闇に光を

Guidepost

文字の大きさ
18 / 20

18話

しおりを挟む
 自分の部屋に引っ込んだ後、蒼羽はベッドに突っ伏した。

 やべぇ……嬉しすぎんのと怖すぎんので心臓潰れる。

 実際、嬉しくて仕方がない。唯翔が中学生になった頃から好きだったのだ。
 親がよく「ほんのウン年前に」などと口にしているが、蒼羽からすれば数年間はほんの、ではない。もうずっとこの気持ちを抱えて生きている気がする程度には長い。
 しかも弟と両思いになれるなんて、思いもよらなかった。そう、怖いのも相手が弟だからだ。
 覚悟は決めたつもりだし、責任はすべて負う勢いで受け入れた。何の責任かともし問われても上手く説明できないが、ある意味何もかもに対してだろうか。
 それでも怖いものは怖い。気軽な恋愛ではない。世間にバレたら非難される関係だろうし、何よりも親に申し訳ない。
 自分たちの子どもだってもう持てない。もちろん先ほどのことで永遠の愛を誓ったわけではないが、すぐに気が変わるような思いなら蒼羽だけでなく唯翔も打ち明けやしないだろう。
 色んなものを背負う恋愛が怖くないわけがない。
 ただ、それでもやはり最終的に蒼羽はとても幸せな思いを噛みしめていた。
 結局その日はお互い、多少ギクシャクしつつもそれ以上そのことで話す機会はなかった。夜、寝る前に唯翔の部屋へ行こうかと悩んだが止めた。多分そのまま何かしてしまいそうだ。さすがに親がいる時にはキスすら蒼羽は抵抗がある。
 何かしてしまいそうと言えば、と自室でエアコンのタイマーをかけた後にひたすらベッドに突っ伏していた蒼羽は寝返りを打ち、思う。

 ……食いたいって、どういうこと?

 唯翔がさらりと発した言葉を聞いた時は内心動揺していた。

「取って食うのは俺がしたい」

 唯翔の言葉を脳内で繰り返す。

「俺が兄さんの隅から隅まで食べるから、兄さんは俺に甘えて……」

 それって、どういう意味よ。

 聞いた時も恐らく赤くなっていただろう顔がまた熱くなる。あの時は茶化すように「お前、ほんとにゆい? 俺の弟?」などと聞いたが、今言われても同じことを聞いてしまいそうだ。
 蒼羽からすればセックスのことを言っているようにしか思えないが、唯翔のことだ。そこまで考えているのではないかもしれない。
 それでもあの言葉は体の芯に響いた。怪訝そうに首を傾げているのもかわいかった。

「あー、マジゆいかわいい……」

 思わず手が股間へ伸びる。いつもより達するのも早かった。
 でも、とティッシュで拭きながら蒼羽も首を傾げる。もし深い意味なく言ってたとしても、無意識だとしても、あれはそういう意味になるんじゃないのか。

「……やっぱ俺が女役すべきなんかなー」

 両思いとなっても兄弟だから怖い、などと考えているくせにどうしたって発想はそこへ行ってしまう。

 仕方ねーよな、だって高校生だぞ。ちんこと脳が直結してる高校生の性欲どーしよーもねーだろ。

 自分に言い訳しつつ、蒼羽は携帯電話でネット検索する。

「……うわ……」

 ヒットしてくる情報に引きつつも熱心に調べ続けた。
 今までも「もしゆいとならどっちだろう」と抜くネタを考える際に疑問に思ったことはあるが、現実に付き合えると思っていなかったのでちゃんと調べたことはなかった。

 ……マジかよ……こんなのやっぱゆいにさせらんねーだろ……。

 下準備から拡張、行為中のことまでことごとく大変さしか感じない。

 決まりだな、女役は俺だわ。

 少し、いや結構無理だろと思いつつも好奇心もあるにはある。

 通販……あ、ここなら俺も買えそ。ついでにゴムも頼んどくか。コンビニで買ってたらダチに見つかった時めんどい。

 今が夏休みでよかったと、午前中着でローションなどを申し込んだ。これなら親に見られることはないだろう。
 そして数日後、仕事へ行っている親には見つからなかったが唯翔に見られた。お約束かよと自分とそして、とばっちりな配達員に突っ込みたい。無意識に睨んでいたのか配達員はそそくさと帰って行った。

「何それ」

 付き合うとなって数日。唯翔はとりあえず自分から話しかけてくれるようにはなった。彼氏としてそこは喜ぶところではないかもしれないが、微妙に避けられていた身としては十二分に嬉しい。
 だが今は嬉しくない。

 密かに自主練するためにこっそり受け取るつもりだったってのに何でお前そこにいんの?

 同居のネックか。兄弟での恋愛の大変さを微妙なところで蒼羽は噛みしめた。

「ネットショッピング」 

 うふ、と笑みを浮かべて答えると胡散臭い顔をされた。解せない。

「そこは俺の笑顔見て照れるとこだろ」
「うーん……。っていうか会社、見えたんだけど……そこってアダルト系じゃないの」
「は? つか何でそれをゆいが知ってんの……?」

 俺のかわいいゆいがどうした。

「……別に」
「いや、そこは説明いるだろ」
「……それ、何か教えてくれんなら言う」
「ずりぃだろ!」
「どこが」
「……えっと、じゃあ……うん……口で言うの、なんか嫌だから開けるわ……」

 見られたくはないが、何故唯翔が販売元の会社を知っているのか気になりすぎた。くっ、と羞恥と自分の残念さを堪えつつ包装を解き、箱を開けた。

「……わぁ」

 唯翔が抑揚のない声というか棒読みで反応してくる。見ると目線はローションやコンドームではなくアナルプラグに行っている。

 ……ん? つか、これ見て普通アナルプラグだって気づかなくね?

 少なくとも蒼羽は注文する時に初めて見た。ディルドの存在くらいは知っていたが、プラグは下手したら変わった形のおしゃぶりくらいにしか見えない。

「え、待って、ゆい、お前これ見て微妙な顔したよな? 知ってんの? ねえ、知ってんの? 俺のかわいい弟がこんなの、知ってんの?」
「うるさいし、買ったやつが言うなよ……。会社知ってんのも俺もその……ど、どうしたらいいかわからなくて最近色々調べて、て……」

 俺と一緒かよ……! ああ、でもあのゆいが? やっぱりかわいい。

 蒼羽はプラグを握りしめつつしみじみ思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

無愛想な氷の貴公子は臆病な僕だけを逃さない~十年の片想いが溶かされるまで~

たら昆布
BL
執着ヤンデレ攻め×一途受け

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜

紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。 ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。 そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

魔法学校の城に囚われている想い人♡を救い出して結婚したい天才有能美形魔術師(強火執着)の話

ぱふぇ
BL
名門魔法学校を首席で卒業し、若くして国家機関のエースに上り詰めた天才魔術師パドリグ・ウインズロー(26歳)。顔よし、頭脳よし、キャリアよし! さぞかしおモテになるんでしょう? ええ、モテますとも。でも問題がある。十年越しの想い人に、いまだに振り向いてもらえないのだ。そんな片思い相手は学生時代の恩師・ハウベオル先生(48歳屈強男性)。無愛想で不器用、そしてある事情から、魔法学校の城から一歩も出られない身の上。先生を外の世界に連れ出すまで、全力求婚は止まらない! 26歳魔術師(元生徒)×48歳魔術師(元教師)

処理中です...