恋愛ゲームは続行中

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「次はホラゲ作りましょうよ」

 伸行がにこにこと言った途端、昌史が顔をそらしたことに気づき、智也は口元が緩むのを感じた。
 智也は知っているものの、基本的に他の皆にはホラーが苦手だと内緒にしているらしい。そういうところもかわいくてならない。

「本当は智也くんにも内緒にしたかったっていうか、誰より智也くんにばらしたくなかったんですけどね」

 だが以前智也の家で男子会した時、別の部屋に引っ込んだ智也と二人きりになるのに格好の口実だったため、秤にかけてしぶしぶ認めることにしたのだという。そういえば「ホラー映画で」と口にした昌史に「苦手なのか」と智也が聞けば少し仏頂面で「まあ」と答えていた。

「ふは」
「笑わないでくださいよ」
「悪い悪い。でもあの時、イケメンがホラー映画苦手で逃げてきたんだって思ってほんわかしてたんだよな俺」
「嬉しいような嬉しくないような……」
「嬉しがれよ。今もかわいいって思ってる」
「っもう、ほんと智也くんそういうとこ。あとかわいいは俺、ちょっと嬉しいけどわりと嬉しくない」
「どっちだよ」

 相変わらず顔を真っ赤にする昌史に智也は笑いながらキスした。
 ちなみにずっと「篠原先輩」と呼んでいた昌史だが、ある日とても言いにくそうに「名前で呼んでもいいですか」と切り出してきた。

「全然いいよ。じゃあ俺も辻村くんのこと、マサって呼ぼうかな」
「……マサ呼びは篠原先輩が佐久間先輩をアキって呼ぶのに何か似てるから微妙です」
「何だよそれ。でも昌史って長いだろ」
「そうですか?」
「うん。じゃあ、ふみ。あとくん、つけたら差別化できるぞ、なあ、ふみくん」
「は、ぅ」

 また変な呼吸音が聞こえてきた。昌史いわく「心臓を打ち抜かれた」らしい。たまによくわからない。そして昌史も智也に対して「くん」をつけることにしたようだ。ただしばらくは真っ赤になって中々ちゃんと呼んでくれそうになかった。
 名前でもそうだが、なぜか昌史は亮人に対して変な嫉妬心があるらしい。それに対して亮人は「お前らがつき合う前からあいつ、俺に対してやたら敵対心持ってたぞ」と言っていた。

「マジで」
「一度、お前に対して特別な感情持ってるんじゃないかって言われたこともある」
「……わあ。で、お前は何て?」
「さあ、って」

 昌史に対して意地悪しているのではなく、智也との関係を歪んで見られようが心底どうでもいいと思っているからこそできる返答だろう。そしてそういう態度は亮人をよく知っている智也なら「どうでもいいからだな」とすぐわかるが、案外嫉妬するタイプらしい昌史にとっては火に油だったのだろう。おかげさまでいまだに変な嫉妬心がなくならない。
 ちなみにあまりに昌史があからさまなので亮人は智也たちがつき合っていることを知っている。智也も亮人にバレるのはそんなに抵抗なかった。多分亮人の性格によるのだろう。打ち明けた時も「へえ」で終わった。
 サークルの先輩二人にはいまだに打ち明けていないし昌史にも「あの二人は面倒そうだからあまり出さないで」とは言っている。ただそろそろ薄々気づかれているような気がしないでもない。あと気づいてわかって言っているのか、単に勝手に餌にされているのか、この間美恵からろくでもないことを言われた。

「篠原くんと佐久間くんと辻村くんの三角関係が前から熱かったんだけど、最近はもう3Pでいいかなって」
「……恐ろしいことさらっと言わんでくださいよ……」
「何で。すごく最高だと思うよ。私3Pはわりと王道派でさ。攻め一人受け二人や間にリバ入れるより、攻め二人受け一人がいいなあ。私はわりと平凡受け好きだし、篠原くん受け、どうかな」
「どうかなもへったくれもないんですよ却下」

 昌史との関係では実際「ウケ」とやらの役割ではあるのだが。あと何気にひどいこと言われている気がした。もしかしなくても、はっきり「平凡」だと言われたのではないだろうか。

「えー。ホラゲより乙女ゲーじゃない?」
「乙女ゲーはもう作ったじゃないですか。今度こそRPG……」
「乙女ゲーで、今度はさ、学園ものがいい。あと選択男子にケモミミ男子入れて」

 言いかけた智也の意見はさらりとスルーされた。仕方なく「何で学園ものでケモミミ生えてんだよ……」と呟いておく。
 ホラーゲームがいいと提案してきた伸行は「ケモミミ学園ものもいっすね」と早くも望美に迎合している。せっかく重みあるストーリーやホラー系が得意だというのに、今回もどこにも生かせそうにないだろう。ちなみに伸行の今のヘアスタイルはツーブロックでセンターパートに無造作パーマ、そしてレッド系カラーだ。どことなく某星王子を彷彿とさせる。智也は伸行に対して、ケモミミだけは生やすなよとたまに心の中で呟いているが、今も呟いておいた。
 作っていたゲームだが、フリーゲーム部門のコンテストはそこそこいいところまでいったものの、上位三組には組み込まれなかった。だが皆それぞれ楽しかったらしく、こうして次目指してとりあえず話し合っているところだったりする。
 智也も、様々な意味できっかけをもらったようなものである今回のゲーム制作はとても忘れがたい思い出になった。

「智也くん、もうプログラミング始めてるんですか」

 家でパソコンをいじっていると、合鍵を使って入ってきた昌史が少し驚いたように口にしながら近づいてきた。智也は振り返って頷く。

「まあ、まだほんの齧りくらいだけどな」

 そして最近ようやく少し減ってきたはずだというのに昌史がまた真っ赤になって自分を見ていることに気づく。

「何?」
「眼鏡……」
「あ? あれ? お前の前で眼鏡かけたことなかった? 俺さ、コンタクトしてないけど、わりと視力悪いほうでさ。パソコン作業とか勉強する時はけっこうかけたりしてるぞ」
「……知ってる」
「ん?」
「中学の時、智也くんがかけてたの見かけて……妙にドキドキしたの今でもよく覚えてる。その日は一日幸せだったんです」
「おおげさだな」
「そうでもないですよ。あと普段かけてないじゃないですか。だから余計ギャップにやられるっていうか……とりあえず堪らないです」
「堪らないって……。何だよもう……」
「ギャップといえば、智也くんの綺麗な体つきもほんっと堪らない」
「体褒めてくれてんだろけど、ギャップってどういうことだよ」
「すごく好きってことです」
「超訳すぎない?」

 昌史はいつの間にかスイッチが入っていたみたいで、気づけばそのまま押し倒されていた。最近は正直昌史とセックスするのが最高に気持ちよくなっているせいで、智也としても異存はない。

「ベストエンド後の極上ガチャってとこかな」
「ゲームに例えんの、好きですね」

 二人はお互い笑いながらとろけるようなキスを続けた。
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