとそれらを並べ、さっそく宅飲みを開始した。
一見性格や好みなど皆それぞれバラバラそうではあるが、同じサークル仲間の上、一緒にゲームを作っているからだろうか。思っていた以上に会話も盛り上がり、飲み食いしながら楽しく過ごせた。未成年二人はちゃんとノンアルコール飲料を飲んでいる。昌史は元々酒が得意ではなさそうだし、伸行も酒が飲みたいというよりひたすらわいわい飲み食いするのが楽しいようで、健全で何よりだと思う。
他のサークルでは無理やりではないものの、盛り上がるため未成年でもこっそり酒を飲ませているところもあるようだ。
「ヤリサーって噂のあそこなんてわりと多いっぽいですよ」
「林もそこがよかったんじゃないのか」
「勘弁してくださいよ、亮人先輩。俺、これでも純情な青年なんですから。あとできれば童貞は望美先輩にもらって欲しい」
「お前童貞なの」
「いや、そこは優しい先輩としてさらっと流すとこっしょ。それに昌史だって童貞ですけど」
「まあどうでもいいけどな」
「ええぇ。聞き返しといて何っすかそれ」
「……っていうか俺のことまで言う必要あった?」
皆泊っていくつもりで来ているのもあり、ある程度時間が経ったら、ちょくちょく会話したり飲み食いを続けたりしながらもそれぞれわりと自由に過ごしだす。智也も休憩がてら部屋を移動してパソコンをつけた。そしてテストプレイのゲームを立ち上げる。とりあえず日課になっているのもあり、少しはしないと何となく気になってしまう。かなり見なれた、聞きなれたオープニングをスキップし、保存していた内容を開いた。
今攻略しているのは伸行にそっくりなキャラクター、アンディだ。明るく裏表のなさそうな雰囲気が、一番進めやすそうな気になる。
……でも林くんが言ってたしなあ。一番居たたまれない内容だって。
攻略はわりと進んだが、構え過ぎていたのもあるのだろう。恐れていたほど居たたまれなくはない。恐れていたほどは。
とりあえず直すべき箇所がないか、再確認が必要な箇所はないかと注意を払いながらゲームを進めた。
そろそろ最後の恋愛イベントが発生しそうだといったところで、智也は背後に人の気配を感じた。振り向くと昌史がいる。
「……いたのか」
「は、はい。今……」
顔がほんのり赤いのは気まずいからだろうか。少なくとも酒は口にしていないはずだと智也は何となく思う。
「後の二人は?」
「今、映画見てます。テレビつけたら深夜映画やってて……」
「お前は見ないの?」
「……ホラー映画で……」
「苦手なのか」
「……まあ」
まあ、と認めた時は気まずそうな昌史が少々仏頂面になる。
昌史が背後にいたことで少し緊張したものの、ホラー映画が苦手で逃げてきたのであろうイケメンを思うとほんわかした気持ちになった。
12
あなたにおすすめの小説
番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か
雪兎
BL
第二性が存在する世界。
Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。
しかし入学初日、彼の前に現れたのは――
幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。
成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。
だが湊だけが知っている。
彼が異常なほど執着深いことを。
「大丈夫、全部管理してあげる」
「君が困らないようにしてるだけだよ」
座席、時間割、交友関係、体調管理。
いつの間にか整えられていく環境。
逃げ場のない距離。
番を拒みたいΩと、手放す気のないα。
これは保護か、それとも束縛か。
閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。
路地裏の王子様と秘密のカフェ ―10年ぶりに再会した親友はトップアイドルでした―
たら昆布
BL
大学生の千秋がバイト帰りの路地裏で助けたのは、今をときめくアイドル『GALAXY』のセンター、レオだった。
以来、レオは変装して千秋の働くカフェへ毎日通い詰めるようになる。
「千秋に会うと疲れなんて全部消えちゃうんだ」
トップアイドルとは思えないほど素直に懐いてくるレオに、千秋は戸惑いながらも多忙な彼を支えたいと願うようになる。
しかし、千秋はまだ知らない。
レオが10年前に「また絶対会おう」と約束して別れた泣き虫な親友の玲央本人だということに。
入社1ヶ月のワンコ系男子が、知らずのうちに射止めたのはイケメン社長!?
monteri
BL
CM制作会社の新入社員、藤白純太は入社1ヶ月で教育係の先輩が過労で倒れたため、特別なクライアントの担当を引き継ぐことになる。
そのクライアントは、女子禁制ミーハー厳禁の芸能事務所だった。
主人公の無知で純なところに、翻弄されたり、骨抜きにされるイケメン社長と、何も知らない純太がドキドキするお話です。
※今回の表紙はAI生成です
※小説家になろうにも公開してます
王様の恋
うりぼう
BL
「惚れ薬は手に入るか?」
突然王に言われた一言。
王は惚れ薬を使ってでも手に入れたい人間がいるらしい。
ずっと王を見つめてきた幼馴染の側近と王の話。
※エセ王国
※エセファンタジー
※惚れ薬
※異世界トリップ表現が少しあります
記憶喪失のフリをしたあざといスパイですが、全部お見通しの皇帝陛下に「嘘の婚約者」として閉じ込められています
たら昆布
BL
処刑寸前のスパイが事故にあった後、記憶喪失のフリをして皇帝の婚約者だと偽る話
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる