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店に入る前から、昌史が何となく悲しそうというか元気ない気はしていた。
そういえば俺が、ちょうど話したいことあったって言ったら悲しそうな顔したように見えたけど……もしかして今の話からして、俺がこいつを振るために話あるって言ったと勘違いしたのかな。
「えっと……辻村くん。俺、な?」
とりあえず話を切り出さないとと智也が口を開くと、昌史は肩をびくりと小さく震わせ緊張の面持ちになる。やはり勘違いしてそうだ。まずその勘違いから否定するべきだろうか。ただ、智也は肝心な時にうまく言える自信はない。ないからこそ、ここ数日悩んできた。だから考えていた通り順序立てて自分の気持ちを話すほうが伝わりやすいのではないかとも思う。
「えっと……その、な」
結局どう話そうかと少々逡巡してしまったようだ。昌史が「待って……」と俯き気味で手を上げて智也を止めてきた。下を少し向いているからはっきり見えないが、何となく泣きそうな顔をしている気がする。
「ちゃんと言葉にされて振られる覚悟も……何とか、決めるって言ったとこ、ですけど……やっぱりつらくて……」
自分がうまく話せないせいだとは思うものの、勘違いしている昌史に対し智也は大きなため息ついた。すると昌史の肩がまた小さく震えたのがわかる。
「……おい、出るぞ」
「え?」
戸惑っている昌史の手をつかみ、智也は席を立った。そのままレジまで向かい、全額を支払う。後ろで昌史が「俺も、あの」と支払いたそうにわたわたしていることに気づいていたが、面倒なので無視した。そして店を出ると、相変わらず戸惑っている昌史を問答無用といった強引さで智也は自分の自宅へ連れていく。
埒が明かない。順序立ててなどと言っているどころではない。玄関まで入りドアを閉めたところで智也は振り返って昌史を見上げた。
「せ、先輩? あの……一体……」
戸惑いを通り越してパニックにも近い様子の昌史を引き寄せ、智也は自分からキスした。唇が離れると昌史は慌てて智也から顔を離し、手の甲で口辺りを覆っている。顔は真っ赤だ。
「な、何で」
「これでも俺がお前振るって思う?」
そう言うと、智也はもう一度、今度は少し深めのキスを仕掛けた。それでもまだ少し棒立ちだった昌史だが、途中から智也を抱きしめ返してくると、さらにキスを深めてきた。しばらく二人でお互いキスしあう。狭い玄関で何度も何度も唇を交わし、舌を絡め、食べつくす勢いでむさぼりあった。
ようやく離れると、さすがに慣れないことをしすぎたのか足に力が入らなく、智也はその場に崩れ落ちそうになった。
「せんぱっ」
だが慌てて昌史が抱えてくれる。
「い……! えっと、大丈夫?」
「あ、あ。ありがとう。何か力、入らなくて」
「あ、は。でもうん、俺も。……えっと、ちゃんと話したい、けどとりあえず上がっていいです、か?」
「おう」
靴も脱いでいなかったことに気づき、智也は昌史に支えてもらっているような状態のまま靴を脱いだ。そして部屋に上がったものの、正直なところ話すよりキスの続きがしたいと思う。どうせなら先ほどの勢いのまま部屋に転がり込めばよかったとさえ思った。昌史に支えられている部分が熱い。そっと触れているだけだというのに、自分の意識のほぼ大半が昌史の手のひらや指に行っている気がする。
「は、ぁ……」
つい息が漏れた。その際に支えてくれている手がぴくりと反応した気がしたが、昌史が何も言わず支えてくれたまま誘導してくれたおかげで、転がり込んで絡み合うこともなく智也はコーヒーテーブルのそばで座っているし、少々冷静になれた気もする。一呼吸というのはやはり大事なのだなと思う。なし崩しでそういうことする前に、やはりしっかり伝えなくては駄目だと今はちゃんと思えている。
「篠原先輩……」
「俺に話させて」
「は、い」
「俺、さ、コミュ障ってわけじゃないけど、でもあんま口、うまくない」
「そ、うですか?」
「うん。で、お前の気持ち知ってから、えっと、じわじわ、多分じわじわ俺もお前が気になって仕方なくなってった」
「……」
「で、ようやく自覚した。俺も……辻村くんが好きだって」
「先輩……」
「お前の気持ち、知ってるわけだろ? だから俺は辻村くんがすごく勇気出してくれた半分以上も勇気なんていらなかったはずなのに、いつ、どう伝えていいかわからなくて……情けないんだけど」
「い、いえ! そんな。情けないのは俺です。先輩のこと思いやれず自分の気持ち押しつけるようなことしたくせに、先輩が言葉にして振ってくるのだって思うと泣きそうだった」
「あー、まあそれは確かに情けないけど」
ついそう口に出てしまい、昌史が地味に落ち込んでいる。
「あ、悪い」
「……いえ。本当のことなので」
「でも、な。普段お前って周りからすごく好かれてるし頼られたりもしてる。そんなお前が俺に振られるかもって思ったら泣きそうになるの、正直ちょっと何だろな、うれしい? うん、うれしい気がする」
うんうんと頷くと、智也は昌史に笑いかけた。
「あと俺もさっき辻村くんの許可なくいきなりキスしたしな。悪い、口うまくないからもう行動に出たほうがはやいかなって。でも辻村くんだってしてきたし、おあいこな」
すると昌史がぎゅっと智也を抱きしめてきた。
そういえば俺が、ちょうど話したいことあったって言ったら悲しそうな顔したように見えたけど……もしかして今の話からして、俺がこいつを振るために話あるって言ったと勘違いしたのかな。
「えっと……辻村くん。俺、な?」
とりあえず話を切り出さないとと智也が口を開くと、昌史は肩をびくりと小さく震わせ緊張の面持ちになる。やはり勘違いしてそうだ。まずその勘違いから否定するべきだろうか。ただ、智也は肝心な時にうまく言える自信はない。ないからこそ、ここ数日悩んできた。だから考えていた通り順序立てて自分の気持ちを話すほうが伝わりやすいのではないかとも思う。
「えっと……その、な」
結局どう話そうかと少々逡巡してしまったようだ。昌史が「待って……」と俯き気味で手を上げて智也を止めてきた。下を少し向いているからはっきり見えないが、何となく泣きそうな顔をしている気がする。
「ちゃんと言葉にされて振られる覚悟も……何とか、決めるって言ったとこ、ですけど……やっぱりつらくて……」
自分がうまく話せないせいだとは思うものの、勘違いしている昌史に対し智也は大きなため息ついた。すると昌史の肩がまた小さく震えたのがわかる。
「……おい、出るぞ」
「え?」
戸惑っている昌史の手をつかみ、智也は席を立った。そのままレジまで向かい、全額を支払う。後ろで昌史が「俺も、あの」と支払いたそうにわたわたしていることに気づいていたが、面倒なので無視した。そして店を出ると、相変わらず戸惑っている昌史を問答無用といった強引さで智也は自分の自宅へ連れていく。
埒が明かない。順序立ててなどと言っているどころではない。玄関まで入りドアを閉めたところで智也は振り返って昌史を見上げた。
「せ、先輩? あの……一体……」
戸惑いを通り越してパニックにも近い様子の昌史を引き寄せ、智也は自分からキスした。唇が離れると昌史は慌てて智也から顔を離し、手の甲で口辺りを覆っている。顔は真っ赤だ。
「な、何で」
「これでも俺がお前振るって思う?」
そう言うと、智也はもう一度、今度は少し深めのキスを仕掛けた。それでもまだ少し棒立ちだった昌史だが、途中から智也を抱きしめ返してくると、さらにキスを深めてきた。しばらく二人でお互いキスしあう。狭い玄関で何度も何度も唇を交わし、舌を絡め、食べつくす勢いでむさぼりあった。
ようやく離れると、さすがに慣れないことをしすぎたのか足に力が入らなく、智也はその場に崩れ落ちそうになった。
「せんぱっ」
だが慌てて昌史が抱えてくれる。
「い……! えっと、大丈夫?」
「あ、あ。ありがとう。何か力、入らなくて」
「あ、は。でもうん、俺も。……えっと、ちゃんと話したい、けどとりあえず上がっていいです、か?」
「おう」
靴も脱いでいなかったことに気づき、智也は昌史に支えてもらっているような状態のまま靴を脱いだ。そして部屋に上がったものの、正直なところ話すよりキスの続きがしたいと思う。どうせなら先ほどの勢いのまま部屋に転がり込めばよかったとさえ思った。昌史に支えられている部分が熱い。そっと触れているだけだというのに、自分の意識のほぼ大半が昌史の手のひらや指に行っている気がする。
「は、ぁ……」
つい息が漏れた。その際に支えてくれている手がぴくりと反応した気がしたが、昌史が何も言わず支えてくれたまま誘導してくれたおかげで、転がり込んで絡み合うこともなく智也はコーヒーテーブルのそばで座っているし、少々冷静になれた気もする。一呼吸というのはやはり大事なのだなと思う。なし崩しでそういうことする前に、やはりしっかり伝えなくては駄目だと今はちゃんと思えている。
「篠原先輩……」
「俺に話させて」
「は、い」
「俺、さ、コミュ障ってわけじゃないけど、でもあんま口、うまくない」
「そ、うですか?」
「うん。で、お前の気持ち知ってから、えっと、じわじわ、多分じわじわ俺もお前が気になって仕方なくなってった」
「……」
「で、ようやく自覚した。俺も……辻村くんが好きだって」
「先輩……」
「お前の気持ち、知ってるわけだろ? だから俺は辻村くんがすごく勇気出してくれた半分以上も勇気なんていらなかったはずなのに、いつ、どう伝えていいかわからなくて……情けないんだけど」
「い、いえ! そんな。情けないのは俺です。先輩のこと思いやれず自分の気持ち押しつけるようなことしたくせに、先輩が言葉にして振ってくるのだって思うと泣きそうだった」
「あー、まあそれは確かに情けないけど」
ついそう口に出てしまい、昌史が地味に落ち込んでいる。
「あ、悪い」
「……いえ。本当のことなので」
「でも、な。普段お前って周りからすごく好かれてるし頼られたりもしてる。そんなお前が俺に振られるかもって思ったら泣きそうになるの、正直ちょっと何だろな、うれしい? うん、うれしい気がする」
うんうんと頷くと、智也は昌史に笑いかけた。
「あと俺もさっき辻村くんの許可なくいきなりキスしたしな。悪い、口うまくないからもう行動に出たほうがはやいかなって。でも辻村くんだってしてきたし、おあいこな」
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