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パソコン画面では、ちょうどアンディがいつもの軽そうな雰囲気とは打って変わり、真面目な様子で主人公への気持ちを言葉にしてきていた。自動でシナリオを進める設定にはしていないので、そのシーンのそのセリフで止まったままだ。
女子である先輩方曰く、いつもは軽いはずの青年が真剣な様子で話してくるギャップに萌えを感じるらしい。萌えはさすがに感じないものの、確かにギャップはあるし、結構な甘さを吐いてくる。これでハッピーエンドというだけでなくベストエンドを迎えると、それこそ見ていられない展開を味わわなければならないだろう。できればわざとでも選択肢は外したいところだ。
智也は「ホラー系駄目なのかあ」と続けながらキーボードを操作し、シナリオを進めた。すると智也似の主人公がその言葉に対し選択肢で返事する流れになった。ここはやっぱりこれかなと少し首を傾げつつ、またキーボードを叩いてから智也は昌史を見た。
「林くん似のアンディ、なかなかに甘いこと言ってくるな」
「伸行、告白する時はこんな感じで真面目に話すのかな」
「あー、どうだろな。でも自分に似ているらしいキャラクターは動かしにくいからって林くん、アンディルートは基本手掛けてないらしいよ」
「あ、そうなんですね」
あと伸行が実際告白する時にどういう風になるかは知らないが、少なくとも昌史がどう告白してくるかは先日体験している。泣きそうな顔で見つめてきながら、真っ赤になって好きだと言ってきた。全身から昌史の必死な様子が伝わってきた。昌史似のイアンもそういえば結構真摯な様子で懸命に気持ちを伝えてきていた。普段正統派イケメンが大型犬になった気がし、悪くはないと思った気がする。
まあ、ノーマルエンドだったけどな、それでも。
あれほど必死に気持ちを伝えてくる相手と、むしろどうなったら恋愛成就せず終われるのかと思いそうになったが、エンディングまでのいくつもの選択肢でミスするたび、イアンは好きだという気持ちに水が差されていたのだろう。
多分? 多分。
そんなことを思っていると、昌史と話しながら進めていた画面では恋愛イベント最終のスチルが出てきた。キスシーンだ。亮人似のクリスのキスシーンでも思ったが、イラストとはいえそれぞれメンバーそっくりなキャラクターとのキスシーンを見ると、居たたまれないというよりとても微妙な気持ちになる。
……でも辻村くん似のイアンとのキスシーンを見たらまた違った感想になるんだろうか。
イアンルートだけはノーマルエンドだったのもあり、そもそもキスシーンを見ていない。それでも親しそうな楽しそうなイラストを見て少々微妙な気持ちになったものだが、今もしキスシーンを見たらどう思うのだろうかと考えてしまう。
そんなことが浮かび、そして先日昌史にキスされたことも思い出してしまい、顔が熱くなった。
「……先輩」
そんな智也を見ていた様子の昌史が少し押し殺したような声で呼んできた。何、と振り返ろうとしたらその前にパソコン画面への視界を遮るかのように昌史は屈みこんで智也の顔を引き寄せ、キスしてきた。
咄嗟のことで頭が働かなかった智也だが、ワンクッション空けてからハッとなり「またお前……!」と昌史を引き離そうとした。だが昌史はますます手に力を入れ、引き寄せてくる。
部屋の向こうにはホラー映画を見ているらしいとはいえ亮人たちがいる。変な音を立てたり騒いだりしたら二人はこちらへ来てしまうかもしれない。そんな状況に焦りつつ、どうしたって興奮も加わってしまう。相手は同性だが、状況萌えとでもいうのだろうか。おかげでうっかり流されそうだった。多分このままもっと深いキスされたりあちこち触れられても抵抗らしい抵抗できないままだったかもしれない。だがその前に昌史が慌てて離してきた。
って、いやいやどういうこと俺。
ちょっとおかしくないかと思っていると「ごめんなさい」と殊勝に謝られた。そんな風に謝られると、この間といい今といい、許可なく勝手にキスしてくるなと叱りたいというのに、やりにくくなる。
「……はぁ。いいけど。いや、よくないけど。えっと、謝罪は受け取る。でもほんとお前な、恋人でも何でもない相手の許可もなしにいきなりキスとか、誰が相手だろうが駄目だからな……」
「はい……」
「っていうか何で今、してきたんだよ」
いやまあ、こないだ好きだと言われたけどさ。言われたけど、でも好きだからって今いきなりするような状況だったか?
智也も同じ男なので、気になる相手と二人きりだとキスくらいしたいと思う気持ちはわからないでもない。だが例えしたいと思っても、欲望に任せて相手の都合云々おかまいなしにするものではない。
「……篠原先輩が伸行とのキスシーン見て赤くなってたから」
「アンディな……。あと違……」
「てっきり伸行とのキス想像して赤くなったのかと思って……」
「いや、何でだよ。はぁ。お前は俺を何だと思ってんの。ゲイじゃないってこと差し置いて単に後輩だとしても、ただのゲームだってのにその後輩とのキス想像して俺が赤くなるってか。ない。ないから」
「ですよ、ね……。でも、じゃあ何で赤くなったんですか」
「それはおま……」
お前とのキスが浮かんで赤くなったと言おうとして慌てて口を閉じた。勘違いされそうだからというより何より、伸行も昌史も同じ条件の後輩だ。伸行とのことを想像して赤くなるのがあり得ないなら、昌史であっても同じはずだ。だというのに矛盾しかない。
女子である先輩方曰く、いつもは軽いはずの青年が真剣な様子で話してくるギャップに萌えを感じるらしい。萌えはさすがに感じないものの、確かにギャップはあるし、結構な甘さを吐いてくる。これでハッピーエンドというだけでなくベストエンドを迎えると、それこそ見ていられない展開を味わわなければならないだろう。できればわざとでも選択肢は外したいところだ。
智也は「ホラー系駄目なのかあ」と続けながらキーボードを操作し、シナリオを進めた。すると智也似の主人公がその言葉に対し選択肢で返事する流れになった。ここはやっぱりこれかなと少し首を傾げつつ、またキーボードを叩いてから智也は昌史を見た。
「林くん似のアンディ、なかなかに甘いこと言ってくるな」
「伸行、告白する時はこんな感じで真面目に話すのかな」
「あー、どうだろな。でも自分に似ているらしいキャラクターは動かしにくいからって林くん、アンディルートは基本手掛けてないらしいよ」
「あ、そうなんですね」
あと伸行が実際告白する時にどういう風になるかは知らないが、少なくとも昌史がどう告白してくるかは先日体験している。泣きそうな顔で見つめてきながら、真っ赤になって好きだと言ってきた。全身から昌史の必死な様子が伝わってきた。昌史似のイアンもそういえば結構真摯な様子で懸命に気持ちを伝えてきていた。普段正統派イケメンが大型犬になった気がし、悪くはないと思った気がする。
まあ、ノーマルエンドだったけどな、それでも。
あれほど必死に気持ちを伝えてくる相手と、むしろどうなったら恋愛成就せず終われるのかと思いそうになったが、エンディングまでのいくつもの選択肢でミスするたび、イアンは好きだという気持ちに水が差されていたのだろう。
多分? 多分。
そんなことを思っていると、昌史と話しながら進めていた画面では恋愛イベント最終のスチルが出てきた。キスシーンだ。亮人似のクリスのキスシーンでも思ったが、イラストとはいえそれぞれメンバーそっくりなキャラクターとのキスシーンを見ると、居たたまれないというよりとても微妙な気持ちになる。
……でも辻村くん似のイアンとのキスシーンを見たらまた違った感想になるんだろうか。
イアンルートだけはノーマルエンドだったのもあり、そもそもキスシーンを見ていない。それでも親しそうな楽しそうなイラストを見て少々微妙な気持ちになったものだが、今もしキスシーンを見たらどう思うのだろうかと考えてしまう。
そんなことが浮かび、そして先日昌史にキスされたことも思い出してしまい、顔が熱くなった。
「……先輩」
そんな智也を見ていた様子の昌史が少し押し殺したような声で呼んできた。何、と振り返ろうとしたらその前にパソコン画面への視界を遮るかのように昌史は屈みこんで智也の顔を引き寄せ、キスしてきた。
咄嗟のことで頭が働かなかった智也だが、ワンクッション空けてからハッとなり「またお前……!」と昌史を引き離そうとした。だが昌史はますます手に力を入れ、引き寄せてくる。
部屋の向こうにはホラー映画を見ているらしいとはいえ亮人たちがいる。変な音を立てたり騒いだりしたら二人はこちらへ来てしまうかもしれない。そんな状況に焦りつつ、どうしたって興奮も加わってしまう。相手は同性だが、状況萌えとでもいうのだろうか。おかげでうっかり流されそうだった。多分このままもっと深いキスされたりあちこち触れられても抵抗らしい抵抗できないままだったかもしれない。だがその前に昌史が慌てて離してきた。
って、いやいやどういうこと俺。
ちょっとおかしくないかと思っていると「ごめんなさい」と殊勝に謝られた。そんな風に謝られると、この間といい今といい、許可なく勝手にキスしてくるなと叱りたいというのに、やりにくくなる。
「……はぁ。いいけど。いや、よくないけど。えっと、謝罪は受け取る。でもほんとお前な、恋人でも何でもない相手の許可もなしにいきなりキスとか、誰が相手だろうが駄目だからな……」
「はい……」
「っていうか何で今、してきたんだよ」
いやまあ、こないだ好きだと言われたけどさ。言われたけど、でも好きだからって今いきなりするような状況だったか?
智也も同じ男なので、気になる相手と二人きりだとキスくらいしたいと思う気持ちはわからないでもない。だが例えしたいと思っても、欲望に任せて相手の都合云々おかまいなしにするものではない。
「……篠原先輩が伸行とのキスシーン見て赤くなってたから」
「アンディな……。あと違……」
「てっきり伸行とのキス想像して赤くなったのかと思って……」
「いや、何でだよ。はぁ。お前は俺を何だと思ってんの。ゲイじゃないってこと差し置いて単に後輩だとしても、ただのゲームだってのにその後輩とのキス想像して俺が赤くなるってか。ない。ないから」
「ですよ、ね……。でも、じゃあ何で赤くなったんですか」
「それはおま……」
お前とのキスが浮かんで赤くなったと言おうとして慌てて口を閉じた。勘違いされそうだからというより何より、伸行も昌史も同じ条件の後輩だ。伸行とのことを想像して赤くなるのがあり得ないなら、昌史であっても同じはずだ。だというのに矛盾しかない。
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