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18話
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自分の部屋に引っ込んだ後、蒼羽はベッドに突っ伏した。
やべぇ……嬉しすぎんのと怖すぎんので心臓潰れる。
実際、嬉しくて仕方がない。唯翔が中学生になった頃から好きだったのだ。
親がよく「ほんのウン年前に」などと口にしているが、蒼羽からすれば数年間はほんの、ではない。もうずっとこの気持ちを抱えて生きている気がする程度には長い。
しかも弟と両思いになれるなんて、思いもよらなかった。そう、怖いのも相手が弟だからだ。
覚悟は決めたつもりだし、責任はすべて負う勢いで受け入れた。何の責任かともし問われても上手く説明できないが、ある意味何もかもに対してだろうか。
それでも怖いものは怖い。気軽な恋愛ではない。世間にバレたら非難される関係だろうし、何よりも親に申し訳ない。
自分たちの子どもだってもう持てない。もちろん先ほどのことで永遠の愛を誓ったわけではないが、すぐに気が変わるような思いなら蒼羽だけでなく唯翔も打ち明けやしないだろう。
色んなものを背負う恋愛が怖くないわけがない。
ただ、それでもやはり最終的に蒼羽はとても幸せな思いを噛みしめていた。
結局その日はお互い、多少ギクシャクしつつもそれ以上そのことで話す機会はなかった。夜、寝る前に唯翔の部屋へ行こうかと悩んだが止めた。多分そのまま何かしてしまいそうだ。さすがに親がいる時にはキスすら蒼羽は抵抗がある。
何かしてしまいそうと言えば、と自室でエアコンのタイマーをかけた後にひたすらベッドに突っ伏していた蒼羽は寝返りを打ち、思う。
……食いたいって、どういうこと?
唯翔がさらりと発した言葉を聞いた時は内心動揺していた。
「取って食うのは俺がしたい」
唯翔の言葉を脳内で繰り返す。
「俺が兄さんの隅から隅まで食べるから、兄さんは俺に甘えて……」
それって、どういう意味よ。
聞いた時も恐らく赤くなっていただろう顔がまた熱くなる。あの時は茶化すように「お前、ほんとにゆい? 俺の弟?」などと聞いたが、今言われても同じことを聞いてしまいそうだ。
蒼羽からすればセックスのことを言っているようにしか思えないが、唯翔のことだ。そこまで考えているのではないかもしれない。
それでもあの言葉は体の芯に響いた。怪訝そうに首を傾げているのもかわいかった。
「あー、マジゆいかわいい……」
思わず手が股間へ伸びる。いつもより達するのも早かった。
でも、とティッシュで拭きながら蒼羽も首を傾げる。もし深い意味なく言ってたとしても、無意識だとしても、あれはそういう意味になるんじゃないのか。
「……やっぱ俺が女役すべきなんかなー」
両思いとなっても兄弟だから怖い、などと考えているくせにどうしたって発想はそこへ行ってしまう。
仕方ねーよな、だって高校生だぞ。ちんこと脳が直結してる高校生の性欲どーしよーもねーだろ。
自分に言い訳しつつ、蒼羽は携帯電話でネット検索する。
「……うわ……」
ヒットしてくる情報に引きつつも熱心に調べ続けた。
今までも「もしゆいとならどっちだろう」と抜くネタを考える際に疑問に思ったことはあるが、現実に付き合えると思っていなかったのでちゃんと調べたことはなかった。
……マジかよ……こんなのやっぱゆいにさせらんねーだろ……。
下準備から拡張、行為中のことまでことごとく大変さしか感じない。
決まりだな、女役は俺だわ。
少し、いや結構無理だろと思いつつも好奇心もあるにはある。
通販……あ、ここなら俺も買えそ。ついでにゴムも頼んどくか。コンビニで買ってたらダチに見つかった時めんどい。
今が夏休みでよかったと、午前中着でローションなどを申し込んだ。これなら親に見られることはないだろう。
そして数日後、仕事へ行っている親には見つからなかったが唯翔に見られた。お約束かよと自分とそして、とばっちりな配達員に突っ込みたい。無意識に睨んでいたのか配達員はそそくさと帰って行った。
「何それ」
付き合うとなって数日。唯翔はとりあえず自分から話しかけてくれるようにはなった。彼氏としてそこは喜ぶところではないかもしれないが、微妙に避けられていた身としては十二分に嬉しい。
だが今は嬉しくない。
密かに自主練するためにこっそり受け取るつもりだったってのに何でお前そこにいんの?
同居のネックか。兄弟での恋愛の大変さを微妙なところで蒼羽は噛みしめた。
「ネットショッピング」
うふ、と笑みを浮かべて答えると胡散臭い顔をされた。解せない。
「そこは俺の笑顔見て照れるとこだろ」
「うーん……。っていうか会社、見えたんだけど……そこってアダルト系じゃないの」
「は? つか何でそれをゆいが知ってんの……?」
俺のかわいいゆいがどうした。
「……別に」
「いや、そこは説明いるだろ」
「……それ、何か教えてくれんなら言う」
「ずりぃだろ!」
「どこが」
「……えっと、じゃあ……うん……口で言うの、なんか嫌だから開けるわ……」
見られたくはないが、何故唯翔が販売元の会社を知っているのか気になりすぎた。くっ、と羞恥と自分の残念さを堪えつつ包装を解き、箱を開けた。
「……わぁ」
唯翔が抑揚のない声というか棒読みで反応してくる。見ると目線はローションやコンドームではなくアナルプラグに行っている。
……ん? つか、これ見て普通アナルプラグだって気づかなくね?
少なくとも蒼羽は注文する時に初めて見た。ディルドの存在くらいは知っていたが、プラグは下手したら変わった形のおしゃぶりくらいにしか見えない。
「え、待って、ゆい、お前これ見て微妙な顔したよな? 知ってんの? ねえ、知ってんの? 俺のかわいい弟がこんなの、知ってんの?」
「うるさいし、買ったやつが言うなよ……。会社知ってんのも俺もその……ど、どうしたらいいかわからなくて最近色々調べて、て……」
俺と一緒かよ……! ああ、でもあのゆいが? やっぱりかわいい。
蒼羽はプラグを握りしめつつしみじみ思った。
やべぇ……嬉しすぎんのと怖すぎんので心臓潰れる。
実際、嬉しくて仕方がない。唯翔が中学生になった頃から好きだったのだ。
親がよく「ほんのウン年前に」などと口にしているが、蒼羽からすれば数年間はほんの、ではない。もうずっとこの気持ちを抱えて生きている気がする程度には長い。
しかも弟と両思いになれるなんて、思いもよらなかった。そう、怖いのも相手が弟だからだ。
覚悟は決めたつもりだし、責任はすべて負う勢いで受け入れた。何の責任かともし問われても上手く説明できないが、ある意味何もかもに対してだろうか。
それでも怖いものは怖い。気軽な恋愛ではない。世間にバレたら非難される関係だろうし、何よりも親に申し訳ない。
自分たちの子どもだってもう持てない。もちろん先ほどのことで永遠の愛を誓ったわけではないが、すぐに気が変わるような思いなら蒼羽だけでなく唯翔も打ち明けやしないだろう。
色んなものを背負う恋愛が怖くないわけがない。
ただ、それでもやはり最終的に蒼羽はとても幸せな思いを噛みしめていた。
結局その日はお互い、多少ギクシャクしつつもそれ以上そのことで話す機会はなかった。夜、寝る前に唯翔の部屋へ行こうかと悩んだが止めた。多分そのまま何かしてしまいそうだ。さすがに親がいる時にはキスすら蒼羽は抵抗がある。
何かしてしまいそうと言えば、と自室でエアコンのタイマーをかけた後にひたすらベッドに突っ伏していた蒼羽は寝返りを打ち、思う。
……食いたいって、どういうこと?
唯翔がさらりと発した言葉を聞いた時は内心動揺していた。
「取って食うのは俺がしたい」
唯翔の言葉を脳内で繰り返す。
「俺が兄さんの隅から隅まで食べるから、兄さんは俺に甘えて……」
それって、どういう意味よ。
聞いた時も恐らく赤くなっていただろう顔がまた熱くなる。あの時は茶化すように「お前、ほんとにゆい? 俺の弟?」などと聞いたが、今言われても同じことを聞いてしまいそうだ。
蒼羽からすればセックスのことを言っているようにしか思えないが、唯翔のことだ。そこまで考えているのではないかもしれない。
それでもあの言葉は体の芯に響いた。怪訝そうに首を傾げているのもかわいかった。
「あー、マジゆいかわいい……」
思わず手が股間へ伸びる。いつもより達するのも早かった。
でも、とティッシュで拭きながら蒼羽も首を傾げる。もし深い意味なく言ってたとしても、無意識だとしても、あれはそういう意味になるんじゃないのか。
「……やっぱ俺が女役すべきなんかなー」
両思いとなっても兄弟だから怖い、などと考えているくせにどうしたって発想はそこへ行ってしまう。
仕方ねーよな、だって高校生だぞ。ちんこと脳が直結してる高校生の性欲どーしよーもねーだろ。
自分に言い訳しつつ、蒼羽は携帯電話でネット検索する。
「……うわ……」
ヒットしてくる情報に引きつつも熱心に調べ続けた。
今までも「もしゆいとならどっちだろう」と抜くネタを考える際に疑問に思ったことはあるが、現実に付き合えると思っていなかったのでちゃんと調べたことはなかった。
……マジかよ……こんなのやっぱゆいにさせらんねーだろ……。
下準備から拡張、行為中のことまでことごとく大変さしか感じない。
決まりだな、女役は俺だわ。
少し、いや結構無理だろと思いつつも好奇心もあるにはある。
通販……あ、ここなら俺も買えそ。ついでにゴムも頼んどくか。コンビニで買ってたらダチに見つかった時めんどい。
今が夏休みでよかったと、午前中着でローションなどを申し込んだ。これなら親に見られることはないだろう。
そして数日後、仕事へ行っている親には見つからなかったが唯翔に見られた。お約束かよと自分とそして、とばっちりな配達員に突っ込みたい。無意識に睨んでいたのか配達員はそそくさと帰って行った。
「何それ」
付き合うとなって数日。唯翔はとりあえず自分から話しかけてくれるようにはなった。彼氏としてそこは喜ぶところではないかもしれないが、微妙に避けられていた身としては十二分に嬉しい。
だが今は嬉しくない。
密かに自主練するためにこっそり受け取るつもりだったってのに何でお前そこにいんの?
同居のネックか。兄弟での恋愛の大変さを微妙なところで蒼羽は噛みしめた。
「ネットショッピング」
うふ、と笑みを浮かべて答えると胡散臭い顔をされた。解せない。
「そこは俺の笑顔見て照れるとこだろ」
「うーん……。っていうか会社、見えたんだけど……そこってアダルト系じゃないの」
「は? つか何でそれをゆいが知ってんの……?」
俺のかわいいゆいがどうした。
「……別に」
「いや、そこは説明いるだろ」
「……それ、何か教えてくれんなら言う」
「ずりぃだろ!」
「どこが」
「……えっと、じゃあ……うん……口で言うの、なんか嫌だから開けるわ……」
見られたくはないが、何故唯翔が販売元の会社を知っているのか気になりすぎた。くっ、と羞恥と自分の残念さを堪えつつ包装を解き、箱を開けた。
「……わぁ」
唯翔が抑揚のない声というか棒読みで反応してくる。見ると目線はローションやコンドームではなくアナルプラグに行っている。
……ん? つか、これ見て普通アナルプラグだって気づかなくね?
少なくとも蒼羽は注文する時に初めて見た。ディルドの存在くらいは知っていたが、プラグは下手したら変わった形のおしゃぶりくらいにしか見えない。
「え、待って、ゆい、お前これ見て微妙な顔したよな? 知ってんの? ねえ、知ってんの? 俺のかわいい弟がこんなの、知ってんの?」
「うるさいし、買ったやつが言うなよ……。会社知ってんのも俺もその……ど、どうしたらいいかわからなくて最近色々調べて、て……」
俺と一緒かよ……! ああ、でもあのゆいが? やっぱりかわいい。
蒼羽はプラグを握りしめつつしみじみ思った。
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