恋愛ゲームは続行中

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 翌日になると昨日のことが夢のようにも思えてくる。夢といっても「夢のようだ」という嬉しい感情ではなく、その言葉通りの意味だ。現実に起こったことのように思えない。もしかしたら本当に居眠りしている間に見た夢では? と考えてみたが、休日だった昨日に居眠りした記憶はない。
 もしくは目覚めている状態で見る白昼夢か、と思ってみた。だがむしろ白昼夢のほうが何となく嫌だ。空想や妄想を映像として見たり、非現実的な幻想にふけっている状態を確か白昼夢と言うはずで、そうなると昌史に告白された上にキスされてしまった状況を智也が妄想したり幻想としてふけっている状態になってしまう。

 ないだろ。ないわ。

 ということで、やはり現実に起こったことなのだろう。となると昌史と顔を合わせることに妙な気まずさを覚えそうだ。実際何より気まずいのは昌史かもしれないが、言われてされたほうも十分気まずい。ただ、変に意識して避けてしまうのは何となくかわいそうな気がする。おそらく、泣きそうな顔していた昌史を思い出してしまうからだろう。

 同情されんのも向こうにしてみたら嫌だろうけど、まあ無視するよりマシだよ、な……。

 幸いというのだろうか、ファーストキスでもないため、そこまで憤りを感じはしないしトラウマにもなっていない。とはいえ告白はさておき、相手の許可なしにいきなりキスするのはルール違反だと智也は思う。何のルールだよと誰かに突っ込まれてもうまく説明しにくいが、何だろうか、マナー的なというのだろうか。
 それくらいは文句言ってもいいのではと思ったが、結局言えなかった。多分昌史が明らかに落ち込んだ顔していたからだと思われる。
 結局告白されたことなどに関して何も言えないまま、何も言われないまま数日が経った。何となく気まずいままだ。そんな中、明日は休みという放課後に突然、男子メンバーでの宅飲み話が出た。
 持ちかけたのは伸行だ。せっかくサークル仲間だしというだけでなく、もっと親睦を深めることでさらにいいゲームができるのではといった内容を言われ、普段ならどうでもよさそうにしている亮人が珍しくその気になった。断る理由も特にないため、智也も了解する。場所は智也の家に即決まった。他は親元だが智也だけ一人暮らしだから、智也としても予想の範疇ではある。
 それに、と智也は皆で自分の家まで向かいながら思った。

 辻村くんといまだに何となく気まずい感じだしな。飲み会を機会に、今までみたいになれたらいいんだけど。

 告白したのに今まで通りなど、昌史からすれば勝手な言い分かもしれない。だが男に興味は持てないし、それでもかわいい後輩だから避けたくもない。
 帰宅途中にあるコンビニエンスストアで酒やジュース、食べ物を買い、家へ着くとそれらを並べ、さっそく宅飲みを開始した。
 一見性格や好みなど皆それぞれバラバラそうではあるが、同じサークル仲間の上、一緒にゲームを作っているからだろうか。思っていた以上に会話も盛り上がり、飲み食いしながら楽しく過ごせた。未成年二人はちゃんとノンアルコール飲料を飲んでいる。昌史は元々酒が得意ではなさそうだし、伸行も酒が飲みたいというよりひたすらわいわい飲み食いするのが楽しいようで、健全で何よりだと思う。
 他のサークルでは無理やりではないものの、盛り上がるため未成年でもこっそり酒を飲ませているところもあるようだ。

「ヤリサーって噂のあそこなんてわりと多いっぽいですよ」
「林もそこがよかったんじゃないのか」
「勘弁してくださいよ、亮人先輩。俺、これでも純情な青年なんですから。あとできれば童貞は望美先輩にもらって欲しい」
「お前童貞なの」
「いや、そこは優しい先輩としてさらっと流すとこっしょ。それに昌史だって童貞ですけど」
「まあどうでもいいけどな」
「ええぇ。聞き返しといて何っすかそれ」
「……っていうか俺のことまで言う必要あった?」

 皆泊っていくつもりで来ているのもあり、ある程度時間が経ったら、ちょくちょく会話したり飲み食いを続けたりしながらもそれぞれわりと自由に過ごしだす。智也も休憩がてら部屋を移動してパソコンをつけた。そしてテストプレイのゲームを立ち上げる。とりあえず日課になっているのもあり、少しはしないと何となく気になってしまう。かなり見なれた、聞きなれたオープニングをスキップし、保存していた内容を開いた。
 今攻略しているのは伸行にそっくりなキャラクター、アンディだ。明るく裏表のなさそうな雰囲気が、一番進めやすそうな気になる。

 ……でも林くんが言ってたしなあ。一番居たたまれない内容だって。

 攻略はわりと進んだが、構え過ぎていたのもあるのだろう。恐れていたほど居たたまれなくはない。恐れていたほどは。
 とりあえず直すべき箇所がないか、再確認が必要な箇所はないかと注意を払いながらゲームを進めた。
 そろそろ最後の恋愛イベントが発生しそうだといったところで、智也は背後に人の気配を感じた。振り向くと昌史がいる。

「……いたのか」
「は、はい。今……」

 顔がほんのり赤いのは気まずいからだろうか。少なくとも酒は口にしていないはずだと智也は何となく思う。

「後の二人は?」
「今、映画見てます。テレビつけたら深夜映画やってて……」
「お前は見ないの?」
「……ホラー映画で……」
「苦手なのか」
「……まあ」

 まあ、と認めた時は気まずそうな昌史が少々仏頂面になる。
 昌史が背後にいたことで少し緊張したものの、ホラー映画が苦手で逃げてきたのであろうイケメンを思うとほんわかした気持ちになった。
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