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Infinity編
3話
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結局、葵も仕事禁止は免れたようだ。元々本当に禁止にするはずないだろうと寛人は何となく思ってはいた。かわいい爽やか弟系で売っている売れっ子が、高校の成績不良のため芸能活動少し休みますというのは売上にも響くし、そもそも聞こえが悪い。
その代わり、基希がしばらくつきっきりで勉強を見ることになった。葵がとった赤点のテストを個人的にやり、今度は満点がとれるまでというのが期間のようで、葵はようやく青ざめていた。それまで仕事はしても、奏真とゆっくり会うのは禁止されたようだ。
「無理に決まってんだろ」
「何故。ほんの少しくらいなら許してあげたでしょ」
「仕事が休みの日に学校で会うか放課後途中まで一緒に帰るくらいしか時間ねぇじゃねえか……! 冬休み始まってもこれじゃあデートもできねぇ」
「会えないんじゃないだろ」
「欲求不満で死ぬ」
「お前の下事情なんて聞きたくないし興味ないよ」
「鬼……!」
「……ふーん? そんなこと言うんだ……?」
「……、っごめんなさい……」
そんな一連のやりとりを目の当たりにするという自分のタイミング悪さを呪いつつ、寛人はため息ついた。
どうせなら寛人も基希に教えてもらうのがよかった。怒ると怖い基希であっても、普段は本当に優しくて頼りがいのある人だ。それに多分教え方も上手いだろう。
凛太は今回免れている。凛太のそういった要領のよさを真似できないが、寛人は何気に羨ましく思う。
「……何で普段から赤点じゃねぇ俺が一番罰ゲーム食らった感あんだよ……」
「ぁあ? 何か言ったかよ」
ぼそりと呟いた言葉に反応した貫士がだるそうに寛人を見てくる。
「俺はエンを見るから、カンジ、お前がゴンを見てあげて」
基希に言われた時も貫士はだるそうだった。だが意外なことに面倒くさがりのくせに断らなかった。
「あーぁ? ……ま、いーけどよ」
「は? いや、別にいらない。俺、赤点取ってねぇし……」
「取ってないけど、ぎりぎりだっただろ。日本の大学は入りさえしたら確かに海外と違って卒業しやすいけど、だからこそ留年とか笑えないの、わかるよね」
俺の母親よりお母さん過ぎるだろ……!
心の中で突っ込みつつも、寛人はそれ以上何も言わなかった。ただでさえ出席日数も余裕があるわけではない。確か一教科に対し十五回以上の授業を行わなければならないといった基準が文部科学省だか厚生労働省だかから出ているらしく、しかも単位が貰えるのは十回以上出席した学生のみだったはずだ。九回以下だと試験やレポートの内容がよくても単位は貰えないということになる。寛人は自らサボったことはないが、仕事でどうしても出られないこともある。その上試験すらぎりぎりとなると、留年の心配などない、とは言いきれない。
口は少々よくないかもしれないが根が真面目な寛人は、結局大人しく言われた通りにすることにした。
改めて意外なのが貫士だ。絶対に「やらねぇ。めんどくせぇ」くらいは言いそうなものだというのに、どうでもよさげだったとはいえ断ることなく了承してきた。
「……何でお前、引き受けてんだよ。珍しすぎて天気まで雨だろ」
罰ゲームなどと素直に言えばまた煩そうだ、と言い直した言葉も刺ある感じになった。
まぁ、これでこいつがへそ曲げて止めるっつーならそれはそれであり。
やる気があるのかないのか「とりあえずここからここまでの問題解けや」と適当な様子で言われるがまま問題を解きながら思っていると、貫士が小馬鹿にしたような顔をしてきた。
「んだ、そら。そりゃこの俺ともなりゃマジで天気も左右してきそーだけどな」
「は?」
本当に頭の悪そうな発言してくる。だというのに実際はとても頭がいいところが本当に解せない。
ただ頭がいいやつにありがちなのかもしれないが、教えるのは上手くない。途中わからないところがあったから渋々聞けば「はぁ? んなもん、リスキーシフトなんだから性急に合意形成図ろうとしたとこで起きんだろが」と返ってきた。
「じゃなくてその前に集団極性化現象のこれらって」
「そのままだろが」
そのままのその、がわからねぇから聞いてんだろが……!
イラッとして思ったが、そもそも寛人が取っている授業を受けていない上に専門でもない貫士は、普通ならあまり知らない内容のはずだ。それを把握しているだけでも本来凄い。
多分、当たり前のように理解する分、それがわからない者の考えこそがわからないというやつなのだろう。寛人にとってただでさえ偉そうで強気だというのに余計腹立たしく思えた。
「つか、俺が教えてやってるっつーのによ」
「お前、いつ俺に教えたよ。ただ問題やらしてるだけだろが」
「ぁあ? んなもん、頭と体で覚えろや」
この野郎……。
「教えてやってるっつーのにまずお前にやる気が感じられねーんだよ」
お前のやる気も感じねぇよ……!
「だから今から問題一つにつき五分以内な」
「は?」
「五分で解け。質問は受けてやる。五分で解けねー場合は罰ゲームな?」
「はぁ? てめ、何勝手──」
「そんくれーしねーとお前、やる気出さねーだろ。さっき罰ゲーム食らった感あるっつってたろ? ちょーどいーじゃねぇか。食らえや」
さっき……って、聞こえてたのかよ……!
嫌な予感しかしない。寛人は今すぐ逃げ出したくなった。ここが自分の家でなければ、の話だが。
その代わり、基希がしばらくつきっきりで勉強を見ることになった。葵がとった赤点のテストを個人的にやり、今度は満点がとれるまでというのが期間のようで、葵はようやく青ざめていた。それまで仕事はしても、奏真とゆっくり会うのは禁止されたようだ。
「無理に決まってんだろ」
「何故。ほんの少しくらいなら許してあげたでしょ」
「仕事が休みの日に学校で会うか放課後途中まで一緒に帰るくらいしか時間ねぇじゃねえか……! 冬休み始まってもこれじゃあデートもできねぇ」
「会えないんじゃないだろ」
「欲求不満で死ぬ」
「お前の下事情なんて聞きたくないし興味ないよ」
「鬼……!」
「……ふーん? そんなこと言うんだ……?」
「……、っごめんなさい……」
そんな一連のやりとりを目の当たりにするという自分のタイミング悪さを呪いつつ、寛人はため息ついた。
どうせなら寛人も基希に教えてもらうのがよかった。怒ると怖い基希であっても、普段は本当に優しくて頼りがいのある人だ。それに多分教え方も上手いだろう。
凛太は今回免れている。凛太のそういった要領のよさを真似できないが、寛人は何気に羨ましく思う。
「……何で普段から赤点じゃねぇ俺が一番罰ゲーム食らった感あんだよ……」
「ぁあ? 何か言ったかよ」
ぼそりと呟いた言葉に反応した貫士がだるそうに寛人を見てくる。
「俺はエンを見るから、カンジ、お前がゴンを見てあげて」
基希に言われた時も貫士はだるそうだった。だが意外なことに面倒くさがりのくせに断らなかった。
「あーぁ? ……ま、いーけどよ」
「は? いや、別にいらない。俺、赤点取ってねぇし……」
「取ってないけど、ぎりぎりだっただろ。日本の大学は入りさえしたら確かに海外と違って卒業しやすいけど、だからこそ留年とか笑えないの、わかるよね」
俺の母親よりお母さん過ぎるだろ……!
心の中で突っ込みつつも、寛人はそれ以上何も言わなかった。ただでさえ出席日数も余裕があるわけではない。確か一教科に対し十五回以上の授業を行わなければならないといった基準が文部科学省だか厚生労働省だかから出ているらしく、しかも単位が貰えるのは十回以上出席した学生のみだったはずだ。九回以下だと試験やレポートの内容がよくても単位は貰えないということになる。寛人は自らサボったことはないが、仕事でどうしても出られないこともある。その上試験すらぎりぎりとなると、留年の心配などない、とは言いきれない。
口は少々よくないかもしれないが根が真面目な寛人は、結局大人しく言われた通りにすることにした。
改めて意外なのが貫士だ。絶対に「やらねぇ。めんどくせぇ」くらいは言いそうなものだというのに、どうでもよさげだったとはいえ断ることなく了承してきた。
「……何でお前、引き受けてんだよ。珍しすぎて天気まで雨だろ」
罰ゲームなどと素直に言えばまた煩そうだ、と言い直した言葉も刺ある感じになった。
まぁ、これでこいつがへそ曲げて止めるっつーならそれはそれであり。
やる気があるのかないのか「とりあえずここからここまでの問題解けや」と適当な様子で言われるがまま問題を解きながら思っていると、貫士が小馬鹿にしたような顔をしてきた。
「んだ、そら。そりゃこの俺ともなりゃマジで天気も左右してきそーだけどな」
「は?」
本当に頭の悪そうな発言してくる。だというのに実際はとても頭がいいところが本当に解せない。
ただ頭がいいやつにありがちなのかもしれないが、教えるのは上手くない。途中わからないところがあったから渋々聞けば「はぁ? んなもん、リスキーシフトなんだから性急に合意形成図ろうとしたとこで起きんだろが」と返ってきた。
「じゃなくてその前に集団極性化現象のこれらって」
「そのままだろが」
そのままのその、がわからねぇから聞いてんだろが……!
イラッとして思ったが、そもそも寛人が取っている授業を受けていない上に専門でもない貫士は、普通ならあまり知らない内容のはずだ。それを把握しているだけでも本来凄い。
多分、当たり前のように理解する分、それがわからない者の考えこそがわからないというやつなのだろう。寛人にとってただでさえ偉そうで強気だというのに余計腹立たしく思えた。
「つか、俺が教えてやってるっつーのによ」
「お前、いつ俺に教えたよ。ただ問題やらしてるだけだろが」
「ぁあ? んなもん、頭と体で覚えろや」
この野郎……。
「教えてやってるっつーのにまずお前にやる気が感じられねーんだよ」
お前のやる気も感じねぇよ……!
「だから今から問題一つにつき五分以内な」
「は?」
「五分で解け。質問は受けてやる。五分で解けねー場合は罰ゲームな?」
「はぁ? てめ、何勝手──」
「そんくれーしねーとお前、やる気出さねーだろ。さっき罰ゲーム食らった感あるっつってたろ? ちょーどいーじゃねぇか。食らえや」
さっき……って、聞こえてたのかよ……!
嫌な予感しかしない。寛人は今すぐ逃げ出したくなった。ここが自分の家でなければ、の話だが。
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