49 / 65
Infinity編
4話
しおりを挟む
「何やらせる気だよ……」
嫌だと断固拒否してもよかったが、それはそれが通用する相手にしか意味を成さない。貫士に通用するなんて甘い考えはさすがに寛人も持っていない。
「今言っても面白くねぇだろ。お前がミスる度に言ってやる」
「いつ言おうが面白くねぇんだよ!」
「るせーな。さっさと解いてけや。質問は受ける。参考になる教科書や資料も見ていい。こんな好条件ねぇだろが」
そもそも貫士自身に勉強を教えてもらうという状況のはずで、好条件もへったくれもないと思う。だが言っても詮無きこととはこのことだろう。
「……ち。つまらねぇこと、やらせんなよ」
「は。罰ゲーム食らう前提か? ほんとやる気ねぇな」
「うるせぇ」
「つまらねぇことなんてやらせるわけねーだろ?」
「……」
滅多に聞かない貫士の優しげな声色に、寛人はむしろ警戒した。
「俺が楽しいことしかやらせねぇに決まってんだろが。ほら、さっさと問題解け。まずこの問題。今から五分な」
ああ、お前はそういうやつだよ……!
四つも年上ではあるが、この傍若無人な男を今まで年上だと思ったことなどない。
イライラしつつ、寛人は慌てて参考となる資料をめくっていった。先ほど貫士が言っていた単語から心当たりを調べていく。すると見つかった。詳しい説明文を見れば、貫士が言っていたことも把握できる。
よし……!
意味を理解した寛人は問いに対する論述を記入していった。五分よりも一分近く早く書き終え、ほっとため息つく。
「内容、把握したかぁ?」
「……嫌でもな」
「よし、じゃあ次な?」
容赦なく貫士はトントンと次の問題のところを指で軽く叩いた。
「……くそ」
「あぁ? 何だ?」
ニヤリと笑みを浮かべる貫士は勝ち気そうでありながら忌々しいほど整った綺麗な顔をしている。それがまた余計腹立たしく見える。
すげぇ馬鹿とかどんくさそうな顔とか鍛えられてねぇ体とか歌が下手とか演奏が下手とか踊れねぇとか、どっかマイナス面持っとけよ……!
いや、マイナス面もあるにはある。性格だ。しかし貫士の性格が悪いという部分は、寛人がつけこむどころかむしろいたぶられる原因でしかない。
「ほら、さっさとやんねぇと罰ゲームだぜぇ?」
「……く。……おい。ここの意味を教えろ」
「教えてください、だろが? まぁ、いい。対応バイアスだろ。ある要因の顕現性が強いほど行動をそれに帰する可能性が高くなんだよ」
「だから……! てめぇの説明は漠然とし過ぎてむしろ意味わかんねぇんだよ!」
「だったら調べろや」
どうでもよさげに言われ、寛人は舌打ちしながら急いでまた資料を繰っていく。そして貫士の言った単語からいくつかの情報を見つけ、何とか理解し、また論述を書いていった。
「あー……、っち、ギリギリセーフかよ。おもんねぇ」
「他人事だと思いやがって」
「他人事だろうが。おい、次いくぞ」
無茶苦茶なやり方させられている気はする。だが悔しいことに、ここまでで結構ぼんやりとしていた構造が段々明確になってきている気がする。
まさか狙ってやってる……?
内心驚いていると最後の問題で油断してしまった。
「はーい五、ふーん」
「ぁあ……っ?」
気づけば五分が過ぎていた。血の気が引いたように頭が少し冷たくなりつつ、寛人は貫士を見る。貫士はとてつもなく楽しげでいて性格の悪そうな顔をしていた。
「ちょ、今ちょっと他のこと考え、て」
「はぁ? お前、本番の試験で回答間に合わない時でもそんなこと言えんのか」
「……く。……罰ゲーム、何だよ」
「そうだなぁ」
とてつもなく楽しそうな様子が本当に忌々しい。
「じゃあ、俺の質問五つ、に答えろ」
「……は?」
そんな簡単なことでいいのかと寛人は拍子抜けした。貫士のことだから、この雨の中今からどこそこのケーキを何分以内に買って来いだの、変装なしで繁華街へ行けだの、下らないのにこちらのヒットポイントを地味にごりごり削ってくるような命令をしてくるかと思った。
「は、じゃねぇんだよ。まず一つめな。何にすっかな……ああ、そうだ。お前、週に何回抜いてんの」
「……、……は、はぁぁっ? んだよその質問っ?」
前言撤回だ。下らないのにこちらのヒットポイントをごりごり削ってきた。
「罰ゲームだろ? ほら、早く答えろよ。時は金なり。俺の貴重な時間、これ以上無駄にしてくれんなよ」
「そんな貴重な時間に、そんなくだらねぇこと聞いてんじゃねぇ」
「質問の数増やすぞ」
「…………多分二、三回くらい」
死ぬほどどうでもいい内容に、羞恥心を微妙にかきたてられる。
「少なくね?」
「は? こんなもんだろ」
「お前まだかろうじて十代だろが」
「かろうじてじゃねぇ。十九はまごうことなき十代なんだよ……つか、マジくだらねぇセクハラしてんじゃねぇぞ」
「はぁ? 男同士のちょっとした会話じゃねーか、てめ、繊細かよ」
鼻で笑ってくるところも含めて本当にいちいち腹立たしい。
「じゃあお前はどんくらいなんだよ」
「知りてーの?」
「……知りたくねぇわ」
「は。まぁそうだなー、自分でするより大抵女とするほうが多いわ」
ほんと、いちいち腹立たしいな……っ?
寛人はじろりと貫士を睨んだ。
嫌だと断固拒否してもよかったが、それはそれが通用する相手にしか意味を成さない。貫士に通用するなんて甘い考えはさすがに寛人も持っていない。
「今言っても面白くねぇだろ。お前がミスる度に言ってやる」
「いつ言おうが面白くねぇんだよ!」
「るせーな。さっさと解いてけや。質問は受ける。参考になる教科書や資料も見ていい。こんな好条件ねぇだろが」
そもそも貫士自身に勉強を教えてもらうという状況のはずで、好条件もへったくれもないと思う。だが言っても詮無きこととはこのことだろう。
「……ち。つまらねぇこと、やらせんなよ」
「は。罰ゲーム食らう前提か? ほんとやる気ねぇな」
「うるせぇ」
「つまらねぇことなんてやらせるわけねーだろ?」
「……」
滅多に聞かない貫士の優しげな声色に、寛人はむしろ警戒した。
「俺が楽しいことしかやらせねぇに決まってんだろが。ほら、さっさと問題解け。まずこの問題。今から五分な」
ああ、お前はそういうやつだよ……!
四つも年上ではあるが、この傍若無人な男を今まで年上だと思ったことなどない。
イライラしつつ、寛人は慌てて参考となる資料をめくっていった。先ほど貫士が言っていた単語から心当たりを調べていく。すると見つかった。詳しい説明文を見れば、貫士が言っていたことも把握できる。
よし……!
意味を理解した寛人は問いに対する論述を記入していった。五分よりも一分近く早く書き終え、ほっとため息つく。
「内容、把握したかぁ?」
「……嫌でもな」
「よし、じゃあ次な?」
容赦なく貫士はトントンと次の問題のところを指で軽く叩いた。
「……くそ」
「あぁ? 何だ?」
ニヤリと笑みを浮かべる貫士は勝ち気そうでありながら忌々しいほど整った綺麗な顔をしている。それがまた余計腹立たしく見える。
すげぇ馬鹿とかどんくさそうな顔とか鍛えられてねぇ体とか歌が下手とか演奏が下手とか踊れねぇとか、どっかマイナス面持っとけよ……!
いや、マイナス面もあるにはある。性格だ。しかし貫士の性格が悪いという部分は、寛人がつけこむどころかむしろいたぶられる原因でしかない。
「ほら、さっさとやんねぇと罰ゲームだぜぇ?」
「……く。……おい。ここの意味を教えろ」
「教えてください、だろが? まぁ、いい。対応バイアスだろ。ある要因の顕現性が強いほど行動をそれに帰する可能性が高くなんだよ」
「だから……! てめぇの説明は漠然とし過ぎてむしろ意味わかんねぇんだよ!」
「だったら調べろや」
どうでもよさげに言われ、寛人は舌打ちしながら急いでまた資料を繰っていく。そして貫士の言った単語からいくつかの情報を見つけ、何とか理解し、また論述を書いていった。
「あー……、っち、ギリギリセーフかよ。おもんねぇ」
「他人事だと思いやがって」
「他人事だろうが。おい、次いくぞ」
無茶苦茶なやり方させられている気はする。だが悔しいことに、ここまでで結構ぼんやりとしていた構造が段々明確になってきている気がする。
まさか狙ってやってる……?
内心驚いていると最後の問題で油断してしまった。
「はーい五、ふーん」
「ぁあ……っ?」
気づけば五分が過ぎていた。血の気が引いたように頭が少し冷たくなりつつ、寛人は貫士を見る。貫士はとてつもなく楽しげでいて性格の悪そうな顔をしていた。
「ちょ、今ちょっと他のこと考え、て」
「はぁ? お前、本番の試験で回答間に合わない時でもそんなこと言えんのか」
「……く。……罰ゲーム、何だよ」
「そうだなぁ」
とてつもなく楽しそうな様子が本当に忌々しい。
「じゃあ、俺の質問五つ、に答えろ」
「……は?」
そんな簡単なことでいいのかと寛人は拍子抜けした。貫士のことだから、この雨の中今からどこそこのケーキを何分以内に買って来いだの、変装なしで繁華街へ行けだの、下らないのにこちらのヒットポイントを地味にごりごり削ってくるような命令をしてくるかと思った。
「は、じゃねぇんだよ。まず一つめな。何にすっかな……ああ、そうだ。お前、週に何回抜いてんの」
「……、……は、はぁぁっ? んだよその質問っ?」
前言撤回だ。下らないのにこちらのヒットポイントをごりごり削ってきた。
「罰ゲームだろ? ほら、早く答えろよ。時は金なり。俺の貴重な時間、これ以上無駄にしてくれんなよ」
「そんな貴重な時間に、そんなくだらねぇこと聞いてんじゃねぇ」
「質問の数増やすぞ」
「…………多分二、三回くらい」
死ぬほどどうでもいい内容に、羞恥心を微妙にかきたてられる。
「少なくね?」
「は? こんなもんだろ」
「お前まだかろうじて十代だろが」
「かろうじてじゃねぇ。十九はまごうことなき十代なんだよ……つか、マジくだらねぇセクハラしてんじゃねぇぞ」
「はぁ? 男同士のちょっとした会話じゃねーか、てめ、繊細かよ」
鼻で笑ってくるところも含めて本当にいちいち腹立たしい。
「じゃあお前はどんくらいなんだよ」
「知りてーの?」
「……知りたくねぇわ」
「は。まぁそうだなー、自分でするより大抵女とするほうが多いわ」
ほんと、いちいち腹立たしいな……っ?
寛人はじろりと貫士を睨んだ。
11
あなたにおすすめの小説
期待の名探偵の頭脳は、俺に全振りされている。
さんから
BL
高校生探偵後輩×漫画描き先輩
部活の後輩・後生掛 清志郎は、数々の難事件を解決してきた期待の名探偵だ。……だけど高校に入学してから探偵の活動を控えているらしく、本人いわくその理由は俺・指宿 春都にあると言う。
「俺はイブ先輩だけに頼られたいし、そのために可能な限りあなたの傍にいたいんですっ」
いつもそう言って、しょうもないことばかりに推理力を使う後生掛。頭も見た目も良いコイツがどうして俺に執着してるのかが分からなくて──。
君に捧げる、魔法のレシピ〜さえない動画配信者の僕が、クラスの王子様的男子に恋をした結果〜
ryon*
BL
地味でおとなしい性格の高校生 佐藤 理人は、趣味でこっそりお菓子のレシピ動画を公開している人気配信者でありスイーツ研究家。
ある日理人は、幼なじみの太陽に味見用としてクッキーを手渡すところを、大路に見られてしまう。
しかも清雅は大の甘党で、理人が配信している動画の大ファンだったことが判明。
しかし清雅は、理人=推し配信者の『りとる』だとはまったく気付いていなくて……!?
はじまりの朝
さくら乃
BL
子どもの頃は仲が良かった幼なじみ。
ある出来事をきっかけに離れてしまう。
中学は別の学校へ、そして、高校で再会するが、あの頃の彼とはいろいろ違いすぎて……。
これから始まる恋物語の、それは、“はじまりの朝”。
✳『番外編〜はじまりの裏側で』
『はじまりの朝』はナナ目線。しかし、その裏側では他キャラもいろいろ思っているはず。そんな彼ら目線のエピソード。
告白ごっこ
みなみ ゆうき
BL
ある事情から極力目立たず地味にひっそりと学園生活を送っていた瑠衣(るい)。
ある日偶然に自分をターゲットに告白という名の罰ゲームが行われることを知ってしまう。それを実行することになったのは学園の人気者で同級生の昴流(すばる)。
更に1ヶ月以内に昴流が瑠衣を口説き落とし好きだと言わせることが出来るかということを新しい賭けにしようとしている事に憤りを覚えた瑠衣は一計を案じ、自分の方から先に告白をし、その直後に全てを知っていると種明かしをすることで、早々に馬鹿げたゲームに決着をつけてやろうと考える。しかし、この告白が原因で事態は瑠衣の想定とは違った方向に動きだし……。
テンプレの罰ゲーム告白ものです。
表紙イラストは、かさしま様より描いていただきました!
ムーンライトノベルズでも同時公開。
今日は少し、遠回りして帰ろう【完】
新羽梅衣
BL
「どうしようもない」
そんな言葉がお似合いの、この感情。
捨ててしまいたいと何度も思って、
結局それができずに、
大事にだいじにしまいこんでいる。
だからどうかせめて、バレないで。
君さえも、気づかないでいてほしい。
・
・
真面目で先生からも頼りにされている枢木一織は、学校一の問題児・三枝頼と同じクラスになる。正反対すぎて関わることなんてないと思っていた一織だったが、何かにつけて頼は一織のことを構ってきて……。
愛が重たい美形×少しひねくれ者のクラス委員長、青春ラブストーリー。
僕の恋人は、超イケメン!!
八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる